4-3-22(第352話) 戦闘中に聞いた言葉
「それにしても、あの男は一体どこから発掘したのかね?」
彩人とゴーレムが戦っている間、デベロッパーとメイキンジャー、パラサイダーは話をしながらお互いの杖、足をぶつけ合っていた。戦闘の最中にも関わらず、3匹は雑談をするように話し始める。
「発掘も何も、我らと敵対し、戦った憎き敵ですよ」
「そうパラね。不遜な態度で、パラ達に剣を向けてきたパラ」
「・・・ふむ。傾聴したところ、何故貴様らがこうして組んでいるのか謎なのだが?」
「利害の一致、といったところです」
「利害の一致、だと?どういうことだ?」
メイキンジャーが言う利害の一致の意味について、デベロッパーは質問する。
「デベロッパー、あなたはキハダでやり過ぎたのです」
「キハダ?・・・ああ、あの小さな町のことか」
「そうパラ。お前はあの町で盗みを働いていたらしいパラが、その犯人の居場所を特定されたんパラよ」
「何?粗相はしていないはずだ。それなのに何故?」
「そんなことは知りません。ですが、あの者がここに来た。それが事実です」
「!?またあの男か!?本当に何なのだ!!??」
デベロッパーは、メイキンジャーとパラサイダーが連れてきた男、彩人に激昂する。
「流石に隙だらけパラよ」
パラサイダーは、激昂していて注意力が散漫しているデベロッパーの体に前足で思いっきり殴りつける。その衝撃でデベロッパーは吹っ飛ぶ。
「ち。流石に乱し過ぎましたな」
デベロッパーはぶつかった壁から体を離し、態勢を立て直す。
「それにしてもあの男、本当に我が主、そして我々と同じ力を有していると断言できるのか?」
「そのようですね。私、パラサイダー、そしてあの男の3人であの【条件結界】を破ったのです。あなたがあの【条件結界】を展開したのであれば、あなたが誰よりも分かっているはずでしょう?」
「!?何故あんな男が・・・ん?」
パラサイダーは彩人の方を見る。するとデベロッパーは、彩人の指についているリングが視界に入る。
「まさか・・・?」
デベロッパーは静止する。その様子に、メイキンジャーとパラサイダーも止まり、デベロッパーの様子を窺う。
「ふ。あーはっはっは!まったく!今日はおかしなことがよく起こる日であるな!」
「・・・何がおかしいのですか?」
「気でも狂ったパラか?」
急に笑い出したデベロッパーに目キンジャーとパラサイダーは憐れみを含んだ視線を送る。
「狂乱しても仕方がないじゃないか!何せあの人間が身に着けている指輪は、私が捨てた指輪を身に着けていたんだからな!」
その時、ゴーレムと戦っていた彩人は戦っているにも関わらず、動きを止める。
「!?」
動きを止めたせいで、彩人はゴーレムからの攻撃を直撃し、壁に直撃する。その後、自身の体に出来た生傷を気にせず、彩人はデベロッパーに質問する。
「お前、それはどういうことだ!?」
「どういう事も何も、言葉が成す意味のままだが?」
「!?」
彩人は戦闘中にも関わらず、動きを完全に止め、戦闘相手のゴーレムを視界から完全に消していた。彩人の様子が変化しても、ゴーレムは彩人に攻撃しようと構え、彩人をぶん殴る。そして、彩人は再び吹っ飛び、壁に激突する。
彩人にとっては激痛のはずだが、痛みを気にせず、パラサイダーに質問する。
「つまりお前はレンカを、あのゴーレムをあの洞窟で放置したというのか!?」
この彩人の質問に、パラサイダーは高笑いしながら答える。
「ああそうだ!心なんて非効率的な機能を搭載してしまったおかげで、精神的気苦労が絶えなく、いちいち細かいことを指摘してきたからな!」
「・・・」
彩人はデベロッパーの笑い声と共に発せられた言葉の内容を理解した後、
「ぐほ!?」
「てめぇ、いい加減にしろよ」
デベロッパーを思いっきり、力の限り殴り、吹っ飛ばしていた。
気づかないうちに俺は、あのデベロッパーを殴っていた。
(やべ)
あの二匹にゴーレムを止めておくよう言われていたのに、つい手をだしてしまった。ちょっと聞き捨てならない言葉が聞こえてきて、頭に血が上って感情的に行動してしまった。
(今の内に)
俺はさきほどまで対峙していたゴーレムを拘束するため、【空縛】を発動させる。これでしばらくは動けないと思う。だが心配だな。さらに俺はゴーレムを水の中に入れ、その水に【粘性】を幾重にも【付与】し、粘性を強める。これで動けたとしても、強い抵抗により、ゴーレムの動きがかなり鈍くなったはずだ。出てきた時の場合を考慮し、火の牢、氷の牢、樹木の牢、雷の牢で閉じ込める。
「こいつ、少しだけ俺が相手してもいいか?」
俺は二匹の目を見ずに質問する。駄目と言われても我慢出来るか分からないが。
「殺さなければ問題ないので構いません」
「やり過ぎないようにするパラよ。こっちは楽でいいパラ」
おそらく、俺を止めるのが無駄だと判断したのだろう。それはありがたい。
「さて」
俺は改めてデベロッパーを見る。猿から進化した魔獣だからか、メイキンジャーと違い、かなり服装が簡素だ。原始人みたいだ。
「レンカ。今の話は本当か?」
「嘘です!」
レンカは指輪の中から出てきて、強い否定をした。
「だって、私の創造主は人間で、魔獣じゃありません!」
?どういうことだ?レンカの言う通りなら、デベロッパーはレンカを作った、という発言が虚偽ということになる。
「・・・ふむ。そういえば、この顔で貴様の前に出ていなかったな」
デベロッパーがそう言うと、何かバッジみたいな魔道具を取り出すと、顔が変わった。猿みたいな顔が、仙人みたいな、初老のジェントルマンみたいな男性に顔が変わった。顔って魔道具で変わるんだな。今はどうでもいいが。
「う、嘘!?そんな・・・まさか!!??」
デベロッパーの顔が変わったかと思うと、レンカの顔色も変わる。本来、レンカの顔は不定形で、変わるのは声色ぐらいだと思っていたのだが、まさか顔の造形、色まで変わるとはな。
「そうだ!心を搭載したことで精神状態が一定せず、常に最善の力を発揮できなくなる。それが貴様の欠陥なのだ!」
「う、ううぅ・・・」
これはボッチな俺でも分かる。レンカは、受け入れきれない現実に絶望しているのだ。
自分は捨てられたという現実を受け入れられず、今もこうして涙を流している。
心があることで欠陥だと?
道具として欠陥だと?
「・・・レンカ、力を貸せ」
「え?でもアルジン、私みたいな欠陥品が手を貸したところで、」
「お前は欠陥品なんかじゃない。それを今から証明してやる」
心があることで欠陥だというなら、心の力を見せてやる!
気合いを入れ直して、俺はデベロッパーに剣を向ける。
「覚悟しろよ、デベロッパー。今からお前をぶっ飛ばしてやる」
俺は【四色気・赤青黄緑】を発動させたまま、デベロッパーに全力で向かう。
「人間如きが、このデベロッパーに敵うと思うなよ!」
次回予告
『4-3-23(第353話) 心を持った魔道具、レンカ』
彩人が魔道具と闘っている中、デベロッパーの言葉に激怒し、殴りつける。その後、メイキンジャーとパラサイダーに許可をもらってから、デベロッパーの相手をし始める。
こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。
感想、評価、ブックマーク等、よろしくお願いいたします。




