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色を司りし者  作者: 彩 豊
第三章 魔道具であるレンカの黄朽葉な心
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4-3-18(第348話) 2つの気配の正体

「「「え???」」」

 俺の言葉に全員が驚いていた。無理もない。いきなりこんなことを言われて、すぐに納得なんて出来ないだろう。そして、納得が出来ない場合、こんな質問がくる。

「どうしてですか?」

 その質問は、何故逃げろ、なんて言ったかである。

「・・・理由は何も聞かず、ひとまずこの場から逃げてくれ」

 出来れば理由は言いたくなかった。だから、これ以上言わないようにした。

「さしつかえなければ、教えていただけないでしょうか?」

 クロミルまで聞いてきた。クロミルなら何も聞かずに逃げてくれると信じていたんだがな。そううまくは行かないか。

「頼む。何も聞かずにこの場から逃げてくれ」

 俺はみんなの顔を見ずに懇願した。出来ればこれで何も知らずに逃げて欲しい。

「…もしかして、ヌル一族が関係している?」

「!?い、違うぞ!?そんなことは、ない!!」

 俺は即座に強い否定をした。だが、否定の仕方が悪かったらしく、肯定に捉えられてしまった。

「まさか、嘘!?」

「あの蜘蛛みたいなのがいるのか~」

 ザッハを除き、俺が何故逃げて欲しいと言ったのか理解し始めたみたいだった。出来れば悟らせなくなかった。俺の言い方が悪かったらしい。

「?なぁ?ヌル一族というのは何だ?」

 ここでザッハは俺に、ヌル一族に関して質問してきた。俺は出来るだけ簡潔に、一言で言った。

「俺でもお前でも勝てない最強の一族だ」

 と言った。ザッハは俺の言葉に驚いたらしく、

「そんなやつがこの奥にいるというのか・・・」

 と言っていた。実は、俺も絶対、とは言えない。だが、俺の直感が、俺の今までの経験が言っている。

 この森の奥に、ヌル一族がいるのだと。

(2つの気配なら、メイキンジャーとパラサイダーか)

 俺はいる奴を想像する。あんな化け物級を2人いっぺんに相手しないといけないのか。

(勝てる奴、いるのかね)

 俺だって多少強くなっている自覚はある。ザッハとの訓練のおかげで、【色気】の持続時間が長くなったし、【色気】を重ねがけすることも可能だ。だが、それでも届かないと思う。虚勢を張った程度で勝てる相手ではないが、やるだけやってみるか。

「だから、みんなで逃げてくれ」

「ですけど、そうなるとアヤトさんを一人にしてしまいます!そんなの・・・!?」

「だったらモミジ、お前は【色気】を使えるのか?」

「え?」

「それだけじゃない。俺とザッハを相手に、目を閉じながらでも勝てるか?片手であくびしながら勝てるか?」

 俺は意地悪に、モミジに連続で質問する。

「え、えっと・・・」

「無理だろう?それぐらい強くないと勝てない相手なんだ」

 実際、あいつらが俺とザッハ二人を相手に、目を閉じていても勝てるのかは謎だが、例え話の一つとして言わせてもらった。

「だから今回は、逃げてくれ」

 俺の言葉に、

「「「・・・」」」

 全員が黙ってしまった。ヌル一族をよく知らないザッハも、俺の言葉に口を出さないでいた。

 最初に口を開いたのは、

「分かり、ました」

 クリムだった。

「!?…あなたはそれで・・・!?」

「だって私達がいても、邪魔にしかならないんでしょう?」

 俺に向かって言うクリムの言葉は、棘と悲しみを感じた。

「・・・」

 クリムの言葉に、俺はただ黙ることしか出来なかった。

「…分かりました。それではみんなで首都に戻りましょうか?」

 リーフがそう言い、イブとクリムに手をかけ、首都に戻ろうとする。

「俺だけでも・・・、」

「お前には大切な妹がいるんだろう?なら、こんなところで死ぬべきじゃない。何かあった時、お前は妹達を、この国を守ってやれよ」

 そう言い、俺はザッハの目を見る。

「それを言うならお前にも・・・、」

「この中で最も勝率が高いのは俺だ。だから俺が残る。文句あっか?」

「・・・必ず、戻って来いよ」

「ああ」

 ザッハも戻っていった。

「お兄ちゃん!ルリなら残っても・・・、」

「ルリとクロミルは、あのザッハと一緒に、首都付近で警戒していてくれ」

「でもルリは、お兄ちゃんのことが心配で・・・、」

 俺はルリの頭に手を置く。

「俺もあれから強くなったんだ。だから、俺を信じろ」

 まぁ、自分の強さをある程度理解しているからこそ、あのヌル一族に勝てないと思っているのだが。

「・・・分かった」

 顔と言葉が一致していないのは俺の気のせいか?

「クロミルも頼む。な?」

「・・・」

 クロミルは何の反応も示さなかった。

(無理もないか)

 捉え方によっては、

“みんな俺より弱いからこの場から消えろ!”

 に聞こえるからな。そんなことを言った俺の事をよく思わないのは仕方のないことだろう。

「「・・・」」

 二人は黙って、首都へ戻っていった。

「はぁ」

 みんなが首都に向かったことを確認し、俺は深いため息をつく。

「まったく」

 俺はどうして、こんなやり方でしか、人を動かすことが出来ないのだろうか。結局俺は、人を傷つけてしまった。言葉を選べば、気持ちよくみんなが首都に向かったかもしれないのにな。

「アホだな、俺」

 異世界でそれなりに人と関りを持っていたから、自然と話術が向上しているのかと思っていたが、そうでもなかったらしい。やはり、今まで生きてきた人生の内、半生以上を独りで過ごしてきたから、その弊害がここででてしまったのだろうな。

「さて、行くか」

 例え俺独りでも、やることやらないとな。

「まったく、アルジンったら。あんな言葉をかけるなんて」

「え?」

 突如、聞き覚えのある声が聞こえた。

「後でしっかり慰めてあげてくださいね、アルジン」

「何でお前がいるんだよ・・・」

 その聞き覚えのある声の持ち主は、レンカだった。

「何でって、アルジンがずっと指に私の指輪を付けたままにしていたからじゃないですか」

「あ」

 そういえばこの指輪、クロミル達に預ける事をすっかり忘れていたわ。今からクロミル達を追いかけて指輪を渡すにも気まず過ぎるし、仕方がない。

「お前、俺がいいって言うまで出てくるなよ?」

「アルジン、そんなにヌル一族は強いのですか?」

「強い。だから出てくるなよ」

「分かりました。それではしばらく静かにしておきます」

 そう言い、レンカは指輪の中へ戻っていった。

「さて、と」

 俺は足に力を入れ、

「【赤色気】」

 【赤色気】を発動させた後、溜め込んでいた足の力を開放し、一気に前進する。

 そして、

「よぉ」

 俺は空元気気味に言葉をかけた。言葉をかけた相手は、

「ええ」

「やっときたパラか。遅いパラよ」

 見覚えのあるヌル一族、メイキンジャー・ヌルとパラサイダー・ヌルだった。

次回予告

『4-3-19(第349話) 【条件結界】を破る鍵』

 メイキンジャーとパラサイダーは、目の前にある【条件結界】をどう対処すれば考えている時、2匹の思考にある青年が思い浮かぶ。そして運命の悪戯か、ある青年が2匹に近づいていく。


 こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。

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