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色を司りし者  作者: 彩 豊
第三章 魔道具であるレンカの黄朽葉な心
348/546

4-3-17(第347話) 森の奥へ

 翌日。

「お、来たな」

 ザッハが来たようだ。なんか、かなり身軽な気がする。巾着っぽい何かを複数腰に付けているみたいだが、それだけみたいだ。俺はこのアイテムブレスレットをつけているから手荷物は少なくて済む。だが、他の冒険者はどうなのだろうか。

(もしかして?)

 こいつも前々から聞いていた魔法鞄?だっけか?そんな魔道具を持っているのだろうか。魔法鞄という言葉は何度か聞いたことはあるが、現物は見たことない気がする。今ザッハが身に着けている巾着みたいな形なのだろうか。

「それ、魔法鞄なのか?」

「あ?これのことか?」

 そう言い、ザッハは、俺が指差した巾着の一つを手に取る。

「それだよ、それ」

「これはただの巾着だ。それで、」

 ザッハは別の巾着を手に取る。

「これが魔法鞄を元に作られた巾着、【魔法巾着】だ」

 俺に見せるような形で、ザッハの言う【魔法巾着】を見せてきた。

「へぇ~」

 見た目、単なる巾着と変わらないな。これに何か魔法を施し、収納スペースを拡大しているのか。見たところ、原理が全く分からないな。それを言うなら、俺のこのアイテムブレスレットも、詳細な原理なんて理解していないのだが。

「おっと」

 どうやら魔法巾着に集中し過ぎて、周囲の視線に気付かなかったみたいだ。みんな、俺を蔑んではいないみたいだが、

“早くしろよ”

 なんて思ってそうだ。

「悪い。それじゃあ行こうか」

 俺の掛け声で、

「「「はい」」」

 みんなが出発する。


 朝から歩き始めて数時間。ウォーキングに疲れた俺は休憩を提案し、池の近くで休憩していた。

「ふー」

 それにしても、みんな雑談しながらよく数時間も歩き続けられるな。雑談しているから警戒していないのか、なんて思っていたらとんでもない。

「邪魔です」

 ガサガサと動いた草むらを、クロミルが切った。すると、ゴブリンが倒れていた。倒れていたゴブリンの体に真新しい切り傷があったことから、クロミルがこのゴブリンを切りつけたのだろう。だが、これだけ言わせてほしい。

 どうやって切ったの?

 見たところ、クロミルが刀の類を手にしたところなんて一切見えなかった。俺の節穴の可能性も捨てがたいところだが、もしかして、一瞬で刀みたいなものをアイテムブレスレットから取り出してゴブリンを切りつけ、一瞬でアイテムブレスレットにしまったのか?

(とんだ早業だな)

 とても俺には真似できない業だ。流石はクロミル。色々と規格外だな。地球ではボッチだった俺もある意味規格外だけどな。・・・なんだか急に人肌が恋しくなった。誰か俺の体を温めて欲しい。

 そんなことはさておき、休憩の際、軽食をみんなでとることになった。軽食で何を食べるのか聞いたところ、

「ホットケーキ!ホットケーキがいい!!」

 ルリの強い希望により、ホットケーキとなった。新規で作るのは、時間がかかるうえ、いつ魔獣が襲い掛かってくるか分からないので、既に作ってあるホットケーキを出すことにした。

「うわーい♪」

「…これは何度食べても美味♪」

 ホットケーキを食べる事にしたら、みんな喜んでくれた。特にルリとイブが。食べ過ぎで動けなくなる、なんて事態にはならないでほしいが、大丈夫だろうか。

「美味しー♪」

「ですね。ホットケーキはいくら食べても食べ飽きないです」

 他の人達も嬉しそうに食べているな。このホットケーキ、何度食べても飽きないのか。毎日食べているとさすがに飽きると思ったのだが、違うのか?まぁいい。

「ん?ザッハお兄ちゃんは何食べているの―?」

 ルリがザッハに話しかける。そんな二人のやりとりに全員が耳を傾ける。

「あ?これは・・・弁当だ」

「へぇ~。ザッハお兄ちゃん、お弁当なんて作るんだ~」

 なんか、ルリが驚きの声をあげていた。俺も少しビックリしている。ザッハって、料理なんてするんだな。いや、それもそうか。ザッハはおそらく、長期間独りで生き抜いてきたんだ。生活するにも料理技術が必須だったのだろう。

「俺の妹達が俺のために作ってくれた、最高の弁当だ」

 …ちょっと嫌味に聞こえたのは気のせいか?

「これ、ヨヨちゃん達が作ったの!?食べた~い!」

 ホットケーキを何枚も食べたのに、人の弁当を欲しがるとは。とんだ強欲だな。

「悪いな。この弁当は俺の弁当だ。ほしければ、後で妹達に頼んでくれ」

 そう言いながら、ザッハは自身の弁当を食べきった。

「うぅ。いいな~」

 ルリは悔しそうにザッハを見つめていた。なんだかザッハが少し大人げないように見えるのは気のせいだな。でも、ザッハの弁当をどうしようとザッハの勝手だ。それに、ルリは食べ過ぎだからな。一応言っておくか。

「ルリ、食べすぎ注意だぞ?」

「う。わ、分かったよ・・・」

 そんな目に見えてガッカリしないでくれよ。俺が悪いみたいじゃないか。

「後で、みなさんでお弁当を作って、みんなで食べましょうね?」

 モミジが話に参加してくれ、ルリを慰めてくれた。モミジの純粋な言葉って、心に染み渡るんだよな。嘘偽りなく本当に心配してくれているし、ありがたい。

「その時は、ヨヨちゃん達も誘っていい?」

「もちろんですよ」

 ルリの質問に、モミジは一切の迷いなく返答した。

「やった♪それじゃあこんな依頼、さっさとおわらせよーっと」

 ルリはさっさと依頼を終わらせようと、足早に移動しようとする。

「ほら。お姉ちゃん達もいつまでも休憩していないで、さっさと行こー」

 おー、とかけごえを言いながら、ルリは前進した。あそこまで声を上げていると、周囲に潜んでいるかもしれない魔獣に奇襲されるぞ?

(でも、大丈夫か)

 今もルリの周りには、イブやリーフ、クロミル達がついている。問題ないだろう。

「なんか、悪いな」

 俺はザッハに謝罪する。

「気にするな。それに、妹達も喜ぶさ」

 そう言い、ザッハはルリの後を追うように進んでいった。

(さて、俺も行くか)

 俺が歩みを進め始めると、逆にルリの歩みが遅くなり、止まった。

「ん?どうしたんだ?」

 心なしか、ルリの表情が険しくなっている気がする。あれ?クロミルもか?

「奥に、何か…いる?」

「何故に疑問形?」

「私も何か感じます。ですが、何かまでは分かりません」

 ルリだけでなく、クロミルも、か。となると、デタラメを言っている可能性は低いな。俺も本気で索敵するか。

(【魔力感知】!)

 すると、俺達の進行方向が感知出来なかった。

(は?)

 何か、霧が発生しているのか不具合が発生しているのかどうかは不明だが、魔力を感知出来なかった。

(どういうことだ?)

 俺はもう一度、【魔力感知】を行う。だが、結果は同じだった。

「ご主人様、如何されますか?」

 クロミルが俺に今後の動きを聞いてきた。そういえば、クロミルは何かを感じたんだよな。

「クロミルはこの森の奥に何を感じたのか、出来るだけ詳細に聞かせてくれないか?」

「分かりました。といっても、ほとんど何も感じられず、2つの気配しか感じられませんでした」

「2つの気配、か」

 もしかすると、俺の【魔力感知】をその2人が妨害したのか?そんなことが出来るかどうかは不明だ。だが、この仮定が正しければ納得いく。2つの気配の正体についてもっと探りたいところだな。

「ルリはどうだ?」

「う~ん・・・。なんか、立ち止まっている?みたい?」

「なるほど」

 よく分からん。立ち止まっているということは、立って何かしているのか?そもそも、2つの気配は人型なのか?

「こんな森の奥に人が住んでいるのか?」

 俺はザッハに質問する。

「まさか。そんなことは聞いたことない」

「そうか」

 となると、住んでいないが、ここに来た何かがここで何かしている、という可能性が高そうだ。詳細なことは何一つ分からんが。

「そもそも、この奥には何もなかったはずだ」

「ザッハさんの言う通りです」

 ここでリーフは地図を広げ、ある地点を指で指し示す。

「ここが現在地で、ここが目的地ですが、何もありません」

「確かに・・・」

 となると、その2つの気配は何をしているんだ?

「…まさか」

「ん?どうした、イブ?」

「…ん。何でもない」

「何かあるんでしょう?」

 イブが何もないと言った事に対し、ルリは全てを見抜いたかのように言葉を発した。

「…やはり、ルリには隠しきれないみたい」

 イブは何か諦めたように息を吐く。

「それでイブ、何か分かったのか?」

「…分かったわけじゃない。ただ、想像しただけ」

「想像?一体何を想像したんだ?」

 自分の輝かしいハーレムライフとかか?・・・そんな訳ないか。そんなことを考えているのは俺ぐらいか。

「…何もなく、誰も住んでいない土地」

 ん?急にイブは何を言い始めたんだ?

「…そして、ギルドで見た物。これらを結び付けると、ある可能性が考え着いた」

「ある可能性?」

「は!?ま、まさか、そんなことが!!??」

 ここでリーフは何か思いついたようだ。イブが無言で頷いているところを見ると、リーフとイブの思考パターンは似ているのかもしれない。

「…森の奥は、魔道具の生産場になっているかもしれない」

「魔道具の、生産場?魔道具ってなんの・・・まさか!?」

「…おそらく、レンカみたいなゴーレム型の魔道具を生産するために、この地に足を運んだ」

「「「・・・」」」

 イブの話に、俺達全員が静かに聴く。イブの話は推論の域を出ないが、納得は出来る。言われてみれば、ここで何をしてもばれなさそうだ。

「でも、何のために生産するのです?」

 ここでクリムがイブに質問する。確かにそれは気になるな。

「…現時点では分からない。けど、」

「けど?」

「…答えはきっと、この奥にある」

 そう言い、イブは森の奥を見つめる。

「そうですね。この森の奥で何が行われているのか、きちんと調査しないとなりません」

 リーフがイブの意見に賛同する。

「そうだな」

 2つの気配がなんなのかは分からないが、やることは一つ。

 それは、森の奥に向かう事だ。森の奥に向かい、何が起こっているのか調査する。出来れば、森の奥に泥棒がいてくれると嬉しいが。

(まさか?)

 2つの気配というのは、泥棒の事か!?確証はないが、出来れば殺さずに無力化し、連れ帰る必要がありそうだ。

(ここからはいつも以上に警戒する必要がありそうだ)

 俺は軽く柔軟し、神色剣を構える。

 そして俺は、森の奥に向けて一歩、足を動かす。

「!!!???」

 瞬間、二つの脅威が俺の脳に襲い掛かってきた。物理的には襲われていないのだが、威嚇?ぽい何かにあてられたようだ。

(この感じ、まさか!!??)

 俺はこの感じを複数回、経験したことがあった。だが、信じたくなかった。

(何でここにいるんだよ!!??)

 もし、この直感が当たっていたら最悪だ。

「ん?どうした?」

 俺が止まっていると、ザッハが俺に声をかけてきた。俺は、まさかの事態に脳が追いついておらず、静止していた。

「?お兄、ちゃん?」

 ルリが気にし始め、他の人達も俺の事を気にし始めた。そして、俺はようやくこの事態を飲み込み、やっと出た言葉がこれだった。

「お前ら全員、すぐにここから逃げて、首都に戻れ」

次回予告

『4-3-18(第348話) 2つの気配の正体』

 2つの気配に彩人はあることを直感で判断する。彩人は他の者達を口汚くも首都に戻らせ、直感が外れていることを静かに願いながら森の奥へ向かう。


 こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。

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