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色を司りし者  作者: 彩 豊
第三章 魔道具であるレンカの黄朽葉な心
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4-3-16(第346話) 最高ランク冒険者の兄と現国王の妹

 夜。ザッハは昼の出来事を現国王でありながら妹でもあるヤヤに話した。

「・・・というわけで俺は明日、この首都を出て森の奥に行くつもりだ」

「分かったんヤよ」

「その間、どうしてもお前に頼ってしまうがヤヤを、ヤヤ達をよろしく頼むぞ?」

 ザッハはそう言い、ファーリの頭を優しく撫でる。

「ニャー♪」

 ザッハの撫で心地がいいのか、気持ちよさそうな声でファーリが鳴く。

「それで明日、今騒がしている泥棒を捕まえる事が出来るかもしれない、ということ?」

「ああ。おそらく、だけどな」

「分かったんヤよ。明日、気をつけるんヤよ」

「ああ。まだ死ぬわけにはいかないからな」

 そんな会話をしていると、

「あー!?ザッハお兄ちゃんだー!」

 一つの影が、ザッハに急接近する。そして、ザッハに抱きつく。

「ヨヨか」

「うん!」

 その影の正体はヨヨであった。そして、ヨヨの後を追うかのように、もう一つの影が現れる。

「どうしたの?」

「おう、ユユか」

 その影の正体はユユである。ザッハは、ユユが若干離れた位置にいるので、手招きでこちらに来るよう促す。ユユはザッハの手招きに従い、ザッハの近くに来る。

「今日も二人ともお疲れ様。相変わらず大繁盛みたいで、俺は嬉しいぞ」

 二人を労うかのように、ザッハは頭を撫で、癒しを与える。

「そんなことはない、ユ♪」

「ありがとー、ザッハお兄ちゃん♪」

 ユユは照れながらもザッハの行動に感謝し、ヨヨは素直に感謝する。

「それで、アヤトお兄ちゃんと同じ依頼をしているみたいだけど、どう?」

「どうって、何がだ?」

「アヤトお兄ちゃん、ザッハお兄ちゃんと同じくらい、素敵で優しい人だってことが分かったんだと思うんヤよ」

「そ、そうか」

 ザッハは戸惑いながらもヤヤの言葉を肯定する。ザッハはこの時、アヤトの今日の行動を振り返っていた。

 今日アヤトは、緑魔法で足場を作り、崖を登り、洞窟内を探索する。それらの行いに、優しさが垣間見えたかどうかは、ザッハ視点からすれば微妙なところであった。だから、ヤヤの言葉にはっきりとした肯定が出来なかったのである。

「いざという時は、本当に頼りになるお兄ちゃんヤからね。あの時は本当に助かったよ。ね?」

「?あの時ってどの時だ?」

 ヤヤの言うあの時が分からず、ザッハは尋ねる。

「そんなの、アヤトお兄ちゃんが商王からヤヤ達を助けてくれた時に決まっているんヤよ!」

 そう言い、ヤヤは笑顔をザッハに向ける。

「ヤヤお姉ちゃん、ザッハお兄ちゃんも助けてくれたよ?」

「もちろん忘れていないんヤよ!」

「・・・ああ、あの時か」

 ザッハはヤヤとユユの言葉を聞いて思い出す。その場面は、つい最近の出来事なのだが、ザッハにとって遠い昔のように感じていた。それはきっと、最近の出来事があまりにも濃かったためだろう。

「確かにあの時は、俺だけじゃああの女を止める事は出来なかったな。そういう意味では、あいつに助けられたな」

「でしょ!?アヤトお兄ちゃんはザッハお兄ちゃんに勝っちゃうくらい強いんだから!」

「アヤトお兄ちゃんは最強」

「そうだヨ!」

「・・・ま、あいつが強いことは、戦った俺もよく知っているし、あいつより弱いことは認める」

 ザッハは、アヤトと闘っていた時を思い出す。闘っている時のアヤトの姿はザッハから見て必死さを感じていた。まるで、重い決意を背負っているような重さを。その決意に、ザッハは心当たりがあった。それは、自分の手でなんとしてでも妹を見つけ出そうとした決意である。ザッハは、アヤトから感じた決意と、自分が背負っていた決意を重ねる。

「うん!だから、アヤトお兄ちゃんがどうしようもなくなったら、ザッハお兄ちゃんが支援してあげてね?」

「あいつより弱い俺がか?」

「うん!だってアヤトお兄ちゃん、どこか抜けているし、いざという時に無理し過ぎる時があるんだもの」

「抜けている・・・無理し過ぎ・・・」

 ザッハは、自分にも当てはまるのではないかと考える。

「後、明日はちゃんと私達に顔を見せて?」

「?どうしてだ?」

「渡したい物があるからヤよ。ね?」

 そう言い、ヤヤはユユとヨヨを見る。

「ユ」

「そうだヨ!それはね・・・、」

「ああ!?言っちゃ駄目よ、ヨヨ!」

「分かったヨ」

「?」


 そして1日経過。ザッハは前日言われた通り、ヤヤ達の前に姿を見せる。

「それで、渡したい物って何だ?」

「これヤよ!」

 そう言い、ヤヤを中心に、ヤヤだけでなくユユ、ヨヨの計3人である包みを取り出し、ザッハの手に置く。

「これは?」

「お弁当!」

「お弁当?」

「うん!」

 ザッハはさっき渡された包みを見る。

「みんなで作った自信作なんヤよ!」

「美味しく出来ていると思うから、期待してほしいユ」

「あのね、あのねー。ヨヨも手伝ったんだヨー!」

 渡されたお弁当は、ザッハの妹であるヤヤ達お手製のお弁当。ザッハにとっては、どんな高級料理よりも美味しい品々であること間違いなしである。少なくともザッハはそう考えている。

「ありがとな」

 ザッハは短く感謝の言葉を言い、包みをしまう。

「それじゃあ、行ってくる」

 ザッハはヤヤ達に背を向ける。

「いってらっしゃい、ザッハお兄ちゃん♪」

 ヤヤの言葉に、

「「いってらっしゃい♪♪」」

 ユユとヨヨも言葉を重ねる。

「ああ」

 妹達3人は見送り、ザッハは依頼遂行のために出発する。

次回予告

『4-3-17(第347話) 森の奥へ』

 日をまたぎ、彩人達はザッハと合流し、共に森の奥へ移動し始める。そこで彩人達は2つの気配を感じる。その2つの気配に彩人は、あることを全員に命令する。


 こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。

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