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色を司りし者  作者: 彩 豊
第三章 魔道具であるレンカの黄朽葉な心
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4-3-15(第345話) 調査結果の報告

 俺達は崖を安全に下り、首都に戻った。崖を降りている最中、

「お前ら、本当に色々出来るよな」

 若干、ザッハが呆れたように言ってきた。こいつ、来る時も言っていたよな。俺が何でも出来ていたら、地球での友達作りに苦労していなかったと思う。ザッハの言葉で地球の生活を思い出しつつも、俺は首都へ足を進めていった。

「えっへっへ~♪これでしばらく、この美味しいキノコが食べられる~♪」

 ルリは、あそこでしか採れない茸が大層気に入ったらしく、道中嬉しそうにしていた。茸なんて食べ物、好みが分かれそうだし、嫌いな人が多い食べ物の一つだろう。その食べ物を好んで食べているのだ。下手な突っ込みは辞めておこう。


 俺達が首都に戻り、ギルド内部に入っていった。

「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ・・・、」

 なんか、クリムが激しく息を切らしていた。理由は分からないが、何か激しい運動でもしていたのだろう。何をそんなに激しく運動していたのだろうか。

「あ。アヤトにルリちゃん達も」

 激しく息を切らしつつ、クリムは俺達の存在に気付いた。そして、ギルドの奥の部屋に案内してくれた。案内してくれた部屋は、さっき俺達が集合していた部屋である。

「…あ、戻ってきた」

「おかえりなさい。成果はどうですか?」

 イブとリーフがクリムに質問してきた。

「成果は、ないです・・・」

 未だに息は切れているようだが、だいぶ呼吸は整っているようだ。

「…そう」

「もしかしたら、人の仕業ではないのかもしれませんね」

「ん?どういうことだ?」

 俺はリーフの発言に質問する。

「え、ああ。そのことも踏まえて話しますので、情報共有しますか?」

「そうだな。お互いの情報を晒すとするか」

 リーフの提案に俺は賛成し、席に座る。俺が席に座ると、他の人達も席に座り始める。

「まずはアヤト達から報告、でよろしいでしょうか?」

「分かった。俺達の方は・・・、」

 俺達の成果に関して話した。ルリとモミジには道中、多少話していたので、2人は初めて聞いたわけではない。それ故、レンカやザッハ同様、聞き流しているような反応を示していた。それに対し、リーフ達は驚いていた。特に、俺達が持ってきたアイテムレーダーに関して、である。

「…こんな魔道具、見たことが無い」

「この魔道具、首都で見たことありましたっけ?」

「魔道具を探す魔道具、ですか」

「かなり長い時を生きていると自負しているが、この魔道具は見たことが無い」

 イブ、リーフ、クリムだけでなく、ギルドマスターである爺さんも驚いていた。これ、そんなに珍しい魔道具なのか?その割には、ザッハのリアクションが薄かったような気がするが、俺の気のせいか?まぁいいか。

「・・・これで、俺達が得た情報は全て言ったぞ」

 確認のため、俺はザッハ、レンカを見る。ザッハ、レンカは無言で頷いてくれた。俺の説明で問題なしということだろう。良かった。

「それじゃあ次は私達ですね」

「…ん」

「ああ。よろしく頼む」

 そして、リーフ達の報告が始まった。

「まずですが、先日レンカが見せてくれたゴーレム型の魔道具を作ることが出来る職人は、この国にはいないみたいです」

「・・・」

 俺は黙ってリーフ達の報告を聞く。

「…だから私達は、別の可能性を考慮した」

「別の可能性?」

 俺は別の可能性、という言葉が気になってしまったので、つい声に出して質問してしまう。

「はい。それは、職人ではなく、別の者が作った可能性です」

「別の者?こんな見たこともない魔道具を作る奴なんてそうそう・・・まさか!?」

「?どういうことだ?」

 ザッハには何か心当たりがあったらしく、何か驚いている。

「…それは、人ではなく、魔獣が作った可能性」

 イブが答えを述べた。

「魔獣が?」

 魔獣が魔道具を作るなんて想像出来ないのだが?俺が疑問を顔に浮かべていると、リーフが俺の考えを察してか、説明し始める。

「ええ。ほとんどの魔獣が魔道具を作ることは不可能ですが、魔道具を作ることが出来る魔獣はいます」

「そんな魔獣、いるのか?」

「…ん。アヤトは知らない?」

「そんな魔獣、俺は知らないなぁ」

 俺は今まで倒してきた魔獣を思い出す。だが、俺が今まで倒してきた魔獣で、魔道具を作れそうな魔獣はいなさそうだ。

(あ、いた。)

 心当たりはあった。

 それは、メイキンジャー・ヌルとパラサイダー・ヌルだ。あいつらなら魔道具を作ることが出来るかもしれない。あくまで可能性の話なので、確実に作ることが出来るかどうかは不明である。

「魔道具を作ることが出来る魔獣は主に2種類」

「2種類?」

「ええ。1種類目は、度重なる進化を重ね、知識を得た魔獣。そしてもう1種類は、【賢猿】ですね」

「けん、えん?」

 何それ?

「賢猿。生まれた時から魔道具を作る構想が頭の中に浮かんでいるほど、魔道具製作に関して人を超越していると言われています」

「へぇ」

 そんな魔獣がいるんだな。

「そして、賢猿が進化すると【デベロッパー】という魔獣になります」

「デベロッパー?」

 また俺の知らない魔獣だ。リーフは本当に色んな魔獣を知っているな。単に俺が無知なだけかもしれないが。

「はい。賢猿以上に魔道具製作に長けた魔獣です」

「賢猿、以上?」

 賢猿でも、魔道具製作に関して人を超えているんだろ?それ以上とかやばくね?

「デベロッパーなら、職人が作れない魔道具を作っている、なんて話はザラにあります」

 こういう魔道具、とかね。と、リーフはアイテムレーダーを指差す。

「つまり、この魔道具を作った奴は・・・、」

「…もしかしたら、デベロッパーの可能性もある、ということ」

「・・・レンカはこの2人の考えをどう思っているんだ?」

 俺は2人の話を整理しながら、レンカに話を振る。

「考え、ですか?」

「ああ。お前の創造主がデベロッパーの可能性は無いのか?」

「・・・分かりません」

「そっか」

 分からないならそれ以上の追及は控えるか。

「ここまでの話をまとめますと、私達は、今まで泥棒してきた犯人が魔獣、賢猿かデベロッパーが製作した魔道具によるものではないかと考えています」

「・・・」

 現段階では、確かに推測の域を超える事は出来ない。けど、どこか納得している自分がいる。黄の国には、先日見せてくれたゴーレム型の魔道具を作ることが出来る職人がいない。そうであれば魔獣がゴーレム型の魔道具を作り、この事件を引き起こした。うん、辻褄は合いそうだ。

 そういえば、職人って人族限定なのだろうか。魔獣の職人はいないという認識でいいよな?大丈夫だよな?大丈夫と思う事にしよう。

「次の報告をしてもよろしいでしょうか?」

「次の?」

 リーフ達はまだ何か報告することがあるのか。この短時間でよく調べたものだ。

「ええ。そのためにちょっと地図を広げますね」

「…ん。これ」

 そう言いながら、イブは何やら地図を広げた。この地図は一体何を描いているのだろうか?この首都の地形を把握していないから分からん。

「それで、この地図がどうかしたのか?」

「はい。さきほどアヤト達には、あの洞窟に行きましたよね?」

「ああ」

 俺、レンカ、ルリ、モミジ、ザッハの計5人で行ったな。

「実はあの洞窟、ずいぶん昔に移動したみたいなんです」

「移動した?そうなのか?」

 俺はザッハに確認のため、視線を移動する。

「そうなのか?昔からあの位置にあるって有名なのだが?」

「え?」

 どういうことだ?

「ザッハさんが知らないのも無理ありません。何せ移動したのは数百年前ですから」

 す、数百年前だと!?どうやってその数値を導き出したのだろうか。地層か?地層を見て判断したのか!?だとしたらすごいな。地層なんて、中学の教科書以来見ていないかもしれないな。

「…これが現在の地図。そして、あの洞窟が移動する前の地図がこれ」

 イブは2枚の地図をテーブル上に広げる。1枚目と2枚目の地図で違うところは、地図がかかれている紙のボロボロ具合だ。2枚目にかかれている地図の方がボロボロで、色がにじんでいる。

「…ここが、さっきアヤト達が行った洞窟」

 そう言いながら、イブは1枚目の地図のある場所を指差す。イブが差指差す場所に、洞窟は位置しているのだろう。

「…そしてここが同じ場所」

 次にイブは、ボロボロの地図のある場所を指す。2枚の地図を見比べてみると、確かに地形の変化が見られる。

 ボロボロの方の地図には何も描かれていない。だが、比較的新しい地図の方には崖や、崖の上にある洞窟が描かれていた。

「おそらく、ここの滝や洞窟が移動したのだと思います」

 そうリーフが言いながら、ボロイ地図のある場所を指差す。

「ここは?」

「…さっきアヤト達が行った洞窟よりも森の奥」

 俺の質問に、イブが答えてくれた。

「つまり、ここに何かあるということか?」

「…分からないけど、おそらく」

 イブが答えを断言しないのは、推論の域を出ていないからだろう。確かな証拠を元に話していないから断言出来ないという事かもしれないな。

「それじゃあここに行けば、何かあるかもしれないってこと~?」

 ルリが話に割り込んでくる。

「多分、だけどな」

 俺は断言出来ないけど、確率論で話す。これで言って何もなくても文句を言わないで欲しい。

「ふ~ん。じゃあ行こうよ、そこに!」

 そう言い、ルリは提案する。

「・・・ん?」

 俺はアイテムレーダーと地図を見比べ、あることに気付く。

「?どうかしたのですか、アルジン?」

 俺の変な声を聞いたのか、レンカが俺に声をかける。

「あ、ああ。俺の見間違えかもしれないかもしれないから、これを見ながら聞いて欲しい」

 俺はアイテムレーダーをみんなに見せながら話を始める。

「さっきイブ達が示したこの場所、アイテムレーダーが示している6つの点の位置と一致していないか?」

 俺はさっきイブ達が指し示した場所と、アイテムレーダーの6つの点の場所を示す。俺の目線だと、差している場所が一致しているように見える。もしかしたら気のせいかもしれないので、みんなに聞く。

「・・・確かに、かなり酷似していますね」

「というか、同じ場所を指しているのでは?」

「…ん。確かに」

「アルジン、もしかしてここにいると思っているのですか?」

「あくまで多分、だけどな」

 何故あの洞窟を移動させたのかは分からない。だが、あの洞窟を移動させ、洞窟がなくなった場所に何かしら構えているのかもしれないな。例えば家、とか。

「なるほど。では後日、ここに行ってみますか?」

「そうだな。ここにいけば何かあるかもしれないな」

 もしかしたら家だけでなく、犯人の姿も見られるかもしれない。

(それにしても犯人、か)

 どんなやつなのだろうか。森の奥に住んでいるのだとすれば、世捨て人の可能性がありそうだな。もしくは魔獣、とか。リーフの情報を合わせると、犯人が魔獣、という線が濃厚だと思う。森の奥に住んでいるという前提なのだが。

「それじゃあ今日準備をして、明日、こちらに向かいますか?」

 再びリーフが提案する。

「賛成だ」

 俺はリーフの提案を拒否する理由もないので賛成する。

「…ん。私も行く」

「私も行きます!犯人、捕まえちゃいますよ!」

「ルリもルリもー」

「お、お邪魔でなければ私も行きます!」

「ご主人様の危険を取り除くため、私もご一緒させていただきます」

「アルジン!もちろんレンカもいかせていただきますよ!」

「そ、そうか・・・」

 みんな、付いてきてくれるのか。これは心強いな。

「・・・ちなみに、俺ももちろん付いて行くからな?」

「・・・そうか」

 ザッハの存在、忘れていたわ。

「・・・一応聞いておくが、俺の事、忘れていなかっただろうな?」

「も、もちろん忘れていなかったぞ?」

 ザッハ、意外と鋭いな。もしかして顔に出ていたのか?次からは出来るだけポーカーフェイスを意識するとしよう。

「それじゃあ明日、ギルド前で集合して、この場所に向かいましょう」

「分かった。ザッハはそれでいいか?」

「ああ、問題ない」

 それじゃあ

「フォッフォッフォ。これで事件が明日解決するのか。期待しているぞ、ザッハ?」

 そういい、爺さんはザッハの肩を軽くたたく。そういえば、このギルドマスターもこの部屋にいたんだったな。すっかり忘れていたわ。

(これで明日、事件が解決すればいいけどな)

 この爺さんの言う通り、明日解決すると嬉しいな。まだこの事件の犯人も、この事件の動機も不明なんだが、本当に大丈夫なのだろうか。いや、大丈夫だと思うしかないか。

「頑張るか」

 依頼達成のため、出来るだけ安全安心に行動するとしよう。

 そして俺達は一時退散し、明日のために英気を養っていった。

次回予告

『4-3-16(第346話) 最高ランク冒険者の兄と現国王の妹』

 次に向かう場所を決めた彩人達は、その場所へ向かう英気を養うため、一時解散する。その時、最高ランク冒険者のザッハは、現国王の妹、ヤヤのところへ向かう。


 こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。

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