4-3-13(第343話) 洞窟内部の【条件結界】
洞窟の中に入ってみたところ、前とそこまで変わらなかった。前と同じギミックだったので、難なくクリア出来た。
そして、宝が眠っていた部屋に辿り着いた。
「へぇー。私が守っていた場所はこんな風になっていたのですね」
「レンカ、お前もしかしなくても、ここに来るのは初めてなのか?」
「はい」
もしかしてこいつ、どんなものを守っているのか知らないで今まで守ってきたのか?俺だったら、どんなものを守っているのか気になって、確認するけどな。
「さて、と」
「ここが、この洞窟の最深部か?」
「ああ」
ザッハの問いに俺は答える。
「それじゃあここを調査すれば、」
「何か見つかるかも、ということだ。それじゃあ二人とも、調査を開始するぞ」
「はい」
「おう」
こうして俺達3人は、調査を始めた。
調査した結果、
「何にも見つかりませんね、アルジン」
「だな」
「う~ん・・・」
何も見つからなかった。なんで何も無いんだ?そりゃあ何もないから何もないだろうが、ここには本当に何も無いのか?なんか見落としている気がする。
「・・・」
「ん?ザッハ、どうかしたのか?」
ふとザッハを見てみると、ザッハは壁のある一点を見つめていた。
「いや、なんかここがおかしい気がしてな」
と、ザッハは壁のある一点を指差す。俺は、ザッハが指差している箇所を注視する。
・・・。
「何か、あるのか?」
俺の目から見てみても、何もないように見える。俺の気のせいか?
「ああ。確かにある」
俺はないように見えるのだが、ザッハは何か見えるらしい。ザッハの目には霊の類でも見えているのではないだろうか。霊なんて俺も見たことないぞ?
「レンカは何か見えるか?」
俺はザッハの言い分だけじゃ信じようがないのでレンカに聞く。
「はい。確かに何かあるようです」
どうやら見えないのは俺だけらしい。俺だけ仲間はずれなのか。なんか嫌だなぁ。それに、俺だけ見えないのはおかしい。となると、俺がもっと注視すれば見えてくるのではないか?そう考えた俺は、さきほどザッハが指差した個所をさらに注視する。
みて、観て、見て、視る。
すると、何か・・・モヤ?みたいなものが見えてきた。これが、二人が見えていたもの、なのか?さらに注視すると、そのモヤが薄い板状に見えてきた。
(もしかして、スマートな携帯か?)
なんて思ったが、そんなわけがないだろう。ボタンも見当たらないし。どうやら、このよく分からないものに魔力が集中しているようだ。集中しているといっても、周囲に蔓延している魔力量と大して変わらないように見える。これは注視してもなかなか分からないな。まるで、森の中に生えている指定の木を捜せと言っているような物じゃないか?めっちゃムズ!よく平然と見つけられたものだ。こいつらに探し物を頼めばすぐに見つかるんじゃないか、なんて思ってしまう。
「これのことか?」
俺はやっと見えたものを指差す。
「ああ」
どうやらこれのことらしい。それにしても、
「これ、何?」
「・・・さぁ?何だろうな?」
「おい」
ザッハに聞いても、目ぼしい情報が出てこなかった。次はレンカだな。
「レンカは何か心当たりあるか?」
「・・・おそらくですが、【結界】の類かと」
「【結界】だと?」
俺が張っている【結界】とはずいぶん違う気がするな。俺の気のせいか?
「ですが、【結界】は【結界】でも、【条件結界】が張られているようです」
「なに!?じょ、【条件結界】だと!!??」
レンカの発言にザッハが驚いていた。
「【条件、結界】?【結界】じゃないのか?」
「はい、違います」
レンカによると違うらしい。俺は確認のため、ザッハを見る。
「俺は昔、師匠に教えてもらったことがある」
どうやら知らないのは俺だけらしい。俺は、ボッチの才能に秀でているらしい。
「それで、【条件結界】って何だ?」
俺は二人から【条件結界】について聞くことにした。
「つまり、【結界】を張る時に条件を定めることで、【結界】がより強固になるということか?」
「ああ。【条件結界】を自由に使いこなせるようになると、【条件結界】を張る時に定める条件を、自由に設定出来るらしい」
「・・・【条件結界】、やばくね?」
条件を自由に定めることが出来たら、無理な条件を設定すれば絶対に割られることがなくなるじゃないか。
「ああ。だが、条件によって【条件結界】に必要な魔力量が変わってくるらしいぞ」
「へぇ~。それで条件を無視して力ずくでぶち壊そうにも、かなり強度があるから難しいと」
「そうです、アルジン。【条件結界】を破壊するなら、【条件結界】を展開する時に設定された条件を満たすことをオススメします」
「満たすと、息を吹きかけるだけで【条件結界】を破れるからか?」
「はい」
「へぇ~」
そんな魔法があるんだな。知らなかったな。
「それで、その【条件結界】が今、目の前に設置されていると」
「ああ」
「それじゃあ、この【条件結界】に設定されている条件って何か分かるか?」
俺は二人に質問する。
「「・・・」」
二人に静の時間が流れ始めた。この【条件結界】を楽に破壊するためには、この【条件結界】の条件を満たさないとだよな。となると、条件がなんなのか把握しなくてはならない状態で・・・。
「もしかして分からない、とか?」
俺はまさかの事態を口にする。そうなると、この【条件結界】を力ずくで壊すしかなくなる。それは面倒くさそうだな。
「・・・」
ザッハは無言で俺を見た後、レンカを見た。どうやら、ザッハは望み薄のようだ。ここはレンカに期待だな。
「・・・私も詳しくは分からないです」
「詳しくは?」
ということは、おおよそであれば分かる、という事じゃないのか?
「詳しくなくてもいいから、分かった範囲で教えてくれ」
「分かりました」
そう言い、レンカは改めて【条件結界】を注視する。
「・・・どうやら、何かに適性があれば、この【条件結界】に定められている条件を満たすことが出来そうです」
「何かに適性?何かって何だ?」
「さぁ?そこが分かりませんでした」
なるほど。そこが分からなかったのか。
それにしても、何かに適性があることを条件としているのか。
適性、か。
「もしかして、色魔法のことじゃないのか?」
「色魔法?」
「ああ。色魔法を使うには、魔力だけじゃなく、適性の有無も必要だろう?例えば、赤魔法を使うためには、魔力だけじゃなく、赤魔法に適性がある必要がある、とかな」
「・・・試してみる価値はありそうだ」
ザッハは納得してくれたらしい。
俺の話をきちんと聞いてくれてよかった。これで、
“は?てめぇみたいな陰キャボッチの話なんて誰が聞くんだよ?壁に話しかけていろよ。そうすれば壁とお友達になれるかもよ?”
なんてことを言われた暁には、俺はこの洞窟で一生孤独に過ごすところだったぞ。
「それじゃあ、誰からやる?」
正直、俺はこの【条件結界】に触りたくない。あまりも不気味だからな。
「それはやっぱ言い出しっぺからやるべきだろうな。な?」
ザッハがレンカに視線を送る。
「そ、そうですね」
どうやら俺が最初にこの【条件結界】に触れなくてならないらしい。ザッハの言い分も分からなくはない。けど、レンカまでザッハの意見に賛同するとは。ここは、
“私が一番に触らせていただきます!”
て、言ってくれてもいいじゃないか!
・・・まぁ、こんなところでグジグジ思っていても仕方がない。世の中は所詮、多数決主義だからな。ほんと、ボッチには生き辛い世の中だ。少数意見の尊重も少しはして欲しいものだ。そう思いながら、俺はゆっくり【条件結界】に自身の手を近づける。
そして、俺の指先が【条件結界】に触れた。
「「「!!!???」」」
その瞬間、【条件結界】が消滅した。
これってつまり、俺に何かしらの適性があり、この【条件結界】の条件を満たしていた、ということになるな。
「これってつまり・・・?」
「【条件結界】を突破したことになるな」
「さ、さすがはアルジンです!」
「そ、そうか?」
俺としては、まったく納得していないのだが?ただ指先が【条件結界】にふれただけなのに流石、なんて言われてもな。
「結局、さっきの【条件結界】は一体何だったんだ?」
「そりゃあお前、この先にある何かを守るために、誰かが設置したんだろうぜ」
「そして、この【条件結界】を設置したのはおそらく、」
「我が創造主。そう言いたいのですよね、アルジン?」
「ああ。だがこの先に一体何があるというんだ?」
そもそも、ここで行き止まりのはず。これ以上先に進みようがないはず。そう考えていると、【条件結界】で見えなくなっていた個所にボタンらしきものが見えた。
「もしかして、これを押せ、ということなのか?」
本来、周囲にいるレンカやザッハに意見を求めるべきだっただろうが、俺は見つけてすぐに押す。その直後、行き止まりだった壁が動き始め、道が出来た。
「「「!!!???」」」
俺達はまた驚いた。まさかこの洞窟にこんなギミックが仕掛けてあったとは。まったく気づかなかったわ。以前、ギミックがないか確認したはずなのにな。
「進むぞ」
俺の短いお誘いに、
「はい」
「ああ」
レンカとザッハは乗ってくれた。
さて、この先に一体何があるのやら。
次回予告
『4-3-14(第344話) アイテムレーダー』
彩人が以前気付かなった【条件結界】を彩人、ザッハ、レンカの3人は突破し、前回行かなかった洞窟の奥へ進む。
こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。
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