4-3-9(第339話) 【条件結界】
彩人達がいる首都から離れた森の奥。その森の奥のさらに奥を目指し、ある魔獣2匹は歩いていた。
「それにしても、あ奴は一体どこに拠点を構えているのでしょうね?」
「そうパラね。捜すこっちの身にもなってほしいパラ」
魔獣2匹は、愚痴をこぼしながらもある者を捜していた。
「やはり2手に分かれて捜した方が、効率が良かったんでしょうかね?」
「確かに効率は大事パラ。でも、効率を重視するあまり、何か見落としていたら意味無いパラよ?」
「それもそうですね」
2人で話をしながらも歩き続け、捜し続ける。
「もう一度、私達の魔力を周囲に展開してみますか?」
「・・・そうパラね。目だけだと、目に見えない何かを見落としている可能性もあるパラね」
「ではいきますよ」
「パラ」
そして2人は、自身を中心として、多くの魔力を周囲に展開する。
(この魔力は・・・違う)
(どうやら魔獣のようパラが、弱過ぎパラ。こいつは違うパラね)
2人はある魔獣を捜索し、
「「ん??」」
2人はある者の存在を知る。2人は同じタイミングで互いの顔を見る。
「どうやら、何か見つけたようですね」
「そうパラね。この魔力、僅かパラだが、あいつの魔力を感じるパラ」
「私も同感です。では、そこに行ってみますか」
「パラ」
そして2人は、目的の場所へ向かって行った。
「着きましたね」
「そうみたいパラ。けど、何も見えないパラね」
「ええ。ですが、」
2人の内の1人、メイキンジャー・ヌルが近くにあった小石を投げる。すると、何もないはずの空中で、何かが小石を跳ね返した。
「何かしらの罠が仕掛けられているようですね」
2人は、跳ね返された小石を見る。
「そうみたいパラね。それじゃあこの見えない何かについて調べるパラ」
「私は周囲にあ奴がいないか。もしくは、あ奴に関する情報があるかどうか調べてきましょう」
「了解パラ」
メイキンジャー・ヌルは周辺の調査を、もう1人であるパラサイザー・ヌルは見えない何かを調査し始めた。
調査してから幾ばくか経過した。2人は現状況を報告するために集まった。
「それでまず、どちらから報告しますか?」
「それじゃあそっちから報告するパラよ」
「分かりました」
「パラ」
パラサイダー・ヌルの返事で、メイキンジャー・ヌルは報告を始めていく。
「まず、周辺に目立った痕跡はありませんでした。が、何者かがこの周辺を何度も通っているらしく、何かの足跡が見られました。大きさからして、かなり小さな何かかと」
「もしかしてその足跡、今パラ達の足元にあるこの足跡と同じパラか?」
そう言い、パラサイダー・ヌルは下の地面を指差す。指差した先には、足跡らしい何かが地面に残っていた。
「ええ」
パラサイダー・ヌルの質問に、メイキンジャー。ヌルは肯定する。
「この足跡の主はどうやら、この奥から出入りしているようです。見えない何かに阻まれているようですが」
メイキンジャー・ヌルはここでパラサイダー・ヌルを見る。
「どうやらパラの調査結果が活きるみたいパラね」
「ええ。あなたの調査結果、期待しています」
「任せるパラ」
メイキンジャー・ヌルの調査結果報告が終わり、次はパラサイダー・ヌルの調査結果報告の番となった。
「どうやらここに展開されている不可視な何かはおそらく【結界】。その中でも最も強力な【条件結界】らしいパラ」
「【条件結界】ですか。それは実に厄介ですね」
「そうパラね」
【条件結界】。それは【結界】の1種である。条件を設定すれば、【結界】より強力である。だが、扱える者が非常に少なく、使い辛い魔法である。その理由は、条件の設定の仕方である。条件の設定によっては、自分が不利になる可能性があるからである。条件の設定も、この【条件結界】を展開することに慣れていれば、自由自在に条件を設定出来る。
「それで、条件がなんなのかは分かりましたか?」
「もちろん把握済みパラ。でも・・・、」
ここでパラサイダー・ヌルの顔色が優れなくなる。メイキンジャー・ヌルはその様子を理解する。
「どうしたのですか?私達であれば、大抵のことは余裕なのではありませんか?」
「【条件結界】で設定している条件というのが・・・、」
パラサイダー・ヌルは、一度声を口から吐き出したものの、吐き出したものを途中で止めるかのように口を塞ぐ。
「?どうしたのですか?早急に言ってくれませんと、主に顔向け出来ませんよ?」
「・・・分かったパラ。言うパラ」
パラサイダー・ヌルは、覚悟を決めたかのように口を開け、さきほど言い淀んでいたことをはっきりと告げる。
「【無魔法に適性を持つ者3人以上で結界に触れる。】これがあの【結界】の条件パラ」
「!?それはつまり・・・!?」
「そうパラ。あいつ、初めからパラ達だけでなく、主もここに来させる前提でこの【条件結界】を展開したようパラ」
「あ奴め!なんて面倒な事を!?」
メイキンジャー・ヌルだけでなく、パラサイダー・ヌルも頭を抱える。
「我らが把握している中で、無魔法に適性を持つ者なんていないはず!」
「パラ。主も含め、主の配下である我ら3人、計4人しかいないパラ」
「つまりあ奴は最初から、主が我ら2人を連れて来ること前提でこの【条件結界】を張ったという事、と」
「偏屈なあ奴ならあり得なくない話パラね」
「どうします?このことを我が主に伝え、主にも手伝ってもらうようお声をかけた方がよろしいのでしょうか?」
「・・・いや。主には、我ら2人であいつを連れて来るよう言いつけられた身。ここは私達2人でやるべきパラ」
「・・・そうですね。このくらいのことで我が主にお手を煩わせるなど、主に恥をかかせてしまいます」
「そうパラ」
こうして2人は、目の前の【条件結界】を突破しようと思考を行い、対策を練り始めた。
次回予告
『4-3-10(第340話) 泥棒逮捕の依頼』
彩人、ルリ、クロミルの3人は、ゴブリン討伐の依頼を完了し、ギルドで報告する。ギルドで報告した後、彩人は古い依頼書に目を向ける。
こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。
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