4-3-7(第337話) ばったり遭遇
ヤヤが新国王になり、その式典を終えてから一夜が済んだ。
「アルジン、本当にヤヤ殿達にあの義手を渡してしまってよかったのですか?」
「いいんだよ。俺が渡すより、実の妹達から受け取った方がいいだろう」
あれから俺達は、義手づくりに専念し、完成させることが出来た。式典前に完成させることが出来て、妹達の出世祝いという名目で渡してもよかったのだが、一つ、妙案を思いついたのだ。
男の俺が渡すより、実の妹が渡した方が嬉しいんじゃね?
そう考えた俺は、レンカに許可を得てからヤヤ達に義手を託し、ザッハに渡して欲しいと言ったのである。ヤヤ達は俺の願いを聞いてくれたので、俺はヤヤ達に義手を渡したのである。
「でもおそらくですが、ザッハ殿にばれると思いますよ?」
「まぁ、ばれるよな~」
ヤヤ達がいきなりザッハに義手を渡す。ザッハからすれば晴天の霹靂ものだろうが、疑問が浮かぶだろう。ヤヤ達が手にしている義手は、一体誰が作ったものだと。そして最近、俺がザッハに義手を作ってやると言ってしまった事。このことから推測されることは、間違いなく指金は俺だと断定されてしまう事だ。まぁザッハが、
「これ、お前が作ったんだよな?」
と、義手を見せられてもとぼけるとしよう。それはもう徹底的に、である。これなら大丈夫だろう。きっと、多分。
「まぁ、アルジンがそれでいいならいいですけどね」
レンカは、俺の意志が変わらないと分かると、これ以上言わなくなった。
「俺の決定に従ってくれてサンキューな」
俺は俺自身の急な計画変更にも対応してくれたレンカに感謝の言葉を贈る。
「いえいえ。私はアルジンの道具ですので。こちらこそ、私を使って下さりサンキュー、というものです」
「そういうものなのか?」
なんか、よく分からんな。
「そういうものなのです」
と、レンカは断言した。まぁ本人が断言しているならいっか。そんなことをレンカと話ながら道を歩いていると、
「あ」
「あ」
ザッハと出会ってしまった。
まずい。だが、さきほど考えた通り、徹底的に義手のことはとぼけることに決めたのだ。だから、徹底的にとぼけよう。
まてよ?もしかしたら、俺が義手を作り、ヤヤ達に渡したことがばれていないかもしれないな。まずは探りをいれてみよう。
「よ、よう。元気にしていたか?」
「ああ。不覚にも昨日、妹達から贈り物をもらってな」
そう言いながら、ザッハは義手を見せつけてきた。
・・・これ、ばれているんじゃないか?まぁ、直接言ってこないから、このまま誤魔化し続行だ。
「そうか。それはいい妹達がいて、お前は幸せ者だな」
「そうだよな。先日まで作っている素振りすらなかったのに、一体どうやって創ったのやら。まぁ嬉しいことに変わりないんだがな」
そう言い、ザッハは俺をジトーっと見てきた。・・・こりゃあばれてぇら。でも言わない。絶対に自分から言わない。言わないったら言わないんだからね!
「そうか。それで今日はなんでこんなところに?」
俺は無理矢理話を変える。話を変えようとしていることが分かったのか、俺を数秒睨みつけるような目で見ている気もするが、気にしない。ボッチは人の視線など気にしないのだ!・・・嘘ですけど。単なる見栄です。
「それは・・・お前を捜していたんだ」
「俺を?」
何故?
「ああ。お前にあれを教えようと思ってな」
「あれ?」
あれってなんだろうか?俺が人気者になれる秘訣でも教えてくれるのだろうか。そんな訳ないか。俺にそんな秘訣を教えたところで無駄だと分かっているからな。
「【色気】だ」
「四季?四季なら既に知っているぞ?」
春夏秋冬。これが四季なはずだ。これを教えるためにわざわざ俺を捜していたのか?いや、そんな訳ないな。となると・・・こっちの【色気】か!?
「?お前は何を言っているんだ?」
「いや、何でもない。それより、【色気】を教えてくれるのは本当か?」
「ああ。前にも言ったからな」
確か・・・ベッドの上で言っていたな。半ば冗談だと思っていたのだが、どうやら本当に教えてくれるらしい。まぁ教わっておいて損はないだろう。
「それじゃあよろしく頼む」
「ああ。任せておけ」
これでザッハから【色気】のコツを教えてもらい、少しでも強くなろう。そしていつかあいつら、ヌル・メイキンジャー達に勝てるようにならないとな。
次回予告
『4-3-8(第338話) 彩人、【色気】を教わる。』
式典が終わり、一晩経過。彩人はザッハとばったり出くわす。その後、彩人はザッハから【色気】を教わることになった。
こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。
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