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色を司りし者  作者: 彩 豊
第三章 魔道具であるレンカの黄朽葉な心
337/546

4-3-6(第336話) 式典後の夜

 彩人達がキリタンポを味わい尽くし、解散となったその日の夜。ヤヤ達は自分たちの現住処、王城へ戻っていた。

「それにしても、ヤヤ達が俺に話なんて、一体何なんだ?」

 そしてそこにはヤヤ達の兄、ザッハもいた。ザッハは今日、ヤヤ達に呼ばれ、王室のとある部屋に向かっている。

「ここか」

 ヤヤ達から指定された部屋の扉まで来て、その扉を数回叩く。すると、扉は開かれる。部屋の中には、ヤヤ、ユユ、ヨヨの3人がいた。

「よく来てくれたんヤよ、ザッハお兄ちゃん!」

「ユ。待っていたユ」

「ザッハお兄ちゃんが来てくれて、ヨヨは嬉しいヨ~♪」

「それで、俺に何の用だ?」

「ザッハお兄ちゃんに渡したい物があるんヤよ!」

「俺に、か?」

「うん!」

 ザッハの問いに、ヤヤは笑顔で答える。ヤヤは笑顔で返答した後、部屋の奥に行き、ある物を3人で持ち、ザッハに近づく。ザッハは、3人が持っている物に視界を反映させると、その物の形状に驚いた。

「それって、まさか・・・!?」

「うん!これはヤね・・・、」

 ヤヤ、ユユ、ヨヨは声を合わせてこう答える。

「「「義手!!!」」」

 そう。3人が持っている物は義手だった。それも見るからに精工で、市販されているようなスペックでないことが一目瞭然だった。

「こんな高そうな義手を、どうやって・・・?」

 ザッハがそう聞くと、

「「「え???」」」

 ヤヤ達はザッハの問いにオロオロし始める。何せ、この義手はとある人から渡す様に言われた義手で、渡した人は、

「俺が作った事は内緒だぞ?」

 と言われたからである。そのため、3人は言い訳を考える。

「…し、親切な人がくれたん、ヤよ?」

 ヤヤは考え抜いたうえ、一突きすれば色々ボロが出そうな言い訳がヤヤの口から出てきた。

「親切な人、ねぇ?」

 ザッハはヤヤの言葉に疑惑しか抱いていない。

「そんな精巧な義手をいくらでもらったんだ?」

「え、えっと・・・ただ、ヤよ?」

「無料か。その義手をくれた人はきっと、とっても親切なんだろうなぁ~」

 そうわざとらしく言いながら、ザッハはヤヤを見る。ヤヤは誰の眼から見ても動揺していた。

「そ、そうなんヤよ~。そのお兄ちゃんはとっても親切なんヤよ~」

「ほぉ?」

 その時、ヤヤはやらかしていた。

 さきほどヤヤは、

“そのお兄ちゃんはとっても親切なんヤよ~”

 と言った。ザッハは、ヤヤが言うお兄ちゃんに一人だけ、心当たりがあった。

(あいつ、か)

 ザッハ、以前戦った男の顔を思い出す。

 その男は、ヤヤ達がお兄ちゃんと慕っている男である。

「お姉ちゃん」

「え?・・・あ!?」

 ユユの指摘により、自分はさきほどボロを出してしまったことに気付く。

「い、今のは無し!聞かなかったことにして欲しいんヤよ!!」

 ヤヤは慌てる。

「分かった。もうそいつのことは聞かん」

「え?いいの?」

「ああ」

 ザッハは、ヤヤ達に関与している人物の特定が済んだので、これ以上の詳細な言及はしないことに決めた。例え今から聞き出しても、大したことは聞けないだろう。ザッハはそう判断したのである。

「お姉ちゃんお姉ちゃん、そろそろ渡そう?」

「そ、そうヤね!」

 ヨヨのせっつきにより、ヤヤはこの場を仕切り始める。

「そ、それじゃあヤヤ達から、これを贈るんヤよ!」

 そう言い、ヤヤ達はザッハに義手を贈る。

「・・・ありがとう」

 いきなりの展開に色々ツッコみたくなったものの、妹達の贈り物に感謝し、義手を手に取る。そして、さっそく失った左腕部分に装着しようとする。だが、

「う、上手くいかないな・・・」

 ザッハにとっては初めての義手。本当なら、ザッハはこのまま右腕だけで一生を終えるつもりだった。なので、義手の装着の仕方なんて分からない。まして実技なんてもっと分からないのである。

「任せてヤよ。お兄ちゃ、ゴホン!親切な人達に教えてもらったんだ!ユユ、ヨヨ、手伝って!」

「分かった」

「うん!」

 そう言い、3人はザッハに義手を装着させる。

 そして、

「「「出来た」」」

 義手の装着が完了する。

「これが俺の・・・、」

 ザッハは自分の左腕をゆっくり動かし始め、指先も少しずつ動かせていく。

「これ、魔力を通すことも出来るのか?」

「う~ん・・・確か通せるって言っていたはずヤよ。どれくらいかは分からないけど」

「分かった」

 ザッハは義手に魔力を通してみる。若干違和感があるのか、纏わせた魔力が完全に安定出来ていない。

「通すことが出来るならいいか。この義手に慣れれば、魔力制御もじきに上手くいくだろう」

 ザッハは再び左手を握ったり開いたりして動作の確認を行う。そして、ヤヤ達に体を向ける。

「ありがとうな」

 ザッハは照れることなく、真正面から感謝すべき人達に感謝の言葉を述べる。本当は、これを作った人にも言うべきだったかもしれないが、それは後日にしようと、ザッハは密かに思っている。

「ううん。ザッハお兄ちゃんはあの時、私達を助けてくれたんヤよ。だから、そのお礼」

「今度は、私達が一から作ったものをお礼に渡す予定」

「そうなの!?ねぇねぇ、何作るのー?」

 その光景を一通り見たザッハは、

「今回は本当にありがとな。それじゃあ今日はもう寝るが、他に用はないか?」

「私はないんヤよ。ユユとヨヨは?」

「私はないユ」

「ヨヨもないヨ~」

「そうか。それじゃあ俺はもう寝る」

 ザッハはヤヤ達に背中を向ける。そしてそのまま退室・・・前に一言。

「今日は本当にありがとう」

 ヤヤ達に聞こえるか聞こえないかくらいの声で、ザッハは再びお礼を言う。

「こっちこそ、ヤよ♪」

「ユ」

「そうだヨー♪ヨヨ、ザッハお兄ちゃんのおかげで助かったんだから」

 期待していなかった言葉が、返ってくると思っていなかった返事が聞こえた。

「・・・」

 ザッハはその返事に答えることなく、ヤヤ達がいる部屋を後にした。

 少し歩き、部屋から十分離れたところ。その場所までザッハは辿り着くと、ザッハは自分の体を壁に預ける。そして、顔を誰にも見せないよううつむけ、右手で顔を覆う。

「ありがとう、ありがとう・・・」

 ザッハは、嬉しかった。

 何年も会えず、もしかしたら一生会えないと思っていた妹達からの贈り物。嬉しくないはずがなかった。ザッハは誰にも見られない場所で独り、泣いていた。その涙は、独りになってしまった時に流した絶望の涙ではない。

(本当に俺は、妹達に出会えたんだな)

 感動の涙を今、ザッハは流しているのであった。

次回予告

『4-3-7(第337話) ばったり遭遇』

 式典が終わり、一晩経過。彩人はザッハとばったり出くわす。ザッハは彩人と他愛ない話をした後、ある理由で捜していたと話す。


 こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。

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