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色を司りし者  作者: 彩 豊
第三章 魔道具であるレンカの黄朽葉な心
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4-3-5(第335話) 式典

 俺とレンカが義手を完成させてから数日。本当に新国王決定に関する式典が行われるらしい。その話を改めて本人から聞かされた。

「え!?てっきり、町の人達から聞いていたと思っていたのに…」と、ヤヤから言われ、少しだけへこんでしまった。だって、他の人の話なんて興味がないんだもの。仕方がないじゃないか。それにこれは確認のために聞いたのだ。無知だから聞いたわけではない。そういえば地球にいた時、俺から話そうとしたら煙たがられ、バイ菌扱いされたな。そんな経験から、自分から話しかけることはほとんど思いつかなかったんだよ。普段、町の人と世間話なんてしていなかったからな。・・・なんか、この世界に来てもボッチ生活を送っている気がする。異世界に来ても、このボッチ体質は簡単に治らないという事か。

 そして、式典当日。ヤヤはとても綺麗な服を着てみんなの前に登場し、新国王としての挨拶を進めていく。

「国王なんてよく分からないけど、悩み事があったら私にきちんと相談してほしいんヤよ~」

 と、時には和やかな雰囲気を醸し出しつつ、挨拶終盤。

「それじゃあふつつかヤけど、皆様、よろしくお願いするんヤよ」

 そう言い、ヤヤはペコリと頭を下げた。その後、

「俺達もヤユヨカウンセリングに通ってもいいかー?」

 なんて言葉がヤヤの耳に入った。そんな言葉に、

「当たり前なんヤよ~♪」

 と、ヤヤは笑顔で答えた。

(大変そうだな)

 ヤヤの後ろにいる・・・偉そうな人は頭を抱えていた。頑張れ、偉そうな人。俺は心の中でエールを送っておいた。

 その式典の後、首都はこれ以上の活気に溢れていた。新国王の誕生ってこんなものなのか、と納得し、俺は独り、街を歩く。

 ちなみに、俺が独りでいる理由は、

「ルリ、いっぱい食べてくる~♪」

「…ルリに負けない」

 ルリとイブが大食い勝負をし、そのおもりにリーフ、クリムがついていった。

「さて、私も食べに行くんヤよ~♪」

「私も行く」

「ヨヨも行くヨ~♪」

 ヤヤ達も豪華な食事目当てに城を出て街に繰り出したらしい。偉い人が「今日だけ、ですからね。明日からはきちんとしてくださいね」なんて言ってそうだ。その付き添いにクロミル、モミジ、レンカが行った。従って、俺は独りなのである。独りでいること自体は嫌いではない。

(うめぇなぁ)

 こうして独り、屋台で美味しいご飯をいただくのもおつなものだ。独りなのに全然心が寂しくない。もしかしたら、孤独の寂しさをこのおでんもどきが温めてくれているのかもしれない。

「美味いよ、おやっさん」

「あんがとな」

 目の前の店員の手際の良さに、思わず店員の動きを目で追ってしまう。もし俺が女だったら、この美味しい食事のお礼に胸の谷間を見せていたのかもしれない。・・・まぁ例えばの話だし、俺が女体化したところで誰得なんだよって話なんだが。

(ふぅ)

 なんだか、サラリーマンの気分だ。まだそこまで夜はふけていないのだが、しんみりとこれからのこと、老後のことを考えてしまう。老後は隠居して、一生楽していきたい。そんなことを考えながら、おでんをちびちび食べ、飲み物もちびちび飲む。この飲み物、なんだかアルコールが含まれているような気がするが、気のせいだろう。未成年が飲酒して捕まる、なんて事態にはならないよな?いざという時は、

「こう見えて俺、大人の階段を上ったので大丈夫です!」

 と、言い訳して逃げるとしよう。その言い訳が通じるかどうかは分からないけど。おそらく通じないだろう。大人の階段を上っただけで大人になったとは限らないからな。それにしても、お客が俺一人って、この店は不人気なのか?こんな美味いのにな。この国の人達は味音痴なのか?それとも、この美味さが分からないのか?よくわからないが、客がいない今のうちにこのおでんもどきを大量に食すとするか。これ、本当に美味いし。


「おやっさん、美味かったわ」

「あいよ。お代はちゃんと・・・払ったみたいだな」

「俺を無銭飲食する不逞の輩に見えるのか?」

「見えねぇな」

「だろ?」

 そんなやりとりを店員としつつ、俺は屋台を後にしようとする。

「そういえば」

「?なんだ?」

 店員の歯切れの悪い言葉を聞き、俺は出ようとしていた足を止める。

「最近、物を盗む輩が活発化しているらしいから、気をつけろよ?」

「そうなんだ。気をつけるよ」

 俺は店員の言葉を聞き流す様に聞き、店を後にした。

 屋台を出てから少し歩いていると、

「あ!おにーちゃーん!」

 遠くから誰かの兄を読んでいる妹らしき声が聞こえてきた。その妹の声は、俺の耳にとても聞き慣れていた声質であった。

「この声、ルリか?」

「そうだよー♪」

 と、声の主であるルリは嬉しそうな声を発し、俺に抱きつく。暑苦しい。

「…やはり、こういう催し事の後は、アヤトの料理を食べるにかぎる」

「もう!そんなこと言って、イブはもう15人前、ルリちゃんに至っては20人前完食したばっかりじゃないですか!?」

 ・・・イブとルリの胃袋は、どれほど頑丈なのだろうか?それとも全身胃袋なのか?そんなことを考えてしまう。

「私なんて、あまりの光景にお腹が膨れ、腹ごなしに数キロ走ってきてしまいましたよ」

 それでクリムだけやけに汗の量が多かったのか。というか、数キロって結構な距離、だよな?それをシャワー浴びてきたみたいなノリで言えるってどんだけだよ。

「私もアヤトの料理が食べたくて、食べる量を抑えてきたんですよ?もちろん、人並みに、ですからね?」

 リーフは聞いていて安心するな。胸はぽよんぽよんして、目の保養にもなるし。

「まったく。これだから全身胃袋は。いずれお腹がたるみまくって太りまくり、捨てられても知りませんよ?」

「…それを言うなら、全身どころか脳まで筋肉と化しているお馬鹿なんて、とうに捨てられている。可哀そう」

「な!?己がそれを言うか、この・・・胃袋お化け!!」

「…それはこっちのセリフ。この、筋肉お化け」

 二人は見慣れた火花を散らし始める。周囲の眼は・・・なさそうだな。この通り、人通りが少ないな。だが、そのおかげでこの醜態を多くの人に晒さずにできて助かる。

「まぁまぁ。二人とも落ち着いて・・・」

「「うるさい!!おっぱいお化け!!」」

「…いいでしょう。二人に年上の威厳とやらを見せつけてあげます!」

 そして3人は、取っ組み合いのキャットファイトが始まった。・・・本当に、付近に人がいなくてよかったと思う。

「お姉ちゃん達、本当に仲良しだよね~」

「・・・うん、そうだな」

 俺はもうルリの言葉に突っ込むことはやめた。きっとあのキャットファイトは、仲良しだからこそ出来ることなのだろう。そう考える事にした。

 そして、キャットファイトが行われていると、

「あ!やっとルリちゃんみつけた~♪」

 そう言いながらある人物がルリに抱きつく。その人物は、本日新国王、ヤヤのヨヨである。

「こんばんは~、ヤよ♪」

「こんばんは」

 ヤヤ、ユユも俺達に挨拶をしてくれた。後ろにはクロミル、レンカ、モミジがいる。

「あわわ!?みなさんが喧嘩を・・・!?」

「いいよモミジ。あの3人は気にするな」

「で、でも・・・」

 モミジはアワアワしている。そんな中でも、3人はキャットファイトしている。

「あのお姉ちゃん達はいつも仲良しなんだよ~♪」

「そうなんだ~。どこのお姉ちゃんも仲良しなんだね~」

「だよね~♪」

 と、ルリとヨヨは3人のキャットファイトを見ながら談笑する。その様子を見てヤヤとユユは笑顔を見せる。その笑顔は・・・うん、若干ひきつっているな。理由はまぁ、あの3人のキャットファイトだろうな。別に思い残すことなく大笑いすればいいのに。

「ところでお兄ちゃん。今から作ってくれるよね?」

「?何をだ?」

「キリタンポだよ!美味しい美味しいキリタンポ♪」

「…美味しい、料理!!??」

 ルリの言葉にイブが激しく反応し、こちらに目を向けた後、俺に急接近した。

「…今の話、本当!!??」

「ま、まぁ。本当だけど・・・」

「…食べたい」

「ルリもルリもー♪」

 イブとルリの猛烈な食べたいコールにつられたのか、モミジやリーフ、ヤヤ達も食べたそうにしている。あのいつも冷静なクロミルでさえ、しっぽを激しく揺さぶっている。

「これはアルジン、みなに作る必要がありそうですねー」

 俺の心の内を悟ったかのような発言をレンカはする。確かにその必要はありそうだけれども、俺の心を読んだかのような発言は辞めて欲しい。

「・・・だな」

 俺はレンカを細い目で数秒見た後、諦めのため息を吐き、キリタンポを作るのに必要な材料を思い出す。出来ればキリタンポに味噌や醤油を塗りたいところだが、ないものは仕方ないか。それっぽいもので代用しておくか。不味くはないが、物足りないんだよな。

 さ、日本の美味しい料理を味わってもらうとするか!

次回予告

『4-3-6(第336話) 式典後の夜』

 式典が終わり、ヤヤは黄の国の新国王となった。式典が終わった夜、ある男が王城に向かって行った。


 こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。

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