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色を司りし者  作者: 彩 豊
第三章 魔道具であるレンカの黄朽葉な心
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4-3-1(第331話) 黄の国での決闘報酬

 あのマーハンとの戦いからしばらく経過した。あれから俺達はというと、大きな変化は・・・俺にはなかった。だが、変化がなかったわけではない。大きな変化があったのは、ヤヤ達である。

 何故ヤヤ達に大きな変化があったのかというと、あの商王、マーハンの娘だからである。王の娘の登場により、国の行く末は大きく変化を迎える。最初、ヤヤ達が国王をやるのかと考えていた。だが、この国の王になるには、最も商業で売り上げを伸ばしてきた人、だったはず。少し前、ヤヤ達の店が繁盛していたとはいえ、最も売り上げを伸ばしていたとはとても言えないだろう。だが、転機が訪れた。

その転機とは、商王を決める会議を行っていた時、ヤヤが商王候補達の会議に差し入れした時である。

「・・・今回は、商業の腕で王を決めるのではなく、人徳で王を選別してみないかね?」

 その言葉に最初、他の商人達は驚いたが、頷いた。おそらく、商業の腕が素晴らしくても、性格が屑だと意味無いと判断したのだろう。それほど、マーハンの行いが水面下で知れ渡っていたのだろう。確証はなかったかもしれないが。そして、人徳で選ばれた人材というのが、

「え?わ、私!?」

 なんと、ヤヤであった。理由としては、少し前まで営業していた【ヤユヨカウンセリング】の件である。その件がこの首都、キハダまで広まっていたらしく、早く営業してほしいと市民の声が上がり始めているのだとか。

「でも私、そんなこと言われても、何も分からないんヤよ・・・」

 そう言うと、他の商人達は黙ったらしい。そして、その黙った男共に、

「…なら、私が教える」

 名乗りを上げたのが、魔の国の王女、イブである。当然、商人達から反対の声が上がった。ある意味、当然かもしれない。商人達からすれば、イブはただの少女にしか見えていないのだろう。イブが自身の身分を明かすと、

「なるほど。それなら色々任せられるかもしれないな」

「私には、王族のコネなんてありませんし、適任やもしれません」

「異議なし、ですな」

 みんなが納得してくれた。こうして、ヤヤがこの黄の国の王となったのだ。

 え?なんでお前が知っているのかって?

 そりゃあ俺がこの次期国王を決める会議に参加していたからですが何か?何故参加していたかというと、マーハンに関することを聞くため、だそうだ。俺がマーハンに関することを一通り話し終えると、俺の事を空気扱いした。まぁいいけどね。話を振られても困るし。この会議に参加したのは黄の国の王候補、ヤヤ、ザッハ、リーフ、イブ、そして俺、である。残りのクリム、イブ、クロミル、モミジ、ユユ、ヨヨ、ファーリは近くで・・・何かしている。クロミルとモミジはきちんと見張ってくれていると思うから大丈夫、なはずだ。レンカは俺のゴーレムリングの中に入っていると思う。確信は持てない。

 次期国王を決める会議を終える直前、もう次期国王がヤヤに決まりかけた時、

「でも私、あの母親、マーハンさんの娘なんヤよ?それでもいいの?」

 と、みんなに質問してきた。

 ちなみに、事前にザッハがヤヤとユユに、マーハンとヤヤ達との関係を話し済みである。ヨヨに話さなかったのは、まだ年齢的に受け止め難いと判断したのだろう。真意は知らん。

 そんなヤヤの問いに、

「私達は、あなたの存在が今の国に必要なのだと判断しました。この判断、お受けしていただきませんか?」

 ある商人が言った後、商人全員がヤヤに向けて頭を下げた。

「もちろん、私達も全力で支えさせていただきますので、お願いいたします」

 それにしても、どうしてそこまでヤヤを次期国王として推すのかは、俺には分からない。もしかしたらこいつら、ヤヤのことを悪用しようとしているんじゃ・・・?俺がそんなことを考えていたら、ザッハが立ち、一言言い放つ。

「もし、ヤヤを使って変な事をしようと企んでいるのであれば、無駄だからな?」

 その後、ザッハは俺と戦ってきた時に使っていた剣・・・を模るように魔力を形成し、剣を構える。この会議場に武器は持ち込めなかったからな。

「俺が全て、力ずくで制圧するから覚悟しておけ」

 そう言い、魔力を霧散させてから席に着く。ザッハの発言のおかげで空気が激重である。俺は目をつぶり、今最大限できる事を考えた。考えた結果、

「お~い。妹が大事だからって過保護過ぎるぞ~?」

「なっ!?」

 俺は出来るだけからかい口調でザッハを口で攻める。俺の発言のおかげで、ヤヤが一笑する。その一笑のおかげで、空気が和らぐ。とはいえ、ザッハが言いたいことも分かるけどな。俺もこいつらの顔を覚えて・・・おけそうにないな。やっぱザッハに一任しよう。ザッハに任せておけば、ヤヤはもちろん、ユユ、ヨヨの安心安全は保障されることだろう。

「それじゃあ、今のヤヤに何が出来るか分からないけど、」

 ヤヤが次期国王か、なんて考えていると、次のヤヤの発言に誰もが驚かされる。

「条件付きでやるんヤよ!」

「「「え???」」」

 誰もがヤヤの言葉に疑問を抱く。

 条件って何?と。続けてヤヤが発言する。

「条件って言うのは、【ヤユヨカウンセリング】の営業再開ヤよ!」

 俺はすかさず質問する。

「それじゃあヤヤ達はキハダに戻るのか?」

 俺の質問に、ヤヤは否定の意を示し、こう答える。

「【ヤユヨカウンセリング】のカンゾウ支店を開くんヤよ!」

 支店、か。確かに悪くない考えかもしれないな。だが、支店を設立するとなると、一つ気になることがある。

「どこにその支店を建てるつもりだ?」

 それは、支店の設立場所である。下手な場所に建てれば、繁盛できる店が繁盛しなくなる恐れがあるからな。建築場所で失敗する例もあるしな。潰れた店のところに新店舗構えるとまた潰れる、みたいな?多分そんな感じかね。

「ここ!」

 ヤヤは床を指差す。いや、床じゃないな。床というより、まさか!?

「あなたはこの王城を店として構えると、そう言うつもりですか!?」

「うん♪」

 商人の言葉に、ヤヤはしっかり肯定した。

 ・・・。

 もう、ね。何も言えねぇ。じゃなかった。何か言わないと。

「おそらくだが、王城を店にするなんて前例ないと思うんだが、それでもやるつもりなのか?」

 俺は本人の意思の確認をするため、質問を投げかける。

「うん♪ここに店を建てれば、みんな迷うことなく来てくれそうヤからね」

 そう笑いながら言った。

「それに、これだけ大きければ、色々出来そうな気がするんヤよ~♪」

 そう笑いながら言うヤヤは、まるで新しいおもちゃで一刻も早く遊びたがる子供である。

 確かに王城が目印になれば迷子になる人はいないかもしれないけど、いいのか?

「ふっふっふ。なるほど。本当にお客様のことを考えているからこそ、そういう発想に至ったのかもしれませんね」

 ヤヤの言葉、考えを聞いた商人は何やら悟っていた。何がなんやら分からないが、ひとまずヤヤはこの王城でヤユヨカウンセリングを開業する、ということなのか?そんな迷いが俺の心の中にあるなか、ヤヤが国王になるための準備が着々と進み始めていた。


 この会議の後、俺達はマーハンの所有物を漁っている。何故漁っているのかというと、先日行われた決闘の件である。マーハンとの戦いに勝った俺達は、マーハンの全権利は俺達に譲渡されている。そのマーハンの全権利の中に当然、マーハンの金もあるわけで・・・。

「おおぉ!」

 俺は今、世界の真理を読み解くことが出来た。

 この世は全て金なのだと!この金があれば、俺一人だけじゃない。十人くらい一生遊んで暮らせるだろう。ずっと惰眠を貪り、会社員のように平日働きに出なくてもいい暮らしが出来そうだ。この十桁越えの金を見てしまえば、誰だってそうだろう。全部、欲しい。

「…ちなみにだけどアヤト、このお金全て自分のもの、なんて言うつもり?」

「このお金が本来、誰のために使われるべきか、分かっていますよね?」

 俺がこの世界を動かす莫大な金に目をくらませていると、横からイブとリーフが口を挟んでくる。

 ・・・いや、分かっていますよ?このお金が本来どんなお金かってくらいは分かっている、つもりですよ?

 俺が推測するに、この莫大な金は、税金だ。つまり、市民から徴収した、国の運営のために使われるべきお金なのである。それを俺一人が独占しようものなら、この国の全市民からフルボッコにされること間違いなしだろう。このお金はマーハンのもの・・・ではないか。このお金はあくまで国のもの。マーハンのものではないこのお金は、俺のものにはならない、のだ。とても、とても残念だ。せっかく一生豪遊出来ると思ったのに!まぁ、マーハンもポケットマネーくらいは持っているだろう。せめてそのお金くらいはもらっても・・・と思い、マーハンの所有物を漁っていると、ある紙切れを見つけた。その紙切れをよく、よ~く見てみた。

(あ?)

 その紙切れは、日本で言う万札みたいな価値があった。だが、その価値は、万札以上であることが分かる。

「これってもしかして・・・?」

 俺がイブ、リーフに確認をとる。二人は驚いたが、頷いた。つまりはそう言う事なのだろう。

「間違いなく・・・」

「…ん。とてつもない」

「やっぱそう、だよなぁ・・・」

 今俺の手元にある紙切れは、小切手。その小切手に記載されている金額は・・・1億。

 そう!これは日本の万札ならぬ、億札に匹敵するものなのである。これだけでも生涯遊んで・・・暮らすことはできないな。だが、しばらくは遊んでいても問題ないだろう。大切に貯金するのもいいな。

「アヤト?」

「…分かっていると思うけど、山分け」

「・・・はい」

 そうでした。俺だけではなく、みんなの1億円でした。後で分配できるようにしましょう。

 次は魔道具である。国の運営に必要な魔道具は予めイブとリーフが抜いてあるとの事なので、残りの魔道具を漁ることにした。国の運営に必要な魔道具も見てみたいが、俺が見ても分からないだろうな。

 ・・・。

 うん。見てもよく分からない。やはり説明がないと、なにがなんやら全く分からん。使用目的、用途、これらを言ってもらわないと下手に触れん。魔道具に関しては、後で専門家に聞いてみるとしよう。専門家がどこにいるかは知らんが。

 で、だ。マーハンの権利はまだある。この権利は負の遺産、といってもいいものだろう。

「「「!!!???」」」

 何せ、目的の部屋に着いたとたん、目に絶対入れたくない光景が目の前に広がっていたのだから。何が行われたのかは具体的には分からない。だが、ろくでもないことがこの部屋で起きていたことは確かだ。何せ、本来赤くない床が赤く染められていたのだから。赤色の敷物で飲み物ではない。赤黒く、鉄のにおいも混じるこの臭い・・・。間違いなく血だ。そして、

「「「・・・」」」

 四隅に乱雑にまとめているのか捨てられているのかは分からない。だが、何かがまとめられていた。その何かを認識しただけで、俺はその日、何も出来なかった。その四隅には、人の死体が転がっていた。目を見開き、こっちを見ている死体もあれば、四股が解体され、骨や筋繊維が露出している死体まであった。中には腐敗臭までしていて、この部屋だけ別次元のやばさを兼ね備えていた。

 翌日。

「「「・・・」」」

 俺達は出来るだけ死体を見ないように埋葬した。勝手に埋葬するのはよろしくないかもしれない。その上、見届け人が赤の他人なのだ。あの世に行って成仏できるかどうか分からないが、最低限の弔いはさせてもらった。作法等は分からないので、なるべく無礼にならないようにした。こういうことなら、葬式の時の作法でも調べておけばよかったな。そういえば、

「・・・」

 俺、イブ、リーフの他にもう一人横にいる。その横にいる人物の名は、ザッハ。何故ここにザッハがいるのかというと・・・俺にも分からん。俺達が埋葬の準備をしていたら、どこかでその話を聞きつけたらしく、「俺も埋葬し、見届ける義務がある。俺にも手伝わせてくれ」と、いきなり頭を下げてきたのだ。俺達3人は一度顔を見合わせ、頷いた。これが結果である。そして現在、俺達4人で見送っているわけなのである。

「さ、行こうか?」

「「「・・・」」」

 俺の言葉に返事はなかったものの、正面が墓から俺の姿へ変わったので、俺達は墓を後にした。

 死人のことを悪く言うのはマナー上よろしくないだろうが、何度でも言おう。

 あんな負の財産まで残すなんてあの商王、本当に死んで良かったと思う。

 だが、もう次はないだろう。

 なんでかって?

「みんな~。今日もありがとうなんヤよ~♪」

「差し入れだユ」

「はい、お兄ちゃん♪」

「「「でへへへ♪♪♪」」」

 次の国王は早速、作業員の心を良い意味で掌握したのだから。この国王なら、きっと市民も幸せに暮らせることだろう。

「ザッハ。分かっていると思うが・・・、」

「言われなくても分かっているさ」

 どうやらザッハは言われなくても気付いているらしい。本人も最初からそのつもりなのだろう。

(ちゃんとヤヤ達を、妹達を守ってやれよ)

 俺は口で言わなかったものの、心の中で念押しする。

 さて、俺は俺で大切な人をこれからも守り続けるとするか。

「?アヤト、どうかしましたか?」

「…?何か、あった?」

「いや、何でもない」

 地球で見つけられなかった、親以外の大切な人を失わないために。一度、緑の国で失いかけたのだから。

次回予告

『4-3-2(第332話) 黄の国での店番~1日目~』

 決闘が終わり、彩人はギルドで依頼を受ける事にした。その依頼とは、ある店の店番をすることである。


 こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。

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