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色を司りし者  作者: 彩 豊
第二章 メイズのような意志を持つ商王と三姉妹
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4-2-54(第328話) 黄の国での決闘後~その2~

「!?どうしてここが・・・あ」

 おそらく俺とザッハを運んだのはルリ達だろう。そこから情報が漏洩したんだな。ヤヤ達になら漏らしても平気だからいいけど。

「・・・」

 ザッハは一瞬驚いたものの、ヤヤ達に対してそっぽを向いた。

「さっきの話、聞いていたんヤよ」

「!?」

 ザッハはヤヤの発言に目を見開く。さっきの話、聞いていたのか。ということは、ザッハとヤヤ達は血の繋がりがある。つまり、兄妹かもしれないということを聞いたのか。ヤヤ達はどういう反応をするのだろうか。

「なら分かるだろう?いずれ、俺とお前らが本当兄妹なのかどうかが証明される」

「「「・・・」」」

 周囲の空気が重くなり始める。

「そしてもし、俺とお前らが兄妹だと証明されたら・・・俺を殺せ」

「「「!!!???」」」

 急に物騒な話になり、俺達に驚きの感情が走り抜ける。

「ど、どうして、だ?」

 俺が喉からひねり出して理由を問う。

「だってこんな兄、いない方がいいだろう?」

「「「・・・」」」

 さっきも似たような言葉を聞いた。そして俺は考える。

 本当にこれでいいのか、と。

 こいつは一度、実の妹達、ヤヤ達と敵対した。状況によっては殺していたかもしれない。だが、ザッハと戦ってみた思った。

 こいつは本当に妹達のことを思い、探し続けていたのだと。そして今、ついに巡り合えた。そのめぐり逢いをこんな形で終わらせていいのか?俺がこの家族に、ザッハとヤヤ達の事情に口を多く挟むつもりはない。だが、このままザッハが死んだら、ザッハが恵まれないじゃねぇのか?ザッハはこれまで、なんのために妹達を探していた?一目見るためか?そして、一目見たからもう死んでもいい。そう考えたのか?

(ふざけるなよ)

 俺の考えは決まった。これからザッハにいう言葉も決めた。そして、その言葉を言おうと口を挟む気満々の時、

「さっきも言ったけど、絶対にそんなことないんヤよ!!」

 ヤヤが思った以上に大きな声を発する。

「確かに一度、アヤトお兄ちゃんと戦った。私達の全てを奪おうとした」

「そうだろう?俺は知らなかったとはいえ、実の妹の命を奪おうとしていた。実の妹の恩人を殺そうとしていたんだ。こんな屑兄、いない方が・・・、」

「じゃあなんであの時助けたの?」

 ここでユユが口を挟む。

「あの時?あの時とはどの時だ?」

「あの女の人がモミジお姉ちゃんを噛み殺そうとした時だユ」

(・・・あ~)

 そういえばそんなときもあったな。マーハンとの戦いの記憶が曖昧なんだよな。思い出そうとすると痛みしか思い出せない。う!右手がうずくぜ!・・・すいません。うずきはしますが中二風に言ってしまいました。て、俺は一体誰に謝罪をしているのだろうか。再び話を聞き続けるとしよう。

「・・・」

「その時、あなたはどんな行動をしたか、覚えている?」

「・・・なんだっけか」

「モミジお姉ちゃんを、私達を守ってくれた。あなたが覚えていなくとも、助けられた私達は覚えている」

「・・・そんな昔のこと、忘れた。それに、その一回だけだろう?俺の単なる気まぐれかもしれないじゃないか」

「あー!結局覚えてんじゃん!」

 ザッハの言葉にヨヨはツッコむ。

「・・・あ」

 そしてザッハは今更のように気づく。嘘って見抜かれると少し恥ずかしくなるよな。

「覚えていなかったらそんなこと言わないよー」

「・・・」

 ヨヨの指摘にザッハは再び黙り込む。

「それに、ザッハお兄ちゃんがアヤトお兄ちゃんと戦ったのも一回だけでしょう?なら、いいんじゃない?」

「!?」

 ん?ザッハが急に驚いた表情になったな。何に驚いたんだ?ヨヨにいたいところでも突っ込まれたのか?

「お前、こんな俺のことを兄だと言ってくれるのか?」

 ・・・ああ。ヨヨはさっきザッハのことをお兄ちゃんと言っていたな。その言葉に驚いていたのか。

「うん」

 ヨヨは頷いた後、ヤヤとユユの方を向く。二人もヨヨと同じ反応をした。

「本当、なのか?俺と血の繋がりがないかもしれないんだぞ?」

「そんなこと、きっとないとヤヤは思うヤよ」

「俺は左腕を失ったんだぞ?」

「だったら、私達がお兄ちゃんの片腕になユ。だから、」

 ユユはザッハの前に手を出す。ユユの行動に続き、ヤヤとヨヨも自身の手をザッハに差しだす。

「「「私達と一緒にいよう???」」」

「!!??」

 三人の言葉に、ザッハはもう、涙腺崩壊滝崩壊、という感じだった。見ていてボッチの俺ですらもらい泣きしそうなくらいだ。俺が普段流している涙と言えば、孤独やいじめによる悲しい涙しか流してこなかったな。だからこういう涙が新鮮に思えるし、見ていて悪い気はしないな。

「いい、のか?俺で?」

「「「うん♪♪♪」」」

 ザッハは片腕で三人を引き寄せ、抱いた。

 これが兄妹の再会、か。俺は一人っ子だが、兄弟が欲しかったなぁ、なんて考えてしまう場面だわ。親に頼んで妹か弟、作ってもらおうかな。ま、無理ですけどね。この世界に俺の両親、いないわけだし。

「ありがとう、ありがとう・・・」

 ザッハが男泣きをしている。

 こんな時に言うのもなんだが一つ思う事がある。

 俺、場違いじゃね?めっちゃ邪魔じゃん。というか今空気じゃん。

 俺の存在を証明したいところだが、ここで声をだして空気読めない男だと思われたくないしな。ここは仕方がない。長年のボッチ生活で培ってきた特技を活かし、自身の存在を空気と同化させるか。

・・・。

 少しの間、俺は自身の存在を空気と同化させていると、部屋の外からなにやら音が聞こえてきた。俺は気になり、音のする方へ耳を傾けていると、その音の正体が少しずつ分かってきた。

「ううぅ・・・」

 それは、誰かが唸っているような、泣いているような音だった。これは音、というより声だな。ということはこの部屋の外に誰かいるのか?泣いていそうな声が聞こえるあたり、ザッハ達の話を聞いているな。

「!?誰だ!?」

「「「!!!???」」」

 ザッハが急に叫んだことにより、ヤヤ達が驚く。まぁ耳の近くで大声を出されたらそりゃあ驚くわな。下手したら鼓膜に傷がつくかも。

 そんなことを考えていたら、扉が静かに、ゆっくりと開き始めた。

「ううぅ・・・。なんとも素敵な話を。おかげで涙が止まらないじゃないですか・・・」

 と、その人は涙を流しながら入室してきた。

「モミジお姉ちゃん、来てくれたんだ。ありがとう」

「ぐす、いえいえ。私はこれをお持ちしただけですので」

 と言うなり、モミジは持ってきた・・・何かを置いた。なんだ、あれ?何かの装置っぽいが、なんの装置か皆目見当つかん。

「これに関してはザッハさん、あなたが使い方を知っていると伺っていますので、使い方に関する説明は不要ですよね?」

「!?え?あ、ああ」

 ?なんかザッハが異常に驚いている気がする。俺の気のせいかね。

「それではまた来ますので、これでひとまず失礼します」

 そう言った後、モミジはヤヤ達を見て、

「家族、大事にしてくださいね?」

 そう言い、退室していった。

(あの子、いいこやわ~♪)

 京都に住んでいたわけではないが、京都弁を発したくなってしまった。あの子、なんんであんなに性格がいいのにいじめられていたのだろうか。ほんと、いじめていたやつの眼、腐っているよな

(それでこれ、どういう装置なのだろうか?)

 いきなりモミジが入室してきてこれを置いていったのだが、これは一体・・・?

「まさかもうこれを借りられるとは思わなかったぞ」

「これってなぁに?」

「ん?そういやお前らはこれ、見たことがないのか」

 そう言い、ザッハはベッドから起き上がり、装置に近づき始める。

「これは・・・対象の魔紋を調べる装置だ」

 対象の魔紋を調べる装置?そういえばさっきの話にも出ていたが、それってザッハによると数か月待つんじゃなかったか?それを今日持ってきたのか。モミジが黙って持ってくるわけないし、これをけしかけたのは・・・きっとリーフ達だな。でもなんでリーフ達がこれを用意したのだろうか?もしかして、ザッハとヤヤ達との関係に気付いたのか?いや、既に気づいていたのかもしれないな。どうして分かったのかは分からないから、後でリーフ達に聞いてみようかね。

「この装置を使えば、俺とお前らに血の繋がりがあるかどうかが分かる。例えば・・・、」

 そうザッハが言い、ザッハはさきほどモミジが持ってきた装置に手をかざす。

「お前はそっちの左についている赤い目印に手をかざしてくれ」

「・・・」

「お前だよ、お前」

「・・・え?お、俺?」

 まさかここでいきなり話を振ってくるとは思わず、無視してしまう形になってしまった。今までほとんど空気扱いだったのに、急に話かけるとは。これが陽キャの能力か!?…そんなわけないか。

 俺はザッハの言う通りにするため、装置の左側に赤い目印に手をかざす。

「それで、この赤い目印に魔力を送り込む」

 ザッハがそう言うと、俺に視線を送ってくる。もしかしなくとも、俺の言う通りに動け、ということなのだろう。俺はザッハの言葉に従い、赤い目印に魔力を送り込む。

「少し時間がたつと、この掲示板に調べた結果が文字として表示される」

「「「へぇ~」」」

 ザッハの説明にヤヤ、ユユ、ヨヨが声を揃える。それにしても掲示板、か。見た目、電光掲示板みたいだな。ここに今日の高速道路の交通情報でも載っていないかね。載っているわけないか。そんなありえないことを考えながら時間を待っていると、文字が浮かび上がってきた。その文字とは、

“お二方の魔紋から、お二人に血縁関係は否定されました。お二人は何の関係もございません”

 と出た。

「二人に血縁関係がない場合、つまり二人が赤の他人の場合、こういう表示が出てくる」

「「「へぇ~」」」

俺はこの文を見て一言いいたい。

 前の一文は分かる。血縁関係がないことを言ってくれるのだから必要なのだろう。だが、その後の一文は必要か?なんか昔、見ず知らずの子に、

「ねぇ?一緒に遊ぼう?」

 と、提案して、

「は?何でお前なんかと遊ばなくちゃいけないの?お前と僕は何の関係もないじゃん♪」

 と、鼻で笑われたことを思い出してしまうのだが?悲しく思い出したくもない思い出を思い出してしまったせいで、古傷が開いてきた。もちろん、古傷とは精神的古傷のことである。それをカタカナで言うとトラウマ、となる。い、痛い・・・。

「それじゃあ次は家族がやった場合だが・・・、」

「ヨヨやりたいヨ!」

「じゃあユユ、やってみれば?」

「分かった。ユユがやユ」

 ザッハの目配せの意味を理解したのか、ヨヨとユユが率先して名乗りを上げる。そして、装置の赤い目印に魔力を送り込んでいく。あの装置の仕組みは一体どうなっているのだろうか。

 俺達が見守る中、ユユとヨヨの魔力が装置に送り込まれていく。そして、電光掲示板っぽい掲示板に文字が出現する。

“お二人の血縁関係が認められました。お二人は身内の可能性が高いです”

 と、表示された。今回も2文表示されるんだな。そして、俺の心に刺さらない。もしかしてさっきの心の傷は自意識過剰によるものだったのか?

「このような表示になる」

「「「へぇ~」」」

 ・・・どうでもいいが、さっきからヤヤ達の声が何回もシンクロしていないか?結構凄いことを連続でしているのだが、無意識でシンクロしているのだろうか。だとしたら凄いな。

「それで、肝心の・・・、」

 ここでヤヤが小さく首を振り、ユユと立ち位置を入れ替わる。ザッハもヨヨと立ち位置を入れ替える。

 さて、いよいよ本題か。

 ザッハとヤヤ達が家族かどうか。

「それじゃあ、いくぞ」

「うん!」

 そう言い、ザッハとヤヤが装置に魔力を送り込んでいく。

「「「・・・」」」

 俺達は、二人の様子を見守り、掲示板に表示される文字の出現を待つ。

 ・・・。

 そして、

「出た!」

「「「「!!!!????」」」」

 ザッハの言葉に、ザッハ以外の4人が視線を集中する。その視線の先はもちろん掲示板である。掲示板に出てきた文字は・・・?

“お二人の血縁関係が認められました。お二人は身内の可能性が高いです”

 この文が出てきた。

 ということ、は・・・?

 ザッハとヤヤが身内ということ、だよな?ザッハとヤヤが親子なわけないから、兄妹と考える方が無難だろう。

 つまり・・・?

「ザッハとヤヤは兄妹、ということか?」

 俺のこの言葉に、

「ああ、ああ。ああ・・・」

 成人している男性が人の目関係なく泣き始めていた。ここで人の泣き顔をあざ笑うほど、俺の性格は腐っていない。

「ザッハ、お兄ちゃん?」

「そうだユ。あの人が私達のお兄ちゃんだユ」

「・・・」

 三者三様の反応だった。無理もないか。ほとんど見識のない人が自身の兄と結果が出たのだ。嬉しいかもしれないが、驚き戸惑いの感情を隠せていないな。

(・・・)

 俺には本当の兄弟はいない。だが、義理の妹ならいる。義理でも妹がいるからこそ、今すべきことが、兄としてすべきことがなんとなく分かる。俺はその手助けをするため、

「おら、さっさとヤヤ達を落ち着かせてやれよ」

「!?お、お前・・・!?」

「お兄ちゃん、なんだろう?」

「!?」

 俺の言葉にザッハはようやく正気を少しずつ取り戻したのか、

「・・・ごめんな。再開するのが遅くなっちまった」

 ザッハはそう言い、片腕を失ってもなお、三人を守ろうと片腕を精いっぱい使い、三人を抱き込む。

「この温もり、マルメおばちゃんみたい」

「ん。とても温かくて懐かしい」

「これから頼っても、いいかな?」

 これらの言葉にザッハは一言。

「ああ」

 それだけ言った。言葉の会話になっていないかもしれないが、それでも4人は互いに抱き続けていた。

 この光景を見て、兄妹愛の奥深さを感じたと同時に、

(やっぱり俺、ここにいちゃまずくね?)

 居心地の悪さを感じていた。

次回予告

『4-2-55(第329話) 黄の国での決闘後~その3~』

 決闘が終わり、彩人達側の勝利となった。決闘時にできた傷を癒しているなか、彩人はザッハ達に関する話を聞く。


 こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。

 感想、評価、ブックマーク等、よろしくお願いいたします。

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