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色を司りし者  作者: 彩 豊
第二章 メイズのような意志を持つ商王と三姉妹
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4-2-50(第324話) 黄の国での決闘~その7~

「・・・」

 なんか、聞いちゃいけない話を聞いてしまった気がする。

 それにしても、魔紋って何?

 【黒い悪魔(ブラックデビル)現象】って何?

 魔紋に関しては、これで家族かどうか分かるとか言っていたから、おそらく指紋に似た何かだろう。そんなものを調べる装置があるとは知らなかった。今度、イブ達とお試しで検査してみようかね。ま、天涯孤独のボッチであることが証明されるだけだろうがな。

 【黒い悪魔(ブラックデビル)現象】に関しては確か・・・どこかで聞いた。どこだったか・・・あ!?確か青の国で見た奴だな!そういえば風貌がどことなく似ている気がする。だが、あんなにおぞましい風貌をしていたっけか?カオーガの時はもっとこう・・・温和な感じがしたような、しなかったような?ま、いいか。いずれにしても、あの時に戦ったやばい奴がここにきて出現した、ということだよな。これは確かにやばそうだ。

 それにしても、俺の記憶が確かなら、この【黒い悪魔(ブラックデビル)現象】を起こすには魔石が必要だったはず。マーハンはさっきから魔石を使った様子なんてなかったけど、どうやってあの現象を引き起こしたのだろうか?て、今はそんなことどうでもいいか。

 それより、

(ふざけんなよ、ふざけんなよ・・・!!!)

 俺は静かにザッハの元へ近づき、マーハンに怒りを燃やし続ける。

 だってやつは、だってやつは・・・!


「ドウ?ナニモカモウシナイ、ジブンガサガシツヅケテイタニクシンタチヲコロソウとしたカンソウハ?」

「なんで?何でここまで・・・!?」

「そもそもあなた達の事を家族、だなんて思ったことないわ」

 マーハンは急に、饒舌に答える。

「私にとってあの人は単なる金にしか思っていなかったわ。それと同様に、あなた達子供は金を実らせる苗よ。苗は植えれば勝手に育つから、頃合いを見計らって、実を刈り取るの、分かる?」

「お前は、俺達家族の事を・・・、」

「ええ。家族どころか、同じ人間とさえ思ったことはないわ。所詮、金を稼ぐためだけの道具に過ぎないの」

「・・・」

 ザッハは、自分の実の母親の発言に心を殺されかけていた。もう何をするにしても意欲がわかない。何せ、実の母親が実の息子に向けて、「金を実らせる苗」と言ったのだ。そんなことを言われてショックを受けない子供はそういないことだろう。少なくともザッハは、先ほど受け続けている肉体的ダメージと精神的ダメージにとって、はてようとしていた。

(俺のやってきたことは一体、何だったんだろうな?)

 ザッハは今までの自分の目的について振り返る。

 それは、生き別れた肉親、母と妹達を見つけ出すことである。そしてその目的は、実の母親だと思われる人物、マーハンによって伝えられた。なら、自分が生きる意味、理由なんてなくなったのではないか。薄れゆく意識の中でそう考え、次にこう考える。

 目的を果たしたのであれば、生きる意味なんてないのでは?

 無意識のうちに結論付けたザッハは、目をゆっくりと閉じ始める。最後に妹達の姿を一目見て、満足した後、ザッハはゆっくり死後の世界への誘いを受けようとする。

 ゆっくりと着実に眼を閉じ、これまでの生活を振り返りながら、自身の生を見つめ終え、悔いを殺そうとした。だが、殺しきることはなかった。

「ふざけないでください!!」

 マーハンの言葉に、家族を家族と思わない発言に怒りを露わにする者がいた。その者は、彩人を通して話の概要を聞いていた。

「?誰だ、お前は?」

「私はモミジです!あなたとは違い、家族を大切に思う者です!」

 それは、周囲に葉や火等を発生させているモミジであった。


「モミジ・・・」

 お前、話を聞いていたのか。まったく気づかなかったわ。それにしても、さきほどのマーハンの発言、俺も頭にきているけどな。

「家族を大切に思うですって?ふん」

 モミジの発言に、マーハンは鼻で笑う。

「何がおかしいのですか!?」

「おかしいもなにも、私にとって家族は、金を稼いでくる道具でしかないのよ」

「そんなことありません!家族とは、お互いに助け合い、支え合い、協力する人達で、固い絆で結ばれている人達のことではないのですか!?」

「違うわ。家族は、金を持ってこさせる道具なの。あなたもそう思っているのでしょう?」

「そんなことありません!私達はお金が無くとも笑い合い、助け合い、時には意見をぶつけ合う。そんな絆で結ばれている大切な人達のことではないのですか!?」

「人ではないお前みたいな魔獣風情が、人間の家族を語るんじゃねぇよ」

「!?」

「てめぇ!」

 さきほどのマーハンの発言に、さすがの俺も声を荒げる。

「あら?あなたいたの?」

「いたもなにもさっきからずっといたさ。そして、お前ら二人の話をずっと聞いていた」

「ほぉ?それで、どうする気?」

「てめぇこそ、さっきからふざけたこと言ってんじゃねぇぞ?」

 俺は冷静な口調で話すことを心掛けつつ、燃え滾るマグマのように熱くなっていた。

「さっきからてめぇの口から家族を罵る言葉ばかり。ふざけんなよ?」

 俺は地球にいた時、ずっと家族に救われてきた。

 それ以外の存在である同級生、下級生、上級生、先生、近所の大人達から多くの差別を受けてきた。俺の能力を罵り、蔑んできた者もいれば、理不尽に俺を罵ってくるものも無数にいた。そんな数えきれない罵倒、侮蔑の視線を受けながらここまで生きてこられたのは、俺の両親が俺の心の支えになっていたからである。もし俺の両親も一生になって俺を罵るようになっていたら、俺は十歳を迎えることなく死んでいただろう。だから俺は、両親の存在を、家族の存在をとても大切にしたいと思っている。

 そんな俺の目の前でマーハンは、家族を金稼ぎの道具みたいな扱いだと断言した。

 人には人の考えがあるかもしれない。例外があるかもしれない。

 けど、家族をモノ扱いされたくないんだ!その理由は、俺の家族は俺にとってどんな存在よりも頼りになり、心休まり、安心出来た素晴らしい居場所だったのだから。そんな素晴らしい居場所をマーハンは馬鹿にした。俺にとってとても許せるものではない。断じて、許せないんだ!

「何?あんたみたいな子供が家族を語る気?家族を持ったことないあなたが?」

 マーハンが俺を小馬鹿にするかのような口調で話しかける。

「確かに家族を持ったことはない。けど、大事にしたい人、妹がいるんだ。それだけじゃあ不満か?」

 と、俺は挑発を返す。

「あなたみたいな家族ごっこじゃあ生きられないのよ。生きるためにはお金が必要なの」

「そのためなら、自身の夫、子供を金稼ぎの道具にしていいと思っているのか!?」

「ええ」

「「!!??」」

 マーハンの言葉に、俺とモミジは目を満月にする。

「おまえ、ふざけん・・・、」

 俺がマーハンに怒号を飛ばそうとすると、

「ふざけないでください!」

 俺より先にモミジが怒号を飛ばす。モミジが怒るたびに、葉や火が飛び交う。その他にも何か飛んでいるような・・・?気のせいか。

「家族に人間も魔獣も関係ありません!家族とは、共に支え合い、協力し合う存在のことではないのですか!?」

「そうね。確かにあの人は、私を支えたり、私のお金稼ぎに協力したりしていたわね。ほら、立派な家族でしょう?」

「家族とは、一方だけを支える存在ではないはずです。家族とは、お互いに支え合い、協力し合う者達のことです!」

「なら、あなた達の思う家族というものを見せてみなさいな。そして証明してあげるわ。私が思う家族こそ、本物の家族であることを。家族とは、金を稼ぐ道具に過ぎないと!」

「そんなことありません!」

「これを見ても、そう言えるのか!?」

 瞬間、マーハンの腕がモミジめがけて向かって行った・・・向かって行った!?あいつの腕、取れる仕様なのか!?俺は急いでモミジとマーハンの間に入り、【反射障壁】を展開する。なんとか跳ね返すことが出来た。

「あ、アヤトさん、ありがとうございます・・・」

「いいってことよ!?」

 瞬間、俺が展開した【反射障壁】に衝撃がはしる。見てみると、さっき飛んできたマーハンの腕と酷似していた。あいつ、2本ある腕の両方を飛ばすなんて、なんてアホなことを、なんて考えた。少し同情もした。その後、マーハンを見たのだが、マーハンには2本の腕がついていた。

「え?」

 どういうことだ?さっき飛んできた腕みたいなものは、実は腕じゃなかったというのか?俺は改めて飛んできたものを確認するが、やはりマーハンの腕だと確認する。だが、マーハンの腕にはきちんと2本の腕がついている。

「まさか・・・!?」

 こいつ、腕が再生するのか!?それも、数秒の間に腕を再生してしまうくらいの速度で!?

「ふふふ。やはりこの体は素晴らしい♪」

 マーハンは甘さを感じられるような声で自惚れする。

「この体なら、どんなに傷ついても、腕が取れても再生する。まさに最強。まさに無敵!」

 そう言い、マーハンは俺達に向けて、拳を飛ばしてくる。それも、無数に。

「!?」

 俺は【反射障壁】に魔力を込める。その上、【反射障壁】を多重に重ね、守りを固める。

(ぐっ!?)

 さっきもそうだが、拳の威力が半端ないな。ザッハが【黄色気】を使って攻撃してきたときの威力と大差ないかもしれないな。その攻撃が無数に襲い掛かってくるとか、どんないじめですか。

(それにしても、やばいな)

 さっきも展開した【反射障壁】がボロボロになっていた。本来、受けた攻撃を反射するはずの【反射障壁】が反射しきれず、俺のところにも腕付きの拳が飛んできていた。

「おやおや。あなたは既にボロボロじゃあありませんか?私はこんなにもピンピンしておいりますのに♪」

 と、マーハンは正常な体を見せびらかす。その体は禍々しくも、まだ余力を残していることが容易に感じられる。

「その程度では、私を倒すことなんて不可能ではないですかね~。なんなら、億万長者を目指した方が、まだ望みがあると思いますよ?」

 と、マーハンは助言になっていない助言をよこす。

「うる、せぇ!」

 そんなこと、言われなくても分かっているんだよ!ザッハの戦いでそれなりに魔力を使ったのに、ここにきてザッハ以上の奴と戦うことになるなんてな。普通、決闘は奇数回で終わらせるだろうが!なんで6という偶数回するんだよ!

 愚痴にしたくなるようなことを思いながら、俺はマーハンから飛んでくる無数の拳を【反射障壁】で防ごうとする。だが。【反射障壁】が破られ、俺の元へ飛んでくる。

(やば!?)

 俺はもう防ぐ手立てがないと直感で判断し、両手で自身の顔を隠すように構える。吹っ飛ばされないように気を付け、覚悟していたのだが、脅威が俺を襲ってくることはなかった。

「ニャニャー!」

「呼ばれてないけどゴゴゴゴーン!アルジンのピンチに駆けつけましたよぉ!」

 その脅威は、ファーリとレンカによって葬られていた。

「ファーリ、レンカ・・・」

 どうして?

「ふん。人間に劣る劣等種共が。人間である私こそが最強であることを、己の死をもって思い知りなさい」

 マーハンの腕が増え始める。こいつ、自分を人間と言っているが、腕を生やすのは人間ではないと思うのだが、それはいいのだろうか。

「人間だろうが魔獣だろうが関係ありません!私を分け隔てなく接してくれた家族を殺させないために、あなたを止めます!」

「愚かな。所詮、あなたの幻想です。幻想なんか、私がこの手でいともたやすく葬って差し上げます」

 そう言い、マーハンはモミジめがけて拳を飛ばそうとする。

「させると思うか?」

 俺は疲労状態の中、出来る限りマーハンを睨みつける。

「ニャー・・・!!」

「まったく。アルジンの大切な方を傷つけようなどとふざけたことを」

 モミジと俺を庇うかのように、ファーリとレンカが存在感を放つ。

(他に戦えそうな奴は・・・)

 周囲を見たところ、イブ、クリム、ルリ、クロミル、ヤヤ、ユユ、ヨヨはこちらに参戦出来なさそうだ。となると、俺、モミジ、レンカ、ファーリの4人でこのマーハンを相手にするしかなさそうだ。今の俺だと、あのマーハンを倒せるだけの力は残っていないと思うし、この場でマーハンを倒せる可能性が最も高いのは・・・、

「モミジ、俺がマーハンの隙を作るから、その間にあいつを倒してくれるか?」

 俺は、マーハンの言葉に対し、最も闘争心を高めていたモミジにお願いすることにした。もちろん俺も協力する予定だが、あんまり戦力としては役に立たないだろう。

「分かりました。私があの方に家族の大切さを体に刻みます!」

 モミジはこれまで以上にやる気満々であった。これなら期待大だな。

「ファーリ、レンカ。モミジがあいつを倒してくれるから、俺達はそれまで時間稼ぎするぞ」

「ニャン!」

「お任せを!」

 そういえば、レンカはいきなり出てきたわけだが、事態は大体把握しているみたいだな。ゴーレムリングの状態になっても、周囲の状況を把握できるようだ。

「たかが4人ごときで、私を止められると勘違いしたその愚かな魔獣共に死の鉄槌を下すとしましょう」

 瞬間、マーハンから拳が飛んでくる。

「ニャア!」

「ふん!」

「【反射障壁】!」

 ファーリは蹴りと角でマーハンの拳を落とす。

 レンカはマーハンの拳を真っ向から受け切る。

 俺は【反射障壁】を多重展開して受け切る。

「コノテイドデオワルトオモウナヨ」

 俺達とマーハン達との決闘が始まる。

次回予告

『4-2-51(第325話) 黄の国での決闘~その8~』

 黒い悪魔現象により肉体が強化されたマーハンは、彩人達に攻撃を仕掛けていく。マーハンは自身の肉体を強化するだけでなく、冒険者のフラッタ、リンドム、デコーダに手をかける。そのことにより状況は一変する。


 こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。

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