1-2-6(第32話) 光風波(こうふうは)
さて、どうするか。確か相手が硬い時の対策は………これだな。俺は自分の使う魔法をイメージした。うん、バッチシだな。
「アヤトさ―――――ん」
「………アヤト」
お。この聞き慣れた声は。
「どこ行っていたのですかアヤトさん!?」
「………ん。探した」
やっぱり、クリム王女とイブだ。
「悪いな。俺はギルドの依頼でヒュドラを討伐することになったのだ。んで、その対策を練っていたのだ。」
「「ヒュドラ!!??」」
あぁ。やっぱり二人とも知らないかぁ。ずっと王宮にいたからしょうがないか。
「ほら、あそこにいるだろ」
「あの山ですか?」
「………大きい」
「あの、倒せるのですか?」
「わからん」
「そうですか。それでは一つお願いがあります」
「………私も」
二人ともそんなかしこまって、何を言うのだろう?
「「死なないで(下さい)!!」」
「きっと大変な戦いとなるでしょう。国の軍も上層部が会議のために動けません。なので、アヤトさんだけが頼りなのはわかります。」
「………それでも、私達には死んでほしくないの」
「「私たちの旦那様だから!!」」
「………おぉ」
そうか。俺はこの世界に来て、大切なものが出来ていたのだな。これはしっかりと守らなきゃな。それと、嫁確定なんだ。もう俺が何言っても無駄な気がする。
「わかったよ。ちゃんと帰ってくる。それまで待っていてくれ。」
「はい!!」
「うん!」
守りたい。この笑顔。
「ところでアヤトさん。一つ聞きたいことがあるのですが」
「………わたしもある」
へぇ。二人してなに聞きたいのだろうか。
「あの、すいませんアヤトさん。私も一ついいですか?」
「え?」
まさかのリーフさんもですか!?いったい何なのだ!?
「「「この人(達)は誰!!!???」」」
………あぁ。そういえば、この三人の顔合わせは始めてか。
リーフさんと別れた後にクリム王女、イブと会ったのだから、当然リーフさんは知らない。そして、クリム王女とイブにはリーフさんのことを一切話してなかったから知らないと。
「まさか二人も嫁をもらっているなんて………。」
「アヤトさん!あの人と一体どういう関係ですか!?」
「………アヤト。もしかして、浮気?」
上から順に、リーフさん、クリム王女、イブが三者三様の反応をしている。というか怒りの矛先がこっちに向いているのですけど。
「あ、じゃぁ俺はこれからヒュドラ討伐に行ってくるから、あとは任せた」
「「「あ、逃げた!!!」」」
しょうがないじゃん!なんか怖いし。
「「「後で説明してね???」」」
「はい」
俺はそれしか言えなかった。
こうして不安が残る中、ヒュドラ討伐に向かった。
はいこちら彩人です。ただいまヒュドラの近くにいます。ですが、顔が見えません。でか過ぎて。
「さて、まずは気付いてもらうか」
俺は思いっきり息を吸う。
「おいヒュドラ!聞こえているのなら今すぐ攻撃をやめてほしい!やめないのなら、力ずくで止める!!」
俺は最大声量でヒュドラに呼び掛ける。反応は、
「ぎゅがああああああああ!!」
一向に攻撃をやめる気配なしか。仕方ないか。
「はあああああああ!!」
俺はある魔法のイメージと同時に、左腕に魔力を集中させる。
ピカあああああ!
「いくぞ!【光風波】!!」