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色を司りし者  作者: 彩 豊
第二章 メイズのような意志を持つ商王と三姉妹
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4-2-43(第317話) 黄の国での決闘~始まり~

 今回俺達が決闘の場で使用するのは、冒険者ギルド内の決闘場である。何でも、首都内で最も強固で安全な戦闘場所がここらしい。その上、前日から土壁を厚くし、さらに頑丈さを強めたらしい。これでよほどのことがない限り、首都に被害は出ないとか。

 俺としては施設の頑丈さより相手の強さが気になって仕方がない。一応、相手の名前が記されているのだが、名前だけでは相手の強さは判別できないのだ。強そうな名前の人はいたかもしれないが、実は激弱だった、なんてこともあるからな。その逆も然り。だから俺は、柄にもなく緊張していたりしていなかったりする。まぁ、全員ぶっ飛ばす予定なのだが。いや、無理か。俺達が3連勝すれば、4回戦と5回戦に出場する3人は不戦敗、という扱いになるのか。9人全員と戦うことになったら2勝2敗することになる。つまり、9人のうち、少なくとも3人に負ける、ということになるのか。ま、俺は5回戦に出場する奴をぶっ飛ばして、他の人達は任せるとしよう。出来れば俺が出場しない事を祈るか。不戦勝といういい意味で、な。

 そんなことを考えながら歩いていると、決闘場に着いた。決闘場には・・・誰もいなかった。どうやら観客はいないらしい。ちょっとほっとしたわ。知りもしない他人に、俺の痴態を見せたくなかったからな。出来れば仲間の敗戦姿も見せたくない。これは単なる我が儘か。

(さて)

 相手は一体どこにいるのかな・・・と思いながら周囲を見渡していると、俺達とは反対側からちょっと前に見た人が現れた。あの女、マーハンである。

「おやおや、よくも逃げずに来られたものですね」

 静かに俺達を遠回しに馬鹿にしてきた。こいつ、俺達が逃げ出すと思っていたのか。

「悪いが、こっちは勝つつもりなんでな。それに、その言葉はお前に返すよ」

「何故?」

「俺達が勝っちまったら、お前の全権利は俺達の物になるんだからな。むしろお前が逃げなくて大丈夫か?」

 と、俺はわざとらしくマーハンを挑発する。

「・・・戯言も今のうちに吐いておきなさい」

 その言葉を聞き終えると、マーハンの後ろには複数の人影が見えた。その人数は9人。おそらく、こいつらが俺達の対戦相手なのだろう。

「今からあなた達が相手するのは、私のお金で雇った冒険者達によって敗北し、あなた達の店だけじゃない。全てをいただいてやるわ。その腕輪も、剣も、ね」

 そう言うと、マーハンは俺達に背を向けて去って行った。後ろにいた9人の冒険者と思しき人達は、マーハンの後ろについて行く。

(!?)

 そんな中、ある一人が俺の事を見た。普段なら、

(なんで俺みたいなボッチを見ているんだ?物珍しさに視線を向けているのか?)

 なんて考えもあったが、ある光景が見えてしまった。

 それは、俺が斬られるシーン。その光景が見えた理由は分からない。だが、確実にあの冒険者、実力は相当なものなのだろう。実力が無ければ、こんな光景を見る事は出来ないだろう。あいつ、一体何者なんだ?それとも、俺の気のせい?

「お兄ちゃん、気を付けてね」

 そんな光景を見て、人知れずおびえていたら、ルリから何か言われた。さっきの言葉から察するに、ルリも俺と似たような光景、もしかしたら同じ光景を見たのかもしれないな。

「どうやらあの中に一人、かなりお強い方がいるようです」

 どうやらクロミルも、らしい。どうしてこの二人が?ま、そんなことはいいか。

「だな」

 とにかく、ルリとクロミルの意見に賛成だ。

 もしあいつと戦うことになったら気を最大限張る必要があるし、最初から全力で闘う必要がありそうだ。

「二人ももしもの時は気を付けてくれよ」

「うん!」

「かしこまりました」

 他のみんなは・・・気づいていないみたいだな。ということは、あいつは俺、ルリ、クロミルに向けて宣戦布告みたいなことをした、という事なのか?だとしても、どうして俺達3人だけ?

(まさか!?)

「おそらく、その考えかと」

 !?く、クロミルか。相変わらず俺の心を完全に掌握しているようだ。

 おそらく、あの冒険者は俺達3人にしか興味がないということ。つまり、

「さっきの人を相手に出来るのは、ルリ達3人だけ、ということなの?」

「・・・おそらく」

 クロミルは俺の言葉に賛同してくれた。出来ればあいつとは当たりたくないものだ。

「?何しているのですか?早く私達も控え室に向かいますよー」

 そんなリーフの言葉を起点として、俺達は歩みを再開する。

「あ、リーフお姉ちゃんが呼んでいる!とにかく、お兄ちゃんもクロミルお姉ちゃんも行こう♪」

 そんなリーフの明るい声質で、

「だな」

 俺は肩で呼吸するように息を吐き、リラックスる。

 とにかく、今あいつの未知なる力に恐れている場合じゃないな。

「はい」

 まずはこれから戦うヤヤ達の心配をしないとな。


 少し歩き、ここは決闘場近くの控え室。本日は俺達の貸し切りである。そうでもなければ、他の奴らが入ってくるかもしれないからな。ここなら独り遊びをしても、独り言を言っても、全裸になっても問題ないだろう。・・・ま、ここには俺以外にも多数の人、それも女性がいるので早々出来ないのだが。特に、この場で全裸になったら、俺はみんなからぶん殴られることだろう。俺もそんな無意味な事、したくないし。何が悲しくてぶん殴られるために全裸になる必要があるのだろうか。て、今はそんなくだらないことを考える必要はないわな。

 俺がこんなくだらないことを考えている間に、ヤヤ、ユユ、ヨヨは戦闘準備を始めていた。ヤヤはともかく、何でユユ、ヨヨまで戦闘準備を始めているんだ?もしかして、すぐに負ける、もしくは勝つ、ということを予測しての行動か?なら、変なことは言わないでおこう。

「それじゃあ私からユユちゃん、ヨヨちゃんに話があるんヤよ」

 準備を続けている中、ヤヤがユユ、ヨヨの二人に話を振った。一体何の話をするのだろうか。

「第一回戦目の決闘なんだけど、二人には見ないでほしいんヤよ」

「「「!!!???」」」

 この発言に、ユユとヨヨが驚いていた。俺も驚きである。というか、みんなはそれで・・・良さそうな奴と良く思わなそうな奴双方いるな。

 イブ、リーフ、クロミル、モミジ、ファーリは何も言ってこなさそうな雰囲気だ。何か言いたそうにはしているけど。

 だが、

「なんでなんですか!?」

「そうだよ!?みんなに見てもらえばいいじゃん!」

 クリムとルリはケチをつけ始めた。俺もケチをつけたいところだが、ヤヤなりに理由があるのだろうと思い、最後まで話を聞くことにした。まさかと思うけど、これだけ話さない、とかないよな?ちゃんと理由も話しくれるよな?

「・・・多分ヤヤ、負けると思う。だからユユやヨヨに、妹たちにかっこ悪い姿を見せたくないんヤよ」

 その言葉に誰もが静かになる。何か言いたそうにしていたイブ達は口を閉じ直し

ルリ達も理由を聞いてか、さっきより大人しくなった。

 俺もなんとなくその理由に納得出来た。俺もこの異世界に来てから妹が出来たからな。食欲旺盛だけど、みんなのことを大切に思っている。駄目な箇所もあるけど、大切な妹だから、俺も意地を張りたくて、かっこ悪い姿を見せたくない。そんな気持ちを持ったことがあるからな。

「それは姉として、なのか?」

 俺がそう聞くと、

「うん」

 静かに答えてくれた。

「分かった」

 ヤヤがそう言うのであれば、俺からは何も言えない。

「でもユユはヤヤお姉ちゃんの・・・!?」

 それでもユユはまだヤヤの決闘を見ようと意思表示を試みる。だが、

「…今一番大事なのは、これから闘うヤヤに、最高の状態で闘いに望んでもらう事。だから今回は我慢してほしい」

 イブがユユを止めてくれた。イブの制止と言葉が効いたのか、

「・・・・・・分かった」

 後ろにいたヨヨも、「…ヤヤお姉ちゃん、頑張ってね?」と、応援していた。

 もしかしたら、ヤヤの戦い方を見て、少しでも戦闘というものを理解してもらう必要もあったかもしれない。けど今回、ヤヤはそれ以上に、自身の敗北する姿でトラウマが発生しないように配慮したんだな。それが正しい判断なのかは分からんが、いい判断だと思う。小さい頃のトラウマってなかなか克服できないものだからな。現に俺、未だにボッチな上、長いこと虐げられて罵られたせいか、自分で自分を自然に罵る自虐行為に走っているからな!・・・威張って言える事ではないけどな。

「それじゃあ、言ってくるんヤよ」

 ヤヤは片手剣と盾を持ち、控え室をでようとする。

「ヤヤお姉ちゃん、頑張ってね!」

「ここから、応援すユ」

 その二人の言葉に、

「ありがと♪ヨヨ、ユユ」

 ヤヤはヨヨとユユの頭を撫でてから、控え室を後にした。

 いよいよ、一回戦目の始まりだな。

次回予告

『4-2-44(第318話) 黄の国での決闘~その1~』

 決闘第1回戦。対戦カードはヤヤとオッサム。戦闘経験なんて無いに等しかったヤヤが冒険者に挑む。


 こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。

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