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色を司りし者  作者: 彩 豊
第二章 メイズのような意志を持つ商王と三姉妹
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4-2-40(第314話) 決闘の準備~ヤヤ~

 彩人達がレンカという名前になったゴーレムと仲良くなり、ギルドで依頼を受けたり、共に訓練をしている中、イブ達もまた、それぞれの訓練を行っていた。

「それじゃあまず、誰が誰を見るか決めますか」

「賛成です!」

「…ん」

 そしてここには、リーフ、クリム、イブの3人がいた。だが、その3人だけではなかった。

「私は誰でもいいんヤよ?」

「ユ。どの人でもいいから、あの人達に勝てるよう、色々教えてほしい」

「ヨヨ、何でも頑張るヨ!」

 ヤヤ、ユユ、ヨヨの3人含め、総計6人集まっていた。何故この6名が集まっているかというと、

「それじゃあ・・・私がヤヤちゃん。イブがユユちゃん。クリムがヨヨちゃんをそれぞれ見る、ということでいいですか?」

 リーフ、イブ、クリムがヤヤ、ユユ、ヨヨの3人に、戦闘技術を教えるためである。

「…ん。問題ない。ユユ、よろしく」

「いつでも準備万端です!行きますよ、ヨヨちゃん!」

 この二人の返事に合わせるかのように、

「こちらこそよろしくお願いします、イブちゃん」

「クリムお姉ちゃん、お願い!」

 ユユ、ヨヨは返事をする。

「…それじゃあ三組に分かれ、少し離れたところで訓練する」

「ですね」

「はい」

 こうして、リーフとヤヤペア、イブとユユペア。クリムとヨヨペア。この3組がそれぞれ訓練することになった。


 リーフとヤヤペア。

「さて。ヤヤちゃんは何か使いたい武器はあるかな?」

 リーフはヤヤに、今回使いたい武器の有無を確認する。

「う~ん・・・。ヤヤは・・・、」

 ヤヤは、今まですれ違ってきた多くの人達の事を思い出し、様々な武器があったことを思い出し、その武器の名称を思い出していく。

「片手で持てる剣と、もう片方の盾を同時に扱いたいんヤよ」

 ヤヤは自分の希望を言う。

「片手剣と盾、ですか・・・」

 リーフは少し考え、

「分かりました。それではまず、その二つを買いに行きましょうか?」

「うん!」

 こうして、リーフとヤヤは、片手剣と盾を求め、店へ歩いて行った。

 少し時間が経過し、

「・・・♪」

 ヤヤは、さっそく買った片手剣と盾をマジマジと見つめていた。その様子は、新しいおもちゃを買い与えられた幼い子供のようである。

「それじゃあ簡単に、剣と盾の扱い方を教えていきますね」

「よろしくお願いするんヤよ」

 こうして、簡易的ではあるが、リーフはヤヤに、剣と盾の扱い方を教えていった。


 さらに時間が経過し、

「なるほど。こうやって構えるんヤね」

「そうです」

 ヤヤの構えがしっかりと様になっていた。この短期間ですっかり基本的な型を習得したのである。

「出来れば剣術も教えたかったのですが、それは時間が出来たらにしましょう」

 そうリーフは言う。そして次にリーフが考えていたことは、

「それじゃあ次は実践、といきましょうか?」

「ええ!?」

 ギルドでの討伐依頼を受け、魔獣と対峙する事である。

「さ、行きますよ」

「は、はいぃ・・・」

 ヤヤは怯えながらも魔獣討伐のため、ギルドへと向かう。

 ギルドで冒険者カードを作成し、依頼を受けられるようになったヤヤは、魔獣討伐の依頼を受領してもらい、先ほどとは別の、ある森の入り口に来ていた。

「さ。今日はゴブリンの討伐です。ヤヤちゃん、頑張りましょうね」

「が、頑張るけど、ヤヤ、自信がないんヤよ」

 と、ヤヤは怯え、腰が引いている状態となっている。

「最初の魔獣討伐なんてそんなものですよ。それに私が付いていますから、安心して付いてきてくださいね?」

「は、はい!」

 こうしてリーフとヤヤは森の中に進んでいった。

 二人はさらに森の中を進んでいく。

「ちょっと止まって」

 リーフは後ろのヤヤに声をかける。その声のボリュームは小さくともはっきりとしていて、緊張感のある言葉であった。

「!?」

 そのリーフの言葉にヤヤも緊張し始め、警戒心を強めていく。

「・・・あそこみたいですね」

 リーフの視線の先には、複数の小鬼、ゴブリンがいた。ゴブリン達が何をしているのか詳細を把握できなかったが、何か立ったまま話し合っている、ということをリーフは見て予測する。

(今のヤヤちゃんですと、5匹いっぺんに相手することは出来なさそうですね)

 リーフはヤヤの現在の力とゴブリンの力を考慮し、作戦を組み立て始める。

「いい、ヤヤちゃん?」

「ん?何ヤよ?」

「これから私があのゴブリンを1匹まで減らしますから、残り1匹はヤヤちゃん一人で頑張ってくださいね?」

「ええ!?」

 ヤヤは声を少量に抑えつつも、声質から驚きの感情が見て取れる。

「そ、そんないきなり、無理ヤよ」

「大丈夫です。きちんと私の戦い方を見て、参考に出来るもの、今の自分に出来そうな事はどんどん実践していってくださいね?もちろん、危なくなったら私も助けますからね」

「・・・うん」

 これから、

「さ、行ってきます、ね!」

「「「「「!!!!?????」」」」」

ヤヤとリーフのゴブリン討伐が始まる。

「はぁ!」

 リーフはゴブリン5匹を襲撃し、

「!?」

 5匹の内、1匹の心臓を突き、絶命させる。その後、すぐさまレイピアをゴブリンの体から引き抜き、最も近くにいたゴブリンに狙いを定め、再びレイピアで絶命させようと体を動かし、腕を向かわせた。

「ゴブ!」

 だが、ゴブリン達は一匹を亡くしたものの、その事象によりリーフの存在を認識し、リーフの突きを躱そうと動き出す。

 だが、

(その程度の身のこなしなど、想定済みです!)

 リーフはそのゴブリンの動きをも予測し、突きを繰り出していた。そのため、2匹目のゴブリンも絶命した。

「「「ゴブ!!!???」」」

 そのリーフの攻撃に、ゴブリン達は違和感を覚えた。そして、無意識にリーフではなく、リーフより弱そうなヤヤ一点を狙い、集中攻撃を始めようと動き出す。

「ひ!?」

 ヤヤはその様子に怯え、足が固まり、動けなくなってしまう。

「ヤヤちゃん!」

 リーフはすぐにヤヤの元へ駆け寄り、

「!?」

 ゴブリンを1匹絶命させる。だが、残り2匹のゴブリンがヤヤめがけて棍棒をふろ下す。

「しっかり相手を見て!」

 リーフのヤヤに対するアドバイス。その言葉が届いたかどうかは、

「!?こ、こ!」

 1匹の攻撃を視認して躱し、もう1匹のゴブリンの攻撃を盾で受け切った事から察することが可能だろう。

「そう、です!」

 攻撃を躱されたゴブリンを思いっきり切りつけ、ゴブリンの頭数を1にまで減らす。

(後はヤヤちゃんに任せるとしますか)

 リーフはここで、細剣についているかもしれないゴブリンの血を払う。一方ヤヤは、ゴブリンとのつばせり合いに必死になっている。

「・・・!」

 言葉にならない声で自身の意識を保ち、ゴブリンと対峙している。

「ヤ!」

 やっとまともな発生が出来たかと思うと、ヤヤはゴブリンを力だけで追い払い、ゴブリンとの間合いを確保する。

「「・・・」」

 ゴブリンとヤヤは互いに探り合っているのか、にらみ合っているものの、動きがない。

(硬直状態、ですね)

 リーフは手を出さず見守っている。リーフが手を出してこないと分かったからこそ、ゴブリンはヤヤに意識を集中できている。きっとリーフも参戦すると分かっていたら、ゴブリンは武器を投げ捨てて降参するか、全力で逃げていたことだろう。

 そして先に仕掛けたのは、

「ヤー!」

 ヤヤであった。ゴブリンはヤヤの攻撃を睨みつけるように見て、

「ガ!」

 ゴブリンはヤヤの攻撃を棍棒で受け止める。

「きゃ!」

 ヤヤはゴブリンの受け流しに翻弄され、バランスを崩してしまう。その隙を見逃すほど、魔獣であるゴブリンは見逃さない。

(あのままじゃあやられる!)

 リーフは咄嗟に判断し、

「ゴ、ゴブ!!??」

 ゴブリンの棍棒を完全に受け止める。その後、ゴブリンの棍棒を弾き飛ばし、ヤヤとゴブリンの距離を確保する。

「あ、ありがとうなんヤよ」

「それは後です。まだ、いけますか?」

「・・・」

 ヤヤは、リーフの問いかけにすぐに答えることが出来なかった。何せ、さきほどの攻防でいかに自分が無力で、目の前にいる女生と比べて弱いのか、戦闘経験が0に等しいヤヤでも理解出来てしまったから。

 そんなヤヤの様子を見て、

「大丈夫」

 リーフはそう宣言する。

「え?」

「危険だと判断したら、さっきみたいに私が全力で支えるし、声もかける。だからヤヤちゃんは、今ヤヤちゃんがだせる力をあのゴブリンにぶつけて下さい」

 厳しさもさることながら、愛情をもってかけられたリーフの言葉に、

「分かったんヤよ!」

 ヤヤは再び立ち上がる。

「!?邪魔です!」

 リーフは急接近してきたゴブリンを細剣で追い払う。そして、追い払ったゴブリンの周囲には、さきほどのゴブリンの他に、どこからか現れてきたゴブリンが数匹武器を持って臨戦態勢をしいていた。

「そ、そんな。どうしてこんなに?」

 ヤヤは多数のゴブリンの出現に驚き、希望を絶つ。

「おそらく、さきほど倒したゴブリンの血の匂いをたどってきたのでしょう」

 リーフは自身の殺傷行為に多少後悔する。自分がもっと早急に臭いの対処を行っていれば、あのゴブリン達はここに現れなかった。そうリーフは考える。

「なので、あのゴブリン達は私でやります。ヤヤちゃんは引き続き、あのゴブリンをお願いしますね?」

 そうリーフが頼む。そのリーフが持っている細剣はゴブリン達の方へ向いており、その見えない威圧がゴブリン達の動きを、感覚を鈍らせている。

「は、はい!」

 ヤヤはリーフの問いを了承し、立ち上がる。その方向の先には、さきほど立ち向かったゴブリンがいる。

(では、私もやりますか)

 そのヤヤの背中を確認した後、

「さ、ヤヤちゃんにはその棍棒、一切触れさせませんよ」

 リーフは構え直し、ゴブリン達へ向かい、駆け出す。

「「「ゴブー!!!」」」

 ゴブリン達は、リーフが相手でも複数人一斉にかかれば勝てると思ったのか、統一した動きでリーフに襲い掛かる。

「!?」

 リーフはそのゴブリン達の動きを見て予測し、動く。

「「「!!!???」」」

 ゴブリン達の攻撃を躱した際、ゴブリン達それぞれに切り傷をつける。

「さ、きちんと相手していただきますよ」

 そう言い、ゴブリン達の血が剣先についた細剣を向けた。

「わ、私も、頑張らなくっちゃ!」

 ヤヤも1匹のゴブリンを討伐するため、片手剣と盾を構え直す。

「ご、ゴブー!」

 ゴブリンはヤヤめがけて、腰にさしていた小さめの斧を投げつける。

「ふん!」

 ヤヤは盾で斧を防ぐ。その隙にゴブリンは近づき、棍棒でヤヤをつぶそうと振り上げる。

「させない!」

 ヤヤは振り下ろされた棍棒を片手剣で受け流す。その後、隙が出来たゴブリンをヤヤは思いっきり切りつける。

「ゴブ!?」

 ゴブリンは先ほどのヤヤと動きが変わった事に驚き、ゴブリン自ら距離を確保する。

「そんな時間なんて、与え、ない!」

 ヤヤはそんな引き腰のゴブリンとの距離をつめ、攻撃態勢に入る。ゴブリンは再び棍棒で潰そうと振り上げ、態勢が崩れながらも振り下ろす。だが、態勢が崩れたせいで力が込められていなかったのか、さきほどより棍棒の勢いが弱まっている。

「ヤ!」

 ヤヤは盾を構え、ゴブリンの棍棒めがけて接近させる。そして、棍棒と盾がぶつかり合う。ぶつかり合った結果、

「ゴブ!?」

 ゴブリンが押し負けた。おそらく、十分に力を込めることが出来なかったためなのだろう。ゴブリンの棍棒はゴブリンより背後に位置し、完全にゴブリンはのけぞる。

(今ヤ!!)

 ヤヤはその瞬間を逃さず、剣を突き刺す。

「!?」

 ゴブリンは驚き、目を見開く。そして、棍棒を持つ力も徐々に弱まる。ついに棍棒がゴブリンの手から離れる。

 ヤヤは油断することなく、剣をゴブリンの体から引き抜き、警戒しながらゴブリンの様子をうかがう。

「・・・倒した?」

 その問いに答えたのは、

「ええ。きちんと一人で倒せたみたいですね」

 リーフだった。リーフも戦いを終えたのか、リーフの背後には、ゴブリンの死体が転がっていた。

「うん・・・うん!」

 ヤヤはこうして、自力だけで魔獣を倒せたことを実感する。それと同時に、

「!?」

 ヤヤは周囲に漂う異臭に、光景に我慢できず、顔を下に向ける。

「き、気持ち悪いんヤよぉ・・・」

 どうやら、ついこの前までただの町娘だったヤヤには、このゴブリンの死体は刺激が強過ぎたらしい。今にも嘔吐しそうなくらい顔色を悪くしていた。

(まだこの光景、この臭いには慣れる事は出来ないですよね)

 リーフもこのヤヤの惨状に納得しつつ、ヤヤの介抱を行う。

(ま、ゴブリンを倒せただけでも大きな進歩です)

 リーフは温かい目でヤヤを見て、後始末を始める。

 こうして、リーフによるヤヤの特訓が始まったのであった。

次回予告

『4-2-41(第315話) 決闘の準備~ユユ~』

 ヤヤがリーフ付き添いで特訓を行っている一方、ユユもイブ付き添いで特訓を始める。


 こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。

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