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色を司りし者  作者: 彩 豊
第二章 メイズのような意志を持つ商王と三姉妹
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4-2-37(第311話) 商王、マーハンとの話

 翌日。俺達は今、黄の国の首都にある城?家?宮?まぁ、とにかく豪華な建物の中に入っている。理由は商王に会うためである。それにしても、何故俺達をここによんだのだろうか。その真意は一体何なんだ?

 仲良くなりたいとか、ヤヤ達の仕事の事を聞きたいとか、そんなことならいいんだけどな。そんなことを考えながら、俺達を先導している黒服の人の後を付いていった。

「お待たせいたしました。こちらとなります」

 黒服の人が泊まったかと思うと、扉を開け、入るよう促される。

(入るか)

 俺は黒服の指示に従い、部屋に入っていく。

「誰かいるー」

 そうルリが言い、ある人物を指差す。

「ルリ様、あまり人を指差す行為は礼儀上よくないかと思われます」

「へぇー。今度から気を付けるねー」

 ルリの奴、クロミルの言葉を聞き流している気がする。確かに人を指差すのはマナー違反だよな。ま、俺は指を指されるのではなく、下に向けて「死ね」なんて何度も言われていたのだが。…急にあの頃の自分を抱きしめたくなってしまった。

「では私はこれで」

 全員が入り終えると、黒服の人は扉を閉める。これでこの部屋は密室となった、というわけだな。

「待っていたぞ」

 ここで、今も偉そうに座っている人物が言葉を発し始めた。

(この声、もしかして、女か?)

 てっきり商王、なんて呼ばれているらしいから男だと思っていたのだが、違ったのか。

「まず、そこに座るがよい」

 そう言い、女は俺達の近くにあるソファーを指差す。そういえば、この女は商王なのか。自ら名乗っていないから、商王だという確信が無いな。勝手に商王だと思い込んでいたが、俺の思い込みかもしれないな。

「うわー。フッカフカー♪」

 そう言い、ルリはソファーに乗ってから柔らかさを堪能している。

「「「「「「「「「・・・」」」」」」」」」

 一方、俺とルリを除くみんなは、冷静にソファーに体を預ける。ルリと同年代っぽいヨヨも、ここでは騒がないんだな。躾がしっかりされているみたいだ。さすがだな。

「それではまず初めに名乗らせていただきます」

 そう言い、女は一度立ち、軽く衣服を整える。

「私はマーハン・キハダ。この国の商王である」

 女はそう言い終えると、再び席に座る。もしかして、そのことを言うためだけに席を立ったのか?なんか、カロリーの浪費じゃね?もしかしたら、名乗る時は起立して己の名を名乗る、なんて規律があるのかもしれないな。そんな郷は知らないから従えないが。

(というか、俺達も名乗った方がいいのか?)

 相手が名乗ったんだ。ここはまず自己紹介するという事で、自分の名前を言った方がいいのかもしれない。地球では自己紹介なんてした覚え、ほとんどないが。何せ、自己紹介するほど人と話してこなかったもの。話そうとするといじめられ、罵られ・・・。

「…俺はアヤトだ」

 自虐してしまったせいで、俺は暗めに自身の名を商王、マーハン・キハダに言う。

「リーフです」

「クリムです」

「…イブ」

「ルリだよー」

「クロミルです」

「も、モミジ、です」

「ヤヤヤよ」

「ユユ」

「ヨヨって言うんだヨ」

「ニャニャーン」

「『ファーリと言います』だって」

 それぞれ挨拶を行い、名前を伝える。

「ふむ・・・」

 マーハンは少し考えこんだ後、

「そうか。まず、ここまできてくれたこと、心より感謝する。そして、早々に今回呼び出した目的を話すとしよう」

 そう言い、マーハンは姿勢を変え、より礼儀を欠くことのない姿勢へと変える。

「あなた達の店の全権利を譲ってほしい」

 マーハンは今回の目的である事項を話した。


「・・・何故?」

 俺は、マーハンが何故そのようなことを言ったのか、その真意を知るため、このタイミングで声を荒げることなく質問する。

「その者達が続けている店は今、この首都でも噂がたっております。そんな中、経営不振で店を畳んでほしくないのです」

「だから、後は自分たちに店の経営を任せてくれ、と言いたいのか?」

「はい」

 確かに体のいい理由だ。今ヤヤ達が開いている店が流行り、盛んになるのであれば、このタイミングで店を畳むわけにはいかないだろう。

(だが、それでヤヤ達はいいのか?)

 経営をこんな誰とも分からん奴らに任せても何も思わないのだろうか。もちろん、この商王だって、商業一筋で成り上がってきたやつだ。きっとこいつに任せれば、ヤヤ達のお店も大繁盛するかもな。でも、ヤヤにとって、ずっとやりたかったことをやっと店として昇華し、今もそのやりたかったことで生計を立てているんだ。そんな大事な店を簡単に渡すのか?それとも、渡さざるを得ないほど、この商王の影響力がすさまじいのか?

「その言葉、凄くありがたいんヤよ」

 商王の言葉に対し、ヤヤは感謝の言葉を贈った。ということは、ヤヤ達の店をこの商王に譲る、という事なのか?俺としては渡して欲しくないのだが、最終決定権はヤヤにあるだろう。

「でも、そのお話はお断りさせていただくんヤよ」

「「!!??」」

 商王は驚いたが、俺も驚いた。

(い、いいのか?)

 仮にも国王、じゃなかったか?そいつに歯向かうような形になっている気もするが、俺の気のせいか?

「何故、ですか?」

 商王はヤヤの顔面を見ながら聞く。その眼差しはまるで、腹の探り合いを行っているかのようだ。

「確かにあなたのような、私よりも優れた商才をお持ちのあなたに任せれば、あの店はもっともっと繁盛するかもしれない」

「であれば何故?」

「あの店は私が昔から考えていた店なんヤよ。だから、私達の方法であの店を切り盛りし続けていきたいんヤよ」

 そうヤヤは言ってくれた。

「…それより、どうしてあなたはヤヤの店の権利を欲しがるの?」

 ここでイブが商王、マーハンに質問する。

「それは、あの店の将来を・・・、」

「…嘘」

「!?」

 イブは、マーハンの言い分を聞かずに断言する。

「…本当は、あの店が見込める利益目当て。違う?」

 その言葉に、一瞬だったがマーハンがぶれた。

「そ、それは、あなた達だからこそ出来たものでしょう?であるなら、例え私達があなた達の店の権利を譲ってもらったとしても、商売なんてとても・・・、」

 確かにそうだ。俺もヤヤ達が切り盛りしている店の商品は物なんかじゃない。敢えて言うなら・・・心の病院、というところか。資本はヤヤ達だからな。あの店の建物、土地をもらったところで何も出来やしないだろう。そのことも理解しているから、マーハンも言っているのだろうな。

「…その為に権利を乱用し、【決闘】を強要させる気、なんでしょう?」

「!?」

「決闘って、あの決闘か!?」

 赤の国では確か・・・死んでも罪を問われない闘い、じゃなかったか!?まさか、そんなことをヤヤ達にさせる気なのか!?

「…でも、決闘は決闘と言っても、どうやらこの国独自の規定が付け加えられているらしい。その規定もあなたが独自に付け加えた、違う?」

 ・・・イブ、あなたは一体何を言っているんだ?というか、どこまで知っているんだ?俺、イブの言っていることがまだ完全に理解出来ていないのだが?

「・・・その情報をどこで?」

「…こちらにもいくつか繋がりがある。それも、信頼のある」

「・・・はぁ」

(!?な、なんだ!?)

 マーハンがため息を聞いた瞬間、マーハン周辺の空気が一変した。

(これがおそらく、奴の本性だな)

 この空気、前にも感じたことがある。

 確か・・・俺をいじめてきたやつがまとっていた空気に似ているな。あの時、性格的に暗かった俺を隠したと認定し、明るい性格であった己を自ら格上と判断し、俺をいじめてきたあいつだ。まさかこんなところでいじめのフラッシュバックをしてしまうとは思わなかったわ。

「そうよ。だけどこの案は、私利私欲だけではないの。これはあなた達を必要としている人々をより増やすため、あなた達の店をより通いやすくするための提案でもあるの」

 さっきより砕けた雰囲気でマーハンは話しかける。

「だから、分かってくれるわよね?」

 マーハンはヤヤに了承の意見を求める。

「それでも、ヤヤは断るんヤよ。何度も言いますけど、ヤヤは私、ユユ、ヨヨの三人であの店を切り盛りしていきたいから」

 ヤヤは優しい口調でマーハンの提案を完全に断った。

 だが、

「いえ。それは認められません」

 断ったヤヤを断った。

「…つまり、店の権利を譲れ、と?」

「いーえ?ですが受けた方がよろしいかと」

 そう言い、マーハンはカップに注がれている飲み物を一口分含む。そういえばこの飲み物、美味しいのだろうか。

「私、まだこの国の管理が行き届いていないため、いつゴロツキがあなたの店を襲撃するか分からないわ」

「「「!!!???」」」

 そのマーハンの言葉に、俺だけでなく、マーハン側の人間以外の俺達は全員驚いた。

(こいつ・・・!)

 間違いなく脅してやがる!

「…つまり、あなたの提案を呑め、と?」

「ええ。ゴロツキから店を守るためにも、ね」

 そう言いながら、マーハンは再び飲み物を口に含む。

「でも、あなたたちの気持ちもある程度分かるのよ。だから、私からは第三の提案をさせてもらうわ」

「第三の提案、ですか?」

 ここでリーフがマーハンの言う第三の提案について質問する。

「ええ。第三の提案は、私達とあなた達の選抜された者で決闘をするの」

「「「・・・」」」

「決闘の勝者側は、敗者側の全権利を譲る、というのがこの国の決闘の規定よ」

(嘘、だろ・・・?)

 俺の想像が合っているかどうかは分からないが、もしかして、全権利とは文字通り全権利の事、つまり、生命剥奪権や人権、命も譲る、なんてことはないだろうな。それらの権利も全権利の中に含まれている、なんて事態はないと嬉しいのだが・・・。

「それで、どうする?受けます?それとも、受けない?」

 マーハンが二択のような一択のような質問をしてくる。

(これは・・・)

 さっきの話を踏まえると、こいつの誘いに乗ったうえで、その決闘でこいつに勝つ必要があるな。そう考えると、誘いを断らない方が良さそうだ。もし断れば今後、ヤヤ達に何をされるか分かったものではないからな。

「いいでしょう!その決闘、受けます!」

「「「・・・え???」」」

 俺が思考していると、クリムがマーハンの提案にいち早く乗った。いや、乗ってしまった。確かに乗ると俺も考えていたのだが、結果を口にだすのが早過ぎないか?せめて決闘の詳細なルールを把握してからでも遅くはないんじゃないのか?いや、クリムのことだ。きっと、決闘の詳細なルールを把握している上で答えた・・・のか?クリム、結構脳筋気質だから分からん。俺も結構脳筋な気がするがな。

「そうですか」

 俺は見逃さなかった。

 まるで、嘘泣きをばらさないよう必死に隠す女性のように、その唇が下がっていく涙と反対に上昇していることに。ま、こいつは今、涙も流していないし、顔も隠していないのだが。

(こいつ、絶対に何か企んでいやがる!)

 その悪巧みも散々見てきたからな。いじめられっ子舐めんな!

「では、決闘の詳細な情報に関しては後日、ということにして、決闘は七日後に行いましょう」

 そう言うなり、マーハンは席を立つ。

「出来れば、決闘前に負けを認めてもよいのですが・・・、」

「誰がお前みたいな弱いやつに負けるか!お兄ちゃんはいっちばん強いんだからね!」

 あ!?ちょ・・・、

「そうですか。では本日はこれで」

 そしてマーハンはこの部屋を後にした。

(ど、どうしよう・・・)

 まぁ事前に負けを認めることはしないつもりだから別にいいけどさ、ルリの奴、このタイミングで相手を挑発なんぞしおって。誰だ!こいつをこんな風に育てた奴は!?・・・もしかしなくとも俺か。この性格、間違いなく俺を見てこの性格を育んできたのだろうな。俺、こんなに好戦的ではないと自覚していたのだが、客観的には違っていたのかも知れない。

(・・・まぁいいか)

 やることは大して変わらないと思うし、多少追い込まれていた方が力も発揮しやすくなるかもしれない。火事場の馬鹿力、なんて言うしな。

「では、アヤト様方も退室をお願いいたします」

 今まで壁の模様と一致していたかのように存在感皆無だった男が突然話しかけてきた。こいつ、いままでずっとこの部屋にいたのか?まったく気づかなかった。

「あ、あぁ」

 俺達はこうして、部屋を後にした。

「…それにしても脳筋おバカは後で説教」

「え?」

「そうですね。今回ばかりはあの場に連れていくべきではなかったかも、ですね」

「ええ!?な、何で!?」

「「馬鹿したから」」

「い、いつ!?」

「「はぁ・・・」」

 どうやらクリムは、イブとリーフにお説教されるらしい。お説教内容はおそらく、勝手に決闘を受諾した件だろうな。

「「「???」」」

 他は大体分かっていなさそうだ。今も静かに後を付いてきているクロミルはおそらく気付いているだろう。なんとなくだけどな。

 さて、まずは後日知られてくる決闘の内容について、いち早く理解しないとな。

次回予告

『4-2-38(第312話) 理不尽に決まってしまった決闘内容』

 決闘内容を把握した彩人達は、戦闘経験がないヤヤ、ユユ、ヨヨの3人も決闘に参加させなくてはならないことを理解する。


 こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。

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