1-2-5(第31話) リーフ=パールの情報収集
俺は今、王都の外壁の上にいる。ヒュドラの動きを観察するためだ。今もヒュドラは暴れていた。どこで暴れているかはわからないが。さて、これからどうすべきだろうか。
「あれ!?もしかして、アヤトさんですか!?」
なんだ?ヒュドラのいる方向から、一人の女性が近づき、俺に話しかけてきた。
「アヤトさん!お願いします!どうかあのヒュドラを倒してください!!」
いきなり頼み事されてもな。あれ、もしかしてあの人は。
「もしかして私のこと忘れてしまったんですか?私ですよ!リーフ=パールです!!」
そう。最初の町「スカーレット」のギルド職員のリーフさんだった。
「俺がいなくなってから、あの街はどうだった?」
「そんな世間話は後です!そんなことより伝言です!」
俺との世間話をそんなことって。泣いてもいいですか。
「伝言って、誰から?」
「ギルドマスターからです。」
「それで?」
「ヒュドラ討伐を依頼する。報酬は後日、とのことです」
多少信頼しているからいいけど、報酬のところはちゃんと言ってほしいな。
「それだけですか?ヒュドラの弱点については?」
「知りません。だからアヤトさんに依頼したのです」
俺は何でも解決できるわけではないのだが。
「あの、もし断ったら」
「地獄の果てまで追いかけて、依頼を受けさせます」
「こわ!?そんなことしたらギルドの信頼がた落ちですよ」
「他に解決できる人がいないので、アヤトさんにお願いするしかないのです」
「他の高ランクの冒険者パーティーに」
「お願いしますアヤトさん!どうかこの依頼を受けてください!!」
リーフさんが俺に平謝りをしてまでお願いしてきた。
これはもう冒険者として、男としてもこの依頼を受けないわけにはいかないな。
「………わかった。この依頼、受けるよ」
「!?ありがとうございますアヤトさん!」
「今回は失敗するかもしれないし、報酬だって高くつくぞ」
「それでも構いません!これはギルドマスターと私たちの街の意志です」
「たく。あの街の住民はみんな馬鹿なのか?死ぬかもしれないのに、その場にいない人間を頼るなんて」
「それ程アヤトさんの存在が大きかったのですよ」
「俺を買い被り過ぎなんじゃないか?」
「自覚がないのは相変わらずですね」
自覚?それは何に対する自覚なのだろうか。
さて、そんなことより、まずは情報取集だな。
「それでリーフさん。ヒュドラの情報は?」
「それなのですが、」
「やっぱそうだよな。」
リーフさんの表情を見て分かった。そりゃそうだよ。あんなバケモノと戦う命知らずなんていないし、そもそも近づくのだって難しいのだから、無理もないだろう。
「ヒュドラは毒のブレスを吐き、周りの植物を枯らします。そして、あの動きと目つきから、おそらくヒュドラは何者かに操られているか、混乱状態に陥っているでしょう。次に、あの九つの首は普通に切断してもすぐに再生してしまいます。そもそもヒュドラの体はとてつもなく硬く、生半可な力や剣ではすぐに折れて、やられてしまいます。以上の点から、ヒュドラの鱗や体、首などの対策が必要になってきます。後、毒対策をすることもお勧めします。これが私の調べたことです。すいませんアヤトさん。こんなことしかわかりませんでした」
「いやいやいやいや!十分!十分ですリーフさん!ありがとうございます」
「それでどうですか?勝てそうですか?」
「うーーん。わからん」
一応、策は考えてはあるのだが、これでいけるか微妙なんだよな。
「その答えが聞ければ十分です。それではアヤトさん、どうか私たちのホッt、命のために頑張ってください。」
「おいちょっとまって、リーフさん。今ホットケーキって言わなかった?」
「………頑張ってください」
リーフさん、そんなそっぽ向きながら言うセリフじゃないですよ。