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色を司りし者  作者: 彩 豊
第二章 メイズのような意志を持つ商王と三姉妹
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4-2-33(第307話) 崖の上の滝

 マジかよ。

 どうりでなかなか安定した供給が出来ないわけだ。それにこの壁が妙に湿っているのもこれで納得できる。それに、ルリが聞いてきた事もだ。

「…あれ、どうする?」

 イブがみんなに聞いてくる。

「私は無理なんヤよ」

「「うんうん」」

 どうやらヤヤ達は無理らしい。それどころか、普通の人は取りに行くことは不可能だろう。採取するために、この崖を数メートル、下手したら十メートル以上登り続けなくてはならないかもしれないからな。そんなのは辛いだろう。

「さて。採りに行こうかな」

「…一応聞くがルリ、何をしようとしている?」

 なんかルリが準備運動みたいな事をしているのだが?まるで、これから激しい運動をするかのような、そんな気がする。

「何って、あそこまで飛んでいこうかと」

「うん、辞めておけよ、絶対」

 失敗した時のリスクがでか過ぎるだろう。骨が何本折れる事やら。

「ではご主人様、この壁を登りますか?」

「それも却下だ」

「かしこまりました」

 命綱無し道具無しのロッククライミングとか、新手の拷問か何かですか?俺だってそんな鬼畜な事をさせるほど鬼ではない。・・・似たようなことは緑の国でさせてしまったかもしれないが、そんなことは過去の出来事だ。それに、あのウッドピクシーの事は偶然だ、うん。

「それじゃあどうするのですか?」

 と、モミジが聞いてきた。

 う~ん・・・。

 あ。

「これならいける」

 普通の人なら思いつきもしなかっただろうが、俺は違う。俺はボッチという人種だからな!…ほんと、自分で考えておいて悲しくなる。

「?…どうやって行くの?」

「こうやって、だよ」

 俺は緑魔法で足の裏に風を発生させ、上方へと少しずつ進んでいく。これ、結構風のコントロールが難しいな。

(あ)

 俺が噴出している風のせいか、みんなの服が捲れ始める。パンチラ、期待してもいいですか?いえ、駄目ですね。真面目に上方へと向かいましょう。

 みんなから少し離れたことを確認し、俺はさらに加速し、短時間で目的の場所へと到達した。

「へぇ」

 本当に滝が存在しているんだ。下からでも見えていたが、近くで見ると圧巻だ。それにしても、ここって本当にきづらい場所か?緑魔法を使えば一発だと思うのだが。少し危険でも、壁をよじ登ったり、赤魔法で足の裏から火を噴射して、その勢いで移動したりとか、方法はいくらでもあると思うのだけど、試さなかったのか。

「後は上からロープ、を・・・」

 他の方法として、この滝より上からロープを下ろし、降りていけばいいと思っていたのだが、上が見えない・・・。この壁、上にどこまで続いているんだ?ということは、下から登ってくるしか方法はない、ということか。

「そういえば、」

 植物の蔓を用いて、ここまで持ち上げていけばよかったかも。ま、今はこうして着いたことだし、今はいいや。

「・・・」

「?」

 何か下の方で言っている気がする。よく聞こえんが。

(ここから見ると、みんなが口パクしているように見えるな)

 なんか面白い。

 あ!?ルリの奴、なんか崖に手をかけていないか!?あいつまさか、この壁をロッククライミングするつもりか!?

(まったく)

 少しは辛抱くらいしてほしいものだ。

 さて、それじゃあここからどうするかな。みんなをここに連れていくためにはどうすべきなんだ?

 ・・・。

 これでいくか。

(でも、面倒くさいなぁ)

 俺が今回思いついた方法は、俺が直接運ぶこと。この方法であれば、俺が下手な操作をしなければ失敗しないし、確実性が高い。最も不安な要素といえば、俺の魔力操作の精密さくらいなのだが、さっきは成功したし、問題ないと思う。

 もちろん、他の方法も考えてはいる。

 その他の方法は、壁に植物を生やして足場にすることや、植物の蔓を生やしてみんなをこの滝があるこの高さまで持ち上げる事だ。

 これらの方法を実践してもいいのだが、壁に植物を生やして足場にする場合、植物の強度が心配だし、命綱がないのは心配だ。植物でみんなを持ち上げようとしないのも同様の理由だ。もし途中で足場にしていた植物が千切れたり燃えたりしたら大変だからな。

 俺は緑魔法でゆっくり目にルリ達の高さまで下りる。

「ねぇねぇ、お兄ちゃん!どうだった!?茸、ちゃんとあった!?」

「…あ」

 そういえば、滝の有無は確認していたが、詳しく見ていなかったな。

「・・・もしかして、見てないの?」

 やばい。ルリからの視線が痛い。心なしか、ルリ以外の視線も突き刺さっている気がする。

(よし。ここはスルーしよう)

 秘儀、ボッチの視線スルー!これを使うことにより、一時的に人の視線を感じなくなる。・・・現実逃避はこれくらいにするか。

「これから俺が数回に分けてみんなを運んでいくぞ。まずはリーフとモミジ」

 俺が突然名前を呼んだことにより、二人の体が若干強張ったものの、

「「は、はい!!」」

 返事をする。さて、二人を運ぶとするか。俺は二人を引き寄せ、

「「!!??」」

(こんなもの、か?)

 俺はさっきと同じように、緑魔法で足の裏から風を発生させ、あの滝のある崖まで飛んでいき、二人を下す。このような作業を数往復繰り返し、ようやくみんな、滝がある崖に辿り着くことが出来た。

 みんなを運び終えて、1つ、疑問に思ったことがある。

(そういえば、【結界】を足場にして、その足場にみんなを乗せて運んだ方が短時間で行けたんじゃないか?)

 ・・・。

(ま、いいか)

 俺はこのことについて、これ以上考えないようにした。今後悔しても仕方がないからな。後でしっかり考えるとしよう。

 全員を運び終えたころ、

「わーい♪茸がいっぱいだー♪」

「…♪」

 ルリとイブは、茸採集に集中している。あの二人は今のところ駄目そうだ。ほっといておこう。

「ユユ―。ヨヨー。この滝の水、とても美味しいんヤよー」

「どれどれ・・・確かにこれは美味しいユ」

「美味いヨー♪」

 滝を堪能しているな。こういう水って迂闊に飲まない方がいいって聞いたことがあるような?いや、三人は、この滝の水が飲めると確信しているのだろう。

「この土地、地形から察するに、だいぶ前に出来たもののようです。それにだいぶ昔、人が来た形跡があります。」

「みたいです。ですが、この跡そのものが古過ぎて、この跡から誰が、どの魔獣がこの地に来たのかまでは断定出来なさそうです」

 リーフとクロミルは、この地について調査している。あの二人は真面目だなー。俺と違って。

 あれ?モミジは?

「え?こっちに穴があるって?教えてくれてありがとう」

 ・・・やばい。一瞬、モミジが草花と対面して独り言をぼやいているとても悲しいボッチに見えたわ。実際、モミジは植物と会話している。決して、モミジが独り言をぼやいているわけではない。ない、よな?ちょっと心配になってくる。

「アヤトさん、アヤトさん」

 モミジに対し、子供を心配する親心を向けていると、モミジから話しかけてきた。まさか、俺の心の中で思っている事、ばれたのか!?

「な、なんだ?」

 声が若干裏返ってしまったが、気づいていないだろうか?

「あの滝の横に穴があるらしいんです」

 モミジは滝の横の穴を指差す。その穴は、成人男性も入れるくらいのサイズであった。あの大きさなら、俺も入ることができるだろう。

「本当だ。有力な情報ありがとうな、モミジ」

 俺はモミジに感謝の言葉を告げる。

「い、いえ!私なんかにありがとうだなんてもったいないですぅ!」

 と、過剰に拒否されてしまった。なんか拒否され過ぎて悲しくなってくるな。

「もったいなくないからな?それじゃあみんなで、その穴に向かうか」

「はい!」

 こうして俺は、モミジと相談して、モミジが見つけた穴の中に入ることにした。

次回予告

『4-2-34(第308話) 出現!宝を守る鉄壁の番人』

 目的である滝に到着した彩人達は、滝の横にある洞窟に、彩人、モミジ、ヤヤ、ユユの4人で入ることになった。奥にいくと、何かが上から降ってくる。


 こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。

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