4-2-32(第306話) いざ滝へ
「みんなはどうしますか?」
俺の悩みに、リーフはみんなに質問を投げかける。ちなみに今は宿屋で最も大きいと思われる大部屋にいる。9人部屋だが、それは寝る時なので、今ぐらいは人数オーバーしてもいいだろう。じゃなきゃ、俺は部屋の隅で体育座りしながらボッチを体感している事だっただろう。
「ご飯!」
そうルリが宣言した後、ルリのお腹の音が大部屋中に響く。
そして、
「…私も、ルリに賛成」
イブのお腹の音も鳴った。相変わらず、二人は食欲に正直だな。まぁ、俺も文句言う事はないな。昼前だし。
「ヤヤ達はどうですか?」
そうリーフが聞くと、
「私は賛成ヤよ」
「ユユも賛成」
「ヨヨも同じだヨ~」
どうやらヤヤ達はこれからの食事に賛成みたいだ。ちなみにモミジ達はどうなのだろうか。
「わ、私もいいです、よ?」
「私はご主人様に従うだけです」
二人とも良さそうだな。
「ニャン」
「『右に同じです』だって」
なるほど。ファーリもいいってことか。
「それじゃあせっかくだから、美味しい飯を食いに行こうぜ」
「「「「「「「「「はい」」」」」」」」」
「ニャン」
さて、どこのお店に入ろうかね。
あれからお昼を食べた俺達が今、何をしているのかというと、
「「♪♪♪♪」」
「二人とも、随分と楽しそうよね」
「ふふーん♪だって、この向こうの滝に、この近くでしか採れない茸、タキノコがあるんだよー♪絶対に食べたいじゃん♪ね、イブお姉ちゃん?」
「…ん♪絶対に外せない場所」
メモされていた場所の一つ、ある滝にみんなで向かっている。目的は食事の際に聞いた美味しい食材の話である。その食材は、この近辺で見られる滝の近くでしか採れないらしく、お店でもほとんど出回っていないらしい。しかも、その滝に行くにはかなり困難らしく、一定量の供給は難しいのだとか。そんなところに生えている茸は絶品とか美味しいとか。そんな噂をどこからか聞きつけたルリは、「その滝、行きたい!」と言い、周辺の人達に、その滝の場所を聞き始めていた。ルリのやつ、行動力あるな。俺の幼少期に今の光景を見させて見習わせてやりたいものだ。そうすればボッチにならずに済んだかも。ま、そんな考えはあくまで仮定。可能性は無いに等しいから考えるのは止めるとするか。それにしてもこの街の飯、結構品ぞろえが豊富だな。見た目エビっぽい何かを赤い何かで絡めている料理や、何かを包んでいる料理、緑色の葉っぱっぽい野菜を何かに浸している料理などなど、実に種類豊富だ。
それにしても、これらってあれだよな?
このエビっぽい何かを赤い何かで絡めている料理、これはおそらくエビチリだよな。赤い何かはおそらくチリソースに類似した何かだろうな。その証拠に、あのクリムが美味しそうに食べているからな。きっと辛味があるに違いない。
次に、この何かを包んでいる料理。これって春巻きじゃないか?皮は白っぽいから、俺が地球にいた時によく食べていたあの春巻きと同じなのかなと思い、一口齧ってみたら、まったく違った。これは・・・餃子だ!見た目は春巻き、中身は餃子。その名も・・・知らん。ま、これはこれで美味い、ということは確かだ。
そして最後に、この浸されている何か。この葉っぱっぽい見た目のやつ、ほうれん草に似てないか?ということはこの浸している黒っぽい液体は?まさかこれ、ほうれん草のお浸しじゃないか?一口食ってみたらシャキシャキ感を残しつつ、この黒っぽい液体の味なのだろうか、それとも野菜本来の味なのかは分からないが、2種類の味がマッチしている、気がする。まぁ美味いってことだ。
どれもこれもこの世界に来て初めての料理で結構楽しめた。エビチリもどきに春巻きもどきを食べたとなると、中華料理を食べたくなってくるな。
と、昼飯の事は過ぎたことだ。今はこれから向かう滝の件だ。
ルリが聞いた情報によると、この近くの森の奥にあるらしいのだが、ほとんどの者が滝の近くに行くことが出来ないらしい。何故?と思うが、ルリもその理由までは聴いていないらしい。そんなに滝の近くに行くことが難しいのか?それほど滝の水圧が凄いのか?ま、行ってみたら分かるか。
道中、前に狩った覚えのある小鬼、ゴブリンどもが敵意をもってやってきたので、俺は歩きながらゴブリンの周囲に【毒霧】を発生させ、邪魔者をどかしていった。
「「「・・・」」」
ヤヤ達が何か言いたそうにしていたが、俺は何も聞かずに進む。そういえば、このゴブリンの肉って食えるのか?一度見てから食う事を考えていなかったのだが、どんな味がするのだろうか。試しに聞いてみたら、
「普通食べようとすらしないのに、お兄ちゃんは凄いヨ!」
と、ヨヨに笑顔で言われ、
「「・・・」」
ヤヤ、ユユには冷ややかな笑顔を向けられた。イブ、クリム、リーフにも同様な視線を向けられてしまった。
その後聞いたのだが、ゴブリンの肉はとても不味いことで有名らしい。ヨヨが言っていた事ってこういうことだったのか。ゴブリンの死体は・・・そのまま放置でもしておくとしよう。今の目的は滝近辺に自生している茸だからな。
そして俺達は、森の奥地に辿り着いた、と思う。何せ、正面が壁なのだから。それにしても、この壁、なんか濡れていないか?俺の気のせい?それとも、俺の心の涙がこの壁に伝わったのか?・・・最後の可能性は無いな、うん。
「「「「「「「「「「・・・」」」」」」」」」」
どうしようかみんなに相談しようと後ろを向いたら、みんなは上を向いていた。一瞬、あまりにも俺が嫌いゆえに俺の存在から目をそむけたく行動に移したかのかと考えたのだが、違うらしい。
だって、
「え?」
その滝とやらは、崖の上にあったのだ。
次回予告
『4-2-33(第307話) 崖の上の滝』
目的である滝に向かっている彩人達は、滝が崖の上にあることを現実として受け入れる。どうやって崖の上にある滝に行くかを考える。
こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。
感想、評価、ブックマーク等、よろしくお願いいたします。




