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色を司りし者  作者: 彩 豊
第二章 メイズのような意志を持つ商王と三姉妹
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4-2-29(第303話) 角犬の名前、決定!

 あれから俺達はさらに歩みを進ませ、進ませ、進ませた。のだが、

「すいません。本日はここで野宿させていただくことになりそうです」

 そのように男が発言してきた。ま、何日かかるか分からないと言っていた時点で、野宿する可能性は考慮済みなので、特に驚くことは何もない。男達は男達で野宿するので、そちらはそちらで野宿してほしいとのことだった。必要であれば人材、野宿に必須な道具も貸してくれるとの事だったが、俺は断固拒否した。ここでむやみに貸し借りし、恩を作りたくなかったからな。そして、俺達の夕飯はというと、

「「「「「「「「「いただきます」」」」」」」」」

「ニャン♪」

 みんな大好きホットケーキである。それとサラダ。野菜とホットケーキって合うのかなんて考える人もいるかもしれないが、このホットケーキは、

「ふふん♪今日のホットケーキは野菜を練りこんだことで、野菜にも合う素敵なホットケーキなんですよ♪」

 そういうわけなのだ。ちなみに発案者はクリムで、製作者はクリム、イブ、リーフである。クリム発案なので心配していたのだが、リーフが制作に携わっているのであれば問題ないだろう。それにしても、野菜に合うホットケーキか。また随分な挑戦をしたものだ。日本に売っているかね。

(うま♪)

 一口で美味しさが証明された。いつも食べているホットケーキより甘さが無いものの、野菜の味を咀嚼することによって少しずつ感じた。デザートというよりおかずに近いな。当然、このホットケーキが野菜に合わないはずが無く、とても満足できた。ホットケーキがここまで化けるとは。ホットケーキ万能説を唱えるのも悪くないかもしれない。

 夕飯を食べ終え、俺達は入浴・・・はせず、食器類を簡単に洗い、後は夜通しの見張り当番を決めるのみとなった。だが、俺はその夜の見張り当番から外されるらしい。理由は、俺が日中牛車を引っ張っていったかららしい。なら喜んで夜は休ませてもらうとしよう。・・・気を遣ってくれたことは嬉しいのだが、結局独りぼっちなのね。いやま、文句は言わないけどさ。なんか、たまには人肌も恋しくなるな。今日くらいは・・・おっと。これ以上は考えるとやばくなるから辞めよう。具体的には、俺の下半身が大変になり、ルリ達の前に立てなくなることだろう。

「えへへー♪」

「ニャニャーン♪」

「今日も可愛いよねー、角犬ちゃん♪」

 ヤヤ達3人とルリは角犬と戯れている。夜だからか、角犬は少し眠そうにしている気がする。けど、そんな眠そうな顔がルリ含む4人にジャストミートしたわけで、今もジャレついている。角犬に迷惑なのではないか、なんて考えてしまうが、これくらいは我慢してもらおう。可愛がられる代償として、甘んじて許容するがよい。

 そんなことを角犬に対して考えていたのだが、ふと、こんな考えに行きついた。

「そういえば、こいつに名前、つけないの?」

 確かにこいつは角犬なのだが、生まれた当初からずっと角犬と呼んでいる。角犬はあくまで種族名みたいなものであって、個人を支持する名称ではないだろう。

「「「「「「「「「あ」」」」」」」」」

 みんな、気づいていなかったの?いや、俺も人の事は言えないのだが。

「それでどうするんだ?」

 俺がこの話を振ると、

「ニャーン」

「あ」

 ルリの腕の中から飛び出した。そして、

「ニャニャーン♪」

 俺のところにやってきて、顔を俺にこすりつけてきた。

 ん?一体何のつもりだ?

「もしかしてさ、お兄ちゃんに名前、付けて欲しいんじゃないの?」

「え?」

 ルリからまさかの意見を聞く。いや、俺なんかがこいつの名前を付けて大丈夫なのか?それを言ったら既にルリ、クロミル、モミジと名をつけたわけなのだが。

「そうなのか?」

 俺は確認のため、角犬に意見を聞く。

「ニャン」

 なんか、同意している気がする。

「『はい』だって」

 ルリの翻訳を聞いたところ、俺の勘と一致したみたいだ。俺の勘も捨てたものではないな。

「ヤヤ達はいいのか?」

 俺より多くの時間をヤヤ達と過ごしていたと思うのだが、ヤヤ達はこいつの名前を決めたいとは思わないのだろうか。

「うん。だってアヤトさんが連れて来てくれなかったら、この角犬ちゃんと出会わなかったからヤんね」

 と、ヤヤは言った。

「ユユもヨヨもいい?」

「それでいいユ」

「それでいいヨ」

 そして、ユユとヨヨにも確認をとった。というか、また俺が名付けるのか。名付けってかなりの責任を伴うんだよな。

「それじゃあ角犬、俺がお前の名前を決めるけど、いいか?」

 角犬にも確認を入れる。さっきいいって言われたけど、念には念だ。

「ニャン」

「『はい』だって」

 ルリの翻訳というお墨付きをもらったので、

「分かった」

 俺はこの角犬の名について考える。

 まず思いついたのはポチ。犬と言えばなんとなくポチだ。無難に考えるとポチだと思う。ただ、それをこの角犬が認めるかどうか、なんだよな。名前からして弱そうだし。いや、別に強い名前とか知らないけどさ。

 強い名前で思いついたのがある。

 それはカイザー。なんか強そう。強そうだけど、犬にこんな名前を付けていいのかと聞かれれば、う~ん・・・という感じだ。ちょっと中二思考が混ざっているのかも。

 後、こいつの毛並みって肌色に近いんだよな。だから肌色の犬、略してハダイヌ。ないな。次はもう少し略して・・・ハヌ。なんか、略し過ぎて語源が分からないな。もう少し男っぽくて・・・あれ?

「そういえばお前の性別って何?」

 きいた覚えがあったようななかったような?

「ニャン」

 うん、分からん。俺はルリにどっちなのか視線で訴える。

「『メスです』だって」

「メス・・・ということは女!?」

 て、それほど驚くことでもないか。犬の性別の判別なんて、俺には分からんからな。下手すれば、たまに人間の性別の判断が出来なくなることあるし。結構特殊なケースなのだが。

 それにしても女か。それと肌色の体。5本の角を携える角犬。

う~ん・・・。

 そういえば、角が5本あるって珍しいんだっけ?となると、そこを強調した方がいいのか?となると、5にまつわる何かを名前に入れた方がいいのか?そういえば、肌色って黄色を薄くした色だった気がする。となると、角犬からなにかを空想すればいい名前が思い浮かぶかも。・・・いい名前かどうかは分からないが、1つの案が思いついた。

(これで本当にいいのか?)

 正直、これでいいのかどうか困るんだよな。何度も名付けをしているものの、何度やっても慣れんな。

「?お兄ちゃん、もしかして決まった?」

 ルリの一言で、俺以外の全員がこっちを向く。

(ひ、ひぇ!!??)

 な、なんだこの視線の数は!?地球にずっといたら一生体験することのない視線の雨だ。とりあえず、候補として2つ考えていたものを挙げてみるか。

 まず1つは、『ヒマワリ』。

 ヒマワリという花は確か黄色く、常に太陽のある方角に向けて咲いていた、という記憶がある。そのヒマワリのように、太陽という目的に向かって生き続けて欲しい。せっかく生まれてきたわけだしな。

 もう一つは、ない。ないけど、5に関連したワードを何か入れたい。角を5本はやした角犬だもの。ゴとかファイブとか、そういう言葉を入れて見たくなる。だが、そのまま入れると違和感を覚えてしまうので、何かアレンジする必要があるだろう。

(普通に組み合わせるか?)

 ヒマワリとゴを組み合わせると、ゴワリとかヒマゴ?・・・ないな。まぁあくまで俺の主観なので、他の人的にはありなのかもしれないが。

 他の組み合わせ、ヒマワリとファイブを組み合わせてみるか。ヒマイブ?ファワリ?う~ん・・・。後もう少しな気がする。悪くない、かもしれない。

「それで、お兄ちゃん決まった?」

「!?え、え~っと・・・、」

 ど、どうしよう!?え~っと・・・。ゴンワリ、ヒマッコ、ヒマーブ、ファンリ・・・あ。

「ふぁ、【ファーリ】というのはどうだろうか?」

 最終的に俺はファワリを少しアレンジし、ファンリという途中経過を経て、ファーリがいいのではないかと提案する。名前の語源は、俺以外知ることはないだろうが、それでも大切にしたい。時間をかければいいというわけではないが、きちんと考えてつけていきたい。良くも悪くも、その名を一生背負うかもしれないのだから。

 こうして考えた結果、ファーリという名に決まったのだ。最高の名前ではないかもしれないが、ポチよりましだろう。ファーリが駄目ならポチでいいや。もう考えるの面倒くさい。

「うん!お兄ちゃんらしくていいと思うよ」

「お、おう」

 褒められているのか貶されているのか分からないな。褒められていると思いたいな。

「ニャン・・・ニャニャン♪」

「『ファーリ・・・素敵な名だと思います』だって」

「そっか。気に入ってくれてありがとう」

 そう言えば、他の人達は、この角犬の名前がファーリでいいのだろうか。念のため、俺は視線をみんなに向ける。

「ファーリ~。こっちおいで~♪」

「ニャニャ~ン♪」

「ファーちゃ~ん、ウリウリー♪」

「ニャウ~ン♪」

 みんな、特に異議を唱えるつもりはないようだ。よかった。これで、

「はぁ!?何その名前!?お前の名づけセンス、マジ腐ってんな!!!」

 なんて言われてしまったら、俺はリーフかクロミルの胸で人知れず泣いていたかもしれない。俺のメンタル、自虐しているわりに豆腐ですから。

「…みんな、アヤトの名づけに賛成しているみたい」

「ほ」

 よ、よかった~。態度から異議を唱える様子はなかったけど、こうして言葉にしてもらうと、あらためて実感することができる。自分で自分を慰め、コホン。褒めてやりたい。

 今更なんだが、ファーリという名前だけを聞くと、なんとなく男の印象を受ける、気がする。何故だろう?

 ・・・あ。

 もしかして、ファザーとファーリの語呂がなんとなく似ているからか?でも、似ていると言っても最初のファだけだし。そんなことを言ったら、語尾のリは、どことなく女性の名を彷彿とさせる気がするぞ。

 例えばそうだな・・・裕梨とか、祈とか。聞いただけで女っぽい名前じゃないか。だからファーリという名前でいいんだ。

 ・・・俺は何故、自身で生み出した問いに必死になって説明やら弁解やらしているのだろうか。もしかしたら俺は疲れているのかもしれないな。名前考えるのはそれほど頭を、神経を使う。そういうことなのだろう。

「それじゃあ明日も早くなりそうだから、俺はこれで休むわ。お休み」

「「「「「「「「「お休みなさい」」」」」」」」」

「ニャン」

 みんな、俺に就寝時のあいさつをして、見送ってくれた。

(やっぱ、俺がいなくなると、全員の息が合うよな)

 気のせいかもしれないが、そんなことを考えてしまった。それに、あの角犬、じゃなかった。ファーリはイブ達に愛でられている。ちょっとだけ嫉妬しちゃうな。

次回予告

『4-2-30(第304話) 朝からエプロン姿の観覧』

 彩人達は黄の国の首都、キハダに向かっている。その道中、野宿をし、一晩経過した。目を覚ました彩人は、ある光景を見ることとなる。


 こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。

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