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色を司りし者  作者: 彩 豊
第二章 メイズのような意志を持つ商王と三姉妹
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4-2-25(第299話) 商王の企みに関する可能性

 あれから俺達は夕飯を堪能し、閉店まで時間をつぶした。ヤヤ達の店周辺にある飲食店を片っ端からはしごしまくった。串カツっぽい食べ物を食べたり、手で持って食べられる春巻きっぽい何かを数本食べたり、白い何かを串に巻き付けたきりたんぽっぽいなにかを食べたり、本当によく食べた気がする。だが、俺やクリム、リーフ、クロミルは平均的だったと思う。異常だったのは、

「へっへーん♪ルリ、これで二十本目~♪」

「…むむ。私だってこれで十九本目だから、負けると決まったわけじゃない」

 ルリとイブの食欲と胃袋である。俺は各店で一本ずつ食べたのだが、二人はどの店も二桁本は当たり前。気に入ったものは追加で何十本か買い溜めもするのだ。もうね、見ていてお腹いっぱいになるよ。クリムやリーフなんか、一、二本食べてそれで終了だぞ?クロミルなんて、「これはモミジ様に後でお渡ししましょう」なんて気遣いも出来ているし。

 そんなこんなで食べ歩き続けて、

「あ!?ヨヨちゃん達のお店、終わったみたい!」

 ヤヤ達のお店が終わったらしく、店前に置いてある看板を店内に入れ始める。さて、ここで声をかけるとするか。

「よ、よぉ」

 今更だが、人に声をかける時、どのような声をかければ良かったのだろうか。一応、普通に声をかけた気はするのだが、これでよかったのだとうか?

 例えば、

“こんにちは。今日お伺いさせていただきました、アヤトと申します”

 みたいに堅苦しめに言えばいいのか?それとも、

“チャロ~♪僕チンが遊びに来たよ~ん♪よろぴく~♪”

 こんな風にチャラチャラ・・・したくないな。自分の性格と合わない気がする。やっぱ、

“よぉ”

 という声かけでなら、万人の人に有効な挨拶となるだろう。例外として、とっても偉い人や、むかつく人は多少礼儀を踏まえたり、欠いたりするべきだろう。挨拶に関する詳細な作法は知らないけど、イブあたりが知っているだろう。

 て、声掛けにここまで悩むこともないか。多少乱雑でも問題ないよな。

「あ、アヤトさん。お疲れ様です」

「おう。そっちこそお疲れ様」

 確かに今日は仕事をしたが、ヤヤ達ほど働いていたわけじゃない。ヤヤ達は一日中働いていたことに対し、俺は午前中だけギルドで依頼を受け、午後は食べ歩きしていたからな。社会人は常にこの挨拶をしているのだろうか。なんか慣れないな。

「今日はどうされたのですか?」

「ああ。モミジから大体の話を聞いたんだ。その返事をするために来たんだ」

「あ、そうでしたか!では、今日は私達の家に泊まるんですね!」

「いや、そこまで図々しくねぇよ。でもま、ヤヤ達の家で話させてくれねぇか?」

 ちょっと商王?の話も聞きたいしな。イブやリーフの情報はもちろん信頼出来るのだが、普段この国に住んでいるヤヤ達から話も聞いてみたい。この国の住人はここのトップ、商王の事をどう思っているのか。ま、イブやリーフの噂を聞いている限り、あまりよい話は聞けなさそうだけどな。

「はい、もちろんです!あ、お部屋に案内しますね。ユユー」

「何、ヤヤお姉ちゃん?」

「アヤトさん達が来てくれたから、案内してあげて?」

「分かった」

 ユユはこっちを向き、

「それじゃあみなさん、こちらへ」

 俺達はユユの案内に従い、家の中に入る。

 俺達は今、ヤヤ達の家に来ている。そして、

「う~ん♪ユユお姉ちゃんの作る料理、美味しい~♪」

「…美味美味♪」

「「「「「・・・」」」」」

 がっつり夕飯をいただいている。もちろん、ルリとイブだけである。俺達は午後、ずっと飲食店をはしごし、食い続けていたからな。夕飯があんまり入らないんだよな。入らないはずなのだが、どうして二人は平気で夕飯を食えるのだろうか。どれほど胃が強いのだろうか。ま、二人の食欲は今に始まった事ではないし、スルーしておこう。

 ちなみに、ただごちそうになるのは申し訳ないので、俺達も夕飯作りに協力した。ただ家に入り、二人分のご飯をいただくなんて失礼だからな。二人分?イブとルリは二人分で足りるだろうか?無理だな。というわけで、俺は心、5.6人分多めに作っておいた。

「?あの。私達、こんなに食べないユよ?」

 ユユにそう言われたが、

「いいんだ。残ったらあの二人が完食してくれるから」

 そういい、ヨヨと話しているルリ、イブを見る。どうやら夕飯が楽しみにしているようで、笑顔を見せてくれている。そして作った料理はホットケーキである。多分、ここにいるメンツであれば、問題ないだろう。そういえば、ヤヤ達はこのホットケーキ、好きなのだろうか。特に気にして作っていなかったな。

 既に何枚か焼いてしまったが、俺はヤヤ達にホットケーキの事を言い、夕飯にしてもいいか聞くと、

「もちろんいいんヤよ!むしろありがとう♪」

 ヤヤからは笑顔で返された。ホットケーキ、そんなに美味しいんだ。いや、俺も結構食っているけど、そこまでなのか?ま、気にしないでおくか。

 そして俺達は夕食を完食し、

「「・・・」」

 ルリとヨヨは寝てしまった。ま、寝ているのであれば、わざわざ起こして話に参加させる必要もないし、そのまま寝かせておくとしよう。

「それでだ、さきほどモミジから話を聞いたが・・・、」

 俺は返事を簡単にまとめ、ヤヤ達に報告した。

「そうですか・・・」

 報告したところ、なんか元気がなさそうだった。もしかして、モミジを通して伝えてきたのも、この商王?が関わっていたからなのだろうか。分からんが。

「なぁ?」

「?何でしょう?」

「商王って、どうなんだ?」

 俺の質問を聞き、

「「!!??」」

 二人は全身を一瞬震わせる。様子を見る限り、良いイメージを抱いているとはおもえないんだが・・・?

 そして、最初に口を開いたのは?

「ここで話すことは、誰にも話さないでください。そのことを約束していただければ、話すユ」

 ユユであった。誰にも話さないよう念を押すあたり、商王ってろくでもないのか?

「ああ」

 俺は返答を返してから、周囲にいる俺の仲間たちに視線を送る。

「「「「「・・・」」」」」

 イブ、クリム、リーフ、モミジ、クロミルの5人は無言で返事をする。どうやら俺の視線の意味を理解してくれたらしい。みんな、俺の気持ちを理解してくれるなんて賢いな。

「というわけだ。だから話してくれ」

 というと、ヤヤとユユは顔を見合わせ、話し始める。

「この国に住んでいて分かると思うのですが、商王に関して様々な噂が流れています」

「その噂は様々でユが、どれもある出来事から連想されているのでユ」

「「「「「「ある出来事??????」」」」」」

 なんだそれ?確かイブやリーフの話からそんなこと、聞いた覚えはなかったな。

「はい。それは・・・、」

 間が空いたかと思うと、ヤヤは言葉を繋ぐ。

「居城に招いた人達の店の全権利が商王になる、ということヤよ」

「は?」

 一体、どういう意味だ?

「…なるほど」

「それであの噂も納得します。ですが・・・、」

 何故か先ほどのヤヤの発言で、イブとリーフは理解できたらしい。俺、まったく理解できないんだけど?

「ちょっと。どういう意味なのか説明してほしいんだけど」

 今の俺の頭では理解できないんだが?

「おそらですが商王は、今後繁盛するかもしれない店の経営者、もしくは関係者を自身の居城に招き、何らかの方法を用いて、店の全権利を自身に移した、ということですよね?」

 ・・・え?

「うん。リーフさんの言う通りなんヤよ」

 ちょ、ちょっと待て。ということは、

「じゃあ商王は、店の乗っ取りを行っているということか!?」

 ふざけんなよ!!何が商王だよ!人が築いた財産を強盗みたいに奪って!まるで強盗じゃねぇか!?商王じゃなくて強盗王とか略奪王等に名前を変更しろよ!

「それは、一概にも言えないのでユ」

「はぁ!?何でだよ!?現実に、店の全権利を奪われた奴がいるんだろ!?なら・・・!」

「必ずしも先ほど言った出来事が起きる、とは限らないんユよ」

「・・・つまり、店の全権利を奪われなかった人もいたと?」

「そうユ。だから、実際がどうなったのかが分からないんユ」

「でも、奪われた人がいるんだろ!?だったらそいつに話を聞けば何かしら・・・!」

「もう、全員死んだユ」

「・・・そうか」

 死因は分からないが、そのふざけた商王が関わっていそうだ。

「そんなふざけた王が治める国なんて、嫌じゃないのか?」

「…私達は、生まれた時からずっとこの国、この町にいるんヤよ。だから、愛着があるんヤよ」

「愛着」

「うん。だから出来ればこの町を離れたくないんヤよ」

「例え、商王がどうしようもない人だとしても、か?」

「うん。それに表向き逆らわなければ、多くの商人はびこる素敵な町なんやよ」

「・・・そう、か」

 よく考えてみれば、店の全権利を奪われた奴らにも原因があったのかもしれないな。

 例えば、脱税みたいな不正を働いたとか、盗品を販売していたとか。あくまで噂だから、推測することでしか出来ないのだが。そう考えてみると、商王が悪人、なんて考えも否定せざるを得なくなるな。やっぱ、事実が分からないと、善悪の判断がつかないな。もしかしたら、商王の悪い噂が流れているのも、商王に対する嫉妬から、なんていう考えも出来るわけだし。

「だからこの国の人達は表向き、商王のやり方に口をださないし、関わろうとしないのヤ」

「・・・」

 俺はこの国の住人ではない。ましてや、この世界に生を持ったわけでもない。だからこの世界に、この国に、この町のやり方に口を挟むべきではないかもしれない。

 けど、

(なんだかなぁ・・・)

 なんだか釈然としない。商王の事を噂でしか聞いたことが無いからなのかもしれない。モヤモヤするな。

(とにかく、リーフとイブの言う通り、警戒だけは怠らずにしておくか)

 これで無理矢理結論付けるとするか。これ以上モヤモヤしたくないしな。

「それで、ヤヤ達はいつ店を閉めて、王城に行けるんだ?」

 俺は無理矢理話を変える。

「そう、ですね・・・休業を皆様に知らせるとして、七日くらい必要かな?ねぇ、ユユ?」

「…ん。それくらいあれば十分だと思ユ」

「分かった。みんなもそれくらいあれば十分か?」

「「「「「うん」」」」」

 あ、ルリに聞いていなかったな。そういえばヨヨにも。ま、明日でいいか。

「それじゃあ俺達はもうこれで帰るよ。じゃあな」

 俺が席を立ったことを皮切りに、みんな席を立ち始める。

「「あ」」

「?どうかしたのか?」

 俺としては、この女性しかいない場に男一人でいると落ち着かないので早く退散したい。ルリは・・・ま、俺がおんぶ、もしくは抱っこでもして、

「ルリ様、失礼いたします」

 ・・・流石はクロミル。行動が早いこと。もうルリを背負っているし。

「あの、本当に泊っていかないの、ですか?」

「?泊っていかんが?」

 なんだ?同性のクロミル達ならともかく、異性の俺が泊まるのはおかしいだろう。もしかすると、俺以外の全員を誘っているのかも?なるほど、それなら納得だな。…そう考えると、疎外感を大きく覚えてしまうな。違う意味だと誰か言ってほしい。

「で、でしたら!私にあの料理の作り方を教えてくれませんか!?」

「?あの料理って何だ?」

「以前、美味しい料理と言ったあの料理です」

「あの料理・・・あ」

 ホットケーキか。そういえば、今日も何枚か焼いたな。

「確か今日も焼いたな」

「は、はい!とっても美味しかったんヤよ!」

「美味しかった♪」

 ヤヤとユユ、二人ともホットケーキを気にいったみたいだった。料理を教えてほしいと言ってもな、

「今日はもう遅いし、明日じゃダメなのか?」

「で、でしたら!お礼の先払いとして、私達の家に泊まってください!ユユもいいよね!?」

「うん。ユユは親ヤヤお姉ちゃんに賛成」

 ・・・なるほど。そうまでして俺達をこの家に留めたいのか。

「分かった。みんなもそれでいいか?」

「「「「「はい」」」」」

 なんか、俺の勝手でここに泊まることになった気がするが、みんなは文句、無いらしい。さてはこうなることを予測していたのか?

(まぁいいか)

 それじゃあもう寝るか・・・と思ったが、

「ホットケーキの件はどうする?」

 俺の正直な心境としては、今日より明日の方が嬉しい。何せ、もう今日は遅いからな。といっても、大人な行為をするには適している時間帯だからな。・・・さすがに人の家であんなことやこんなことをするつもりはないけど。あれ?そういえば、他所の国の城でいっぱいはげんだような気が・・・?気にしないでおこう。

「そうですね・・・明日、でお願い出来ますか?」

「了解。泊めてもらうからにはきちんと教えるつもりだからな」

「こちらこそ、よろしくお願いするんヤよ」

「私も、お願いするユ」

「おお」

「…ん。みんなで美味しいホットケーキを作る♪」

「ですね。明日の朝食はホットケーキになりそうです」

「久々に、いつも以上に重い重りをつけながら料理しましょうかな?いい筋トレになりそうです」

「わ、私、頑張ります!」

「ご主人様、材料が不足しているようであれば、至急私が買いにでかけますが、どう致しますか?」

「例え不足していたとしても、明日買いに行けばそれでいいからな?」

「かしこまりました」

 そして俺達は今晩、ヤヤ達の家で泊まることになった。

 ちなみに、男女間に行われる肉体関係の情事は一切行っておりません。

 ・・・本当だよ?本当だからね?

次回予告

『4-2-26(第300話) 十数年前の生命降誕』

 彩人達が黄の国に来る十数年前、ある生命が誕生する。そして、その生命は時を経ながら育まれていく。


 こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。

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