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色を司りし者  作者: 彩 豊
第二章 メイズのような意志を持つ商王と三姉妹
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4-2-24(第298話) 商王の噂

「・・・あの、国の上って、一体何を・・・あ」

 クリムは自分で言いながら気づいたらしい。いや、俺は分からないのだが?

「…ん。赤の国や魔の国の王族、に当たる人の事」

「へぇ・・・え?」

 赤の国や魔の国の王族、の部分はクリムやイブのことを言っているのだろう。だが、最後の文はどういう意味だ?

「当たる人ってどういうことだ?この国も王族が支配、取り仕切っているんじゃないのか?」

 一応、支配と聞くと聞こえが悪い気がしたので、取り仕切る、という言葉に言い換えた。だが、これは結構驚きだ。てっきり、どの国も王族がトップとばかり思っていたからな。現に、俺がこれまで行った3つの国のトップはみな国王、王族だったからな。王族がトップじゃないとすると、一体誰がトップなんだ?

「…私が調べたところによると、この国の上は、最も商売が上手くいった者にこの国を取り仕切る、そんな決まりになっているらしい」

「へぇ。つまり、この国で最も凄い商人が、この国を取り仕切っている、ということなのか?」

 俺の認識を言葉にし、イブに問いかける。俺の言葉にイブは頷く。なるほど。そういう捉え方でいいのか。

「…確か、商業で類まれなる才能を発揮した事を称え、周囲の人間は商業の王、【商王】呼んでいた」

「商、王?」

 商業で最も売り上げを伸ばしてきた人の事を、ねぇ。もしかしたら、商業関連で最も上の成績、トップとなったから、そのトップのことを王と表現し、商業の王で商王なんて呼んでいるのかもしれない。あくまで俺の推測なのだが。

「…ん」

「なるほど。」

 なんか、ちょくちょくなるほど、という言葉を言っている気がする。別にいいか。

「それで、その商王がどうかしたのか?」

「…その商王、あまりいい噂を聞かない」

「噂?」

 俺が聞き返すと、イブは首を上下させる。

「そうです。例えば、借金を抱えた商人の借金を負担するとか、見知らぬ人を助けたとか。後は・・・、」

「・・・ん?ちょっと待て」

 俺はリーフの噂話を途中で遮る。何せ、リーフの噂話に違和感を覚えたから。

「?どうかしましたか?」

「どうかも何も、さっきからずっと、良い噂話ばかりじゃないか。それでどうして気をつける必要があるんだ?」

 さっきからリーフの話を聞いていると、その商王の良い点しか聞いていない。だから、さきほどのイブの話と点が上手く繋がらないのだが。

「…アヤト、人の話を最後まで聞いてくださいね?」

「え?あ、すまん」

 そういえばさっき、リーフの話を途中で遮ってしまったな。もしかしたら、話の後に重要な点を言うべきだったのかもしれないな。

「続けますね。それで、さきほど私が言った点は、表向きに良い面の事です」

「表向き?」

 表があるということは・・・?

「裏があるのか?」

 俺の言葉に、リーフとイブが肯定する。

「ええ。助けると言っても、誰も無料で、なんて言っていませんよね?」

「は?」

「このような言葉をかけ、内々で利息分を払わせる、なんて話を何度も水面下で聞きました?」

「内々、というのはなんとなく分かるが、利息分を払わせる、というのは何だ?」

「もちろんお金、という場合がほとんどですが、それ以外ですと・・・、」

「・・・?」

 どうした?何故、途中で言葉を濁すんだ?

「その、体で支払うんです」

「体・・・、」

 一瞬、女性は自身の体をお金に換算し、必死に体を動かしている絵面を想像してしまった。俺としては、あんま気持ちの良いものではないな。

「あ、もちろん、肉体労働をして返す、という手段もありますよ?」

「・・・あ、そうか。そうだよな」

 俺の淫らな考えを先読みしたのか、訂正を入れてくれた。なんか、青少年だからだろうか。常に考えがエロに直結している気がしてならな。

 それに、考えてみればすぐわかったはずだ。

 商王がどこの誰かは分からないが、誰しもエロの事ばかり考えているとか、性に飢えているとか、そう考えるのは失礼だろう。中には、エロにとらわれず、常に世界平和の事を考えている悟ったやつもいるだろう。俺は見たことないけど。

「はい。なので注意すべきかと」

「でも、あくまで噂なんだよな?」

 そこまで心配する必要、無いと思うんだけどな。

「…確かに、アヤトが言いたいことも分かる」

「ですが、噂の段階でここまできているのです。何かしらある、と踏むべきです」

「何かしら、とは?」

 俺はイブとリーフの話に質問する。

「…もちろん、何もない可能性もある。これらの噂が悪意的に流れた可能性も否定できない」

「ですが、先ほど言った噂が真実の可能性もありますし、それ以上の可能性だってあります」

「…それもそうだな」

 もちろん、何もないことが一番なのだが、そう考えるのは楽観視のし過ぎだろう。己の目で判断することも必要だと思うし、警戒も怠ってはならない。なるほどねぇ。

「…分かってくれた?」

「ああ。サンキューな、二人とも」

 おかげで、さきほどのイブの言葉の理由を掴めた気がする。

「それじゃあ今夜、ヤヤ達の店が終わったら合流して、今後の予定について話すか」

「「「「はい」」」」

 周囲にいる4人が返事をしてくれた。

 え?4人?確か、モミジはいないから、イブ、クリム、リーフ、クロミル、ルリの5人のはず。後一人は・・・、

「・・・あ、話終わった?」

 ルリか。ルリは返事をしなかったし、話も聞いていなさそうだ。別にいいけど。

「ああ、終わったよ。それでこれから・・・、」

「ヨヨちゃん達のところに行くんだよね?」

「あ、うん」

 ルリよ、そこだけ聞いていたのか。・・・ま、いいけどね。ルリみたいな純粋な子にはあまり聞いてほしくない醜い話だったかもしれないし。それにしたって、随分と都合のいい部分だけ聞いていたな。ルリの耳は一体どうなっているんだ?気にしないでおくか。

 そして俺達は、ヤヤ達のお店が終わるまで、コソコソ話をずっとし続けていた。ちなみに、さきほどの話も、声量を絞って話しましたよ?何せ、商王本人の耳に入れたくない話をしていたからな。

次回予告

『4-2-25(第299話) 商王の企みに関する可能性』

 彩人達は商王の話題をヤヤ達に振る。すると、更なる噂を聞くことになる。


 こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。

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