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色を司りし者  作者: 彩 豊
第二章 メイズのような意志を持つ商王と三姉妹
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4-2-22(第296話) 招待状着

 あれから2週間?3週間?4週間?う~ん・・・。約一月か。

 おかげでそれなりに金を稼ぐことが出来た。これも、結構冒険者ギルドで依頼をこなし続けてきた結果である。人間、真面目に仕事をし続けると高評価をもらえるものなんだな。おかげで、俺は受付嬢の方から、“どんな依頼も解決してくれるぽっと出の有望冒険者”とでも思われているに違いない。と、自画自賛してみたものの、

「うんうん♪やっぱルリちゃんは可愛いわよね~♪」

「本当にね~♪」

「それに、可愛いだけでなく強いなんて、これはもう最強ね!」

 ルリが思っていた以上に大人気であった。ルリ、お前、いつの間に兄を追い越していたんだ?そんなに人気者になって、俺は嬉しい!ような、悲しいような?

 本来の兄のあるべき姿であるなら、ルリの現待遇を嬉しいと思うべきだろう。

 だが、ルリと俺はあくまで義理の兄妹。醜い感情を秘めているボッチの俺としては、こんな妹を持って妬ましいというか悲しいというか、ボッチ感が強まった気がする。俺、もしかしたら、受付嬢が俺の事を言っているのも、俺の事が嫌で悪口影口を言っているからなのかもしれない。そう考えると・・・冒険者、辞めていい?否、俺みたいなボッチが今更他人の評価なんて気にしているなんて、そんな大それたことは考えない!よほど間違っていなければ、自身の道を突き進むだけだ!間違っていたら・・・モミジたちに慰めてもらおう。そうしたら多分、元気、出てくると思う。

 そういえば、俺は最近ルリと冒険者ギルドで依頼をこなしているのだが、モミジたちはどうしているのだろうか?冒険者ギルドにいない、ということは・・・あそこに行っているな。今日はもう、なんだか依頼をする気無くなってしまったし、リーフ達のところへ合流するか。

「ルリ、今日はもう依頼終わりにするか」

「うん!てことは、あのお店に行くの?」

「ああ」

 こんなボッチを強制認識してしまう場所、さっさと退散するとしよう。別に、人気者なルリに嫉妬しているわけではない、と信じたい。俺はルリを連れて、冒険者ギルドを後にする。後ろから、

「ああ!?」

「みんなのルリちゃんが!?」

「あいつ誰よ!?」

「さっきまでずっと独りでいた・・・誰かよ、きっと!」

 ルリを欲するような声が聞こえてきたが、全無視した。

 ・・・それにしても、俺に対する認識って、ルリの金魚の糞みたいな扱いなのか。ほんと、悲しくなるな。

「?お兄ちゃん、どうかしたの?」

「いや、ちょっと世間の評価の冷たさを実感しただけさ」

 それはもう、空しくて虚しいものなんだよ。

「?」

 さて、あいつらは今、どうしているかな。


 俺とルリがあの店、ヤヤ達3人が経営しているお店に向かうと、

「うわー。人がいっぱいだー」

「だな」

 まさかここまで並んでいるとはな。俺が地球に住んでいた時の友達の人数より多いな。て、当たり前か。俺、友達0人だからな!俺のボッチ道、なめんじゃねぇぞ!

 ・・・ボッチ道って一体何だろうか?ま、どうでもいいか。

「あ、イブお姉ちゃん達だ!」

 そう言い、ルリは駆け足でイブ達の元へ向かう。イブ達は・・・お茶しているな。あの様子だと、やることはやった、みたいだな。

「あ、ルリちゃん。ヤッホー♪」

 リーフが手を振ると、クリム、イブまで手を振ってくれた。ルリに対して、だけどな。多分、俺にも手を振ってくれていると思うが、どうにも信用できない。さっきの出来事のせいなのかもしれない。くっ。ボッチの辛い思い出が俺の脳裏に転写されていく・・・!

「?…アヤト、どうかした?」

「いや、何でもない。ちょっとな」

 ボッチの時に体験した出来事がトラウマの如く思い出していただけだ。こんなこと、いちいち報告する必要もないだろう。

「?…ならいい」

 イブはそう言い終えると、もう気にしていないのか、再び視線を例の店に向ける。

「ルリも何か食べたーい。頼んでいい?」

「もちろん!はい、これがメニュー表ね」

 クリムはルリにこの店のメニュー表を渡す。

 ちなみに今、俺達がいる場所は、ヤヤ達が運営しているお店ではなく、ヤヤ達が運営しているお店が見えるカフェっぽい店にいる。ヤヤ達の運営状況を見るため、俺達はよくここでお茶を飲み、様子を見ているのだ。

「それにしても、随分繁盛していますね」

「ええ。それほど人に親身になって相談している証拠ですね」

 確かに。

 今ヤヤ達は、あの心理カウンセラーみたいな仕事を続けているらしい。この1月近く、ずっとだ。そのおかげなのか、店を始めた当初に宣伝しまくっていたおかげなのかどうかは分からない。だが、間違いなくあの人だかりがヤヤ達の店の必要性を証明していくれているだろう。証拠に、店から出てくる人達はみな、幸せそうな顔をして出て言っている。老若男女関係なく、である。俺にもあんな親身に寄り添ってくれる人がいてくれたら、俺はボッチにならなかったかもしれないな。ま、そんなことを今更言ったところでしょうがないのだが。

 そしてなかでも、

「それにしても、今日もモミジさんはヤヤちゃん達のお手伝いをしていますね」

「そうね。ヤヤちゃん達は頑張っているけど、モミジちゃんも裏方で頑張っているようです」

「だな」

 モミジが率先して、ヤヤ達のお店の切り盛りに何度も足を運ばせているのだ。常にオロオロしているモミジにしてはすさまじい積極性である。

 ちなみに、モミジと俺がどれくらい離れても平気なのか実験したところ、数キロは大丈夫らしかった。ただ、それ以上離れると呼吸困難に陥ることが立証済みである。好みを持って体感したからな。だから、モミジがこの町にいる間、俺が多少町から離れていても問題はない。だが、保険として、出来るだけ離れないように気をつけないとな。

(もしかして、モミジはああいう店をやりたいのか?)

 もしモミジはああいうお店経営を希望するのであれば、俺も検討しようかな。何せ、これからずっと俺とモミジは一緒なのだから。

「そういえば今日、リーフ達はどうしていたんだ?」

「私達、ですか?」

 リーフはクリム、イブを見つめる。すると、何かを取り出した。ん?確かそれって、

「冒険者ギルドのカード、か?」

 その答えに、リーフ、クリム、イブの3人は首を縦に振る。それにしても、冒険者ギルドのカードが青くなっているのだが?青って確か・・・、

「…ん。これで私達も中堅クラスの冒険者になった♪」

「これでますます強い魔獣とも戦えます!」

「報酬も高額な依頼を受けられるようになりましたからね」

「マジか」

 俺でさえ、つい最近まで赤だったのが、ようやく青になってきたというのに!普段から怠け癖という俺の特技が発動し、率先して依頼をこなしてこなかったのが原因か。俺、意外と昇進欲がないのかもしれないな。大人になって仕事を始めたら、こういう人間が蹴落とされ、失業していくのかもしれない。

 ・・・なんか俺、地球で過ごしていたら間違いなく普通な生活を送ることが出来なかった気がする。普通に仕事をし、結婚し、家庭を持つ。そんな生活を送ることが地球では不可能ではないか。そんなことを考えてしまった。

「?ご主人様、如何なされましたか?」

「…何でもないから気にしないでくれ」

 俺の余計な考えを話したところで無駄だろうからな。こんなこと、誰にも話したくないし。

「分かりました」

 こういうところ、クロミルは本当に察しが良いよな。俺もこのクロミルみたいな察し能力があれば、地球でも普通に結婚し、家庭を築けていけたのだろうか。ボッチの俺が普通とか追い求めるのはちょっと違うか。俺なりに結婚し、家庭を築けていけばいいか。今、この世界にいる俺もきっと普通の生活を送っているわけではないだろうしな。

「ん?なんか、モミジお姉ちゃんがヤヤお姉ちゃん達と話しているみたい」

「え?そうなの?」

 俺にはまったく見えないのだが?モミジやヤヤなんて姿形も見えない。というか、二人とも室内にいるんじゃないのか?どうして二人が話していると分かるんだ?

「うん。モミジお姉ちゃんとヤヤお姉ちゃん、何か?について何かしているみたい?」

「なるほど。さっぱり分からん」

 ルリから分かった事は、モミジとヤヤが話している事だけだった。おそらくルリは、俺の素の聴力より優れた能力を秘めているのだろう。俺には話姿すら見えないんだけどな。本当、ルリのスペックって高い。

「…ルリ。その何かって分かる?」

「う~ん・・・。これとか、どうする?とかは聞こえてくるけど・・・あ!?」

「?…どうかした?」

「もしかしたらお兄ちゃんのところにこれから来るかもしれないよ」

「え?」

 何その予言?ルリ、お前いつの間に予知関連の能力を習得したんだ?

「あ、ほら」

「?」

 ルリが指差す方角を見てみると、そこには、

「あ、アヤトさ~ん」

 そこには、ヤヤ達の店から出てきたモミジが見えた。手には・・・手紙?みたいな便箋が握られていた。誰かからの郵便物、だろうか?この世界の郵便受けなんて見たことないんだけど。いや、もしかしたら俺が見ていないだけで、実際は存在しているのかも。

「どうしたんだ、それ?」

 俺は、モミジが手にしている便箋らしきものを指差す。ところで、あれは便箋なのか?そのように見えるし、そうでないようにも見えるんだよな。

「これ、ですか?」

 モミジは持ってきたものを俺の前に出す。

 見た目的には紙だ。真っ白の紙ではなく、ちょっと茶色い紙だな。なんか文字が数多く書いてあるな。下の方には・・・なにこれ?何かの紋章?

「…これってもしかして、招待状?」

「え?」

 イブの発言俺は驚く?これって招待状なの?いや、俺はよく分からないから招待状なのか恋文なのか判断がつかないのだが?

「これ、何?」

 俺は、イブが招待状と言っていた紙に関する説明を要求する。

「…しょ、」

「招待状ですよ」

 イブが説明しようとした言葉を放った直後、クリムがイブの言葉をかき消し、クリムが説明を始める。

「このような便箋は、王城、もしくは王宮に招待するために出す特別なものです。その証拠に、そのものの周囲に何か模様が描かれていませんか?」

 急にクリムが説明をし出したことにも驚きだが、俺はクリムの言葉に従い、紙の周囲を見てみる。・・・確かに、紙の周囲、もしくは端に何か描かれているな。

「確かに」

「これは王族、もしくはそれ相応の身分の者にしか扱えない特別な模様でですね。各国で違いは多少ありますが、大まかな模様は同じなんですよ」

「へぇ。これ、そんな代物だったのか」

 俺的には、地球でよく見かけたはがきの一種か何かだと勝手に決めていたのだが、思った以上に貴重っぽい。雑な扱いはしないようにしよう。

「で、合っていますか?」

 クリムはどや顔でイブを見る。

「…合っている。けど、なんかむかつく」

 イブは珍しく、ちょっと拗ねた顔を見せる。やば。ちょっと萌えるんですけど。

 と、そんなことを考えている場合じゃないか。

「それで、誰宛てに届いているんだ?」

「それは・・・、」

 モミジは、便箋に書かれた文字達の中で、とある一文を指差す。

 そこには、

「ヤヤ様、ユユ様、ヨヨ様。そしてアヤト御一行様・・・て、」

「はい。私達も呼ばれているみたいなんです」

次回予告

『4-2-23(第297話) 招待を受け入れるかどうか』

 招待状に招かれた彩人達は招待を受け入れるかどうか話し合う中、ある2人はこの招待に難儀な顔をした。


 こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。

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