4-2-21(第295話) キハダに住むある女性
ここは黄の国の首都、キハダ。
そこにはある者が建てた豪勢な、それはもう豪勢な建物の中に、
「さて、今日の椅子は・・・これにしようかしら?」
その女性は、椅子、と呼んだものに思いっきり腰をかける。
「!!??ふぐ!?」
その椅子は、いきなり女性が座った事により、自身の体に多大な負荷がかかり、僅かに態勢を崩す。だがすぐに態勢を立て直し、椅子という体裁を守り切る。
だが、
「・・・今この椅子、声を出したわね」
女性は、さきほど椅子、と呼ばれた者が発した声を聞き逃さなかった。女性は椅子から立ち上がると、
「この椅子、今すぐ処分して」
「!!??」
椅子、と呼ばれた者は大きく目を見開き、女性に目を向ける。その目は、絶対的絶望の中から虚空でも掴みたくなるくらい必死に救いを求める。
「「は」」
「!!??」
それでも、女性の近くにいた人物達が、椅子だった者を運び出し、
「は!?た、助け・・・!!??」
椅子、だった者は声をあげたものの、最後まで言葉を言い終えることは無かった。
「「処分、完了いたしました」」
さきほどまで近くにいた者達には、さきほどまでついていなかった赤いシミが出来ていた。そのシミには、鉄のような臭いまで発していたらしく、
「今すぐ着替えなさい」
女性は嫌そうに鼻を抑える。
「「はっ」」
礼服もどきの服を着ていた者達は一時退室する。
「まったく。金を持たずに借金し、首が回らなくなったやつをこの私が使ってやっているというのに!」
女性は、近くに縛られている者に向け、
「ああ!もう苛々する!ふん!」
思いっきり足蹴りを食らわす。
「!!??」
サンドバック代わりに蹴られた者は痛みで覚醒したものの、あまりの痛さに失神する。
「やっぱ、物をサンドバックにするんじゃなく、借金した奴らをサンドバックにした方がいいわね♪」
そう言いながら、女性は歪んだ笑顔を浮かべ、再び縛られている者に対し、暴行を加える。
縛られている者は、もう人型の原形を留めていなかった。
ただでさえ、黄の国を歩く住民のような一般的な服を一切着ておらず、怪我の痕が痛々しく見え、人間扱いをされていない装いなのに、生傷がさらに無数に増え、見た目がひどくなっていった。そして、
「・・・あれ?息が無いわね。もしかして・・・?」
女は、先ほどまでサンドバックにしていたものの呼吸の有無を確認し、無であると判断する。すると、
「ねぇ。これ、片づけて。」
さっきまで生物みたいに息があった人間は人間だったモノに変わり、赤く粘性のある液体が漏れ出していく。
「「はっ」」
さきほどまでいた男性達は、またも女の言葉に従い、液体に濡れたモノを運んでいく。そして、
「じゃ、次はこれに座ろうかしら?」
女は次の椅子に目をつけ、
「!!??」
思いっきり勢いをつけて座る。椅子をかたどっている人間は人権をなくしているかのように、椅子という天命を全うしているのかのように四つん這いをしている。女の勢いに臆することなく、自身は人間であるはずなのに椅子という物である、という矛盾した事実と意識が交差する。
「失礼します」
ここでまた似たような服装の男が入室する。
「どうしたの?」
女は入室してきた男に話かける。
「はい。先月、最も繁盛していた店と、その店の代表者の情報を掴んだので、お知らせに来ました」
「へぇ。それで?」
「はい。それは、」
男は女に近づき、耳打ちでさきほど仕入れてきた情報を伝えていく。
「ほぉ?」
女は男の聞いた名前を聞くと、少し驚いた後、自然と笑みになっていく。
「その情報、確かなのよね?」
女は男に情報の正確性を確認する。
「はい。先日、商業者ギルドにも確認をとったので間違いないかと」
男は女に頭を下げながら答える。
「そう」
女は情報が真実であることを確信し、
「それじゃあこの店をいつも通りになさい。いいわね?」
「は」
男は女の支持の元、退室する。
「さて、」
女は椅子から立ち上がると、今度はソファー、を模っている人達の上に勢いをつけて乗る。
「「「!!!???」」」
ソファーを模っている者達は急激な負荷に声をだしそうになるが、なんとか声を殺し、そのままとどまる。
「まさかあの子達が店を経営し、大繁盛させるとはね」
そう言い、
「それじゃあ、あの店を乗っ取るか」
女は、その後の経済的効果を先読みしながら、
「ふふ♪」
女はその顔を醜い笑顔へと変えていった。
次回予告
『4-2-22(第296話) 招待状着』
ヤヤ達が店、【ヤユヨカウンセリング】を開業させてからしばらく時が流れ、ヤヤ達のところにある郵便物が届く。
こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。
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