4-2-20(第294話) 開業、【ヤユヨカウンセリング】!
あれからヤヤは、自身のお店を開業し、開店させた。
だが、ただ開店させても、店に入る人はあまりいないだろう。そう考えたリーフはヤヤ、ユユにある提案をする。それは店頭での集客である。
そして、
「いらっしゃいませー!」
「本日から【ヤユヨカウンセリング】の開店です。よろしくお願いしまーす」
ユユは必死に周囲の人々に呼び掛ける。
なお、ユユが途中で言っていた【ヤユヨカウンセリング】とは店の名であり、ヤヤ、ユユ、ヨヨから文字を一字ずつ取った結果、このような店名になったのである。
最初、ヤヤが初めて入ったお客様を店に招き入れ、実際にカウンセリングした。
その結果、
「ありがとう。ほんっとーにありがとう」
初めて入ったお客様は、泣いてヤヤに感謝した。
(あれ?もしかしなくても、娼婦の時に培ってきた話術が活かされている?)
もちろんそれもある。
だが、彩人から教わったカウンセリングの基礎知識も頭に叩き込まれた影響も少なからずあるだろう。その2つの要素を元にカウンセリングした結果、泣かれた。もちろん、いい意味で、である。
その反響が幸か不幸か、またお客様を呼び、またも泣かれる。もちろん、いい意味で。それほどまで、周辺の住民は心労の量が半端なかったのだ。みな、働き詰めだったからだろうか。心を休める時間がほとんどなかったのだろう。そのような時に、自身の心に親身に寄り添ってくれる店が開店したのだ。これはもう、駆け込み寺の如く駆け込むだろう。そして、日を追うごとに利用人数が増えていった。
そして、開店してから数日、
「ユユー。ご指名入ったヤよー」
「分かったすぐ行ユ」
「ヨヨー。申し訳ないけど、お客様の子供、預かってくれないかな?」
「分かったヨー♪それじゃあみんな、ヨヨと遊ぼう?」
「「「うん!!!」」」
ヤヤだけでなく、ユユ、ヨヨも店に携わることになった。
ヤヤは精神的疲労を少しでも緩和、あわよくば解消するためにカウンセリングを行う。
ユユはというと、
「すいません」
「それでどうしたユか?」
「ここ最近、急な出費で金欠でして。お金を節約するために、美味しくて安上がりな料理とか教えていただけないでしょうか?」
「そうユね・・・、」
今までの家事や金銭管理能力を買われ、その方面の悩みや相談を受けるようになっていった。
その間、ヨヨはというと、お客様のお連れの子の面倒を見ている。だが、ヨヨ一人では任せなかったことだろう。
「わー」
だが、ヨヨの他にもう一人、5本の角を携えた角犬と共に子供達と遊んでいた。
角犬はかなり賢い生き物であると知られている上、人間より身体能力が高いため、いざという時は、角犬が脅威から護ってくれる。そんな信頼から、ヨヨと角犬に子守をさせる人が多くなっていったのだ。
こうして、ヤヤ、ユユ、ヨヨ、角犬の3人と一匹による実家経営の店はまわり続ける。
そして、彩人達はというと、
「いや~。それにしても、まさかあそこまで大繁盛するとは」
「ですね~」
ヤヤ達が経営している店を傍観していた。
「ご主人様はこうなることをここまで見越していたのですか?」
「いや、そんなわけないから。」
クロミルのいき過ぎた考えを俺は即座に否定する。
確かに、心理カウンセリングを欲する人はいなくならないだろう。どんな世界にも、メンタル崩壊目前の人はいるはずだし、誰かに相談したくても出来ない人はいるはずだ。そのことを考慮し、今回の計画を即興で思いつき、ここまで来たのだ。といっても、ヤヤ達の能力あってここまで上手くいっているんだろうけど。
それにしても、ヨヨからの、
「角犬ちゃん可愛い!ヨヨがちゃんと面倒見るから、家で飼いたい!飼いたい~~!!」
と、駄々をこねられたのだ。俺自身、別に角犬に対し、そこまで固執していないので構わなかったのだが、他のみんな、特にルリはどう思っているのだろうか。
「そっか。角犬ちゃんは?」
ルリは角犬と話をした後、
「角犬ちゃんがよろしく、だって。ルリからもよろしくだって。後、」
ルリと角犬がこちらに向き直し、
「『私が生まれてくるまで数多くの世話、本当に、本当にありがとうございます』だって」
ルリがそう言うと、
「ニャニャン」
角犬は頭を下げる。こいつ、俺達にきちんとお礼を言ったのか?ルリ経由だけど、きちんと礼を言えるほど賢いのか。これは確かにペットに欲しくなるのも分かるな。今はいらないが。
「なんだか、少し寂しくなりますね」
「ですね。まだ私、角犬ちゃんと拳を合わせていませんのに」
「…はぁ。やっぱり脳筋はどこまでも脳筋」
「・・・今はとても気分がいいので、イブには何もしませんよ。ええ、何も」
なんか、あの3人だけ、ちょっとした貴婦人のお茶会みたいな雰囲気だ。ちなみに俺は、喫茶店っぽい店で、ヤヤ達が運営している店を傍観している。
故に、
「うわー。これ、美味しいー♪」
「ほ、本当ですね。これ、一体何で出来ているのでしょう?」
「ルリ様、私の分も召し上がりますか?」
飲み物と共にちょっとしたお菓子も頼んでいる。
「それにしても、あいつら、順調に店をまわしているみたいで安心だな」
「ええ。これなら当分は生活できることでしょう。なんなら、あれで生涯、生計をたてることも可能に思えます」
「だな」
見た目俺と同年代っぽい人が、俺よりも年下の女の子達が今も大人達から話や愚痴を真剣に聞き、相手のケアを行う。簡単ではないと思うが、それらを即座に行えるヤヤ達は本当に凄いと思う。俺なら・・・すぐに寝そうだ。そもそも、人の長話を聞くことにあまり慣れていないんだよな。人と接する機会がなかった故、人の話を聞く機会も必然と少なくなっていったんだよ。
(あいつら、無事に仕事出来ているな)
これでやつらの生活は大丈夫だろう。角犬の事は、ルリがいいと言っているから別にいいか。ヤヤ達があの角犬をどうかするとは思えないし、餌のこともなんとかしてくれることだろう。
「さて、」
「?…どうか、した?」
イブは、俺が立ち上がった事に疑問を抱き、質問する。
「ん?俺達もやることをやらないとなって」
「「「「「「??????」」」」」」
ここで全員が、俺の言うやることに疑問を抱いているようだ。
「ギルドの依頼だよ」
この一言に、
「「「「「「あ」」」」」」
全員が納得した。
「最近依頼をこなしていなかったからな。だからこの際に依頼をこなし、お金を稼ぐつもりだ」
ヤヤ達に結構お金を使っちまったしな。金を稼がないと。
「ルリ、頑張って倒すよ」
ルリはお菓子をつまみながら賛同してくれた。食べながら言うのは止めてくれよ。
「ご主人様、私もお供します」
クロミルは相変わらず礼儀正しいな。
「わ、私も頑張りましゅ!」
モミジは相変わらずオロオロしている。精神安定剤の服用を義務付けたいところだ。
「…ん。あんな脳筋には負けない」
「ふ。臨むところです。こちらこそ胃袋お化けになんか負けません」
「まぁまぁ。イブもクリムも落ち着いて・・・、」
「「おっぱいお化けは黙ってて」」
「お、おっぱ・・・!?」
「「「・・・」」」
イブ、クリム、リーフはバチバチであった。
もうこの3人、本当に仲良しなんだな。そう思う事にしよう。それと、キャットファイトする元気があるなら、その分を依頼達成のために温存しておけよ。
「それじゃあ、全員で行ってもなんだし、いくつかに分かれて依頼をやっていこうぜ」
「…分け方は?」
「分け方?そうだな・・・」
俺は分け方を考えながらみんなに話していき、
(久々の戦闘だ。角犬達との戦いからしていなかったが、腕が鈍っていないだろうか?)
そんな心配を脳の隅でしながら、俺達はリーフ案内の元、ギルドへと向かう。
次回予告
『4-2-21(第295話) キハダに住むある女性』
ヤヤ達が店、【ヤユヨカウンセリング】を開業させて繁盛させている一方、ある女性がその店に目をつけ始める。
こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。
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