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色を司りし者  作者: 彩 豊
第二章 メイズのような意志を持つ商王と三姉妹
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4-2-18(第292話) 深夜に降誕する生命

「それではみなさん、今日はゆっくりくつろいでください」

「明日は、私達が美味しい朝ご飯を作ユので、楽しみにしていてください」

「それじゃあルリちゃん、明日も遊ぼうねー!」

 ルリはヨヨに手を、3人は3人の部屋へと入っていった。そして今俺達は、仕事部屋の数室を借り、ここで寝ることになった。普段は寝部屋として使う予定はないが、自宅に8人も新居にお邪魔するのは失礼だと思い、宿に行こうとしたのだが、それをヤヤ達が引き止めたのだ。だが、俺達もそこまで図々しくはない。少し話し合いをした後、仕事部屋で寝る、という互いが妥協した結果、ここで寝ることになった。寝具は持ってきているのだが、ここで寝ることが妥協なのか?ま、別にいいか。そして俺はというと、

「ま、性別の関係上仕方が無いんだけどね」

 男独りである。いいんだけどね。このような場所に、俺達が建てた新居に変な臭いを残したりとか、行為をしたりとかしないんですけどね。一応念のためだ。自制が効かなくなったら・・・分かるよな?男の子なら理解してくれることだろう。

「特にあの球は反則だ、うん」

 俺の言う球とはもちろん、女性が胸に付けている丸い物体である。ま、中には急ではなく、まな板を帯びている女の子も・・・、

「ひ!?」

「「・・・」」

「ど、どうしたんだ、イブ、クリム?」

 何故扉の前から部屋を覗き込むように見ているんだ!?こわ!?めっちゃ怖いんですけど!?

「「私達の胸、馬鹿にした??」」

 俺は真顔になり、

「マッサカ―。ソンナワコト、アルワケナイジャナイデスカー」

 そう宣言する。それにしても、こんな時間に起きているとは。成長期なんだから、たくさん寝ないと成長しないぞ?色々と。

「「・・・そう」」

 二人は納得していない様子であった。もっとルリの純粋さを見習ってほしい。ルリなんか、胸の有無を一切気にしていないんだからな。

「「お休み」」

「おう」

 俺は、二人が扉から離れていくことを確認し、

「本当にいなくなったか?」

 扉の周りを見渡し、人気がいないことを確認してから、

「ふぅ~。危なかった~」

 俺はポーカーフェイスを解き、感情を表に出す。それにしても、女性という生物はつくづく勘が鋭いな。女性だけが所有している第六感でもあるのだろうか。

「ん?」

 一瞬、何か影っぽい何か?が見えた気がする。あの影の形、結構人型に近かった気がするが、真ん中部分が膨らんでいたから、太っている人の影、なのか?

「だが・・・、」

 この家に、新居の家に太っている人はいなかったはず。

「ちょっと様子を見てくるか」

 俺はその影の正体を探るため、独りで部屋から出て、捜査を開始した。


 家から出て、敷地内に申し訳ない程度にこぢんまりとある庭を見てみると、そこには人型の影と、丸・・・いや、楕円に近いな。楕円形の影があった。

「あいつ、何しているんだ?」

「本当、何をしているのでしょうか?」

「!!??」

 だ、誰だ!!??て、

「や、ヤヤ、なのか?」

「?そうヤよ?」

「急に後ろから声をかけないでくれよ。ビックリするじゃないか・・・」

 それに俺はボッチなんだから、俺を痛めつける目的で話しかけてきたのではないか、なんて無駄な考えがよぎってしまうじゃないか。ちなみにこの考えは、幼稚園児の時に・・・て、今はそんなことはどうでもいいな。

「ご、ごめんヤよ」

「まぁいいよ。それでヤヤ、あいつが誰か分かるか?」

 俺は今も不鮮明に映る正体不明な二つの影の方向に視線を向ける。

「さぁ?」

 どうやらヤヤも正体が分からないらしい。

「でも、なんか声が聞こえます」

「声?」

 俺はさらに聴力に神経を集中し、影から発せられているかもしれない声を聴こうと集中する。

「・・・もうすぐ、かな?頑張れ」

 その影からは聞き慣れた声であった。て、この声ってまさか・・・?いや、もう少し様子見だな。確信したわけじゃないし、あくまで推測、だし。それにしても、やっぱ夜のせいもあるのか、暗くて顔がよく見えないな。他の国に比べると多少明るい夜だが、輪郭までしか分からん。

「苦しいの?手伝おうか?え?いらないの?それじゃあ一人で頑張れ。しっかり応援するからね♪」

 その影は、何かと話しているようだ。一体何と話しているんだ?影の形から見て、あの楕円形の影と話しているように見える。あの二つの影は一体・・・?

「頑張れ。ルリは一生懸命応援するからね」

 その影はルリ、と言った。え、ルリってことは・・・?

「お前、ルリか?」

「!?て、なんだお兄ちゃんか~。ビックリした~」

 おっと。さきほどヤヤにも注意したことをルリにしてしまったようだ。

「すまん、驚かせてしまったみたいだな」

「ううん。別に大丈夫」

 と、俺の返事をなぁなぁにし、ルリは楕円形の影、卵に話しかける。

「それで、こんな時間にどうしたんだ?」

「卵ちゃんが動いたの」

「卵が?」

 俺は改めて楕円形の影を形作っていた卵を見てみると、ピクピク動いており、殻にヒビが入り始める。

「そろそろ生まれる、のか」

「うん。だからルリ、卵ちゃんが無事に生まれるように応援しているの。頑張れ」

 と、ルリは卵を応援し続ける。せっかくだし、俺も応援するか。せっかくの機会だ。

「卵、頑張れ。頑張って生まれて来いよ」

 俺が応援すると、

「が、頑張るんヤよ、卵ちゃん!」

 ヤヤも卵を応援してくれた。

 3人分の声援を受け、

「・・・」

 卵は刻一刻と、小さな殻を少しずつ地面に落としていく。

「「「・・・」」」

 本来、この時間帯は誰もが床についている時間である。その時間に俺達は今、

「「「あ!!!???」」」

 新たな生命の誕生の瞬間に立ち会った。

「に、ニャー」

 卵から誕生したのは、小さな角犬であった。それだけであれば別に驚愕、まではしなかった。驚きはしたものの、角犬の卵であることは予め分かっていたからだ。だが、生まれてきた角犬は、明らかに普通の角犬でないことがすぐに判明した。

「角が、5本!?」

 そう。角犬に生えている角の本数が1本2本ではなく5本である、ということだ。確か、前に3本のやつを見たことはあったが、それ以上だな。

「にゃ、にゃー」

 その角犬は、ルリに甘えるように自ら近づき、顔をルリの体にこすりつけている。一種の愛情表現なのだろうか。

「えへへ♪」

 ルリは嬉しそうに角犬の頭を撫で、

「生まれて来てくれてありがとうね、角犬ちゃん♪」

 ルリは喜びの感情をこぼしながら感謝の言葉を角犬に伝える。

「ニャン♪」

 角犬は嬉しそうに返事をし、そのままゆっくり目を閉じた。

 まさか、もう死んだのか!?なんて考えは俺の思い違いだったらしい。角犬は寝息をたてていた。て、なんだ。寝るために目を閉じたのか。危うくもう死んだのかと思ったぜ。

「良かったね、角犬、ちゃん・・・」

 ルリも眠かったのか、角犬の後に目を閉じた。俺は学ぶ男だからな。もう変な勘違いはしないぞ。ルリは死んだ、のではなく眠った事に間違いない。間違いないのだ!

 ・・・間違いない、よな?俺は一応、念のために、ルリの息があるか確認する。良かった。急死、なんて事態は起きていないみたいだ。

「二人とも、寝てしまいましたね」

「ああ。そうだな」

 さて、この二人をどうするかな。このまま外に放っておくのは・・・マズイか。中に入れるか。

「よいしょ」

 俺は二人を運ぶため、二人を優しく担ぎ、部屋に運び込もうとする。

「ふぅ」

 二人を起こさないように運ぶのはちょっと苦労したぜ。

「さて、」

 俺もそろそろ寝ようかね。いい具合に俺も眠くなってきたことだしな。角犬やルリの眠気が俺にも移ったのかもしれないな。

「アヤトさん、ちょっといいですか?」

「…ん?どうした?」

 ちょっと眠かったせいで反応に遅れてしまった。

「私、ちょうどアヤトさんに話したいことがあるので」

「分かった」

 俺はすぐに了承した。

 何せ、ヤヤの表情がいつにもなく真剣だったのだから。

 さて、どんな話をするのやら。

次回予告

『4-2-19(第293話) 深夜で会話する2人、それを盗み聞く2人』

 静かな夜道をある2人が通る。夜道をある程度歩くと、2人は会話を始める。


 こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。

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