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色を司りし者  作者: 彩 豊
第二章 メイズのような意志を持つ商王と三姉妹
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4-2-15(第289話) お礼からの職場改善

 楽しい、それはもう楽しい食事を終え、食器を青魔法で洗い、アイテムブレスレットに収納し、片づけを終える。

「さて、ヤヤはこれから、仕事をどうする気なんだ?」

 俺の問いかけに、ヤヤの雰囲気は一気に暗くなる。

「今の仕事は…出来れば辞めたい。辞めて、別の仕事に就きたい」

「そっか」

 俺は別に、止めも賛同もしなかった。ただ、そうなんだ、という感覚だ。

「仕事場はどうする気なんだ?」

「仕事、場?」

「ああ。新たに仕事をする場所はどうしているのかな、と」

 別におかしなことは言っていないと思う。もし仕事をするのであれば、別の就職場所に勤務するわけだからな。

「私、開業するつもりだから自宅、で・・・、」

 そう言いながら、ヤヤは自宅を見てあることに気付く。

「この家に、みんな来ると思う?」

 申し訳ないが、このようなボロ屋に人が入ってこないと思う。風俗店だろうが食料店だろうが便利屋だろうが、人が入りづらければ意味がないだろう。

「来ない、ですよね。それに、ユユ達の事も考えていませんでした・・・」

 なんか、色々と穴だらけの計画だな。

 ・・・。

「ここはいっそ、協力してもらうか」

「協力、ですか?」

「ここにいる、俺達の話を詳細に聞こうとしている人達だよ、な?」

 俺は周囲にいるイブ達に思いっきり話を振る。

「「「・・・」」」

「いや、急に顔を背けても意味無いからな?」

 まったく。さっきから視線を感じていると思ったら、話を盗み聞ぎしようとしやがって。別にいいけど。

「俺の考えた案で良ければ話すが、いいか?」

「あ、はい。どうぞ」

「分かった」

 俺は気持ちを締め直し、呼吸を目いっぱい整え、話す体制を万全にする。

「これから、職場であるヤヤ達の家を改造し、職場兼自宅になるようにしたい」

「!?そ、それってつまり・・・!?」

「そう。今ヤヤ達が住んでいる家を良い家に改造するんだよ。もちろん、俺だけの力だけじゃあたかが知れているが、みんながいれば問題ないはずだ」

 そう言い切ったものの、ちょっと心配になってくる。俺はみんなの方を向く。そこには、

「「「「「「「・・・」」」」」」」

 みんな、やる気のある顔をしてくれていた。本当、こいつらには敵わないな。

「ありがとう、みんな。それでまず、ユユとヨヨの許可がいるんだが、話をしてもいいか?」

「…私も一緒に話に混ざるのならいいよ」

「分かった」

 俺達はユユ、ヨヨに近づき、話を振る。

「ちょっといいか?」

「?何か用ユ?」

「?どうかしたの?」

「俺達、この家を大改造して、今以上に住みやすい家にしたいんだけど、いいか?」

 この言葉に、

「てことは、この家が今以上に綺麗になるの!?わーい♪」

 ヨヨは嬉しそうにジャンプをする。食後の運動で胃もたれでもしないといいが。一方、ユユは怪訝な顔をしていた。どうしたのだろうか?

「ちょっといいユ?」

「?いいが、何だ?」

「本当にこの家を改造できるの?出来るにしても、この家を改造する費用は?材料は?人数は?かかる日数は?」

 うわ~。ここに来て耳に痛い情報が脳内に送り込まれてくる~。確かに言われたことはどれも重要だ。それらを怠り、勝手に計画している俺は愚か者一択でしかない。だけど、

(ま、何とかなるかな)

 俺は全てを無視、丸投げすることにした。俺ではない他の誰かに。そうすれば、俺は無計画に事を運ぶわけではないと思う。俺の愚かな人間性は変わらんが、これで改造計画は建設的に話が進むだろう。他力本願で申し訳ないが。

「確かに俺一人では、そういった建設的な話はまだできない。だから、」

 俺はイブ達に手のひらを向け、

「イブ達がいるから、俺がここまで無茶できるんだ」

 そうユユに言う。そう言えば、イブ達は設計関連の知識とかあるのかな。誰も無ければ最悪、周囲の家の様式をコピペ、ペーストするようなイメージで作成するか。

「だから大丈夫だ」

 俺はイブ達に設計関連の知識がある前提で話を進める。

「・・・そう。分かったユ」

 そしてユユは改めて頭を下げ、

「それでは、これからよろしくお願いするユ」

 正式なお願いの仕方なのかどうかは分からないが、再度、頭を下げられた。

「ああ」

 頼まれたからには、しっかりやらないとな。

「さて、まずは、と」

 俺はアイテムブレスレットから大きな紙を取り出し、3人の前に置く。もちろん、最低限の筆記用具も忘れない。

「これから、家を設計する際に要望があれば、その紙にかいてほしい」

 俺は忘れっぽいので、紙に残してもらおうと思い、記してもらうことにした。これなら忘れっぽい俺でも忘れることは無いだろう。何せ忘れっぽい俺は地球にいた頃、クラスメイトの苗字すらろくに覚えていなかったからな!・・・なんか、家の再建の事がどうでもよくなってきたな。おっと、こんなことでやる気を失う訳にはいかないし、ふんばるとしよう。

「「「分かった!!!」」」

 3人は話をしながら、それはもう楽しそうに家の話をしながら、自身の要望を綴っていく。

 さて、

「それで、どうするつもりなの?」

 と、リーフが話しかけてくる。

「何が?」

「何がって、色々よ、色々」

「…ん。家を作る際の事とか、ヤヤの職の事」

「私達、何も聞いていないんですけど?」

 と、3人が俺に詰め寄ってくる。ま、言ってないので詰め寄られても仕方がないか。

「それはまぁ、事後報告ということで勘弁してくれ」

「「「ふ~ん・・・」」」

 3人とも不機嫌を体現しているようだ。一方、ルリ、クロミル、モミジは俺達の話し合いに参加する気が無いのか無駄に気を遣っているのか、ヤヤ、ユユ、ヨヨの傍にいてくれている。

「それで、どうする気なのですか?」

「…お金とか人手とか基礎とか設計順序とか考えているの?」

「そうです。それに、あの子達の要望も出来るだけ叶えるとなると、かなりの時間やお金、材料を使う可能性だってあります」

 うん、こういう話は嫌いだ。というか、建設業界で働いている人達はこう言った事柄全てを考慮して建物を建てているのか?頭、使い過ぎじゃないか?いや、これぐらい考えないとむしろ、家を建てられないのだろう。

 そういえば、今少し思い出したのだが、土地の検査もなんかやっている記憶もあるな。これ以上の作業とか、ほんと、普段働いている方はご苦労様な事だ。俺には無理難題だな。

「お金と材料は、俺が何とかする。けど、基礎とか設計順序はその、」

「「「なに???」」」

 ひ!?か、顔が怖い!?

「わ、分からないので、そちらにお任せしていただき所存でありまして、その・・・、」

 俺は3人の顔を正面に見ることが出来ず、顔を左右方向に向かせながら変な口調でお願いしたいことを口上で伝える。3人はため息をついた後、

「なら、事前に相談くらいはしてくださいね?」

「…ん」

「ですね。ま、私もアヤトの言いたいことは分かります。基礎とか設計順序とか、そんなのあるんですかって感じだし。ですが、力仕事だけはお任せくださいね!」

「「・・・」」

 イブとリーフはクリムを冷たい目で見ていた。

「ですが、1つだけ気になることがあります」

 リーフがそんなことを聞いてきた。

「何だ?」

 俺の恥ずかしい過去か?そんなの、星の数以上にあるので、毎晩のヒトネタには困らないくらいなのだが。て、そんなわけないか。

「どうしてアヤトは、そこまでヤヤちゃん達にそこまで協力的なのですか?」

「どうして、か・・・」

 俺とて、明確な理由はない。単に、良い買い物をして上機嫌になり、そこに偶然通りかかってきた女性、ヤヤに声をかけ、何か俺に出来ることは無いか聞いただけだ。それが転じて今に至るわけだ。

 このことを俺なりの言葉で、みんなに伝えるとなると・・・。

「こんな俺でも初対面の人を助けられる、そんなことを証明するため、かもな」

 結構上方修正して、こんなところかな。

 気分で助けた点を体裁よく言ってみたらこんな感じなった。

 もちろん、こう言ったことにも理由はある。

 何せ、俺は地球にいた時は見ず知らずの人を助ける、なんて考えがなかった。自分一人だけで精いっぱいだったし、他の人が困っているのかどうかが分からなかったからな。地球にいた時の俺は本当に無能で、気が利かなかった。

そんな俺がこの異世界にきて、ここまでよく変われたものだ。ここまで生活が出来たのも、全魔法に適性があったからだろうな。だから人を助けることも出来たし、自分だけでなく、周囲の人にも気を配ることが出来るようになった。

 そのことを誰でもない、自分に証明するために今回の事をすることにした。単なる自己満だ。

「別にだれかれ構わず助けるつもりはない。けど、助けようと思った人くらいは助けたいんだ。駄目か?」

 助けようとする気持ちが芽生えた人にだけ助ける。なんだか助ける人を選んでいる気がしてならないが、こればかりはしょうがないと思う。だって、世界中にいる困っている人達を助けられるか、なんて聞かれたら、そんなの無理、と答えるしかない。だから、助けられると思う人達を選ぶしかない。そう自分に言い訳し、人助けしようとしている。

「・・・ま、私もアヤトに助けられましたね」

「これくらい、私にも手伝わせてくださいね♪」

「…ん♪これから少し忙しくなる」

 リーフ、クリム、イブはかなりやる気だった。

 なんか、嬉しいな。自分の考えを認めてくれる存在って、こんなにも心安らぐもんなんだな。

「ありがとう、みんな」

 俺の感謝の言葉に、3人は再び笑う。

「それ、さっきも言っていたわよ?」

「…ん♪」

「今日のアヤトはありがとうばっかり言っていて新鮮です♪」

「…うるさい」

 まったく。人が素直に感謝したらこれかよ。でも、

「これが終わったらお礼をしたいから、お礼のことでも考えておいてくれ」

 俺はこの件が片付いた先のことを見越し、お礼の件を話す。何かしてもらった恩を恩で返すためにこういうことは重要だよな。

「「「・・・後で考えておく」」」

 何かをためらっているようだったが、俺には分からなかった。

「?そうか」

 単に思いつかなかった、だけかもしれないしな。追求する気も起きんな。

「ルリはねー、もっとお兄ちゃんとホットケーキが食べたーい!」

「!?」

 る、ルリ!?て、なんだ。声の正体はルリか。

「急に背中から声をかけるんじゃないよ。ビックリするじゃないか」

「えへへー。それより、ヨヨちゃん達が呼んでいるよ。何でもお家のことについて、らしいよ」

「分かった。あ、」

「?どうしたの、お兄ちゃん?」

 俺はヤヤ達に向けていた足をリーフ達に向き直し、

「お前達も一緒に来て、話を聞いてくれないか?俺だけだと話を聞き逃すこともあるからさ」

 俺のお願いに、

「「「はい!!!」」」

 クリム達は勢いよく返事をし、ヤヤ達の元へ向かう。

 さて、俺もヤヤ達のために、良い家を建てられるよう頑張るか。

次回予告

『4-2-16(第290話) 職場改善の下準備』

 ヤヤ達の職場兼自宅を改善するため、彩人達はカンゾウを奔走する。


 こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。

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