4-2-14(第288話) 道を教えてくれたお礼
俺達はまず、どんな料理が食べたいか、3人に相談してみることにした。結果、
「美味しい食べ物!」
と、ヨヨが言ってきた。そのヨヨの言葉にヤヤ、ユユも頷いたことにより、俺達は美味しい食べ物を作ることにした。もちろん、不味い食べ物を3人に出すわけない。というか、美味しい食べ物って幅があり過ぎないか?美味しければどんな食べ物でもいけるってことだからな。
このヨヨの言葉を元に、俺達は今から作る料理について話し合うことにした。
「それで、どんな料理を出せばいいと思う?」
俺はリーフ達に意見を聞く。
「「「「「「ホットケーキ!!!!!!」」」」」」
「・・・」
「卵ちゃんも『ホットケーキがよろしいかと思います』だって」
満場一致でホットケーキ、らしい。それにしてもまさか卵も同じ食べ物を提案するとは。ちなみに、卵はこの街に来る道中でホットケーキの存在、名前等色々把握している。餌付けしていたわけではないが、色々食べ物の知識をつけたらしい。
「ホットケーキか」
ま、作る分には余裕だな。だが、これだけでは物足りないだろう。何かもっとお腹に溜まりそうな何かが欲しいかも。これはあくまで男目線だけど、女の子はどう思っているのだろうか。ホットケーキだけで足りるのだろうか。
「ねぇねぇ、クロミルお姉ちゃん?」
「?何でしょう、ルリ様?」
「お姉ちゃんが前作ってくれたあれ、出したらいいんじゃないかな?」
「あれ?…もしかして、ダリシアンとステルム、のことでしょうか?」
「そうそう!それだよ!」
と、ルリがクロミルを笑顔で指差す。
ダリシアンとステルム、か。確かダリシアンは骨付き肉みたいな料理。ステルムは牛スジ煮込みみたいな煮込み料理のことだったか。確かに、あの料理は美味しかったし、いいかも。
「ご主人様、よろしいでしょうか?」
「もちろんOKだ。その料理はルリ、クロミル、モミジに任せてもいいか?」
俺はさきほど話していた二人に比べ、モミジを追加で指名する。
「わ、私ですか!?」
いきなり指名されたことに、モミジは驚いている。
「ああ。結構多めに作って欲しいからな。だからモミジにも協力して欲しいんだ」
俺の考えに、
「は、はい!」
後、ホットケーキの事はどうするかな。
「ホットケーキはリーフ、イブ、クリムに任せていいか?」
俺は3人に視線を送る。
「「「はい!!!」」」
これでホットケーキの件は大丈夫だろう。
あ。
(材料の事、すっかり頭から抜け落ちていたな)
「クロミル。ダリシアンとステルムを作る材料はあるか?」
「少々お待ちください。・・・3人分作るとなるとギリギリかと思います」
「そうか。それじゃあ俺が材料を買ってくるから、みんなはその間に料理の準備をしておいてくれ」
「「「「「「はい!!!!!!」」」」」」
そして俺は材料を買いに店に行き、必要そうな食料をたらふく買い、戻ってみると、既に調理準備が完了していて、もう調理を始めようとしていた。なんともいいタイミングで戻ってこられたものだ。そして、6人は料理を始めた。
え?俺とヤヤ達はどうしたのかって?
家の中で6人という大人数が台所で調理するわけにもいかないので、ただいま郊外で調理し、俺が緑魔法で製作した特製チェアとテーブルに座ってもらっていますが何か?
「それじゃあ3人はここで座って待っていてくれないか?すぐにできるからさ」
「「「は、はい!!!」」」
三人は体を収縮させて座る。別にそこまで委縮しなくていいと思うのだが。まぁいいか。
「さて、」
俺は別口でカレーでも作るかな。栄養面を考慮して、野菜多めで食べ応え抜群の具材ゴロゴロカレーにするか。今、アイテムブレスレット内にはカレーがあるから、そのカレーに継ぎ足して量を増やしていくか。味を出来るだけ変えないようにしないとな。
「・・・」
そういえば、この角犬の卵はどうするか。もちろん、調理的な意味ではない。誰がこいつの面倒を見るか、という点だ。・・・みんな、調理に集中しているようだし、俺が面倒を見るしかなさそうだ。別にいいけど。俺は卵を固定できるように緑魔法で地面の形状を少しいじり、そこに卵を置く。
「卵。俺も調理するけど、ここを動くなよ?」
「・・・」
なんとなく卵がうん、と言った気がする。なら問題なさそうだ。
さて、まずはカレーを作る際に必要な野菜でも切ろうかね。
「「「・・・」」」
そういえば、俺達が料理をしている間、ヤヤ達は退屈だよな。何かやらせてあげたいけど・・・、
「…ちょっといい?」
俺がそんなことを考えていると、イブがヤヤ達に話しかける。
「…今、私達でホットケーキを作っているんだけど、一緒に作る?」
俺の気を察してくれたのか、イブが3人の空き時間を有効活用しようと3人に提案してくれた。クリム、リーフもイブの言葉の意図を察したのか、手招きし、「おいで~」とか、「一緒に作りましょう?」とか誘っていた。ねぇ、どうしてみんな、そんなに気を回せるの?みなさん察し良すぎじゃないですか?俺なんか、人の真意に何も気づけず、今の今まで電子ゲーム機ばかりと向き合っていたというのに。
と、俺のことはどうでもいいか。それにしても、ヤヤ達は喜んでホットケーキ作りを始めていったな。あっちにはリーフがいるし、問題ないだろう。イブとクリムが問題なのだが、リーフに全部任せるとしよう。
「モミジ様、この肉の下準備はこのようにやるのです」
「な、なるほど。ありがとう、クロミルさん」
「クロミルお姉ちゃん!いい感じにこれ、温まって来たよ!」
「分かりました。それではモミジ様、その肉の下準備が出来次第、このフライパンに投入しましょうか?」
「は、はい!」
ダリシアンとステルムの方はクロミル達に任せて大丈夫そうだ。というか、俺が手伝うといっても、ダリシアンとかステルムの作り方、よく知らないけどね。後で聞いておこうかな。
「ちゃんとお前の分も作ってやるからな」
俺は卵を優しく撫で、再び調理に入る。
調理を始めてからどれくらい時間が経過しただろうか。あれからこの近辺には、ホットケーキの匂いとカレーのスパイシーな香りが混ざり、甘辛そうな匂いとなった。
「ご主人様。ダリシアンとステルム、完成いたしました」
「いえーい♪」
「が、頑張りましたー・・・」
クロミル達は無事完成させたらしい。これはなかなかいい匂いだ。お腹も強制的に空いてきそうだ。
「アヤト!こちらもかなり作りました、よ!」
「!?こ、こんなに!?」
一体何人分作ったんだよ!?そう思わざるを得ないほど大量のホットケーキが積み重ねられていた。6人で作ったのだから量はあると思ったがここまでとは。
「私達、こんなに作っていたのですね・・・」
「…確かに、作ることに夢中だった」
本当だよ。いくらあっても困ることは無いが、これ全部、アイテムブレスレットにはいるかな。
「ユユ、ヨヨ。料理って結構楽しいんヤね!」
「そうユよ、ヤヤお姉ちゃん!」
「楽しかったヨー♪」
どうやら、ヤヤ、ユユ、ヨヨは料理を楽しんでもらえたらしい。まぁ、あれだけの量のホットケーキを作っておいて楽しい、なんて感想が言えるんだから、別に気にすることは無いか。
「俺も完成したぞー」
俺は大きな鍋を数個、テーブルの上に敷いておいた布の上に置く。
「「「「「「おおー♪♪♪♪♪♪」」」」」」
「一応辛いカレーと甘いカレーがあるから、どっちか好きな方を食べてくれ」
「「「「「「はーい♪♪♪♪♪♪」」」」」」
こころなしか、みんなのテンションが高めだ。やはりカレーはみんな大好物なのかね。地球でも子供の好きな食べ物がカレー、というケースを多く聞くし。
「「「???」」」
一方、ヤヤ達3人は、このカレーを不思議そうな顔で、スパイシーな香りを嗅いでいる。そういえばこの世界にはカレー、なんてなかったな。
「これは何、アヤトお兄ちゃん?」
ヨヨが聞いてきたので、俺は素直に答える。
「カレーっていう料理で、辛くて美味いんだ。な?」
俺はルリ達に同意を求める。これで、“ううん。これはとっても不味いよ”なんて言われたら悲しくなるな。
「「「「「「うん♪♪♪♪♪♪」」」」」」
みんな、笑顔でスプーンを持ちながら返事をしてくれた。良かった。どうやら俺は無駄な心配をしていたみたいだ。
「さ、お前らも食っておけよ。美味いぞ」
俺はみんなに見せるようにカレーを一口いただく。うん、美味い。俺のこの様子に、ヤヤ達は重くなっていた腕を上げ、俺達が作った食物を口に放り込んでいく。
ダリシアンを、ステルムを、ホットケーキを、カレーを。
ひとしきり口に入れ、喉を通したと思うと、一口。
「「「美味しい!!!」」」
この一言が聞けた。何気ない一言ではあったが、
(良かった。口に合ったみたいでホッとした)
俺には、料理を作った俺には最高の誉め言葉であった。その後、俺達は作った料理を笑顔で食べ、楽しそうに話し、口の中を幸せの味で充満させ、幸せ成分を全身に行き渡らせた。
次回予告
『4-2-15(第289話) お礼からの職場改善』
ヤヤ、ユユ、ヨヨにお礼をした彩人は、今後どうするか問う。その問いの返事の内容に、彩人はある提案をする。
こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。
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