4-2-8(第282話) カンゾウでの別々行動~リーフ・クリム編~
彩人が独りになった頃、リーフとクリムはというと、
「さて、この国にはどんな防具があるのですかね」
「私は武器を見てみたいですが、防具にも興味あります」
自身に見合った装備を探すため、武器と防具が置いてある店を探し始める。
「・・・見当たりませんね」
「ですね」
リーフとクリムは今も探しているものの、お目当ての店が見つからない。
「店が多いから見つけられないのでしょうね」
「みたいです。誰かに聞く?」
クリムはリーフに提案する。
「そう、ですね。そうしましょう」
リーフはクリムの提案をのみ、誰に聞くか見て選び始める。クリムも首を動かして探していると、
(あの子がいいかも)
偶然にも、周辺を歩いている見た目同年代の女性がいた。
「あの子に聞きませんか?」
リーフはクリムに耳打ちし、視線でどの子かを示す。
「なるほど。あの子なら聞きやすそうですね」
「でしょ?」
二人の顔に微笑みが舞い、そのまま見た目同年代の女性へと向かい、
「すみません。ちょっとよろしいですか?」
リーフは、自身がギルドの受付嬢をしていた時の笑顔を再現して話しかける。
「?何でユか?」
その少女はリーフとクリムの声掛けに気付き、声を返す。
「この辺に武器や防具を売っている店がどこにあるか知らないですか?」
リーフは今尋ねたいことを少女に聞く。普通に聞けるところを見ると、リーフは少なからずコミュ障、初対面の人に声をかけることが出来ない、なんてことはないようだ。
「武器や防具、でユか・・・」
その少女は少し考え、
「私のオススメは、この通りの突き当りを右に曲がってすぐに武器屋、その隣に防具屋があったはずでユ」
少女は指を差しながらリーフとクリムに説明をする。
「そうですか。教えてくれてありがとうございます」
「ありがとうございます」
リーフとクリムはその少女に対し、お礼を述べる。
「別にいいユ。気にしないでください」
その少女も頭を下げ、
「それではこれで」
その少女は立ち去ろうとする。
「待って下さい」
リーフはその少女を引き止める。
「?どうかしましたか?」
その少女はリーフの声に反応し、立ち去ろうとした歩みを止め、再びリーフとクリムの方へ向く。
「何かお礼がしたいのですが・・・、」
と、リーフがお礼をしたいという。
「別にいいユ。気にしないでください」
今度はさきほどより軽めに頭を下げ、今度こそ少女は立ち去る。リーフとクリムは手を振って少女を見送ると、
「さて、店も教えてもらったことですし、行きますか」
「ええ!これからが楽しみです」
二人はお目当ての店へ向かうべく、歩んでいく。
店の前に着くと、さっそく二人は店内に入る。
「らっしゃっしゃい」
やや独特な入店時の挨拶をし、店員は歓迎する。その言葉を耳で聞き流し、二人は武器を見ていく。
「ふむ・・・」
「なるほど・・・」
リーフとクリムは武器をマジマジと見、分析するような眼差しで観察する。
「これらの中では・・・こちらの武器が最も硬度が高そうです」
「です。それの素材は・・・魔鉄、ですか?」
「おお!魔力を通せば通すほど硬度が増す優れモノだぜ!」
魔鉄。
それは、この店員が言う通り、魔力を通せば通すほど硬度が増す鉱物である。だが、魔銀も同様であり、魔銀よりも低硬度である。なお、魔力を通せば通すほど硬度が高くなる鉱物であることを彩人は知らない。それに対し、魔銀についての価値を知っていた二人は、
((第二の武器としていくつか買おうかな??))
主体は、彩人からもらった武器を使い、メンテナンス中の時はここにある武器を使おう。そう考えた二人は、お互いを見つめ合う。
「「分かりました」」
「?」
どうやら、視線だけでお互いの意見が分かったらしい。その光景を一部始終見ていた店員でさえ、何がどうなったのか分からない事だろう。
「ではこの魔鉄製のレイピアはありますか?」
「私には魔鉄製のガントレットをお願いしますね」
「あいよ!ついでに、それらの武器をメンテナンスする道具一式も付けられるが、どうする?」
「「お願いします」」
こうして二人は、立ち寄ったお店で目玉商品を買い、
「ありがとござやっやっしたー」
またも独特な店員の挨拶を背に受け、店を後にする。
「次は防具を見ましょう」
「ですね。出来ればみんなの分も見たいですね」
「ええ」
二人は期待して店内に入る。
「らっしゃい」
店員の挨拶を聞き流し、二人は再び防具を見渡す。
「これは・・・?」
「それは、鎧亀の甲羅を材料に作った盾だ」
「へぇ」
「これは、先ほどの盾と同じ素材な気がします」
「そりゃあそうだ。なんたって、それは同じ材料を使った鎧だからな」
店員は自作した自信作のように、自慢げに話す。
「いずれにしても、これらを持つと、機動力が低下しますね」
「ですね。となると、私達には不向きな防具ですかね」
リーフとクリムは少し悲しげに防具を置く。
「お客さん達は、どんな防具をお目当てなんだい?」
店員が2人に話かける。
「どんな、とは?」
クリムは店員に問いかける。
「先ほど、あの鎧亀の鎧や盾を置いた当たり、防具に求めているのは耐久性より機動性、じゃないのか?」
店員にそう言われ、
「はい、そうです」
リーフはそう返事する。
「だったらいい靴がある」
店員は奥に引っ込む。そして数分経過し、店員の手にはある靴がある。
「その靴は?」
クリムが聞くと、店員はさらに自慢げに話し始める。
「名づけるなら、【ブーストサポーターシリーズ】てところだ」
「「【ブーストサポートシリーズ】??」」
二人そろって店員に聞く。その後、「ま、俺が勝手に命名したんだけな」と、付け足しで言う。
「例えばこの靴の場合、このカカトの少し上の部分に円筒状のものが付いているだろう?」
店員は指差しながら説明する。クリムとリーフは頷き、説明の傍聴に集中する。
「ここから魔力を一気に放出することで、爆発的な加速が可能になったんだ!」
店員は握りこぶしを形成し、店員にしか分からない政策背景を脳裏に浮かべる。そんなこと、リーフとクリムには分からないのだが。
「魔力を一気に放出・・・」
「加速・・・」
二人はこの靴を履いた時、どのような場面で使えるか想像している。
「ちなみに、この機能を使いこなすには、かなりの特訓が必要だぞ?それに、」
「「それに??」」
「この靴には未だ検討している改善点があるんだ」
と、店員は少し困ったような顔をする。
「?何かあるのですか?」
リーフが聞くと、短く返事をし、店員の言う改善点を話す。
「一気に大量の魔力を噴出して移動する際、その負荷にこの靴が耐え切れず、数回しただけで破損してしまうんだ」
と、困ったような顔で改善点を話す。
((これって・・・??))
二人はここで、ある案を思い出す。
それは、この靴の周囲に魔銀で補強すればいいのでは、という考えである。
「だから今もこの靴の素材をどうしようか考えているんだ。魔鉄を使うと重過ぎる。だが、そこいらにいる獣の皮だと靴が破損する。製品開発って難しいな」
と、製品開発の難しさについて考えていた。
「「これください」」
二人は自然と口に出ていた。これで私達も強くなれるかもしれない。そう思ったのである。
「おう。でもいいのか?この靴、数回使うとボロボロになるんだぞ?」
自分で勧めておいて確認の言葉を挟む。
「はい。この靴、どのくらいあるのですか?」
リーフがそう言うと、店員はリーフとクリムの眼を見て、
「ちょっと待ってろ」
店員は奥からさらに靴を持ってくる。
「ほいっと」
店員は先ほど持ってきた靴と全く同じ靴を追加で持ってくる。
「この4足とそこにある1足。計5足が全部だ」
(5足。出来れば7、8足欲しかったですが、仕方がないですね)
「全部買います」
リーフの大人買い発言に、店員は少し驚いたものの、リーフの眼をみて、本気で言っているのだと判断し、
「あんがとう」
店員は言葉を返し、リーフに残りの4足を渡す。
「会計を済ませますね」
そしてリーフは会計を済ませる。
「ああ。それと、まだ他にブーストサポートシリーズがあるのだが、見てみるかい?」
「「はい!!」」
そしてリーフとクリムはその後、ブーストサポートシリーズを見て、追加でいくつか買い、財布が軽くなっていくことに反比例し、気持ちはやや暗くなる。
また、他にもう一店寄ったのだが、それはまた別のお話で。
次回予告
『4-2-9(第283話) カンゾウでの別々行動~イブ・ルリ・クロミル・モミジ・卵編~』
別々行動を始めたイブ、ルリ、クロミル、モミジ、卵は、6並べを行うのに必要な魔道具を探し、店を探す。店を探しても見つからないため、ルリはある行動に出る。
こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。
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