4-2-6(第280話) 3姉妹が密かに受ける格差
黄の国に所属する街の一つ、カンゾウにて。
ここにはある3姉妹がいる。その3姉妹、ヤヤ、ユユ、ヨヨの内、ユユは買い物に食材を買いに来ていた。
「どれがいいユかね・・・」
ユユは食材を目で選定し、
「これとこれをください」
「はい、600円となるよ」
「これでお願いしまユ」
ユユはお金を払い、食材を手にする。
「今日もありがとうね~」
ユユは買った物を手にし、店の前を後にする。
「さて、帰ユか」
ユユは帰り道を歩いていると、
「?何でユか?」
ユユの前に多くの女性が現れる。
「あなた達のせいで、この町の風紀が乱れているの!」
「そんなことも分からないの!?」
「あなたの姉が娼婦なんてやっているから、この街が淀んでいるのよ!」
女性達はユユを街外れの通路でユユを囲み、ユユを言葉でタコ殴りにする。
確かにユユの姉、ヤヤは娼婦として、自らの体を売り、仕事に励んでいる。そのことはユユも把握していて、ヨヨだけは知らない事である。
「で、でも。この街にはヤヤお姉ちゃん以外にも・・・、」
ユユが反論しようとすると、
「うるさい!」
周囲に、肌同士が強く接触した時の音が響く。そして、ユユの頬が赤く変色する。
「あなたの姉のせいで、私達の指名が減るのよ!」
この声で、周囲の女性達は共感するように賛同する。
ちなみに、ユユの周囲にいる女性達も、ヤヤと同じ娼婦である。何故ユユに詰め寄ったかと言えば、八つ当たりに過ぎなかった。だが、それらを正当化するかのように、数で己が意見を貫き通す。
「・・・ごめんなさい」
ユユが頭を下げると、女性達はその頭を思いっきりはたく、
「あんた達なんか、さっさと死んじゃえばいいのよ」
と、とどめに自身が口内にある体液を、ユユの頭に付着させる。
「・・・」
ユユは何も言わなかった。
ユユにとって、ヤヤは大切な姉であり、尊敬できる人物。だから、その大切な人に八つ当たりするのは間違っている、と考えている。
だが、こんな理不尽な目に遭って、何も思わないわけではなかった。
「さて、帰ユか」
ユユは、周囲に散らばり、女性達に踏まれた食材たちを手に取る。
「あ~あ。大半の野菜達が無駄になっちゃったな」
そう言いながら、ふと、涙がでてしまった。
「私達、この野菜達みたいに踏まれなくちゃいけないのかな?」
思わず、踏まれていった食材を、自分達の境遇と重ねていた。自分達もこのように踏まれ、自身の生を他人に奪われてしまうのか。そんなことを考えてしまう。
「って、駄目駄目!ヤヤお姉ちゃんは私達を養うために今も働いていユのだから!」
ユユは折れそうな心を、砕けそうな心を、たった一つの心のよりどころを頼りに持ちこたえる。
「さ、帰ろう」
ユユは比較的綺麗な食材たちを手に取り、自宅に近い場へ戻る。
「あ、おかえりヨ、ユユお姉ちゃん!」
帰ると、自身の妹、ヨヨであった。ヨヨの笑顔に、
「た、ただいま、ヨヨ」
「?どうしたの、ユユお姉ちゃん?何か悲しいことでもあったの?」
「!?」
ユユは自身の目から流れていた感情を拭い、ごまかしの笑顔をヨヨに向ける。
「なんでもないユよ、ヨヨ。それじゃあ私はご飯を作ユからね」
「うん!ユユお姉ちゃんのご飯、楽しみ!」
ヨヨがユユを視界から外した時、
(今なら、殺せる)
ふとそんなことを考え、自身の首に自身の手を近づけていく。その手は、いつでも人の首を絞められるよう、楕円状に形成していた。その手を少しずつ、少しずつ自身の首に近づけ、
「?どうしたの、ユユお姉ちゃん?」
「!!??な、なんでもないよ!!??」
ユユは咄嗟に手を引き、自身の腕ごと背中に隠す。
「変なユユお姉ちゃん」
そう言い、再びヨヨは歩き出す。
(あ、危なかったー…)
ユユは、さきほどまでの衝動に恐怖した。
あのまま行動に移していたら、自身の妹、ヨヨを殺していた。誰も知らない後悔の感情に自殺したくなる。
(他人の言葉なんて真に受ける必要ないけど、やっぱりきついな)
ユユが後悔しながら料理を作っていると、
「帰ったヤよ~」
長女、ヤヤが帰宅する。
「あ、ヤヤお姉ちゃんだヨ!」
そのことにヨヨは驚き喜び、玄関までヤヤを迎えに行く。
「お帰り、ヤヤお姉ちゃん」
ユユがそう言うと、
「ただいまヤよ、ユユ」
ヤヤは返事をする。
「夕飯までもう少しだから、それまでもうちょっと待っていてね」
と、ユユが言うと、
「分かったヤよ」
そう言い、ヤヤはヨヨを連れて部屋を一時的に出る。
その後、
(ヤヤお姉ちゃんがもっとましなところで働くことが出来れば、私があんな想いをしなくて済んだのに!)
ユユの野菜を切る音が大きくなる。
それと同時に、しずくの落ちる音がユユだけに聞こえる。
(こんなことを考えるなんて、私はなんて、なんて・・・!)
先ほど思わなかったヤヤへの想いと、その想いに対する自身の醜さに失望していた。
野菜はユユの想いにどう反応したのか、切った傍からしなり始めていた。
まるで、毒に侵されているかのように。
次回予告
『4-2-7(第281話) カンゾウでの別々行動』
彩人達は黄の国の町、カンゾウに到着する。各々は買いたい物、見たい物のために、それぞれ別々行動を始めようと動く。
こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。
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