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色を司りし者  作者: 彩 豊
第二章 メイズのような意志を持つ商王と三姉妹
281/546

4-2-6(第280話) 3姉妹が密かに受ける格差

 黄の国に所属する街の一つ、カンゾウにて。

 ここにはある3姉妹がいる。その3姉妹、ヤヤ、ユユ、ヨヨの内、ユユは買い物に食材を買いに来ていた。

「どれがいいユかね・・・」

 ユユは食材を目で選定し、

「これとこれをください」

「はい、600円となるよ」

「これでお願いしまユ」

 ユユはお金を払い、食材を手にする。

「今日もありがとうね~」

 ユユは買った物を手にし、店の前を後にする。

「さて、帰ユか」

 ユユは帰り道を歩いていると、

「?何でユか?」

 ユユの前に多くの女性が現れる。

「あなた達のせいで、この町の風紀が乱れているの!」

「そんなことも分からないの!?」

「あなたの姉が娼婦なんてやっているから、この街が淀んでいるのよ!」

 女性達はユユを街外れの通路でユユを囲み、ユユを言葉でタコ殴りにする。

 確かにユユの姉、ヤヤは娼婦として、自らの体を売り、仕事に励んでいる。そのことはユユも把握していて、ヨヨだけは知らない事である。

「で、でも。この街にはヤヤお姉ちゃん以外にも・・・、」

 ユユが反論しようとすると、

「うるさい!」

 周囲に、肌同士が強く接触した時の音が響く。そして、ユユの頬が赤く変色する。

「あなたの姉のせいで、私達の指名が減るのよ!」

 この声で、周囲の女性達は共感するように賛同する。

 ちなみに、ユユの周囲にいる女性達も、ヤヤと同じ娼婦である。何故ユユに詰め寄ったかと言えば、八つ当たりに過ぎなかった。だが、それらを正当化するかのように、数で己が意見を貫き通す。

「・・・ごめんなさい」

 ユユが頭を下げると、女性達はその頭を思いっきりはたく、

「あんた達なんか、さっさと死んじゃえばいいのよ」

 と、とどめに自身が口内にある体液を、ユユの頭に付着させる。

「・・・」

 ユユは何も言わなかった。

 ユユにとって、ヤヤは大切な姉であり、尊敬できる人物。だから、その大切な人に八つ当たりするのは間違っている、と考えている。

 だが、こんな理不尽な目に遭って、何も思わないわけではなかった。

「さて、帰ユか」

 ユユは、周囲に散らばり、女性達に踏まれた食材たちを手に取る。

「あ~あ。大半の野菜達が無駄になっちゃったな」

 そう言いながら、ふと、涙がでてしまった。

「私達、この野菜達みたいに踏まれなくちゃいけないのかな?」

 思わず、踏まれていった食材を、自分達の境遇と重ねていた。自分達もこのように踏まれ、自身の生を他人に奪われてしまうのか。そんなことを考えてしまう。

「って、駄目駄目!ヤヤお姉ちゃんは私達を養うために今も働いていユのだから!」

 ユユは折れそうな心を、砕けそうな心を、たった一つの心のよりどころを頼りに持ちこたえる。

「さ、帰ろう」

 ユユは比較的綺麗な食材たちを手に取り、自宅に近い場へ戻る。

「あ、おかえりヨ、ユユお姉ちゃん!」

 帰ると、自身の妹、ヨヨであった。ヨヨの笑顔に、

「た、ただいま、ヨヨ」

「?どうしたの、ユユお姉ちゃん?何か悲しいことでもあったの?」

「!?」

 ユユは自身の目から流れていた感情を拭い、ごまかしの笑顔をヨヨに向ける。

「なんでもないユよ、ヨヨ。それじゃあ私はご飯を作ユからね」

「うん!ユユお姉ちゃんのご飯、楽しみ!」

 ヨヨがユユを視界から外した時、

(今なら、殺せる)

 ふとそんなことを考え、自身の首に自身の手を近づけていく。その手は、いつでも人の首を絞められるよう、楕円状に形成していた。その手を少しずつ、少しずつ自身の首に近づけ、

「?どうしたの、ユユお姉ちゃん?」

「!!??な、なんでもないよ!!??」

 ユユは咄嗟に手を引き、自身の腕ごと背中に隠す。

「変なユユお姉ちゃん」

 そう言い、再びヨヨは歩き出す。

(あ、危なかったー…)

 ユユは、さきほどまでの衝動に恐怖した。

 あのまま行動に移していたら、自身の妹、ヨヨを殺していた。誰も知らない後悔の感情に自殺したくなる。

(他人の言葉なんて真に受ける必要ないけど、やっぱりきついな)

 ユユが後悔しながら料理を作っていると、

「帰ったヤよ~」

 長女、ヤヤが帰宅する。

「あ、ヤヤお姉ちゃんだヨ!」

 そのことにヨヨは驚き喜び、玄関までヤヤを迎えに行く。

「お帰り、ヤヤお姉ちゃん」

 ユユがそう言うと、

「ただいまヤよ、ユユ」

 ヤヤは返事をする。

「夕飯までもう少しだから、それまでもうちょっと待っていてね」

 と、ユユが言うと、

「分かったヤよ」

 そう言い、ヤヤはヨヨを連れて部屋を一時的に出る。

 その後、

(ヤヤお姉ちゃんがもっとましなところで働くことが出来れば、私があんな想いをしなくて済んだのに!)

 ユユの野菜を切る音が大きくなる。

 それと同時に、しずくの落ちる音がユユだけに聞こえる。

(こんなことを考えるなんて、私はなんて、なんて・・・!)

 先ほど思わなかったヤヤへの想いと、その想いに対する自身の醜さに失望していた。

 野菜はユユの想いにどう反応したのか、切った傍からしなり始めていた。

 まるで、毒に侵されているかのように。

次回予告

『4-2-7(第281話) カンゾウでの別々行動』

 彩人達は黄の国の町、カンゾウに到着する。各々は買いたい物、見たい物のために、それぞれ別々行動を始めようと動く。


 こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。

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