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色を司りし者  作者: 彩 豊
第二章 メイズのような意志を持つ商王と三姉妹
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4-2-4(第278話) 新たな魔法の訓練

 あれから俺達は歓迎会を終え、再び黄の国に向けて牛車を向かわせている。そして、牛車に乗っている中、

「あ」

 俺は突然、本当に突然だが、いい魔法のアイデアを思いついた。自分でも関連性を疑うが、それでも思いついた。

「…?どうかした?」

 俺があげた小さな声に、イブは反応する。しまった。思わず声を出してしまったみたいだな。

「いや、ちょっと魔法のことで試してみたいことがあってな」

 試してみたいものの、実際にうまくいくかは分からないんだよな。出来ればみんなの見ていないところで試したかったのだが、ここまで表ざたにしてしまったのだ。

「え?何何?」

「アヤトが何か試してみたいことがあるそうですよ?」

「お兄ちゃんの!?うわー、見てみたいかも!それって料理?」

「え、えっと・・・迷惑にならないのであれば、私も見てみたいです」

 やばい。なんだか大事になってきたな。

「…ご主人様。牛車を止めて、実験致しますか?」

「え?いや、そこまで気を遣わなくても・・・、」

 と、俺が煮え切らない返事をしたせいなのか、

「それはいい案ですね!アヤトの新魔法、見てみたいです!」

「…賛成」

「これは是非とも見ておきたいですね」

 続々と外堀が埋められていく。

 やばい!何とかしてこの事態を避けなければ、失敗した時の視線に耐え切れず、逃亡するしか逃げる手段がなくなって・・・!

「ではご主人様。牛車をお停めしましたので、御降りください」

「・・・はい」

 時々思うんだが、クロミルって俺の逃げ道をことごとく潰している気がする。俺は新たな試みに不安を抱きつつ、牛車から降りた。


「「「「「「「・・・」」」」」」」

(し、視線がやべぇ)

 俺は卵を含む七人からの視線にある種の恐怖を覚えながら、さきほど思いついたある魔法を試みようと、イメージを膨らませていく。

「まずは、【魔力障壁】」

 俺はよく用いている魔法、【魔力障壁】を展開する。ま、これはいつも出来ているから、出来て当たり前、かな。

「「「「「「「・・・???????」」」」」」」

 見ているルリ達は、何してんの、という視線を送ってくる。まぁこれまではいつも通りなんだよ。何の新鮮味もない、ただの【魔力障壁】である。

 だが、問題はこれからなんだよな。これからが、俺が今さっき考えついた新たな試み。上手くいって欲しいけど、はたしてどうなるか。

 さて、まずはイメージだ。イメージをきちんと、きちんとして・・・よし。

「【付与・反射】」

 俺は展開している【魔力障壁】に反射を【付与】する。

・・・。

一応、これで【付与】できた、はず。実際に確かめるには、誰かが反射を【付与】したこの【魔力障壁】に攻撃しなくてはならない。自分で攻撃してみてもいいが、ここはやはり、俺以外の誰かに攻撃してもらった方が、信憑性が増すだろう。となると、考えるべきは、誰に攻撃してもらうか、だ。出来れば不測の事態にも柔軟に対応出来そうな人を対象に行いたいな。

 ルリとクリムは直感的に却下だ。あの二人、手加減なんて一切せずに攻撃しそうだし。何より攻撃される俺のメンタルが持たなそうだ。

 卵は・・・攻撃手段を持っていなそうだから却下。

 モミジは、何か不測の事態が起きた場合、精神が不安定になり、何をするか笑鳴かないから却下。

 となると候補は残りのイブ、クロミル、リーフの3人か。この3人の誰に、この【魔力障壁】を攻撃してもらうか・・・。

「ねぇねぇ、お兄ちゃん?」

「…ん?どうした?」

 ちょっと考え事をしていたら、ルリの声掛けに反応が遅れてしまった。

「これ、何?」

 と、ルリは【魔力障壁】を指差す。触らずにただ指を差しているだけなので、反射されていないようだ。やはり、この【魔力障壁】に触れると反射が適用されるのか。

「【魔力障壁】だ。今回はこれで試したいことがあってな」

 俺はイブ、クロミル、リーフを順に見た後、

「イブ、クロミル、リーフ。ちょっとこっちに来てくれ」

「「「???」」」

 三人は、呼ばれた理由が分かっておらず、不安な顔をしつつも、俺の言葉に従ってくれた。

「これから、この【魔力障壁】に向けて攻撃して欲しい。威力は・・・、」

 そういえば、威力はどれくらいがいいのだろう。・・・よし。

「自分がくらってもいたくない程度に頼む」

 このくらいでいいか。そうすれば、もし自分に攻撃が反射されても問題ないだろう。多分、だけどな。

「…分かった」

「了解しました」

「?まぁ、分かったわ」

 3人とも、俺がこれから何をするのか、何を目的としているのか分かっていなそうだが、とりあえず了承してくれた。俺もこの魔法を使うのは初めてだから、色々と手探りなんだよな。

「まずはイブ」

 俺はイブに向けて、【魔力障壁】を向ける。俺の行動に対し、イブは身構える。

「…いく、よ?」

 イブは魔力で腕を形成し、殴る構えをとる。

「ああ。よろしく頼む」

 俺も、イブの攻撃に耐えられるようしっかりと態勢を整える。

 そして、

(くる!)

 イブの攻撃が【魔力障壁】目掛けて襲い掛かる。俺に衝撃がきたが、果たしてどうなるか?

「…!?」

 イブが攻撃したかと思ったら、イブが後ろにずり下がる。攻撃したイブが、である。…イブ自身には怪我は無さそうだな。ひとまずは安心だな。

「「「「「「!!!!!!??????」」」」」」

 さきほどの現象に、俺とイブ以外は驚いていた。それ以上にイブは驚いていた。俺も驚いたけど。

 それにしても、さきほどの光景を見る限り、どうやら俺の試みは無事、成功したみたいだな。思わず俺はにやけてしまう。

「…これが、アヤトの新しい魔法?」

「ああ」

 イブの問いに、俺は正直に答える。

 先ほどの現象はおそらく、イブの攻撃を【反射】したから、イブが後ろにずり下がったのだろう。俺にも衝撃が来たが、俺が受けた攻撃分、相手に反射する。こんなところかね。

「さて、次はクロミルだ。よろしく頼む」

 俺の次のご指名に、

「ご主人様、お手柔らかにお願いいたします」

 クロミルは丁寧に頭を下げた後、アイテムブレスレットから魔銀製の剣を取り出す。あ、あれは俺の渡したやつだ。

「それでは、行きます!」

 その声を聞いた瞬間、クロミルはこちらに向かって走り、

「はあ!」

 剣で一閃する。

「!?」

 一閃し、【魔力障壁】に攻撃した後、クロミルは急に後ろに下がる。

「…なるほど、そういうことでしたか」

 クロミルが再び構え直し、この【魔力障壁】に向けて攻撃しようとしてきたので、

「ま、待った!もういい!もういいから!」

 クロミルを必死に止める。

「・・・いいのですか?」

 構えを解いたものの、まだやる必要があると判断したらしく、まだ緊張の糸までは解いていないらしい。

「いいよ。俺に付き合ってくれてありがとう」

 俺がそう言うと、クロミルはゆっくりと呼吸を行い、

「分かりました」

 そう言うと、なんだか緊張の糸を緩めた気がするな。見た目としては違いなんてよく分からない。なんかこう・・・直感?的な?俺もよく分からん。だが、これで俺の【魔力障壁】の力は大体分かってきたし、正体もつかめてきた。

「最後にリーフ、頼む」

「ええ」

 クロミルが下がり、リーフがこちらに来る。魔銀製のレイピアを携えて。

「それではアヤト、準備はいいですか?」

「ああ、こい」

 もちろん、準備は欠かさず行い、万全の態勢を整える。

「行きます、よ!」

 リーフは地面を蹴り、

「は!」

 レイピアで【魔力障壁】を突く。

「!?」

 その後、リーフはレイピアを持っていた手が後方に移動し、その拍子にレイピアをおとしてしまう。

「・・・これが新しい魔法、ですか?」

「そう、みたいだ」

 やっぱり攻撃をくらった際の衝撃はいくらかくるみたいだ。来た後、こちらにきた衝撃分を相手に反射する、という感じなのかもしれないな。出来れば俺に来る衝撃の分も反射して欲しかったが、それは我が儘だな。

「それでお兄ちゃん。これ、どうなっているの?」

 見ているだけだったルリは分からず、俺に聞いてきた。

「この【魔力障壁】には、反射を【付与】したんだ。だから、これで相手の攻撃を受けると、相手の攻撃を【反射】するようになった、というわけだ」

「「へぇ~」」

「そ、そうだったんですね」

 ここでルリとクリムがハモリ、モミジが俺の事を尊敬の眼差しで見ている、気がする。

「それで、試したいことは成功しましたか?」

 リーフが俺に聞いてきた。

「ああ」

 俺は成功したので、肯定の返事をする。

「だが、改善点はあるんだよな・・・」

 正直、これを実用化するには、この問題を解決、もしくは最適化しないといけない。

「…魔法を展開する速度、ですか?」

「ああ」

 さすがはリーフ。俺の考えはリーフにお見通しってことだな。

「?どういうこと、ですか?」

「…さっきみたいに溜めていると、相手からの攻撃を受ける可能性があるから、出来れば早く展開したい。そういう事だと思う。だよね?」

「お、おお」

 何この子、普段の食事姿からは想像できないくらい賢いんですけど?誰ですかこの子?いや、イブは王女だから勉強もしているだろうし、これくらいは容易に考察できるのだろう。

「へぇ~。そんなことまで考えていたなんて、流石はアヤトだね!」

「…はぁ」

 クリムはイブの言葉に凄さを感じたのか、なるほど!という顔をしていた。同じ王女でもここまで違うとは。一体何が違うというのだろうか。食欲?

「アヤトさん。なんでこのような魔法を思いついたのですか?」

「え?う~ん・・・」

 モミジからの質問に、俺は回答に迷った。何せ、本当に、唐突に思いついたからである。どうやって答えようか・・・?

「ちょっとな。前に見たある場面を思い出して思いついたんだ」

 結果、フワフワで答えになっているようないないような回答を行った。ある場面の箇所に突っ込まれたらどうしようもないのだが。

「な、なるほど。さすがはアヤトさんです」

 一体、何がなるほどなのだろうか。

「・・・」

「え?ねぇお兄ちゃん」

「ん?なんだ?」

「『ある場面とはどのような場面なのでしょうか?』だって」

「・・・え?」

 や、やべぇ!恐れていたピンチがこんなにも早く来るとは!!??

「「「「「「「・・・」」」」」」」

 み、みんなからの視線が痛く感じる。ど、どうしよう!早く言い訳を考えないと!え、え~~~っと・・・そうだ!

「前に鎧亀と戦った時、一度だけ剣で攻撃したにも関わらず、剣をはじかれたことがあったんだ。あの場面を思い出して、ああいう攻撃を俺にも再現できないかと考えた時、突然思いついたんだ!」

 や、やった!よくこんな言い訳を即座に思いついたものだ!さすがは俺!

「「「「「「へぇ~」」」」」」

「・・・」

「『おしえていただきありがとうございます』だって」

「そ、それは良かった」

 その場で考えた言い訳だったが、これで納得してくれたらしい。

「それじゃあ、後はこの魔法の名前を考えるか」

 だが、この反射を【付与】した【魔力障壁】にどんな名前をつけようか。いや、別に凝ったものをつける気はないが、いざつけるとなると、どういう風に名前を付けるか悩んじゃうんだよな。

「無難に【反射障壁】でいいかな」

 最初、【反射障壁】という魔法名を思いついたが、これでいいのか悩んでいる。

「…その顔、お兄ちゃんの頭のなかでは既に決まっているんじゃないの?」

 さすがはルリ。俺の心を読んだかのような言葉だ。

「一応、【反射障壁】でいいかなと考えていてな」

 と、俺の率直な考えをルリに話したところ、

「い、良いと思います!」

「!?」

 突然、モミジが身を乗り出して賛成した。な、何だ急に!?

「あ、ごめんなさい」

 そして、自分の態度がおかしいことに気付いたのか、すぐに謝り、身を元に戻す。こういう時、植物って伸縮自在で便利なんだな。

「いや、いいよ。それより、この【反射障壁】って名前、良いと思うか?」

「はい。アヤトさんらしさが出ていて素敵だと思います」

「お、おう。あんがとな」

 俺らしさって一体…?だが、モミジのおかげで、自分のネーミングセンスに少し自信がついた。調子に乗らない程度、だけどね。

「分かった。この魔法名は【反射障壁】だ」

 俺は新たな魔法に名をつける。

「さて、それじゃあ後はこれを出来るだけ早く展開できるように・・・」

「ご主人様」

「?なんだ?」

「そろそろお昼のお時間です」

「・・・あ」

 そういえばすっかり忘れていたな。

「それじゃあみんなでお昼の用意をするか」

 俺の言葉に、

「「「「「「はい!!!!!!」」」」」」

「・・・」

「『分かりました』だって」

 みんな賛成し、昼飯の準備を始めた。

 さて、昼飯を食い終えたら、【反射障壁】を早く展開する訓練でも始めるとするか。

次回予告

『4-2-5(第279話) 6並べ』

 彩人は新たな魔法、【反射障壁】を編み出した。夕飯時、彩人達は魔道具に関する話題で持ち切り、その魔道具の中でも、ある魔道具を使う遊びについての話題が出る。


 こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。

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