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色を司りし者  作者: 彩 豊
第二章 メイズのような意志を持つ商王と三姉妹
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4-2-2(第276話) 卵からの言葉

 俺はある出来事を前にして困っている。それは、

「ちょっと傷ついているから、きれいきれいしないと」

 角犬の卵が何故か、どういう訳か、俺達の目の前に現れたのだ。そして、ルリはどういうわけか、この現場に完全に対応し、汚れていた殻を綺麗にしようと、氷を作りだし、

「クリムお姉ちゃん、この氷溶かしてくれない?」

「ん?い、いいよ」

 クリムもルリの対応に若干戸惑いつつも、ルリが生み出した氷を溶かし、水に変化させる。

「さて、これで洗うからね~」

 そう言って、ルリは何の迷いもなく卵を洗い始める。

「アヤト、ルリちゃんは大丈夫でしょうか?」

 この様子を見ていたみんなが卵から一定の距離を保ちつつ、俺に近づく。確かに不安はある。けど、

「大丈夫だろう。ルリは強いし。それに、」

「それに?」

「ルリは多分、感覚的に敵意とか善意、悪意といったものを把握できている、と思う。そのルリが大丈夫だって言っているんだ。大丈夫じゃないか?」

 もっとも、ルリの感覚が全てではないし、思う所は俺にもあるし。でも、

「そうですね」

 と、リーフが呟く。

「~~~♪」

 ルリが嬉しそうにしているんだ。今のこの間だけでも温かく見守っているとしよう。そう考えた俺は、ルリが卵を洗い終わるまで待った。

「ふぅ~。綺麗になった~♪」

 少し時間が経過し、

「うん、ピッカピッカだね」

 卵はさきほどより綺麗になった。

 ビフォーが土色だとしたら、アフターは・・・これ、何色?肌色、に近い気もするが、黄色を感じさせる色の明るさを感じる。まぁ、無難に肌色、とでも呼んでおくか。それにしても本当に綺麗だな。ルリの洗い方が上手かったのね。

「それじゃあ・・・、」

「?…どうか、した?」

 俺があることに気が付き、言葉を止まらせると、イブが俺に異変の理由を聞いてくる。

「いや、こいつの名前、何かな~って」

「…卵、でいいと思う。名前、なさそう」

「そうか」

 イブの助言により、俺のさきほどの悩みは解消されたので、話の続きをしよう。

「それで卵、ここに何しに来たんだ?」

 俺がそう聞くと、こっちに少し体を動かし、身震いを始めた。人なら、話をするときに正面を向く必要があるが、この卵も同じようにするつもりなのだろうか。卵の正面何て俺には分からないのだが。

「・・・」

「うんうん。へぇ~」

 何やら、卵が何か言ったらしい。それにしても、本当に卵の言っていることがルリには分かるのか?翻訳家として仕事出来る気がする。

「で、何だって?」

「えっとね、『今回の事で、お礼がしたい』だって」

「「「「「「お礼??????」」」」」」

 ルリを覗いた俺達6人は頭に疑問符をつける。

「・・・」

「『はい。今回は私を助けていただき、誠にありがとうございます』だって」

 卵はルリの言葉に合わせて体を器用に倒した。かと思えば、自力ですぐに元通りの位置に戻る。なんか、ダルマを空想させる動きだな。七転び八起き、的な?

「まぁ、それは成り行きというかなんというか・・・、」

 こればっかりは偶然だし、えん罪を言われたからな。本当ならもっと手っ取り早くえん罪を回避できる方法があったかもしれないが、あの時は、あの方法が最善だと思ってやったんだよな。後悔はないけど。

「・・・」

「『それでも、私達を殺すことなく逃がしてくれたこと、誠に感謝いたします』だって」

 よしよし、という言葉を付け加え、ルリは卵をナデナデする。再度頭?を下げた卵は、ルリに頭をナデナデされている間、ルリと卵の距離が物理的に近くなった気がする。あの卵、もしかしてルリに甘えているのか?

「・・・ま、犬の肉が食えるか分からなかったし、無駄な殺生をしたくなかっただけだ」

 地球の日本ではないどこかの国では、犬を食べる風習があったような、なかったような?偏食ではないが、今の俺ではチャレンジする勇気はないな。もっと貧困だったら迷わず殺し、食らっていたかも。

「・・・」

「『みなさま、今回は本当に、本当にありがとうございました』だって」

 今度は体を90度近く曲げ、地面と卵の軸が平行になった。

「ま、本当に成り行きだったから気にする・・・、」

 そういえば、こいつら角犬達と別れる前になんか言ったな。あれくらいは守るように言っておかないとな。

「前に言ったことを守れば気にしねぇよ」

 と、言葉を訂正して卵に伝える。

「・・・」

「『本当にありがとうございます』だって」

 今度は一人一人の前まで行き、体を倒し、自身の感謝の意志を示すかのような様子である。

「・・・」

「…ん。感謝の気持ち、受け取った」

 まずはイブ。イブは卵の感謝の意志を受け取り、卵を一撫で。

「・・・」

「生まれてきたら、私と模擬戦、してくださいね?」

 次にクリム。クリムは卵の殻に拳を合わせ、模擬戦の予約を入れる。

「・・・」

「あなたはどうやら、かなり賢いみたいです。そういう子は、嫌いではありませんよ」

 リーフは微笑みを送り、卵を一撫で。

「・・・」

「・・・え?わ、私にも、ですか?わ、私なんかに頭を下げなくても・・・」

 モミジはアワアワしながら、必死に何度も卵に頭を下げる。

「・・・」

「卵様、ここまでの道のり、ご苦労様です」

 クロミルは、ここまで来た卵に対する労いの言葉をかける。

「・・・」

「うん!これからもよろしくね!」

 ルリは卵に笑顔を贈る。

「・・・」

「ま、今度会ったら、もっと友好的にさせてもらうよ」

 俺はこの卵の姿勢に負け、前回言った自分の言葉に訂正を入れる。いつ会えるかは分からないが、今度、でいいかな。

「・・・?」

 そういえば、さきほどのやりとり、何かおかしいような・・・?

「・・・」

 ま、今はいいか。

 今は、みんなに囲まれている卵に、変な言葉をかけるのは無粋だろうしな。俺はみんなの様子を簡単に見た後、みんなの輪に入ろうと、俺も卵の周りに集まり、みんなで話し始めた。

次回予告

『4-2-3(第277話) 卵を迎えての歓迎会』

 卵と和解をした彩人達は後日。その翌日、彩人は衝撃な事実を知る。その事実を知った後、彩人はみんなにある提案をする。


 こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。

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