4-2-1(第275話) 彩人達と卵の再開
黄の国の町、カンゾウにて。
「ただいヤ」
ある少女、ヤヤが家へと帰ってくる。
「おかえり、ヤヤお姉ちゃん!」
ヤヤが帰ってきたことに三女であるヨヨが飛びつく。
「ヤヤお姉ちゃん、お帰りなさい」
ヨヨの後ろから、次女であるユユも出迎える。
「ユユもヨヨもただいま」
ヤヤは出迎えてくれた二人に笑顔を送り、和やかな雰囲気を作る。
「はい。今日の食材。いつも同じようなものばかりでごめんね?」
「別にいいユ。料理のしがいがあるってものユ」
そう言い、ユユはヤヤから食材を受け取り、部屋の奥へ向かう。
「ヨヨ、何もなかった?」
「うん!今日もユユお姉ちゃんとずっと一緒だったよ!」
「そう。ユユと一緒で楽しかった?」
「うん!」
「良かった」
ヤヤは一息つき、
「それじゃあ、ユユの美味しいご飯でも食べに行こうね?」
「うん!ユユお姉ちゃんのご飯、美味しいヨ!」
「そうヤね」
その言葉を皮切りに、ヤヤはヨヨと手を繋ぎ、玄関から離れる。
「?ところで、なんか変な臭い、しない?」
「え?」
ヨヨの発言に、ヤヤは戸惑う。
「それにヤヤお姉ちゃん、足から変なのが付いているよ?」
「変なの?」
ヤヤはヨヨの変なのへ発言に、疑問を抱き、自身の足を見る。
「!!??」
ヤヤは足についているものの正体が分かり、すぐにその付着物を拭う。
「結局、それって何?」
「ん!?い、いや、何でもないんヤよ!?」
ヤヤはヨヨに何でもないと言い、
「さ、行こう!」
ヤヤはヨヨの手を引っ張り、ユユの夕飯を楽しみにする。
「?うん」
ヨヨはヤヤの態度に疑念を抱いたが、そのままユユの待つ場へ足を進ませる。
あれからヤヤ、ユユ、ヨヨの三人は夕飯を済ませ、
「それじゃあお休み、ヤヤお姉ちゃん!」
そろそろよい子なら寝る時間である。その時刻になると、ヨヨは眠そうに目をこする。
「それじゃあ、ヨヨを寝かせるヨ」
「うん、よろしくヤよ、ユユ」
ユユはヨヨに付き添うため、ヨヨと共に寝室へ向かう。
「さて、」
一人になったヤヤは、今日の分の稼ぎを踏まえて家計簿をつけ始める。
「はぁ」
ヤヤはため息をつく。
(あんなことまでしているのに・・・)
ヤヤは自身の職場を思い出し、苦い顔をする。
「・・・」
ヤヤは自然と流していた。感情が大きく揺れ動いた時にでてしまう液状の物質を。
(ヤヤお姉ちゃん?)
そんな様子を、ユユは扉に隠れて見ている。
「どうして、こんなことになったのかしらね?」
そう言い、うつ伏せになったまま、体の動きを一定にし、意識を失う。
「・・・ヤヤお姉ちゃん?」
ユユはヤヤの様子に違和感を覚え、声量を小さめにして声をかける。
「寝ちゃった?…寝ているみたい」
ユユはボロボロな毛布をヤヤに被せ、
「いつも私達のためにお疲れ様、ヤヤお姉ちゃん」
そう言い、ユユは静かに去って行った。
「ううぅ・・・」
ユユが去った後、ヤヤは夢の世界でも泣いていた。
(もうこんなこと、辞めたいよ・・・)
ヤヤは、自身の職業に、仕事に不満を抱いていた。
(もう、あんな見ず知らずの人達に、体を売りたくないよ・・・)
それは何故か?
それは、ヤヤは娼婦として、自らの体を資金源にしているからである。だが、仕事がいやでも、やめるわけにはいかなかった。ヤヤを含め、3人を養うのに必要な仕事なのだ。
だが、精神面、心はそうはいかない。
本当は体を売る仕事なんてやりたくない。
こんな屈辱的な仕打ち、誰がヤヤに仕向けたのだろうか。
そんな葛藤を、起きている間はもちろんのこと、夢の中でも行っていた。
ある場所にて。
「・・・」
ある物体がコロコロ転がり、どこかへと向かっていた。
「・・・」
ある時は、魔獣に見つからないよう木の茂みに身を潜める
「・・・」
またある時は、雨風を茂るよう洞窟内に入る。
そんなことを繰り返し、ある物体は目的の人物へと会いに向かう。
「・・・」
その人物は、自身に対して食べ物を分け与えてくれたある少女。その少女達の元へ向かうため、ある物体、角犬の卵はその少女、ルリへと会いに向かう。
そして、
「・・・♪」
幾日もかけてようやく、何かが通った形跡を見つける。その形跡は新しく、数日前までここにいた、という推測が出来る。
「・・・」
卵は周囲を見渡し、真新しい形跡を見つけ、
「・・・♪」
そこにルリ達がいると確信し、ルリ達の元へ、転がって向かう。
さらに数日経過し、卵の殻に無数の傷がついていた。それは、多くの道を乗り越えた証拠であり、卵自身の覚悟の表れでもあった。その覚悟は、自身がボロボロになってでも会いたい、という覚悟。ルリ達に伝わらなくてもいい。ただ、ルリ達に会えればそれでいい。その気持ちを殻の中に留め、今日も殻に傷が増えていく。
「・・・?」
ここで、不思議な視線を感じた。自信を獲物として見るのではなく、もの珍しそうな視線。その視線には敵意を一切感じることはなかった。
「…ねぇ?お兄ちゃん、あそこ」
その視線を向けていた主は、お兄ちゃん、と呼ばれる人物を呼ぶ。そして、ある人物が自身に視線を向ける。さきほどの視線とは対照的に複雑な視線を向けられた。それは敵意だけでなく、迷いも多く含まれている。
「こいつって、もしかしなくとも、あれ、だよな?」
「うん!角犬の卵!」
「・・・」
卵は、目的の人物に会えたことを喜び、
「ほら、この子も会えたことが嬉しいって♪」
これから話すことを考えていた。
今後、自身の身をどうふるうべきなのか、ということについてであった。
次回予告
『4-2-2(第276話) 卵からの言葉』
彩人達は角犬達と一緒に行ったと思っていた角犬の卵と再開する。その角犬の卵から彩人達に向けて、ある言葉を送られる。
こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。
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