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色を司りし者  作者: 彩 豊
第4色 黄の国 第一章 蒲公英色な角犬の卵
275/546

4-1-20(第274話) 消臭方法~提案~

 提案した結果、

「「「ありがとうございます!!!」」」

 みんな、気に入ってくれたみたいだった。どうやら密かに気にしていたらしい。最初はクリム、イブ、リーフの三人にだけ贈るつもりだったのだが、

「え~?ルリ達にはくれないの~?」

「わ、私は別に欲しいなんてことは…」

「・・・」

 ルリは露骨に、モミジは控えめに、クロミルは無口で自身の感情を表現していた。

(やっぱり、みんなに渡した方がいいのか)

 少し考えてみたら、ルリ、モミジ、クロミルも性別は女。体臭の異変にも敏感なお年頃なのかもしれない。

「も、もちろん!ルリ達の分もあるからな!」

 俺は慌てて三人分を追加で用意し、手渡しする。

「わ~い!ありがとう、お兄ちゃん♪」

「あ、ありがとうございます。う、嬉しいです」

「ご主人様、誠にありがとうございます」

 三人は俺に笑顔をプレゼントしてくれた。特にクロミルは、感情の起伏が分かりやすいな。ま、顔にではなく尻尾、なのだが。その証拠に、さっきまで尻尾が地面に触れそうだったのに、今では激しく尻尾が揺れ動いている。嬉しいなら素直に感情を顔に出せばいいのに。

「では、このタイミングで・・・」

「ですね」

「…ん。誠に良いタイミング♪」

 ん?何か三人が話しているみたいだ。もしくは、俺抜きで何か相談していたのだろうな。ま、俺はどうせボッチだし、こんな待遇は慣れているので問題はない、問題、ないんだからね!

「「「はい!!!」」」

 リーフ、クリム、イブは俺に白い小袋を渡した後、

「はい、クロミルちゃん♪」

「モミジちゃんも♪」

「ねぇ、ルリはルリは~?」

「…無論、ここにある」

「わ~い♪それで、これって何?」

 確かにルリの言う通りだ。これって一体なんだ?単なる白い袋を渡した、なんてことはないだろう。これが本当なら、ちょっとした嫌がらせだな。だとすれば、この袋の中の物が、ということなのだろう。

「開けていいか?」

 俺の質問に、言葉で返さずに首の運動で返した。俺は三人の首の様子を見てから袋を開ける。中には・・・。何これ?

(これ、どこかで・・・?)

 この長方形、この感触、確か・・・?

「ミリンガですよ」

「ミリンガ?」

 何それ?ミサンガの同種か何かか?・・・あ、思い出した。

 クッキーの事だ。そういえばあのカルボナーラうどん、確かシラリア、だったか?それと一緒に食べた記憶がある。それにしてもこのミリンガ、まったく茶色くなく、所々赤いのだが・・・。

「それは目覚め用です」

「目覚め用?」

「はい。それを食べると眠気が吹き飛びます」

「・・・これ、美味しい、のか?」

「失礼な!ちゃんと美味しく出来ているはずです!…多分」

 おい。最後に付け加えた多分、という言葉がとても不安なのだが!?それにこれは・・・

(唐辛子のあのにおいだな。となると、このミリンガはクリムお手製か)

 クリムなら作りそうな仕上がりだ。試しに一口かじってみると、

(!!??た、確かに目覚めの一杯ならぬ、目覚めの一齧りってところだな)

 辛味が全身を貫く。こ、これは確かに目が覚めるクッキーだ。どうしても目を覚ましたい時に食べるべき一品だろう。

「次は・・・」

 3枚の内、2枚目を見てみる。1枚目は赤かったが、2枚目は緑を帯びていた。何か妖しい。というか、何でこんなカラフル仕様になっているの?なんだか怖いんだが。

「これは?」

「私が作りました。ご飯のお供にちょうどいいかと」

「ご飯のお供に、か」

 ということは、このクッキーはどちらかというとお菓子ではなくおかず向けに作られたものなのか。あくまで俺の推測だが。その推測が当たっているかどうか、一口齧って確認するとするか。

(・・・甘味はほとんどないな。どちらかというと、野菜の味が強いな)

 だが、野菜の青臭さはなく、野菜の短所が消え、長所を伸ばした一品、という感じだ。これは是非とも、野菜不足問題を抱えている人達に食べさせたい逸品だ。これを食べれば、野菜嫌いな人も食べられる・・・かもしれない。ま、好みは人それぞれ、ということであしからず。

 さて、3枚目だが、

「これは…イブが作った、ということでいいんだよな?」

「…ん♪結構自信作」

 見た目は…普通だ。とにかく普通だ。普通な事はいいのだが、

(あの2枚を見た後でこれを見るとな・・・)

 何かギミックがあるに違いない。そう思わざるを得ないほど、見た目が普通なのに違和感を覚え、勘ぐってしまう。イブはかなりの大食いだから、味は保証できると思うが、はたして・・・?

(!?美味い!?)

 普通に甘くて美味い、だと!?先ほどまで出されていたクッキーとは別物ではないかと思えるくらいの甘さだ。それにしても、これらのクッキーって同じ手順で作ったんだよな?とても同じクッキーとは思えん。何か魔法でも使ったのではないだろうか。

 そう、

(愛情という魔法のスパイスを使ってな!)

 ・・・本当、言葉に出さなくてよかったと思う。こんなことを恥ずかしげもなく言葉に出来る訳なんてないからな。

 それにしても、どのクッキーにも愛情があったと思う。味の違いは愛情の違い、なのかもしれない。人によって愛情の形はそれぞれ異なるからな。今回は、その愛情の形がクッキーとして体現させてもらった、というところか。これは後で何か恩返ししないとな。

「どれもこれも美味いな」

 俺が味の感想を述べると、

「「「よ、よかった~~~」」」

 三人は嬉しそうに顔をとろけさせ、安堵する。こんな俺なんかの言葉でそこまで嬉しくなってもらえるとは、ちょっと信じがたいな。俺みたいな万年ボッチがここまで成長できるとは、人間には無限大の可能性を秘めている、という言葉は間違っていないだろう。

「うん!とっても美味しくって、ルリ幸せ!」

「こんな美味しいものをくださり、ありがとうございます」

「リーフ様方はこんな素晴らしい料理を作れるとは、流石です」

 どうやら俺だけでなく、ルリ、モミジ、クロミルもこれらのクッキーを美味しい、と感じていたらしい。よかった。俺、味覚音痴じゃなかったみたいだ。

「やりましたね、クリム、イブ」

「ええ!私達の料理の腕が上達した証拠です!」

「…ん」

 やっぱ、美味しい料理って人を幸せにするよな。こんな光景を、みんなが笑顔な光景を見て、俺は笑顔で思った。

次回予告

『4-2-1(第275話) 彩人達と卵の再開』

 黄の国にある町、カンゾウではある町娘達が生活している。そんな中、彩人達は道中、角犬の卵と再開する。


 こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。

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