4-1-16(第270話) 角犬の卵捜索開始~その6~
彩人がルリ達に帰宅することを望んでいる時、リーフ、クロミル、ルリ、角犬は各々の戦いをしていた。
リーフ、クロミルは多くの角猫達を相手にしていた。
「クロミルちゃん、お願い!」
「はい!【牛蜂突き】!」
リーフが角猫の角を受け、その隙にクロミルが【牛蜂突き】で角猫を動けなくさせる。その様子を見ていても、角猫達は果敢に攻めていく。
リーフとクロミルを個々に攻めても、
「はぁ!」
リーフはレイピアで角猫の角を華麗に受け流し、
「は!」
クロミルは角猫達の攻撃を正確に躱し、正確な攻撃を無駄なく行い、角猫達を行動不能にさせる。
角猫達は、集団でなら二人に勝てると思っていたため、二人の変わらない優勢に少しずつ違和感を覚え始める。
「どうしました?もう、お終いですか?」
リーフのその掛け声に、角猫達は背を向ける。二人の強さに逃げ出したくなったのだ。
「逃がしませんよ?」
クロミルは逃げ出そうとする角猫達の先回りをし、リーフとクロミルの二人で挟み撃ちにする。
「「「ガーーー!!!」」」
角猫達は二手に分かれて魔力を角に込め、リーフとクロミル両方に遠距離から攻撃をしかける。結果、
「私には効きません」
リーフは無傷で、リーフの後ろに何かが当たったようなくぼみが出来ていた。
「やはり、【牛の亀盾】なら余裕で防げましたね」
クロミルは腕をクロスさせ、亀の甲羅の如く堅い盾を魔力で形成し、角猫達の攻撃を防いでいた。【牛の亀盾】で防いだ結果、クロミルには傷一つつかなかった。
「では、まだまだ行かせてもらいますよ」
リーフはレイピアを構え、角猫達の群れに飛び込もうと動く。角猫達はリーフの攻撃から逃れようとするが、
「させません!【牛象槌】!」
クロミルは地面に【牛象槌】を放ち、地面にクレーターを形成させ、角猫達の動きを止める。一時的ではあったが、リーフにとっては十分な時間であったらしく、
「はぁ!」
リーフはレイピアで角猫達の急所を外し、レイピアで突いて行く。
「ガウ!?」
レイピアの突きに角猫達は声を挙げ、動きが弱々しくなっていく。
「大丈夫です。しばらく動けませんが、死にはしません」
リーフは風邪を切るようにレイピアを振る。
「クロミルちゃんは大丈夫?」
「ええ。問題ありません」
クロミルは構えを解き、角猫達に警戒しつつもリーフに近づく。
「これでひとまずは大丈夫、かな?」
リーフもクロミルに近づき、話しかけるように質問する。
「大丈夫かと」
クロミルの肯定に、
「それじゃあ後はルリちゃんの合図を待つだけですね」
リーフは空を見ながら言う。
「ええ」
クロミルは角猫達を見ながら、合図を待っていた。
ルリから出される合図を。
そのルリはというと、
「ガルル・・・!」
角が2本生えている大きな角猫に警戒されていた。
「それじゃあ、かかって来なよ。相手してあげる」
ルリは余裕なのか、体格的に不利なのにも関わらず余裕であった。
「!?ガアァ!」
角猫はルリの挑発に乗り、ルリに向かって襲い掛かる。角猫は自身の鋭い牙で、ルリに噛みつこうとする。
「・・・」
そのような行為に対し、ルリは何もしなかった。ルリは少しずつ腕を上げ、
「ガアァ!」
角猫はルリの首を噛みちぎる、つもりだった。
だが、角猫が噛んでいたのはルリの首ではなく、ルリの腕であった。
そして、
「!?」
ルリの腕には無数の鱗があった。爬虫類によくあるあの鱗が、ルリの腕を覆っている。
「どうしたの?」
角猫は慌てて離れるも、角猫の牙はルリの鱗の強度に負け、ヒビが入ってしまっている。
「それじゃあルリに勝てないよ?」
ルリは自身の腕を元に戻し、人肌と同様の状態にする。そして、ルリの言葉に苛ついた角猫は、口に魔力を溜め始める。
「ふぅーん。魔力の打ち合い、かな?」
ルリは角猫の行動に対し、ルリも同様に魔力を溜め始める。
「ガウアァー!!」
角猫から魔力の塊が放たれる。
「ほい」
ルリも同じようなタイミングで魔力の塊を放つ。
魔力の塊同士がぶつかり合い、せめぎあう。
そして、
「ガアァー!」
角猫の気合いが勝り、ルリから放たれた魔力の塊が霧散し、ルリに向かって、角猫から放たれた魔力の塊が襲う。
その事に対し、
「・・・」
ルリは静かに、自身の腕に鱗を纏わせ、力を籠め、
「せーの!」
拳を思いっきり振り下ろす。その拳にぶつかった魔力の塊は、ルリの拳により変形し、そのまま真下に向かい、地面に激突する。そしてそのまま霧散し、消える。
「ガウ!?」
まさかの結末に角猫は驚く。
「さて、次はルリの番だね」
ルリは自身の腕を回しつつ、腕を元通りにする。
「ガ、ガルル・・・」
角猫はルリに威嚇するも、ルリはどこ吹く風であった。
「ガー!」
角猫は周囲に炎をともし始める。
「へぇ?クリムお姉ちゃんみたいなこと出来るんだ」
ルリは角猫の炎に感心しする。
「ガ!」
角猫の声に反応し、炎はルリ目掛けて向かっていく。
「けどね、ルリには効かないよ」
そう静かに言った後、ルリは右手を上げ、
「氷れ」
瞬間、炎が氷った。
「!?」
角猫も、まさか炎が氷るなんて思わなかったらしく、驚く。
「で、もう終わり?」
「!?」
ルリの眼に、角猫は一種の恐怖を抱き始める。まるで、絶対に敵わない強者との戦いを強いられているような。
「ガー!」
角猫は自身の前足に炎を纏わせ、突進する。
「そう来るのね」
ルリは拳を構え、角猫に対抗しようとする。
「ガウア!」
角猫は地面から砂を巻き上げ、視界をウヤムヤにさせる。
「・・・」
本来、ルリに対して不利になるはずのこの状況なのに、ルリは何も行動を起こさず、さきほどと同じように拳を構えたまま準備をする。
「そこ!」
ルリは確信をつくかのように方向を向き直し、拳を突く。
「ガ!?」
その拳の先には、角猫がいた。角猫は、ルリの拳が飛んできことによる驚きと痛みで、
「が、がうぅん・・・」
角猫は気絶する。
「これでしばらくは起きないかな?」
ルリは角猫の表情を覗く。
「さて、角犬ちゃんは無事かな?」
ルリは角猫の先を見ると、
「にゃ、ニャン!」
「あ!角犬ちゃん!」
その先には角犬がいた。その横には、
「卵、見つかったんだね!」
角犬の卵が確かにここにあった。
「ニャン♪」
その角犬の表情には、ルリ達には今まで見せたことが無いような煌びやかな表情を見せていた。
「なら、早くこんなところから出て、戻ろうか?」
「ニャン!」
そう言い、ルリと角犬は洞穴から抜け出し、
「そうだ。せい!」
合図である氷を空中へと放つ。
「ニャン」
「ん?どうしたの、角犬ちゃん?」
角犬はルリに何か言いたいらしく、ルリに話かける。
「ニャンニャンニャン。ニャニャン」
その角犬の言葉に、ルリは優しく笑い、
「うん!」
ルリは笑顔を角犬に向ける。
「それじゃあ、お兄ちゃんのところに戻ろう!」
「ニャン!」
そして二人は、
「あ、いた!」
「…その様子ですと、角犬の卵が見つかったようですね」
リーフ、クロミルと合流し、計4人は彩人達の元へ戻るため、この場を後にする。
次回予告
『4-1-17(第271話) 角犬の卵捜索開始~その7~』
彩人達と角猫達との戦いに終わりの兆しが見え始め、収束する方向へと向かっていく。
こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。
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