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色を司りし者  作者: 彩 豊
第4色 黄の国 第一章 蒲公英色な角犬の卵
269/546

4-1-14(第268話) 角犬の卵捜索開始~その4~

 ルリ、クロミル、リーフ、角犬は走り、走って、走る。走りに走って、

「ニャンニャン。ニャニャニャン」

「『匂いが強い。周辺にある』だって」

 目的である角犬の卵が周辺にある事を知る。だが、それと同時に、

「あれ、何?」

「私達みたいな一族の…村?みたいなものでしょうか?これがおそらく…、」

「ええ。あれが角猫の住処よ」

「ニャン」

「『そうだ』だって」

 4人は近くの茂みに隠れ、角猫の住処の様子を窺う。

「・・・どうやら、角猫がかなりいるみたいですね」

「そのようです。この中で角犬の卵を見つけるのは大変かもしれませんが、ルリ様。大丈夫ですか?」

 クロミルは不安そうに聞く。

「うん!」

「ニャン!」

「『私も!』だって」

 その角犬の微笑みにここにいる全員は少し笑みを取り戻す。そしてすぐに真顔に戻す。

「それじゃあもう少し近づいたら、派手に暴れるので、その間にルリちゃんと角犬は頼んだわよ?」

「うん」

「ニャン」

 さきほど話した作戦内容を簡単に復唱したリーフは、

「それじゃあ、行きますよ、クロミルちゃん?」

「承知しました」

 リーフとクロミルはルリと角犬の前に出て、走り出す。

「それじゃあ派手にいきますか!」

「それでは私からいかせてもらいます」

 クロミルは拳に力を込め始める。

「牛術が一つ、【(ぎゅう)(しょう)(つち)】!」

 クロミルは思いっきり拳を地面に叩きつける。その衝撃は、ジャンプした像を支える如く重さであった。そして、周囲に地面のクレーターが出来上がり、

「「「!!!???」」」

 角猫達はクロミルとリーフの存在に気付く。

「きましたね。さすがはクロミルちゃんね」

「お褒めにあずかり光栄です。ですが、ここからがお辛いかと」

 リーフとクロミルは向かってくる角猫達に戦闘態勢をとる。

「大丈夫よ。なんたってクロミルちゃんがいてくれるんだから」

 と、リーフは魔銀製のレイピアを構え直す。

「そのお言葉だけで、いつも以上に頑張ることが出来ます」

 クロミルは拳を握り直す。

「ワンワン!」

「ワン!?」

「ワーン!ワワーン!!」

「「「ワオーン!!!」」」

 角猫らしき鳴き声の後、角猫達がリーフとクロミル二人に襲い掛かる。

((行きます!!))

 クロミル、リーフと角猫達との戦闘が始まる。


 残されたルリと角犬達は、

「とりあえず、角犬ちゃんの卵を捜そうか」

「ニャン」

 と、話を交わしたところでルリは気付く。

「そういえば、角犬ちゃんの卵ってどこにあるのかな?」

 そうひとりごとを呟いた時、

「ニャン!」

「え?もしかして、そっちにあるの?」

「ニャン!」

 角犬は自身の意思を肯定し、ルリの質問を肯定する。

「分かった。それじゃあそっちに行こう」

 ルリは角犬の案内の元、角猫達の死角を通り過ぎていく。

 着いた先は、洞穴だった。まるで、一寸先は闇を具現化したかのような暗さとなっていた。

「この中にあるの?」

「ニャン」

「そうなんだ。それじゃあ行こう」

「ニャン」

 ルリと角犬は恐れずに前へと進む。

 進んでいくと、

「ん?何これ?」

「ニャー・・・?」

 ルリと角犬は大きな何かに当たる。その何かを触っていると、

「ガウ?」

 さっき聞いた角猫達の声とよく似た声が聞こえた。だが、先ほど聞いた声より低く、声の主が近く感じる。

「まさか…?」

「にゃ、にゃ!?」

 今、ルリ達が触っている大きな何かは、大きな角猫であった。

「ガウ!?が、ガウ!」

 ルリ達はすぐに大きな角猫から距離を取り、戦闘態勢に入る。

「角犬ちゃん。これは、ルリが相手するから先に行って」

「ニャン…」

「角犬ちゃんが卵を見つけてきたらすぐに逃げるから、ね?」

 ルリは笑顔を角犬に向ける。

「ニャン…」

 角犬はルリの心遣いに感動し、

「ニャン」

 先に行こうとするも、

「ガルルル!」

 大きな角猫は、ルリと角犬の進路を塞ぐ。

「大丈夫だよ、角犬ちゃん。道はちゃんと開けてもらうから」

 そう言いながら大きな角猫に近づくルリの周りにはいつの間にか蛇達が複数いた。

「【蛇睨み】」

 ルリと蛇達が睨みを効かせたことで、

「!?」

 大きな角猫は拘束され、動けなくなる。

「さ。今の内に、ね?」

 ルリの一声を聞いた角犬は、

「ニャン!ニャニャニャン!」

 一言声をかけ、ルリの無事を願いつつ、洞穴の先に向かう。

「さて、角犬ちゃんは行ったかな?」

 そう言った瞬間、

「ガー!」

 大きな角猫は雄叫びをあげ、力だけで強制的に拘束を解く。

「やっぱり効かなかったね」

 ルリは周辺の蛇達に軽くお礼を言いつつ、ある事に気付く。

「角が、2本?」

 それは、今退治している角猫に生えている角の本数が1本ではなく2本であった。だが、ルリにとってはどうでもいいことらしく、

「ま、そんなの関係ないか」

 ルリはあっけらかんとする。

「それじゃあ、あの角犬ちゃんが戻って来るまで、ルリの相手をしてね?」

「ガウアー!!」

 その後すぐ、ルリと大きな角猫は距離を急速に詰める。

 そして、ルリと、角が2本の角猫との戦闘が始まる。


 場所は変わり、

「それにしても、本当にこっちに角猫達がやってくるのか?」

「おそらく」

「そうか」

 彩人達はくるだろう角猫達に備え、襲撃に対する準備を始めていた。

「それにしても、なんで角猫達は俺達を狙ってこっちに来るんだ?」

「…多分、狙いが私達ではなく、角犬達の方」

「つまり、俺達は巻き添えを食らう羽目になった、と?」

「…ん」

 本当、たまったものじゃないな。角犬らしき卵を見ただけなのに、それがどうして戦闘に関連づいてしまうのだろうか。

「でもいいじゃないですか?拳と拳を合わせれば、誰だって分かりあえるんですから」

 そんなことを自信満々に言うクリムに、

「「「・・・」」」

 更なる疲れが俺の精神に支障をきたす。もうね、早く家に帰って引き篭もりたい。

「そういえば」

 俺自身も一応相手の情報をある程度探っておくか。

「【魔力感知】」

 これを使えば、相手の魔力量が分かるはず。魔両区量が多いことと強さは直結会いないが、今までの情報を元に、統計的には直結している、と考えている。もちろん例外はいるので必ずしも、とは言えない。

(あ?)

 俺は【魔力感知】を使用し、周辺の魔力を感知していたのだが、確かにこちらに向かってくる何十もの魔力がある。この魔力がおそらく、角猫の魔力なのだろう。だが、その中に一つ、明らかに大きい魔力があった。

「なんか一つだけやけに大きい魔力を感じるんだが…?」

 俺は困った声を周囲に振りまき、答えを求める。

「?そうみたいですけど、それが何か?」

 どうやらクリムに期待はしない方がいいみたいだ。

「…多分、角猫達を束ねている角猫だと思う」

「角猫達を束ねている角猫?それって、強いの?」

 俺の再びの問いに、

「…角猫を束ねるには信頼はもちろん、力も必要だと聞いたことがある。だから…、」

「分かった」

 イブの言葉を最後まで聞く必要が無かった。何せ、

「かなり、近づいてきましたね」

 気配で強さを感じたから。多分だけど、ここにいる角犬達じゃ勝てそうにないな。

「…その角猫を束ねている角猫は、俺が相手をする。イブとクリムは他の角猫達の相手を頼む」

「…ん」

「わっかりました!」

 イブは魔力で腕を形成し始め、クリムは簡単に準備運動を始める。

「あ、あの。私は?」

「モミジは拘束している角犬達を角猫達から護ってやってくれ」

「は、はい!」

「見えます」

 クリムの宣言に、俺達はさらに気を引き締める。

 そして、地鳴りが聞こえ始めた。何かの足跡が無数に聞こえ始める。これが角猫達の足音、か。そして姿はどうなって…?

(やっぱり、か)

 角犬を見た時もそうだったが、大きさ的には地球の猫と大差なさそうだ。大きな違いとしては、猫の額に角が生えていることだ。

(角って色々な色をしているんだな)

 角犬もそうだが、角猫の角も実にカラフルだ。角ってそんなに彩り豊富だったか?ま、そんなことは今どうでもいい。

 それより、

「もしかしなくても、あいつがそう、なのか?」

「…おそらく」

 角猫達の最後尾を走っているように見えるが、大きさのあまり、最前列を走っているような錯覚を起こしてしまうな。大きさだけで言えば・・・象、とまではいかなそうだ。だが、少なくともライオンよりはでかそうだ。それに、

「なぁ?俺の気のせいかもしれないけどさ、あのでっかい角猫の角、3本あるように見えるんだが?」

 そう。他の角猫の角は1本だ。それなのに、あの大きい角猫の角だけは3本生えているのだ。そういえば、角犬達全員の角の本数は1本だったな。

「私にも見えます」

 クリムも賛成してくれた。少なくともボッチによる視覚障害ではなさそうだ。…自分で考えておいてなんだが、ボッチが原因で引きおこる視覚障害って何だろう。

「…ん。私も見える」

「あれって滅多に起きないんじゃなかったのか?」

 そのようなことをリーフが言っていたような・・・?あ、角犬の事だったな。

「…その滅多に起きないことが起きたんだと思う」

「…そう考えるしかなさそうだな」

 なんでこう今日は不幸に恵まれているんだ?

 角犬達からはえん罪に巻き込まれ、角猫達から襲撃される。しかも、角猫達が俺達、もしくは角犬達を狙おうものなら、俺達は角猫達を相手にしなくてはならない。さっき角犬達を相手にして少し疲れているのに、ここにきて連戦か。

(嫌だ~)

 と、本心を心の中にしまいつつ、

「剣の用意は必須だな」

 神色剣を構え直す。

 さらに角猫達が近くなり、

(来るか!?)

 俺はさらに警戒を強める。

「ニンゲンカ」

「「「「!!!!????」」」」

 その時、俺達はさらに驚く。何せ、角が3本の角猫が言葉を喋ったからだ。

「ナゼニンゲンガ、アヤツラノミカタヲスル?」

 あの大きな角猫が喋る度、何か威圧されているみたいな圧迫感を覚える。だが、あの時と比べたらへでもないな。

(こいつ、もしかしてルリより弱い?)

 ルリのあの意識乱れる威圧より、ぜんっぜん大したことないな。ま、だからといって弱い、とはいえなさそうだ。一筋縄ではいかなそうだ雰囲気をだしているし。

「少し、縁があってな」

 その縁はえん罪、というひどいものではあるが、そのえん罪を晴らすまでは、俺達がこいつらの身柄を保証しなくてはな。じゃないと、ルリ達について行ったあの角犬に申し訳ないからな。

「ナラ、キサマラハワレラノテキダナ」

 瞬間、大きな角猫は自身のいた場所から大きく足を動かし、俺の元へやって来る。

「!?」

 俺は慌てて神色剣でやつの角を受け流す。

「ホォ?イマノヲウケナガスノカ」

 ふー。危なかった。警戒していたとはいえ、いきなりの攻撃は何度でも驚くものだ。

「まぁな」

「ソレデハホンカクテキニヤルトトシヨウ。オマエラモヤレ」

 その大きな角猫の掛け声により、

「「「ワオーン!!!」」」

 角猫達は雄叫びをあげる。

「来ます!イブ、準備は!?」

「…言われなくても」

「あわ、あわわ」

 こうして俺達は角猫達との戦いを始める。

 だが、その前に気になった事がある。

(角犬がニャンで、角猫がワオーン、か)

 それは鳴き声であった。普通逆じゃね?なんて考えてしまう俺であった。

次回予告

『4-1-15(第269話) 角犬の卵捜索開始~その5~』

 彩人達は角猫達と戦いを始める。そして彩人は、角が3本生えた大きな角猫との戦いを始めた。


 こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。

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