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色を司りし者  作者: 彩 豊
第4色 黄の国 第一章 蒲公英色な角犬の卵
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4-1-11(第265話) 角犬の卵捜索開始

「ルリ!お前、角犬達が話している事、分かるのか!?」

「うん」

「うんってそんなあっさり…」

 ほんっと、さっきの俺が角犬達に話しかけたあの無意味な時間を返して欲しいよ。そういえば、赤の国のあのフェニックスの時も似たようなことがあったな。なんだ。こういうことなら最初からルリに通訳を頼めばよかったじゃん。無駄な労働に後悔だな。

「それじゃあルリ。角犬達の通訳を頼む」

「うん!」

 とはいえ、ある程度は既に話しているようだし、そのことについても聞く必要があるな。

「それで、さっきまではどんな話をしていたんだ?」

「大したことは話していないよ?ずっと卵卵って叫んでいたよ?」

「そんなに卵が大事なんだ」

 あの卵がそんなに大事なのか?それとも、あの卵とは別の卵か?どちらにしろ、そこまで卵が大切なら、何故無くすようなヘマをしたのだろうか。

「他には?」

「ううん。特には言ってないよ。殺せとか言っていたけど、それくらいだよ♪」

 と、ルリは笑顔で言った。いや、結構物騒なことを申しているではありませんか。

「なぁ?もしかして、俺達が卵を盗んだと思っているのか?」

「ニャニャン!」

 ・・・うん。何を言っているのか相変わらず分からないな。

「ルリ、翻訳を頼む」

「うん!えっとね、『そうだ!』って言っているよ」

「そうなのか」

 やっぱりというか、完全にあっち側の勘違いかよ。確かに先日、角犬らしき卵と接触したが、それ以外は特に何もしていないな。この旨を正直に伝えるとするか。

「俺達は卵を盗っていないぞ?」

「ニャニャン!」

「『嘘だ!』だって」

「そんなこと言っても…、」

 馬鹿正直に言ったところで信用するわけないか。とはいえ、無罪をいかに証明したらよいものか・・・。

「あ、あのー、」

「ん?なんだ、モミジ?」

「この辺に木はありませんが、草はありますので、草に卵の行方を聞いてみましょうか?」

「・・・出来るの?」

 正直、木と話すこと事態不思議な事だと思っているのに、それだけじゃなくて草とも話が出来るのか。モミジってもしかして、植物全般と話が出来るのか?

「はい!任せて下さい!」

 モミジはそう言うと、顔の位置を低くし、何かし始めた。おそらく、モミジが言った通り、草と会話でもしているのだろう。モミジの奴、いつの間にあんな人並み外れた業を習得していたなんて。あ、俺も一応人外の類に入るのか。

 とは言え、一応卵とも接触していたから、そのことは一応伝えておこう。

「だが、先日、お前らの卵らしき卵と接触した」

「ニャニャン!?」

「『本当か!?』だって」

「本当だ」

「ニャン!?ニャニャニャンニャ!?」

「『どこだ!?どこにいるんだ!?』だって」

「確か数日前にはあっちの方にいたぞ」

 と、俺は来た道を指差す。

「ニャン!ニャニャニャニャニャニャーん!!」

「『放せ!俺達は今すぐ行かなきゃいけないんだー!!』だって」

 どうやら角犬達は必死みたいだ。だが、

(ここで開放するのもなぁ…)

 正直、さきほどまで俺達を殺そうとしていた奴らが、卵を取り戻すためだけに行動するとは思えない。そう思わせておいて、俺達から解放された瞬間に不意打ちをくらわし、奇襲を成功させようとしているのかもしれない。考え過ぎなのかもしれないが、角犬達のあの、

「「「・・・」」」

 俺達を殺そうとする鋭い眼光は無視不能な代物だろう。

「それでどうする?」

 俺は一人で考えることを放棄し、クリム達に助言をもらうことにする。

「そうですね・・・」

 リーフは少し考えた後、

「一匹だけ行かせて後はここで拘束されてもらう、という感じはどうでしょう?」

 リーフの案に、

「…なるほど。他の角犬達は人質」

「そういうことです」

「?どういうことです?」

 イブは納得していた。だが、クリムは疑問に思っているらしく、疑問符を浮かべていた。

「クリム様、つまり…、」

 横でクロミルがクリムのフォローに入っていた。ま、クリムのフォローはクロミルに任せるとしよう。

「その案で行こう」

 俺がそう言うと、みんな快く首を縦に振ってくれた。

「それじゃあこれから二手に分かれるとするか」

 となると、俺達はこれから二つに分かれる必要がある。

 一つは、ここに残り、角犬達を見張る人。

 もう一つは、開放した角犬と共に卵を取りに行く人。

 後者は別に角犬だけでもいいが、万が一が起き、新たなえん罪を受け、角犬達がさらに激昂しないためだ。そんなことは無いと信じたいが、念には念を押すとしよう。

「それで、誰が角犬と行く?」

 俺としては、ルリは必須だな。後は・・・特に決めていない。みんなで考えていこう。

「…ルリは行くべきだと思う」

 イブが俺の気持ちを察してくれたかのような言葉を発する。

「え?ルリが?」

 ルリは名指しされるとは思わなかったのか、驚き自身の指で自身を差す。

「…ん。きっと角犬達と対話することが必要になると思う。だからルリは連れていくべき」

「分かったよ、イブお姉ちゃん」

「それで後はどうする?」

「はいはい!私行きます!」

「「「却下」」」

 クリムの立候補に、俺、イブ、リーフは声を揃えて否定する。

「何でぇ!?」

 クリムは俺達3人の即刻却下にひどく憤慨する。だって、

「…クリム、その場で冷静な判断がとれる?」

 イブが確信をつくかのような質問をする。

「え?そりゃもちろん出来ますよ!」

 と、クリムは自信満々に答える。心底心配だ。

「…それじゃあ、クリム達の前に魔獣が現れた場合は?」

「拳で語り合います」

「「「「・・・」」」」

 そりゃあね。詳細な状況をほとんど話しておらず、魔獣が現れた、としか言っていないから、どんな選択肢をとればいいのか分からない気持ちは分かる。

 けどさ、だからといって速攻で喧嘩を売るような態度はしないでほしい。そんなことをしたらルリも拳で語り合うじゃないか。つまり、力で全てを片付ける事態になりかねない。それはなんとしてでも避けたい事項だ。

「…脳筋お馬鹿、少しは話し合うとか、そんな選択肢はないの?」

「え?話し合うより拳で語り合った方が嘘をつけませんし、こちらの方が確実だと思いますよ?」

「「「「「・・・」」」」」

 ・・・ああ。これはもう、価値観の違い、ということで片づけていこう。きっとクリムの考え方は一生変わることはないんだろうな。無論、多少は変わるかもしれないが、根底はきっと変わらないだろう。赤の国の将来は暗いな。というか、拳で語り合うと嘘がつけないとかわかんねーよ。

「…そんなんだから、ルリとクリムの二人だけに任せることは出来ない」

「そ、そんな~」

 クリムはうなだれていた。

「…とはいえ、クリムみたいに機動力がある人がルリ達と同行すべきだと思う」

「なるほど」

 角犬とともに行くのであれば、やはりそれなりの機動力は必要か。この中で機動力があり、尚且つ知性があるのは…、

「リーフとクロミル、この二人か?」

「…それが妥当だと思う。リーフは平気?」

 俺の提案にイブは賛成し、イブはリーフに了承の賛否を聞く。

「正直、ルリちゃんやクロミルちゃんの足を引っ張るか心配です」

 そういえば、ルリ、クロミル、リーフ。この3人の中で誰が一番足が速いのだろうか。強さだけで言えば、俺的にルリだと思ったが、強さと速さは違うだろう。となると、普段から足を鍛えているクロミルが濃厚か?というか、ルリとクロミルを一般常識みたいに判断しないで欲しい。俺だって、あの二人と全力で徒競走して勝てるのかと言われえれば、無理な気がする。だから、

「あの二人のことだし、気にしなくていいんじゃないか?」

 あの二人の能力もそうだが、性格はまぁ素晴らしい。

 ルリは義理とは言え、俺の妹とは思えないほど純粋過ぎて眩しく、親切心にあふれている。

 クロミルは主人の言う事を忠実に守りながらも、主人の事を大切にする発言や行動が幾重にも見られる。俺の従者には勿体ないほどだ。

 こんな二人が能力的にちょっと劣っているくらいで嫌悪の眼差しを向けるとは考えられない。

「大丈夫だよ!ね、クロミルお姉ちゃん?」

「ええ。リーフ様のペースに合わせていくので、無理のないようにお願いいたします」

 ほら見たことか。この二人、俺に似つかず素敵な性格をお持ちだこと。血のつながりがあったら、この二人も性格が黒くなってしまうのかね。そういう意味では、俺と血縁関係が無くて良かったと思う。

「ルリちゃん、クロミルちゃん…。ありがとう!」

 リーフは豊満な胸を用い、ルリ、クロミルを圧迫死させようとかかる。本人的には無意識だろうが、あの胸は貧乳な二人を嫉妬させるからやめなさい。無意識なら…ま、仕方がない。後で俺も味わいたい、ということは胸の内に秘めてしまっておこう。

 さて、話も大体まとまったことだし、角犬達に話かけるか。

「では角犬達、話がまとまったので聞いてほしい」

 さっきからず~~~と睨んでいた角犬達の睨みがさらに強まる。さっきまでこいつらのことを放置していたから、構ってもらえなくて妬いているのか?そんなわけないか。あいつらにとって、ここで拘束されている時間がなく、どうやって抜け出そうか考えていたのか。ま、そんなことしても無駄だけどな。

「今から一匹だけ開放して、この3人と一緒に卵の捜索をしてもらう」

「ニャンニャン!ニャンニャンニャン!!」

「『返せ!卵を返せ!』だって」

「そこでだ。この中で最も強く、聡明な奴に行かせたいのだが、誰だ?」

 どうやらギャンギャン吠えていても俺の話がしっかり聞こえていたらしく、数秒見つめ合った後、

「ニャン!」

「『俺だ!』だって」

 どうやら、今話している角犬が卵の捜索に行くらしい。さて、となるとこいつの拘束を解くことになるのだが、

(ちょっと怖いなぁ)

 拘束を解いた瞬間に角犬が襲ってくる、なんて事態が容易に想像できてしまう。もちろん、相手は自身の立場をある程度理解し、無暗に攻撃しないと思うが、言葉に表しておくか。

「一応言っておくが、拘束を解いた瞬間に襲ってきたら問答無用で殺すからな」

 俺の殺害発言で、

「ニャン…」

「『分かった…』だって」

 角犬達はだいぶビビったらしい。態度の変化が如実だ。

「それじゃあ解くぞ」

 俺はその角犬一匹だけの拘束を解く。すると、角犬が拘束から解かれたのか、俺の近くに寄ってくる。

「ニャン!ニャンニャニャン!」

「『早く!早く案内しろ!』だって」

 だいぶせっかちだな。いや、それほどあの卵が大事、ということなのかもしれない。

「それじゃあ…」

 あ!?そういえば今、卵はどこにあるんだ?動いてなければあの場所にあるんだろうが、あの卵、なんだか移動可能みたいだったからな。となると、移動している体で考えた方がいいだろう。さすがに無鉄砲に進むわけには…。

「あ、あの!」

「ん?ああ、モミジか」

「はい。卵の場所がある程度分かりました」

「そうか。それでどこにあるんだ?」

 モミジの言葉の意味を理解したのか、

「ニャニャン!?ニャン!!ニャー!!!」

「『何だって!?教えろ!!教えろー!!!』だって」

 ずっとキャンキャン吠え続けている。超ウルサイ。

「えっとですね、まずあ…、」

「待った」

 俺はモミジの発言を止める。このやりとりの間も、ずっと角犬達は吠え続けている。

「おい」

「ニャニャン!?ニャニャニャンニャ!!」

「『何だ!?いいから教えろ!!』だって」

「ありがとう。それで、それ以上うるさくするとどうなるか、分かるな?」

 俺が若干怒気を込めて発言すると、

「ニャ、ニャン…」

「『わ、分かった…』だって」

「よしよし。それと、あの人とあの人、そしてあの人の言う事は必ず聞くように。いいな?」

 俺はリーフ、クロミル、ルリを指差しながら角犬に説明する。

「ニャン!」

「『分かった!』だって」

「よし。モミジ、続きを頼む」

「あ、はい。場所は…、」

 モミジから卵の場所を聞きだす。

「・・・なるほど。モミジ、ありがとな」

「い、いえ!私はこれくらいしか出来ないので…」

「モミジはもっと自分に自信を持った方がいいと思うけどな」

 なんなら、俺以上に色々出来ると思うけど。まず、植物と会話するなんて凄すぎて実感わかないし。

「あ、ありがとうございます」

 と、モミジは照れながら答えてくれた。何この生き物。心の底から抱きしめたくなるな。

「さて、卵の場所も分かった事だし、リーフ達には卵の捜索をお願いしたいが、いいか?」

 俺のお願いに、

「「「はい!!!」」」

 三人とも了承してくれた。言葉では言わないけど、三人ともありがとう。

「それでは行ってきます!」

 リーフのこの言葉に、

「行ってくるね~♪」

「ご主人様、それでは行ってまいります」

 ルリ、クロミルが後に続く。

「ニャニャ~ン!」

 角犬の最後の鳴き声が小さくなってくるとともに、姿も小さくなっていく。

「さて、」

 これであの角犬が例の卵を持ってきてくれれば、俺達の無実が晴れることだろう。それにしても、何故俺達はここまで角犬達に加担しているのだろうか。たんなるえん罪を無くすため?角犬達の事が心配になったため?う~ん・・・分からん。

「うぅ。どうせ私なんて・・・」

「…どうした?」

 俺が見送りを終えると、クリムがうなだれていた。視線をイブに送ると、困った顔をし、

「…さっきからずっと落ち込んでいる」

「さっき?ああ」

 なるほど、あの時か。

「大丈夫だ、クリム」

「あ、アヤト~」

 どうやらかなり堪えたみたいだ。今にも泣きそうである。

「そういう考えは個性的でいいと思うぞ」

 俺は出来るだけ爽やかに、そして笑顔で言った。

「それ、全然フォローになってないですぅ―!」

 クリムはさらにいじけてしまった。

「・・・モミジ、フォローを頼む」

 どうやら俺の能力では、クリムを立ち直らせることは出来ないみたいだ。ま、ボッチだもの。自分以外を元気にさせる、なんて機会がなかったからしかたがない。人を励ます行為の失敗は誰にでもある。だからこれは仕方のないことなのだ。

「え?あ、はい」

 モミジはクリムの元に近づき、

「・・・」

「・・・」

 何か話し始めた。これで少しは立ち直ってくれるとありがたい。

(クリムはモミジに任せるとして、)

 俺は今も拘束されている角犬達を見て、

(こいつら、どうするかな~?)

 目の前にいる角犬複数の現環境に悩み始める。

 だがこの時、彩人達は気付かなかった。

 彩人達に新たな脅威が迫っていることを。

 そしてリーフ達にも近い将来、脅威が待ち望んでいることを、この7人は未だ、把握していない。

次回予告

『4-1-12(第266話) 角犬の卵捜索開始~その2~』

 リーフ、クロミル、ルリと角犬が卵を捜索している一方、彩人達は2択で答えられる質問を、首を縦か横に振ればいいだけで答えられる質問を角犬達に行う。そんな中、イブはあることを思い出す。


 こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。

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