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色を司りし者  作者: 彩 豊
第4色 黄の国 第一章 蒲公英色な角犬の卵
261/546

4-1-6(第260話) 角犬

 ・・・。

 うん。何もよくないよな!?俺は無言でクロミルを見、詳細な説明を求める。

「どうやら数日前、この周辺にある魔獣の群れがいた形跡を発見いたしました」

「ある魔獣?その魔獣が一体どこのどいつか分かるか?」

 俺の問いに、クロミルは、

「分かりません。足跡から判断するに、4足歩行している魔獣かと推測出来ますが、それ以外は・・・」

「そうか」

 4足歩行する魔獣、か。確か熊も4足歩行するよな。てことは、あの熊、クマグマンが近くにいるかもしれないってことか!?倒せなくはないかもしれんが、あいつら、群れで行動しているのか?熊が群れで行動するなんて聞いたことが無いのだが…?

「アヤト。多分ですが、アヤトが今考えていることは間違っていると思いますよ?」

「え?」

 リーフからの指摘に俺は思わず驚く。

「それと、これを見て下さい」

 と、どこから取り出したのか、リーフは・・・何あれ?何か細長いようなものを見せてきたな。

「それは?」

 俺は見ても分からなかったので、リーフに直接聞く。

「これは毛です」

「毛?」

 確かに、毛と言われれば毛に見えなくもない。というか、毛にしか見えなくなってきた。

「はい。私達もクロミルちゃん達も同じ足跡を見、その近くにこの抜け毛を見つけました」

 リーフはよく見ているな。

「それと、あの足跡の歩幅、この抜け毛の色、4足歩行であることを踏まえると・・・」

 そう言いながら、リーフは懐からあのぶあっつい本を取り出し、めくり始める。

「ええっと・・・」

 ページ数が多すぎるのか、ページをめくるのにも一苦労している気がする。というか、この分厚い本、一体誰が書いたのだろうか。

「あ、ありました!私としては、この魔獣ではないかと」

 と、リーフはある1ページを指差す。そのページにみな、視線を集中させる。

「つ、【角犬】?」

 そこには、またも俺の知らない魔獣の名が記されていた。

「…なるほど」

 どうやらイブは納得したらしく、一人首を縦に振っていた。

「えっと・・・俺に説明してくれない?」

 なんか俺だけ分かっていない感じが、懐かしさあふれる疎外感を思い出させる。

「角犬。それは、」

「それは・・・?」

「角が生えた犬です」

「・・・」

「・・・」

「・・・?」

「・・・?どうしました?」

「え?説明それだけ!?」

 いやまぁ、簡単に説明してくれたことで理解はできたけども!それ以外には何かないの!?

「簡単に一言で言えば、さきほどの説明で全て片付きます」

「うん、それは分かった。だから次はもっと詳細な説明をお願いしてもいいかな!?」

「ええ。もちろんそのつもりです」

 その割にはさきほど、結構な間を空けていたと思うんですけどね!

「まず、角犬は群れで行動し、このような毛を全身に生やしています」

「へぇ」

 イメージ的には柴犬、をイメージすればいいのか。そこに角を付け加える、と。

「そして、従魔にした魔獣ランキングでナンバー1をとり続けています」

「…それは一体どこ情報なんだ?」

 情報源がまったく不明な事と、一体どうやってアンケートをとったのやら。

「これは国でも公式に発表されていて、角犬にチョーカーを付けている人がかなりいるんですよね?」

 リーフは王女2人に聞く。

「…ん。それでもって角犬は賢く飼い主に従順だから、飼いやすくて安全で有能」

「へぇ。そんな話があったんですね。私、知りませんでした♪」

「・・・これだから脳筋は困る。もっと勉強すべき」

「な、何ですって!?」

 確かさっき、リーフは国でも公式に発表されている、て言っていたよな。つまりクリムは国の事情を把握しきれていなかったと。・・・これはまぁ、クリムの勉強不足だと思う。他人事だから言うが、頑張れ、クリム!

「後、角犬の角は本来1本なのですが、稀に複数生えることも確認されています」

「へぇ~。複数生えるとなんかいいことあんの?」

「さぁ?そこまでは詳しく明かされていません。ですが、複数角が生えた角犬は強く、複数の色魔法を使える、という情報があります」

「マジで!?」

 それって、クロミルやモミジみたいなやつが他にもいるってことか!?魔法のハイブリッド、てやつかも。

「あくまで噂ですので、あまりあてにはできませんが」

 と、リーフは付け足していた。

「そっか」

 俺は今まで話してもらった情報を頭の中で整理し始める。

「…リーフ。まだあれ、言っていない」

「あれ?…ああ、そういえばそうでした」

「ん?何だ?」

「ちなみに鳴き声はニャーで、卵から産まれるらしいですよ」

「・・・は?え?ほ?」

 俺はいきなりの情報に驚く。

 あれ?犬ってニャーって鳴くっけ?

 あれ?犬って卵生だっけ?

「?どうしました?」

「えっと・・・角犬って、、ワンって鳴かないの?」

「鳴きませんが?」

「角犬ってお母さんのお腹の中ら産まれないの?」

「産まれませんが?」

「…そうか」

 さすがは異世界。こういう時、俺は異世界に来たんだと実感するな。

「・・・あ!?」

「「「「「「!!!!!!??????」」」」」」

 リーフの突然の叫びに、リーフ以外の6人は体を緊急に震わす。

「ど、どうした!?」

 俺はリーフの異変に言葉をかける。

「今思い出しました!先日見た卵、あれは確か、角犬の卵です!」

「そ、そうなのか」

 それを思い出したから何だというのだ?

「それってこれのこと?」

「そうそうそれですそれぇ!?」

 と、リーフは途中で声を大きくする。

「というかルリ、それって先日見つけた例の卵か?」

 いつの間に持ってきたんだよ・・・。

「うん!なんかこの辺でコロコロ転がっていたから、拾ってきた♪」

 そんな捨て猫を拾ってきた、みたいに言うなよ。

「…ちょっと面倒なことになるかも」

 イブも真剣な顔をし、リーフと顔を見合わせる。えっと、マジでどういう事?

「もしですよ?もし、角犬の群れがこの卵を探しているとしたら?」

「…俺達の事を、卵を保護してくれた恩人に思ってくれたり、くれなかったり?」

「間違いなく角犬達は私達の事を、卵を奪った敵、と認識するでしょうね」

「だよなぁ」

 少なくとも角犬達は今のこの状況を見て、俺達の事を快くは思ってくれないだろう。

「ご主人様、如何なさいましょう?」

 クロミルが今後の予定について聞いてくる。そうだな・・・。

「クロミル、至急準備を頼む。今回は俺も引くから、早めにこの地から離れるぞ」

「かしこまりました」

 クロミルはそう言い、準備を始める。

「それじゃあ行くか!」

 俺のこの声に、

「「「「「はい!!!!!」」」」」

 5人は肯定する。残り一人はというと、

「お兄ちゃん。この卵、持っていっていい?」

 相変わらず呑気というか、人の話を聞いていないというか、はぁ。思わずため息をついてしまうな。

「駄目。もしかしたら角犬達がこの卵を探しているかもしれないだろ?」

「でも・・・」

 ルリは持っていきたそうにしていた。だが、

「・・・・・・分かった」

 渋々、それはもう赤ん坊が見ても分かるくらい渋々諦めてくれた。後で美味しいデザートでも作ってやろうかね。それで少しくらいは気が紛れてくれると嬉しいが。

「それじゃあルリも…、」

「ちょっと待って!」

 ルリは乗ろうとしたものの、直前で足を止め、角犬の卵に近づく。おい!何をしようと…!

「ごめんね。これで我慢してね」

 俺は叱れなくなってしまった。何故なら、あの大食いのルリが、自身のホットケーキを卵に分け与えていたのだから。といっても、卵の上にホットケーキを乗せているだけだけど。それにしても、あの卵の状態で、どうやってあのホットケーキを食べるつもりなのだろうか。

「お兄ちゃん、いいよ」

「お、おう」

 いかんいかん。ついルリの優しさに見惚れていた。少し気合いを入れ直さないと。

「それじゃあ行くぞ、クロミル!」

「はい!」

 こうして俺とクロミルは、慣れた手つきで牛車を引っ張り、この場を後にした。

「・・・」

 残された卵はというと、

「・・・」

 殻の上に置かれたホットケーキを吸収し、

「・・・」

 またゆっくりと転がり始める。その方向はまたも、彩人達と同方向であった。

次回予告

『4-1-7(第261話) 休憩からの夢』

 まだ見ぬ角犬という脅威から逃げ出した彩人達のうち、彩人とクロミルは牛車を引いたため、みんなが頑張っている中、次の日の英気を養うため、夢の中に向かう。


 こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。

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