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色を司りし者  作者: 彩 豊
第4色 黄の国 第一章 蒲公英色な角犬の卵
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4-1-3(第257話) 魔道具を使った夜の見張り

 今日の夕飯を考えながら呆けていると、いつの間にかまた眠っていたらしく、

「…やと。そろそろご飯」

 そのイブの言葉で目を覚まし、周囲を見渡してみると、

(まじか。俺、マジか)

 既に周囲は暗くなっていた。どうやら俺はお昼寝をしてしまったらしい。

(そういえば、イブ達に夕飯のこと、任せちゃったな)

 リーフも夕飯作りに加担しているだろうし、よほどの間違いは起きないだろう。

「あ、起きましたか?夕飯も出来たので、どうぞ」

 と、リーフは料理がのっている皿を俺の前に置く。

「美味しそー♪」

 ルリはフォークとナイフを鳴らし、待ちきれない気持ちを表現している。出された料理はというと、

「・・・何これ?」

 緑が皿一面に敷き詰められているな。これはおそらく、先ほど採ってきた薬草や山菜の類なのだと推測できる。それで、その緑の草達の上に乗っている赤い物体Xもある程度想像出来る。できるけど、

(あれ、本当に食えるの?)

 切り口もどこかトマトに似ているな。だから食べられるのではないか。そう考えてはいるものの、深層心理で拒絶しているのかもしれない。

 …そういえばこんな感情、思い出した。小さい時、見たこともない食べ物を始めて食べる時の感覚だ。美味しいものならいいが、苦いものは嫌いだったな。トマトって苦くはないが、食感を嫌う子供が結構いた記憶がある。だが、今の俺は食わず嫌いで我が儘な俺ではない!食ってから好きか嫌いか判断する男だ!ま、人間は大抵嫌いだけどな!俺、いじめられていたし。・・・何で食事中にまで残念な感情を抱く必要があるのだろうか。

「それじゃあいただくよ」

 俺は自虐で落ち込みつつ、トマトに似た赤い食物をいただく。

(・・・美味)

 結果、食べ物は食わず嫌いしてはいけない。そんな結論を抱いた。人間の好き嫌いはともかく、やはり食べ物は一度くらい食べて確認しないとな!

「どう?アヤト、美味しい?」

 そのリーフの言葉に、

「ああ」

 その一言だけを返し、食事を続行する。

「リーフお姉ちゃん、おかわり!」

「…ルリ。ちゃんと自分でよそう」

「…は~い」

 なんか見ているだけで微笑ましいな。

 そんな夕食を堪能した。


 その後、俺達は後片付け、入浴を済ませる。見張りは、

「今日俺、昼間寝ていたから代わるわ」

 と自己申告し、急遽一晩夜通しで見張りをすることになった。

「それじゃあアヤト、夜の見張り、頼みましたよ?」

「ああ。それじゃあみんなお休み」

「「「「「お休み」」」」」

「zzz・・・」

 モミジは既に寝ているようだ。まさか、心肺停止!?・・・こんな悪趣味な冗談はこれくらいにしておこう。

「さて、と」

 俺はここで、

「せっかくだから、あの魔道具を使ってみるか」

 俺はアイテムブレスレットからある魔道具を取り出す。その魔道具は、種子に似た形をしていて、緑の国でいくつかいただいたものである。

「この【ツタツタ】に魔力を注ぐか」

 この魔道具、ツタツタを地面に植える。

 ・・・。

 おや?なんか急に地面が…?

「は!?」

 急に周りが暗くなった。いや、元々暗かったのだが、さらに暗くなったのだ。しいて言うなら、黒から漆黒って感じだ。右腕に封印されたものがうずくぜ。・・・中二ごっこはしていても全く面白くないな。精神的に痛いだけだし、すぐにやめよう。

「一応、念には念を、と」

 俺はさらに【結界】を二重に使い、周囲の様子が見られるように工夫する。

「この蔦にも色の付与が出来てよかったぜ」

 周囲の景色が一望できるようになったのは、ツタツタで生えてきたツタに、【色変化:透明】を施したからである。このおかげでスケルトンなツタが出来上がったのだ。さらに【結界】を張っているので、防犯面では万全と言えよう。

「さて、これで俺が寝ていても大丈夫か」

 とはいえ、夜の見張りを任されたので、やはり起きてなくてはならない。ちょっと面倒くさいと感じてしまうが、これは仕方ない。何せ、自分から名乗りを上げたんだからな。昼間寝てしまったという罪悪感から逃げるためにこの役を名乗り出たんだが、ちょっと後悔。もう眠い。

「さて、」

 やることが無いので、別にやることを探し出すとしよう。俺は足を使って自分を立たせ、

「いいか?これはあくまで状況確認のためだ。絶対、絶対にやましいこと目当てではない」

 自分に言い訳を自己暗示のように聞かせてから、

「お邪魔しまーす」

 ルリ達が寝ていると思われるテント内に侵入する。もちろんばれないよう、抜き足差し足忍び足精神を忘れずに、である。

「・・・よし。みんな無事に寝ているようだな」

 ま、安全安心なのは間違いないと確信していたんだがな。ここまで厳重な防犯システムで暴動が起きようものなら、俺は全力で6人を起こし、徹底抗戦するだけだ。それにしてもみんな、ずいぶんきれいな寝顔をしているものだ。思わず襲いたくなって…ゲフン、ゲフン!いかんいかん。ついいやらしいことを妄想してしまった。危うくその先の事まで熟睡中のみなさんにしてしまうところだったぜ。そんなイヤ~んな事態になってしまったら色々悲惨だからな。

「それにしても、」

 やっぱりみんな偉いよな。みんなの寝顔を見て、ついそんなことを考えてしまう。

 だって6人とも、この生きづらい世の中を今もこうして生き抜いているんだぞ?この異世界に比べたら、地球はどれ程生きやすかったことやら。

「ふぅ」

 俺はテントから静かに出て、先ほどの思考を再開する。

「ふむ」

 まずはリーフ。

 最初は単なる胸が大きいギルドの受付嬢なのかと思ったが、緑の国から逃亡していたエルフだったとは。そんな辛い出来事を自身で経験しているのに、あそこまで平然と話が出来る精神力は俺も見習う必要があるな。それに、強い。ギルドの受付嬢ってあそこまで強いのってくらい強い。何であそこまで強いのか分からなかったが、必要だったから、だろうな。強さを身に付けたい意志が働いたのではなく、強さを身に付けなければならないという強制力。それがリーフの強さの秘訣なのかもしれない。心といい力と言い、本当に強い。

 次にクリム。

 王女感は0だが、あの装備に関する知識には目を見張るものがある。その深い知識をもっていても、本人の結論としては、装備を何も身に付けずに戦う、なんて選択肢をとっているんだよな。クリム本人が決めたことだから俺が口出す権利なんてないんだろうけど、少し勿体ない気はする。後、もう少し王制?政治?そういったことを勉強した方がいい、と思うよ?俺も勉強嫌いなので人のことは言えないが。

 次にイブ。

 一見、食欲にとても正直な少女だが、兄を殺されている。それも、目の前にいる俺に、である。それなのに、俺自身に嫌悪感を一切抱かず、今もこうして平然と接してくれている。こんな精神力は一体どこから身に付けてくるのやら。俺だったら絶対に無理だな。

 次にルリ。

 こんな俺でも兄と慕ってくれている元ヒュドラ。こんな純真な心が、時代が俺にもあったのだと思わせてくれる。本当に純粋で、俺達のためなら何でもしてくれる。だからこそ、ルリの想いに反しないように生きていこうと、俺は出来る限り気を引き締めて生きている。出来る限りと言ったのは、俺にだって休息が必要だからである。

次にクロミル。

 本来、俺みたいなグータラで駄目で外道な俺にも関わらず、ご主人様と慕ってくれる牛人族。こんな人間を慕ってくれているだけでも評価すべき点なのに、クロミル自身、すごい謙虚で悪目立ちせず、他の人に華を持たせようと、常に気を遣ってくれている。将来、俺に仕えてくれるメイドが現れたら、きっとこんな風に仕えてはくれないことだろう。

 最後にモミジ。

 本当なら、緑の国で幸せに暮らすべきだったんだけど、

「アヤトさん、私を連れて行かないと死んでしまいますよ?」

 と、脅迫され、連れてきてしまった。もちろん、理由はある。何でも、俺を助けた際、【強制寄生】?という技?魔法?を使ったらしく、その制限として、寄生者、被寄生者がある一定の距離以上離れると何らかの副作用が発動するらしい。だからまぁ、俺からお願いしたわけだ。そしたら、

「ええ、もちろんです」

 と、答えてくれたわけですよ。俺という害悪を目の前にして、嘲笑する兆候が超見られなかっただけでも超すごいものだ。そんな愛が超深いモミジだからこそ、超尊敬できるんですよ!

 ・・・ちょっと、ちょうちょう言い過ぎたな。自重するか。

 こう考えてみると、本当、何で俺なんかと一緒にいてくれるのかと考えてしまう。何せ、自分の悪いことなんか、星の数だけあるからな。

 まずは考え方だ。

 楽して怠惰な生活を送る。これが今の俺の夢だ。この夢の内容だけでも、俺がいかにダメ人間か判別できることだろう。俺もこんな夢は駄目だと分かってはいるものの、やはりこの夢は大事にしたい。この夢を踏まえて、色々と前向きな夢を立てていきたいものだ。

 次に、ちょっと・・・、いや、かなり自虐癖があるところだ。

 俺は普段、息をするかのように自虐をしている。さきほどもそうだが、無意識の内でかなり自虐しているからな。言葉に出さないだけマシってものだと思うが、これは要改善点の一つだな。俺がこれまで十数年、ずっと続けているこの自虐癖、いつか治せることが出来るのだろうか。ま、気長に少しずつ治していこう。

 そして、俺は残念な頭をしている、という点だ。

 俺は昔から勉強嫌いだ。そして今も、その勉強嫌いは変わっていない。もし、俺がもっと勤勉になっていたら、これまでの事態が好転していたのかもしれない。そんなことをふと考えてしまう。そして、勉強することで、自身の無知加減の一端を知ってしまう。それがどうしても嫌だ。そんないいとか嫌とか言っていられない状況がいずれきてしまう。その時に後悔しないためにも、勉強は必須事項なのだろう。一つに、勉強は勉強でも、様々な種類の勉強があるから、自分の好きな分野くらいは勉強しておこうかね。例えば・・・性知識?

「ないな」

 まったく。こんなんだから俺はいつまで経っても変わらないんだろうな。そう、俺こそ、

「永遠なるボッチなのだと!」

 ・・・。

 思わず立ってしまった。

「・・・」

 俺は無音で腰を下ろし、

「はぁ~~~・・・」

 長い、それはもう、この異世界生活で培ってきた体力を最大限用いてため息を吐く。まさかこんなところで体力増加を確認することが出来るとはな。

 ・・・これって、自己分析出来ている証拠なのだろうか。自己嫌悪している箇所を徹底的に洗いだしているだけのような気がする。

「別のことを考えるか」

 なんか、夜で周りが暗いせいか、俺も暗い考えばかりしていた気がする。こんなことでは、俺を育ててくれた両親に顔向けできない事だろう。

「そういえば・・・?」

 俺の両親は今、どうしているのだろうか?俺は今、こうして辛くも楽しい異世界生活を送っているわけだが、俺の両親は俺の不在をどう思っているのだろうか?

 俺が急にいなくなって悲しんでいる?

 俺というボッチで不出来な息子がいなくなって喜んでいる?

 俺がいなくなった同時期に二人目を懐妊し、俺の不在を悲しむ余裕なんかない、とか?

 ・・・何故3回可能性を考えたのに、その内の2回は、両親が喜んでいる顔を想像してしまったのだろうか。俺自身、両親に愛されて育った、という自覚はあるのに。まさか、

「そう思っていたのは、自分だけ?」

 内心では、両親は俺の事をよく思わず、邪険にし、早くどっか行ってくれないか、とか考えていた?

 ・・・この考えはこれ以上しないでおこう。俺が俺でなくなる気がする。ま、両親の事はあの時のままに留めておこう。そして、

「今の目標は、俺の両親のように、」

 今、俺の両親が何を思って、どう生活しているのかは知らない。

けど、俺と一緒に過ごしてくれたあの時間を目標にしていこうと思う。俺のあの小さな記憶を参考にして、家族みんなで笑い合い、楽しめるような雰囲気を作っていきたい。

「なんだ。ちゃんと目標があるじゃん」

 なんだかんだ何も考えていないと自覚していたのだが、こうして深く、深く考えてみると、自分なりの目標があったことに気付いた。

「それじゃあまず、生活基盤の基本である、衣食住をなんとかしないとな」

 確か、衣類、食べ物、住居、という解釈でいいよな。衣類、食べ物は今現在進行形で何とかしているとして、住居はどうするか。これからしばらくは放浪生活するつもりだし、今は住居を構えるつもりはない。だが、青の国には別荘があるんだよな。本宅ないのに。

「さて、どうするかな」

 住居のことを考え、少し口角が上がった。


 これまで訪れていた国の住居のことを考えていると、かなり時間が経過していたらしく、

「ありゃ?」

 いつの間にか外に暗みが薄れ始め、明るみが生じ始めている。どうやら一晩中住居について考えていたらしい。

「最終的には、地球の住宅情報を見ていたな」

 もう、地球に住むわけじゃないのにどうして見ていたんだろうな。だが、住宅の綺麗さはある程度参考に出来た。この世界も、地球の住宅みたいに綺麗だといいな。最悪、魔法で綺麗にすればいいんだけどな。後は…事故物件は避けたい。幽霊屋敷に住みたい、なんて思わないし。

「そろそろ朝食をどうするか考えるか」

 確か、昨日リーフが作ったサラダの残りがあったはず。後は軽くパンにすれば問題ないか。

「ご主人様、おはようございます」

「おお、クロミル。おはよう」

 朝一番にクロミルが起きてきた。まだ陽が昇っておらず、時間的にも早朝なはずなのに。

「ご主人様、朝食の準備をしたいのですが、よろしいでしょうか?」

 俺はクロミルの提案に、

「いや、もうこっちで大体決めたから大丈夫だ」

 俺はそう言い、昨日リーフ達が採ってきてくれた野菜とパン複数を取り出す。

「今日は昨日のサラダとパンにしようと思ってな」

「素晴らしい案だと思います」

「お、おう」

「ところで一つ、よろしいですか?」

 と、クロミルが質問しようとしてきたので、

「おう。何だ?」

 俺はサラダにかけるドレッシングの味をどうするか考えながら質問に応じる。

「あれは何ですか?」

「え?」

『4-1-4(第258話) 卵との出会い』

 みんなageの自身sageを見張り中に行っていた彩人は、クロミルの一言により、ある物体が近くに会った事を知る。彩人達一行はその物体を警戒する。


 こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。

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