表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
色を司りし者  作者: 彩 豊
第4色 黄の国 第一章 蒲公英色な角犬の卵
257/546

4-1-2(第256話) 夢と現実の区別

 緑の国を出てからうん十年。今では俺達も立派な子持ちの親に、

「…ヤト。アヤト!」

「!?な、なんだ!?地震か!?」

「いえ、単なる牛車の揺れです」

「・・・え?」

「おはようお兄ちゃん♪」

「…よく寝た?」

 ・・・あれ?俺は36歳くらいのおっさんの・・・。ああ、そうか。

 あれ、夢だったんだ。

 よかった。緑の国をでてから数十年間ずっと、放浪の旅をしていたわけじゃなかったんだな。だけど、夢と現在の状況が俺の脳内で混在している。今の状況をきちんと把握するためにも、

「なぁ?あれからどのくらい日にちが経ったんだ?」

 地球にいる時なら、曜日と日数を聞けばある程度分かるかもしれないが、この世界にはない。だから感覚で生きている感が半端ないんだよな。一応、月は何かしら別の呼称があるとイブから聞いたが、忘れた。だって日本人だもの。一番慣れ親しんだ1月12月や、月曜日火曜日の方が把握しやすいんだもん♪…男のだもん発言は時折、自分でもキモイと思ってしまう自分がいる。今度からは気をつけよう。

「それじゃあ説明がてら、少し休憩します?」

 そのリーフの発言に、

「「「「賛成!!!!」」」」

 クリム、イブ、ルリ、モミジが声を挙げる。

「ご主人様が良ければ」

 相変わらず主人に対する忠誠心が半端ないな。主人である俺としては嬉しいけどね。

「分かった。休憩がてら、軽く食べながら話そう」

 その言葉に、

「わーい♪ホットケーキ食べよう♪」

 ルリははしゃいでいた。あれだけ見ていると、ルリって本当に子供だよな。あれで俺達七人の誰よりも年をくっていたら驚くぞ。

 いや、待てよ?そういやルリのやつ、長い間眠っていたとか封印されていたとか何とか言っていた気がするな。その日数も生きていたと考えるべきだろう。

 さらに考えると。イブやクリムは十代だと思うが、実際のところはどうなのだろう。リーフはエルフだから、もしかしたら見た目以上にお年を召している可能性がある。モミジは生まれて間もないらしいから、この中で一番若いだろうな。あれ?となるとクロミルは一体…?女性に年齢関連の事を聞くのはタブーと聞いたことがあるから、このくらいで考えを終わらせておくとしよう。

「さて、それで現状ですが、」

 こうして俺達7人は現状の確認を始める。

 何か、俺の我が儘のせいで牛車を止めてしまい、申し訳なくなるな。出来るだけ気にしないようにしよう。

「緑の国を出てから既に3日。現段階では、国境を超えること、これを目的として移動しています」

 ここまではいいですね、と言わんばかりの視線をリーフは俺達に送る。俺とルリ以外は全員、首を縦に振っていたが、俺としては、

(・・・あぁ~。そういえばそんな話もしたなー)

 ようやく夢と現実の区別がつき始めた。

 きっと、あまりにも現実が辛すぎるから、夢に逃げ、夢での滞在時間が長すぎたことが原因だったのだろう。夢の世界は俺の思うままだったからな。例えば、むふふなことを一年間しつづけたり、体を一歩も動かさず、見知らぬ絶世の美女達から食べさせてもらったり、気付いたら丸々一月寝続けていたり。他にもむふふでえへへな出来事が宅さなった気もするが、ここでは割愛させていただこう。

 それに比べ現実はどうだ?

 イブの兄と殺し合いをしたり、イブの両親と全力で戦ったり、ルリと戦ったり、あの・・・ハゲじじいと決闘したり。なんか戦うたびに死にかけていた気がする。

 そして、戦う度に深い負の感情を垣間見ちゃうんだよな。その度に思ってしまう。

 俺と今まで戦ってきた奴らにも、何かしら強い思いを秘めて戦っているんだな、と。それに比べて俺はその場しのぎの戦いばかりしてきたな。だから俺はボッチでうすっぺら・・・、

「…アヤト?」

「・・・んあ?何がだ?」

「…話、聞いていた?」

 ここで俺は全員の視線が折れに集中していることに気付く。この超高密度の視線攻撃に今更気付くとか、俺はどんだけ自分と相手を比較し、悲観していたのだろうか。

「ああ、大丈夫だ」

「もう~。ちゃんと聞いていてくださいよ?」

 と、リーフは冗談交じりなトーンで言ってきた。

「ああ。もう大丈夫だ。だから続きを頼む」

 その返しに、分かりました、と言わんばかりの相槌をいただき、リーフは話を再開する。

「それで一昨日、昨日と食材集めに翻弄し、本日は先に進もうと、クロミルちゃんに引っ張ってもらっていた、というわけです」

 リーフは、こんなところでしょうか、と聞きたそうに視線を送る。

「そーだよー」

 唯一、ルリだけは声を出して返事をする。

「・・・」

 モミジは声に出していないものの、首を振る回数が尋常ではなかった。あのまま首の骨を使い続けていたら、普通の人間だと十年ちょいで使い物にならなくなりそうだ。

(そういえばそんなこともしたような、していなかったような・・・)

 一方の俺は、まだ記憶が混とんとしている。

 だって、俺の記憶だと、昨日は一日中寝ていたし、一昨日はご飯食べるために十分間だけ起き、残りの23時間50分は寝ていたもの。どう考えても俺の記憶の方が間違っていると思うが、どうしてもそうあってほしいという願望が現実を拒絶している。

 こんなことをいつまでもグダグダしているわけにもいかないので、そろそろ現実と向き合うとしよう。いや、はなっから現実と向き合おうと努力はしていましたよ?だけど、だけどね、どうしても現実逃避する癖が地球にいた時からぬけていなくて、つい・・・。

 …つい、なんて考えたが、俺は一体誰に何の言い訳をしているのだろうか?ま、俺はボッチだから、独り言はよく言っていたから、その名残なのかもしれない。なんとも哀しき名残なこと。

「昨日一昨日で、どんな食材を集めたんだ?」

 俺がそう聞くと、

「「「「「「・・・」」」」」」

 俺を除いた全員が、“お前、何言ってんの?”と言いたいところを我慢しているような視線を送られてしまった。しょ、しょうがないじゃないか。地球にいた時は、昨日一昨日のご飯は何ですかと聞かれても、答えられたかどうか自身が無いもの。いつまでも地球にいた時の感覚でいると、いつか痛い目に遭うから、今はこの痛い視線を甘んじて受けるとしましょう。

「…確かアヤトはその時、新しい魔道具を作っていたはずです」

 と、呆れながらリーフに言われ、リーフは席を立ち、牛車内部に入る。そして数分後、

「確かこれです」

 渡されたのは、

「・・・何これ?」

 小さい樽?みたいなやつを持ってきていた。

「確かアヤト、この魔道具を【4次元食料保存樽】みたいなことを言っていましたよ?」

「【4次元食料保存樽】?」

「はい。確かこれに、【食料収納】が【付与】されていると聞いています」

「・・・へぇ~」

 これを俺が作成したのか。まったく記憶にないな。それにしても、【4次元食料保存樽】か。名前長くね?普通に、【食料保存樽】とか、【食料樽】とか、名前を省略してもいいと思うのだが。これを作った当初の俺はきっと、あの青いネコ型に付随しているポケットでもイメージしたんだろうな。それを食料保存専用にアレンジした、てところか。

「…本当に覚えが無いのですか?」

「ああ。まったくない」

 ここで嘘をついても仕方がない。そう判断した俺は素直にリーフの問いに答える。

「・・・」

 おっと。どうやら俺はかなり重要なことをしでかしたみたいだ。ま、気にしないで行こう。気にしたところでみんなの怒りを買うだけの気がするし。

「これの中身見ていい?」

「いーよー」

 と、ルリがお茶をすすりつつホットケーキを食し、俺の問いかけに応える。何気に三つの事を同時にこなすって凄いな。それで実際にこの樽から食べ物を出してみる。

「これは・・・?」

 まず多いのが・・・草?いや、薬草か。ま、ここいらは森だし、こういう物がよく自生しているのだろう。ちなみにこれ、全部食べられるよな?信頼しているつもりだが、万一の可能性があるからな。例えば、一口食べればお腹をひどく壊す毒草、とかな。

 そういえば昔、確か小学生の高学年だったか。給食を食べた後、ひどい腹痛を起こしたんだっけ?後に分かった事だが、俺の給食にだけ、悪ふざけで下剤を混ぜたやつがいたんだよな。そいつのせいで俺は・・・。おっと。話が逸れてしまった。

 次に多いのが・・・木だ。冗談でも嘘をついている訳でもなく、純度100%の木である。そういえばモミジが言っていたな。確か、普通に食べることが可能な木があると。その指摘があった木と見た目が全く同じだな。つまりこれは、食べられる木の品種である、という解釈をしていいよな。いいんだよな?間違えて食べて食あたりを起こす、なんてことはないよな。

 そして、これで最後かどうかは分からないが、熊が一頭出てきた。こいつは・・・見間違えることは無いな。クマグマンだ。俺がもう何度も倒してきた魔獣だ。こいつ、どんなところにもいるんだな。それと、猪だ。そういえば、俺が前に倒してきた毒猪とは違うみたいだな。あの猪は危険だとリーフに言われたから、この猪はそいつより比較的安全に倒すことが出来たのかね。

 後は・・・これらが最後みたいだな。これは・・・何?何かの実の類だと思うが、トマトみたいに赤いな。形もけっこうトマトによせているな。

(なんか、未知の物を見ると怖いな)

 これって本当に食べ物なのか?一応緑魔法で【毒感知】を行ってみたが、毒はなかった。だから食べても食中毒は起きないはず。不味くて吐くことはありそうだがな。俺はそっと赤い実をしまい、

「…ありがとう。これで大体思い出した」

 俺は立ち上がる。その合図をよしと受け取ったリーフは、

「それじゃあ行きましょうか?」

 と、この場にいる全員に声をかけた。

「「「「「はい!!!!!」」」」」

 その声に全員立ち上がり、牛車に乗りこむ。

「それではみな様、出発いたします」

 クロミルの言葉で、牛車は動き出した。さて、今日の夕飯はどうするかな。

『4-1-3(第257話) 魔道具を使った夜の見張り』

 彩人は昼間寝ていたことを申し訳なく思い、夜の見張りを志願する。彩人はこの時、緑の国でもらった魔道具を使い、使い心地を確かめる。


 こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。

 感想、評価、ブックマーク等、よろしくお願いいたします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ