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色を司りし者  作者: 彩 豊
第三章 赤茶色くなり始める世界樹
254/546

3-3-29(第253話) 森災の襲来戦~その8~

「しかし、任せてとは言ってみたものの、どうすれば倒せるのでしょうか?」

 モミジは少し考える。目の前には、

「・・・」

 自分をかつて殴ったり蹴ったりしていた元フォレードである人面樹。その人面樹が炎を纏ってこちらに向かっている。リーフはまず、

(くらえ!)

 自身の体の一部である鋭利な枝を緑魔法で風を発生させて飛ばす。その鋭利な枝はフォレロイに向かっていく。

「・・・」

 フォレロイは自身の炎を巧みに操り、飛んできた鋭利な枝を全焼させる。

(やっぱり、この程度では駄目ですか)

 モミジは次に、魔力を地面に込め始める。その魔力は、相手の地面周囲にまで及び、相手の地面周囲から、蔦が何本も伸び始める。その蔦は一斉にフォレロイを拘束し、きつく締め始める。

「・・・」

 その蔦は徐々にフォレロイを苦しめようと拘束力を強めるが、フォレロイが自身の炎を使い、蔦を全焼させてしまう。

(これも駄目、ですか)

 モミジは二度の失敗に落ち込むことなく、次の攻撃の手段を考え始めていると、

「・・・」

 フォレロイが自身に生えている枝を鋭利にし、その周囲に自身の炎を纏わせ、モミジ向けて放つ。

「【魔力障壁】!【緑壁】!」

 モミジは【魔力障壁】だけでなく、葉や蔦等で形成した壁、【緑壁】を重ねて使用する。そのモミジが作った盾に、フォレロイの矛が衝突する。

 結果、モミジの【緑壁】は燃えて焼失してしまったが、【魔力障壁】は健在であった。モミジの盾が勝利したのだ。だが、例え自分の身を相手の攻撃から守ること出来たとしても、脅威が完全に消えたわけではない。その脅威は、

「・・・」

 今も炎を揺らし、都市を燃やさんと動き出す。

(ここでなんとしても…!)

 モミジはさらに多くの鋭利な枝を作り、フォレロイに向けて放つ。フォレロイは全てを捌くことが出来なかったのか、何本かはフォレロイの体に刺さる。

「や、やった!」

 攻撃がフォレロイに通った事にモミジは喜びの声をあげる。だが、その声はすぐに、

「え!?」

 驚きの声へと変わる。何故なら、フォレロイの体に刺さっていた鋭利な枝は、やがて鋭さが消え、しぼんでいくかのように細く、弱々しくなっていく。そして、元鋭利だった枝はフォレロイの手によって灰になった。

(一体何…!?)

 だが、モミジはさらに驚くことになった。何故なら、モミジの周囲には、火が囲むようにして存在しているからである。その元凶は誰が言わなくても理解できることだろう。

(いつの間に!)

 モミジは、

「【魔力障壁】!【緑壁】!」

 先ほどのように防衛手段を行う。フォレロイが放った炎で【緑壁】が燃やされ、【魔力障壁】は何とか残っているものの、焦げ跡やヒビが目立っている。

(な、なんとか…)

 さっきみたいに耐えられた、と、モミジは思っていた。だが、実際には違っていた。炎の後ろには、さきほどモミジがフォレロイに向けて放った鋭利な枝の何倍もの数の鋭利な枝がモミジに向けられていた。

「!?」

 モミジは、先ほどの炎の攻撃が囮だと気づき、慌てて【魔力障壁】を張ろうとするも既に時は遅かった。モミジが気付いた刹那、無数の鋭利な枝がモミジ目掛けて襲い掛かる。大半が【魔力障壁】に傷をつける程度で跳ね返すことが出来たが、【魔力障壁】が破られると、残った鋭利な枝全てがモミジ目掛けて襲い掛かる。モミジは咄嗟の判断で、自身の腕で身を守ろうとするが、それで攻撃を完璧に防げるはずがなく、

「きゃあああぁぁぁ!!」

 モミジに大量の切り傷が出来てしまう。その傷からは液体がにじみ出てくる。人間で言う血が、少しずつ地面に浸透する。

「・・・」

 かつての同胞が傷まみれになっても、目の前にいるフォレロイは何とも思っていなかった。それどころか、次の攻撃の準備を始めようとしている。

(どうしたら…?)

 モミジは目の前にいるフォレロイをどうすれば倒せるのかを考える。そして、さきほど枝に刺さっていたフォレロイの様子を思い出す。

(そういえば…)

 モミジは、相手が元人面樹であること。

 人面樹に刺さった鋭利な枝の様子のこと。

 そして、自分の体のこと。

 それらの出来事がある攻撃が通じるのではないのか、という推測を組み合わさっていく。

 そんな推測を建築しているなかでも、フォレロイの攻撃の意志は揺るがず、

「・・・」

 再び、鋭利な枝がモミジ目掛けて襲い掛かってくる。今度はその鋭利な枝に炎を纏わせて。

「!?し、しまっ…!?」

 考え事をしていたことで隙が出来てしまい、フォレロイからの攻撃に対処しきれず、防衛手段を何もとれず、もろに攻撃をもらってしまう。

(い、痛い!!)

 さっきは防衛手段をとっていたことで、ある程度肉体的負担を軽減できたが、今回はそうではない。もろに攻撃をくらい、さきほど出来てしまった傷より大きく、深くなってしまう。

(けど、もう少し!)

 モミジは出来るだけ魔力を地面に注ぎ、ある講堂の準備を始めていた。それは、フォレロイを倒すための準備である。モミジはフォレロイからの攻撃をまともにくらいながらも、フォレロイを倒す準備を始め、勝機を窺う。モミジの体には傷跡が増えただけでなく、火傷痕も痛々しく残っている。

 だが、目は負けていなかった。

「…やん、だ?」

 モミジはゆっくり目を開け、周囲を確認する。自身の体は確認できなかったが、痛みだけは確実に増加している事だけは分かる。だが、そんなことは気にしていられない。

「今だ!」

 モミジは地面に手をつき、

「お願い!」

 その言葉が何かのスイッチとなったのか、フォレロイの周囲に再び蔦が現れ、フォレロイの体に巻きつく。

「・・・?」

 フォレロイは先ほどと同じように蔦を全焼させた。

 だが、何か違和感を覚えたらしく、蔦に巻き付かれた箇所を見つめていた。そんな様子のフォレロイを無視し、

「まだまだ!もっと、もっとお願い!」

 モミジの言葉に反応するかのように、モミジ周辺の植物達は応える。

 それはまるで、目の前にいる植物達の敵からモミジと共に守るために。

「・・・!?」

 フォレロイは巻き付かれた蔦が、自身の体に何かしていることが分かり、ようやく敵意を向けてモミジに視線を送る。

「もう遅いです。あなたの体に蓄えられている養分全て、私達の糧にさせていただきます!」

 そしてモミジは、

「【養分吸収】!」

 勝機はここにあると睨み、勝訴への道を歩み始める。

 モミジや人面樹はフォレードだが、植物でもある。植物であれば当然水、そして養分を蓄え、それらをもとに活動している。それであれば、養分を吸収すればどうなるか。活動が出来なくなるだろう。何せ、体を動かす源、エネルギーが体内から無くなるのだから。そう思いついたきっかけは、さきほどフォレロイに向けて放った鋭利な枝が、フォレロイの体に刺さると弱っていく様子を見て、このような案を思いついたのだ。まさに植物ならではの作戦である。

「・・・!」

 フォレロイはすぐに失った養分を補填するため、地面から養分を吸い上げようとする。だが、

「・・・!?」

 何かに阻害されて出来なかった。フォレロイは、全元凶が目の前にいるドライヤド、モミジにあると睨み、作戦を切り替える。

 それは、地面から養分を補填するのではなく、目の前にいる敵、モミジから奪われた物を取り返すことである。そのため、フォレロイは蔦を伸ばし、モミジに巻き付こうと伸ばしたが、

「・・・!!??」

「ありがとう♪」

 フォレロイの蔦が、他の植物によって払われたのだ。それも、植物が自らの意思を持って、である。その事にモミジは感謝の言葉を送る。こころなしか、モミジの感謝に植物が照れているように見える。

「私にはアヤトさん達だけじゃない。ここにいる植物達みんなが相手だよ!」

 モミジはみんなの気持ちを代弁するかのように言葉を殴りつける。

「あなた達に、この国も、アヤトさん達も、ここにいる植物達も、好きにさせない!」

 今も懸命に戦っているカーナ達。

 都市シンペキに残り、都市を護ってくれている女エルフ達。

 私達緑の国のために戦ってくれている彩人達。

 そして、私のために協力してくれている植物達。

 モミジは、彩人に、みんなに託されたこの思いを、命を無駄にしないため、

「みなさんのために、あなたを倒します!」

 そして、フォレロイは養分を完全に吸い取られたのか、炎は完全に焼失し、太かった幹は、さきほどフォレロイがモミジに向けて放った枝のように細くなっていく。

「・・・」

 モミジには何を言っているのか分からないが、口のような器官を動かしているのが見えた。何を言っているかは理解出来なかった。否、理解したくなかった。何せ、自身の大切な人を危険に晒した者達の言葉など、聞くに堪えられないと判断したからだ。今まで散々、同胞のフォレードからは攻撃を受け、肉体的にも精神的にもボロボロになったから。

 だが、

「せめて、今を生き、これからを生きようとする植物達にお礼をしよう」

 さきほど吸った養分を全て、地面や今生えている植物達に分け与えた。

 何故、このような行為を行ったのか。

 それは、

「・・・そう?喜んでもらえて私も嬉しいです♪」

 植物達からの感謝である。モミジは闘い直後で自分の傷を癒すことより、植物達の今後を見て、このような慈善行為を優先したのだ。

「他にフォレロイが来る様子は無さそうですし、私は少し休もうかな?でも…え?見張ってくれるの?ありがとう♪」

 モミジは周囲の植物達と会話し、見張り代行をお願いする。

「でも、無理しないでね?何かあったらすぐ呼んでね?それじゃあ少しだけ」

 モミジは目を閉じ、体を地面に置く。その際、

「・・・」

 勝手に地面が盛り上がり、モミジを自然のベッドが優しく包み込み、優しくも落ち着きのある香りがモミジ周辺に充満する。

「えへへ♪いい香りですぅ~・・・」

 これらの行為は、植物達が、自分達を護ってくれたモミジに対するお礼なのかもしれない。

 かくして、各場所の戦いは終局を迎え、

「ふぉ、フォレロイ達全滅!フォレロイ達全滅!よって、私達の勝利だ!!!」

 誰とも分からないこの声を引き金とし、全員最大値を超える歓喜の声を挙げた。

『3-3-30(第254話) 森災の襲来戦~その後と旅立ち~』

 フォレロイ、森災、パラサイダー・ヌルとの戦いを終え、女エルフ達の傷を癒し、国の復興が始まった。その後、彩人達はこの国を出るため、出国準備を始める。


 こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。

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