3-3-27(第251話) 森災の襲来戦~その6~
彩人達が森災と化した世界樹、そしてパラサイダー・ヌルとの戦い中、女エルフ達も戦いに身を投じていた。もちろん森災の僕、フォレロイとの戦いである。
「・・・」
「攻撃、来ます!」
「「「【魔力障壁】!!!」」」
フォレロイ達の攻撃に、【魔力障壁】を展開して防ぐ。
「今です!」
「「「【空気の刃】!!!」」」
相手に出来た隙をつき、魔法攻撃をしかけていく。
そんな攻防戦を繰り返していく。
「た、大変です!」
「!?どうしたの?」
タンカがカーナに報告を始める。
「残っていたフォレロイが2匹、私達の包囲網をくぐり抜き、シンペキに向かっていきました」
「何ですって!?」
「それじゃあシンペキが燃やされちゃうじゃない!」
ここで話を聞いていたエーガンが最悪の事態を言葉にする。
「大丈夫です。私が行けば…、」
「でも、あなた達がいなくなったら、誰がこの多くの同胞達に指示を出せるというの?」
「…それはあなたが…、」
「私よりカーナが言った方が聞くでしょう?それに、」
エーガンは自身の後方から飛んできた火の玉を打ち消し、話を続ける。
「私達は流れ弾を都市に向かわせないよう、ここで待機しているんでしょう?」
そう。さっきからタンカ、カーナ、エーガン付近には大量の火の玉が流れ込んでいる。理由として、他の女エルフ達の戦いで何度も魔法を防いでいるのだが、防ぎきれずにこちらにきてしまったり、フォレロイ達が意図的に、こちらに魔法攻撃をしかけたりしてくるのだ。
「じゃあどうすれば!?ウッドピクシー達も同胞達の戦いに協力してもらっている事ですし、」
「…それ、私達がやり、ますよ」
「「「!!!???」」」
3人の会話に混ざってきたのは、
「り、リーフ様!?」
リーフだった。
「大丈夫なの!?あんたら、魔力を使い切って今は回復に努めているんじゃない!?」
「ええ。ですが、こんな私達でも何か力になりたいのです」
「「「・・・」」」
3人は迷った。今も正常に立てていない女性を危険な戦場に立たせても良いものか。
「分かったわ」
リーフの申し立てを承諾したのは、エーガンだった。
「ちょ!?エーガン!」
「何言っているのですか!?」
エーガンの発言に、カーナ、タンカが物申す。
「だって、ここで悩んでいても仕方がないでしょう?私達もここを離れられないし。となれば、リーフ達に頑張ってもらうしかないじゃない?」
「ですが…!?」
カーナはエーガンに反論しようとしたが、流れ弾を対処するため、話を途中で切ってしまう。
「こんな状況なら仕方が無いんじゃない、の!」
エーガンも流れ弾の対処で、語尾を強める。
「!?右前方からフォレロイの攻撃!警戒!」
「「「はい!!!」」」
カーナは周囲の警戒を決して怠らず、指示を送る。
「…お願い、出来ますか?」
「ええ。こっちは任せて下さい」
そうしてリーフは、2人が待つ場へと向かう。
「…と、いうわけで、私達3人でフォレロイを相手することになりました」
リーフは戻り、クリムとイブの2人に経緯を話した。
「そういうことであれば私、頑張っちゃいますよ!」
クリムはやる気満々だったが、
「…構わないけど、今の私達に何が出来るの?」
イブは少し反対的な意思を持っていた。その理由は、
「確かに私達全員、ほとんど魔力がないですからね」
魔力が枯渇しているからである。クリムは魔力ではなく肉体を主体とした戦いをするが、イブは魔力を主として戦う。なので、魔力がほとんどない状態では戦力不足なのだ。
「ですが、私達3人なら、いけます」
「「??」」
二人はリーフの言葉に疑問を抱き、リーフは確信したかのように笑みをこぼし、
「それでですね…、」
二人に作戦内容を伝える。
「…これなら、みんなの長所を活かせると思いますが、どうでしょう?」
リーフは二人に作戦を立案し、その案が実行すべきかどうかを尋ねる。
「…いいと思う。ただ、クリムがこの作戦の要になるけど、大丈夫なの?」
イブはリーフの賛成気味だが、クリムの負担を心配していた。心配されている当の本人は、
「私ですか?結構怠いですけど問題ありません!むしろ鍛え時です!」
と、嬉々として了承した。
「「・・・」」
“こんな時でも体を鍛えることばかり考えているのか”
二人の考えはシンクロした。
「さ、行きますよ、二人とも!」
3人は2匹のフォレロイを目の前にして、
「「はい!!」」
勝機を目に宿り、立ち上がる。
「さて、まずは私からです」
都市、シンペキに向かってくるフォレロイ達。彼らに向い合せるようにリーフは立つ。
「いきます!【葉吹雪】!」
リーフは魔法、【葉吹雪】を発動させ、フォレロイ達の視線を妨害する。
「からの、【風感知】」
【風感知】による感知したのは、
(・・・左方向から2.右方向から3、か)
相手の蔦攻撃である。そして、リーフが予測した通り、無数の葉が舞っている中、リーフ目掛けて蔦が襲い掛かってくる。
(う!?やはり魔力が完全に回復しきれていませんでしたか)
魔力がほとんどないなか魔法を使用したため、リーフは目眩を起こしてしまう。
(ですが、ここで倒れる訳には…!)
リーフはなんとか持ちこたえ、
「はあぁ!」
持っていたレイピアで蔦を切り裂く。
「後は、任せましたよ!」
膝を地面に接触させながらも、ある二人に声を届ける。
「…ん。りょうか、い!」
その二人のうち一人は、今持っている魔力を全て第三の腕形成に使い、もう一人を投げ飛ばす。
「行きます!」
投げ飛ばされた一人は、右腕に思いっきり力を籠める。
「そのまま正面に対象がいます!」
リーフの助言により、クリムは敵の位置を把握する。
そして、
(見つけた!)
【葉吹雪】を抜けた先に、フォレロイが1匹いた。クリムはその一匹に狙いを定め、
「【蒼炎拳】!」
蒼く燃え上がる炎を拳に宿し、クリムはさらに加速する。速度、力、体重、ありとあらゆる力を拳に収束させ、
「…いけ、クリム!」
「クリム!」
イブとリーフは願う。
「いっけえええ!!!」
クリムの拳がフォレロイの太い幹に衝突し、
「!?」
フォレロイが奇声をあげる。その奇声は、蒼く轟々と燃える炎でかき消される。次第に、フォレロイの赤き炎がクリムの蒼き炎をかき消す。そして、赤き炎が飲み込まれたかと思うと、次はフォレロイの体を蒼い炎が飲み込む。蒼い炎が消えるとそこには、荒れた茶色が露出した。
「やった」
このクリムの発言、周囲の様子を見て、リーフとイブは駆け付ける。
「それにしても上手くいって良かったです」
「…ん。相変わらずリーフは起点がきく」
「ですね。リーフが相手の隙を作り、イブが私を投げ飛ばし、私が最大火力の一撃を相手に放つ。まさに最高です!」
「いや~。そんなに褒めなくても~」
二人から褒められ、リーフは照れくさくなってしまう。
「…私達、かなり疲弊したにも関わらず、みんなの長所を活かし、一点集中させたこの作戦はあっぱれだと思う」
「ですね!このおかげでフォレロイを一匹倒せたことですし!」
「ええ。いっぴ、き…、」
ここでリーフは思い出す。あのカーナ達の包囲網を潜り抜けたフォレロイの数は、1ッ匹ではなく、
「もう一匹のフォレロイは・・・!?」
リーフは周囲を大慌てで見渡す。
(いた!)
見つけた時は既に、
「?どうしたの?フォレロイなら既に私が一匹…は!?」
「…なるほど。でももう、」
「ええ。私達のことを見向きにせず、都市に向かってしまったみたい」
リーフ達3人は、一匹を逃してしまったことに後悔する。だからといって、今の状態では追い付けない。ただでさえ魔力がほとんどないのに、その少ない魔力を振り絞り、全力で体を動かしたのだ。正常なパフォーマンスを発揮することが現段階では不可能なのだ。
「…ごめんなさい。私がこんな作戦を立ててしまったばっかりに、」
「…ううん。私達も迂闊だった」
「ですね。私達はもう動けないです、し!?」
「「!!??」」
突如、都市に向かっているフォレロイがこちらを向き、火の玉を数発放つ。いつもの3人なら避けるなり殴るなり防ぐなり出来るが、今の3人にはその余裕がなく、
(((当たる!!!???)))
そのまま目を瞑り、当たる覚悟をした。
だが、その覚悟は机上の空論となった。
「「「・・・???」」」
3人はいつになってもフォレロイが放った魔法が来ないので、恐る恐る目を開けると、
「ふぅー危なかった。危うくお姉ちゃん達に当たるとこだったよ」
そこには、いるはずのない妹がいた。
『3-3-28(第252話) 森災の襲来戦~その7~』
リーフ、イブ、クリムの危機を救ったのは、パラサイダー・ヌルとの戦いで吹っ飛ばされたルリだった。そしてルリは3人に、彩人の状況を話す。
こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。
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