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色を司りし者  作者: 彩 豊
第三章 赤茶色くなり始める世界樹
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3-3-25(第249話) 森災の襲来戦~その4~

 ぐ!あいつ、強い!

 俺がパラサイダー・ヌルと剣を接触させた感触が、生物ではなく鉱物の類だと感じてしまう程に硬質だった。何度も俺が先行し攻撃を加えたのだが、全て防がれてしまった。もちろん、ただ真正面からだけではなく、横や後ろ、上からも攻撃を加えたり、フェイントを加えたりして相手の意識を錯乱させようと試みたのだが、全部無駄に終わった。

 だが、相手には余力が無いように見受けられた。おそらく、パラサイダー・ヌルより今の俺の方が、身体能力が優れているからだろう。表情には焦燥が見られる。だが、この戦闘が始まる前に見せたあの余裕が気になる。それに、

(こいつはおそらく、メイキンジャー・ヌルと同族だな)

 あいつの額に、あの紋章が見えた。薄気味悪い紋章と、ドーナツ状に光を薄くはなっている紋章。メイキンジャー・ヌルにもあった紋章だ。それを確かめるために、俺は剣をぶつけつつ、話を切り出す。

「お前、メイキンジャー・ヌルと何かあるのか?」

 俺のこの発言で、パラサイダー・ヌルの動きが鈍くなる。

(今だ!)

 俺はパラサイダー・ヌルの隙を逃さず、剣を相手に切りつけようと意識を高める。

 だが、

(!?ち!)

 パラサイダー・ヌルは、俺が大振りになってしまった剣裁きの僅かに空いた時間を利用し、俺から距離を取った。ち。

「お前、やはりそいつのことを知っていたパラか」

「そいつ?やっぱお前の知り合いだったか」

 同じ紋章が額に浮かんでいることを踏まえると、何かしら関係性を疑っていたのだが、当たったようだな。ま、複製や模倣した単なる無関係者、という可能性もあったけど。

「そうパラね。同じ主を持つ同胞、とでも言うパラか」

「主、セントミアさんのことか」

「!?貴様!我が主に無礼であるぞ!!!」

(!?なんだ!?急に雰囲気が…!?)

 俺の呼び方に憤怒したのか、怒りの感情が全身に伝わってくる。

「…おっと。これは失礼したパラ」

 そして、自分の非を認めたかのように謝罪し、先ほどと同じ空気を纏い直した。とりあえず、セントミアさん、と言うのは辞めよう。

「お前さんは主の命を、やりたいことを知っているのか?」

 俺はセントミアさんの目的について聞きだす。これで聞きだせればいいのだが。

「我が主の考えは、パラの考えに遠く及ばないパラ。だが、聡明な考えをお持ちのはずパラ」

「そうか」

 ま、知っているわけないか。例え知っていたとしても、そう簡単に答えるはずがないか。

「それで今回、どういった命令が下ったんだ?」

 俺は話を少し変え、今回のこの襲撃の目的について聞くことにした。

「そんなの、前から言っているパラ」

「確か、この地を無にするため、だったか?」

「そうパラ。この地を無にするため、パラがこの地に送り込まれたパラ。でも、」

「でも?」

「まさか主が気にかけていた人物に巡り合うとは思わなかったパラ」

 それはまぁ、偶然、としか言えないだろうな。

「それってどういう意味なんだ?」

「どういう意味って、どういうことパラ?」

「そのままの意味だ。具体的にこの地をどうするつもりだ?」

「どうするって、無にするために、この地にあるもの全てを消すパラ」

「!?」

 俺の動きが止まってしまった。

 その隙をつき、パラサイダー・ヌルが攻撃をしかけてきた。俺はパラサイダー・ヌルの動きに対応できず、奴からの攻撃をもらってしまう。

「油断していると、あっという間に死んでいくパラよ」

「ち!」

 俺は立ち上がり、勝っていたわけではないが、兜の緒をしめなおす。そして、

「不意打ちのつもりパラか?残念ながらパラには通用しないパラよ」

「くそ!」

 不意打ちのつもりで攻撃したのだが、この程度の不意打ちでは倒すどころか、傷一つつけられないのか。俺は攻撃を完全に防がれた後、パラサイダー・ヌルから距離を取り、警戒をしつつ話を再開する。

「そんなことが許されると?」

「許すって誰かの許しが必要パラ?」

「それじゃあここにいるエルフ達はどうするつもりなんだ!?」

「そんなの、パラの知った事ではないパラ」

「つまり、カーナ達がどうなってもいいというのか!?」

「?何か変パラか?」

「変なことしかないだろ!」

 ここにいる奴らの意向も聞かないなんて、おかし過ぎるだろ!

「変じゃないパラ。所詮弱肉強食。弱い奴は死に、強い奴が生き残る」

「その理論で言えば、俺がお前に勝てば、文句を言わず、この地から去ってくれるわけだな?」

「そんなこと、天地がひっくり返ってもあり得ないパラ」

「なら、見せてやるよ。天地がひっくり返すさまを」

 俺はさっき使った【赤色気】より強力な【色気】を使おうとイメージする。さっきは喪わず使ってしまったが、咄嗟の出来事にも関わらず出来ていた。なら、今の俺にも出来るはずだ。

「【二色気・赤緑】!」

 !!??瞬間、俺の体にさらなる負担がのしかかる。これをさっき俺は平然と使っていたのかと思うと、火事場の馬鹿力も馬鹿に出来ないなと考えてしまう。

「・・・さぁ。もう手を抜かず、全力でやろうぜ!」

 俺は出来るだけ声を張り上げる。全身の痛みが相手にばれないよう。相手に今の俺の状態がばれないよう。

「…なるほど。口先だけの屑ではないってことパラか」

「納得していないでそっちも早く全力でかかってこいよ。俺もそろそろ我慢できないぞ?」

 俺のその発言の後、パラサイダー・ヌルはニヤリと笑い、

「なら、死人がはびこる世界で後悔するパラよ」

(く、来る!)

 俺は【二色気・赤緑】はもちろんのこと、パラサイダー・ヌルに対する警戒を怠らない。

「【無色気】」

 奴が【無色気】と発言した瞬間、周囲の空気の圧力差が大きくなる。

(!?ここまで戦力差が広がるのかよ)

 奴の本気を見た瞬間、強制的に理解させられてしまった。

 今の俺ではこいつに、パラサイダー・ヌルに勝つことが不可能なのだと。

 だが、

(・・・)

 見えてしまった。

 横に倒れてしまっているルリとクロミルを。

 今も多数のフォレロイ達と戦っているカーナ達を。

 だから、

(引き下がるわけには、いかねぇ!)

 本能的に理解してしまった敗北を否定する。

 さぁ、限界まで足掻いてやる!

『3-3-26(第250話) 森災の襲来戦~その5~』

 パラサイダー・ヌルと本能的に理解してしまった実力差を感じ、今の自分では勝てないことを悟ってしまう。だが、それでも逃げるわけにはいかず、抗おうと奮闘する。


 こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。

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