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色を司りし者  作者: 彩 豊
第三章 赤茶色くなり始める世界樹
249/546

3-3-24(第248話) 森災の襲来戦~その3~

 俺、ルリ、クロミルは今、森災のもとへ向かっている。その途中で、

「フォレロイの炎攻撃だ!」

「みんな、気をつけて!」

「退避!退避―!」

 女エルフ達がフォレロイ達と戦っている。俺達はその戦いを素通りし、森災へと向かっていく。

「お兄ちゃ…、」

「ルリ、大丈夫だ。見て見ろ」

「?あ!」

 それは、

「!?い、今です!お願いします」

「「はああぁぁーー!!」」

 女エルフ達は協力し、フォレロイ達を相手していた。確かに、火傷や擦り傷、切り傷を負っているが、それでも近くにいる俺達の助けを借りようとしていなかった。自分達だけでなんとかしようと躍起になっているのが言わなくても伝わってくる。

「絶対、アヤト様達に攻撃を向かわせるな!」

「こっちだ、フォレロイ共!私達が相手だ!」

 女エルフ達は今も懸命に戦っている。まるで、俺達がなんとかしてくれる。そう信じて。

「ルリ。あれなら心配しなくても大丈夫だと思うが、どうだ?」

「…うん。ルリの考え過ぎみたい、だね」

「お二人とも急ぎましょう。エルフの方々の体力が持たなくなってしまいます」

「だな」

「うん!」

 俺達は、改めて女エルフ達の団結力を見て、あの森災の元へ走り抜ける。

 そして、走り抜けた後、

「・・・?こいつらはなにパラ?」

 目的のやつがいた。いや、肩?みたいな箇所にもう一匹いるからやつら、か。

「お前らこそ何なんだ?」

 俺はこの場にいる3人を代表して言う。

「パラのことパラか?パラは【パラサイダー・ヌル】。ご主人様の命により、この地を無にするために来たパラ」

 この発言の瞬間、俺達は意味を理解出来なかったが、いつでも戦えるよう、臨戦態勢に入る。

「お?パラがちょっと言っただけでそんな構えをとるパラか?いやー怖い世の中になったパラ」

「何が怖い世の中だ。お前の発言の方がよっぽど怖いわ!」

 さっき何を言っているのか意味は分からなかったが、内容は覚えている。

 確か、この地を無にするため、とか言っていたな。つまり、この都市、国を滅ぼしにきたのか!?感情の抑揚もなくそういうことを平気で言えるようなやつを信頼できるほど、俺は出来た人間じゃないんでね!

「…こんな世の中だから、我が主は…!!!」

 俺が反論した後、俺達を見た後、急に感情を解放したのか、激怒した。だが俺は、その怒りの対象に違和感を覚えた。俺やルリ、クロミルに、というわけではなく、もっと別の何かに対してきれているような…?

「!?」

 瞬間、俺はパラサイダー・ヌルと自称している蜘蛛型の魔獣に睨まれた。その後、刹那の時に、様々な記憶が脳内に映し出される。

“お前なんかいなければ、この地は護られたんだぞ!”

“お前なんかいなければ、みんな死なずに死んだんだ!”

“なんでお前だけが生きているんだよ!お前なんかいなければ…!”

 ある時は、焼け野原を前にして崩れ去る一人の人間。

 ある時は、ひとりでみんなを責めている人間。

 ある時は、多くの人から叱責をもらい、泣き崩れ、蹴られる人間。

 どれも見ていて気分がいいものではなかった。

 そして、どの場面も、責められている人間はみな、同じ人間だった。どういう人間なのかは分からないが、なんだか、とても辛そうにしていた。あれだけ多くの人に責められていたとすれば、辛くもなるか。それにしても今の映像、一体誰が・・・?まさか。あいつか?

「ふん。どうやら余計なことをしてしまったみたいパラね」

 どうやらあいつが送ったらしい。それにしても、どうやって送ったんだ?それにしたって、あの責められていた人間は一体…?

「それじゃあパラはこれからこの地を無にするため、こいつを使うとするパラか」

「させないよ」

「ん?そのガキは何を言っているパラか?」

「絶対にこの地は、この国は護る!」

「ルリ様の言う通りです。あなたなんかに、この地を無にさせません」

「ふん。無にさせる意味も理解できない低能どもが。さっさとこの森災と化した世界樹の養分になるといいパラ」

 俺達はさらに警戒する。

「ほら、あいつらを殺せパラ。その後は…まぁ、お前の好きにしたらいいパラ」

「かしこまりました、マスター」

 そうして、

「きます!」

「「!!??」」

 奴が、森災と化した世界樹が再び俺を、俺達を攻撃してくる。


「【魔力障壁】!」

 俺は襲い掛かってきた蔦から俺達を守るため、【魔力障壁】を展開させる。ちなみに、既に【六色装】は発動していて、問題ないことは確認済みである。とはいえ、前戦った時より確実に強くなってやがる!一撃一撃が全身に響いてくる。これでも6,7割は出しているんだけどな。

「クロミル!ルリ!」

「はい!」

「うん!」

 俺が奴の蔦から繰り広げられる攻撃を防ぎつつ、二人の名を呼ぶ。これだけで二人は俺の意図を呼んでくれたらしく、行動に移す。

「・・・」

 二人の行動を阻もうと、奴の蔦が二人めがけて襲い掛かってくる。

「悪いが、俺に付き合ってもらうぞ!【火球】!」

 俺は二人に襲い掛かろうとする蔦に【火球】をぶつけ、蔦を燃やしていく。もちろん、【火球】を撃ちつつ、神色剣を使い、蔦を木っ端みじんにしている。

 確かに、前回の世界樹よりは強くなっているが、さすがに【緑色気】を使った時の世界樹よりは弱いみたいだ。おかげで、【六色装】を使っている今の俺でもこの通り蔦を切り刻むことが出来ている。だが、

(あいつ、確実に余力を残しているな)

 さっきから攻撃し、攻撃されているのにも関わらず、表情が一切変わっていない。そこに不気味さを覚えてしまう。

(いけ!ルリ、クロミル!)

 二人の障害となる蔦は全て取り除いた。後は、二人が決めるだけだ。

「【蜂牛突き】!」

「ていやぁー!!!」

 クロミルとルリの攻撃が世界樹に炸裂した。二人の攻撃が直撃し、世界樹の体が大きく削られた。人間の体でこれを再現するとなると、グロ映像確定だな。

「・・・ふ~ん」

 この光景に、あのパラサイダー・ヌルはどこ吹く風、みたいな感じだった。

「・・・」

 クロミルは攻撃直後でもしっかり警戒している。

「やったー♪これであいつは…、」

「ルリ様、まだです!」

 ルリは能天気に勝ったと思っているようだった。それをクロミルが制す。そして、

「・・・」

 世界樹は無言のまま、削られた部分を生やした。やっぱり、そう簡単に上手くはいかないか。それに、今回はなんとか燃えていない部分を狙ってくれたが、

「おい、もっと本気でやれパラ。今度下手な真似したら許さないパラよ」

 もっと本気で、だと?というか、やっぱり手加減されていたのか。出来れば俺の勘違いであってほしかったけど。

「かしこまりました、マスター」

 無機質に言った瞬間、

「【緑色気】」

 感情の抑揚もなく、【色気】を発動させた。目を瞑っていても分かる。

(あいつ、確実にやばくなってやがる!)

 感情が無くなった分、強みを増したってことなのか!?

「…ルリ、クロミル。ここからやばくなるから、気をつけろよ」

「うん」

「はい」

 ルリとクロミルはさらに警戒する。俺もさらに警戒を強め、世界樹の攻撃に備える。

「【土石流】」

 世界樹が言葉を放った瞬間、後ろから土の津波が襲い掛かってくる。

 まだ戦いは始まったばかり。それなのに、こんな危機迫る思いを何度も感じさせるとはな。

「ルリ、クロミル。俺の後ろに」

「お兄ちゃん、ルリも手伝うよ!」

「ご主人様。私もルリ様と同じ心境です」

「いや、今はただ見ているだけでいいよ。その代わり、この攻撃が終わったら、二人で攻撃の方を頼む」

「…分かった」

「かしこまりました」

 クロミルはともかく、ルリは不満げだ。俺だって好き好んでこんな役やっているんじゃないんだけどな。ルリやクロミルにこんな役をやらせるわけにはいかない。なら、誰があの世界樹の攻撃を防ぐか。消去法で俺、になるわな。俺個人としていくつか防衛手段を持っているので、精一杯駆使して二人を守らせてもらおう。

(それに、)

 この攻撃を躱した場合、あの魔法、【土石流】はどうなるか?俺達の後ろにいる女エルフ達、リーフ達、そして、この戦いに協力しているウッドピクシー達に被害が及ぶ。俺達を信頼して任せてくれたんだ。こんなところで崩すわけにはいかない!絶対に、絶対に、

(護る!!)

 この意識を根深くさせる。

「すごい…」

「さすがはご主人様です」

 よし、これで神色剣が盾の形になった。後は【六色装】を解除し、全力で、

「【二色気・赤緑】!!」

 ぐ!?か、体が思うように動かねぇ。無理に動かしたら意識が飛びそう。やっぱり【赤色気】に留めておくべきだったか。

「【魔力障壁】!【結界】!!」

 俺は全力で二つの魔法を発動させる。負荷は事前に経験していたとはいえ、くるものがある。これで準備は整った。

(こい!!!)

 そして、世界樹の矛と俺の盾がぶつかり合う。


 ぐぅ!?や、やっば。あの魔法、かなりの勢いというか威力というか、やばい。万全を期し、全身に力を入れ、どんな攻撃でも耐えられるよう準備し、構えていたというのに!

(くそったれが!)

 少し、少しずつ押されているのが分かってしまう。別に、俺が世界樹に負けることだけならいい。けど、負けてこの国を滅ぼされるわけにはいかない。いかないんだ!

「ぐ、ぞおおぉぉ・・・!」

 諦めない!諦めたくない!それなのに、そんな俺の意思とは無関係に、俺の立ち位置はどんどん後方に向かっている。


「「・・・」」

 くそが!守りたいものが今!後ろにあるんだ!!なら、しっかりと踏ん張って見せろよ、俺!!

「「!!」」

 ん?なんか急に魔法の威力が弱まったな。相手が手加減したとは思えないし。しかも、背中に変な感触が…?

「お兄ちゃん、やっぱり一人は駄目だよ」

「る、ルリ!?なん…!?」

「集中して!」

「お、おう」

 やべ。さっきの声で戸惑って力を緩めてしまった。だが、安心できる状況ではない。

「どうして、手伝ってくれるんだ?」

 俺は気を緩めず、そのまま力んだまま話しかける。

「ルリね、お兄ちゃんが大変だと思って手伝ったの」

「大変、か」

 確かに、今まで以上にやばかった。今はルリのサポートがあるから多少の余裕が生まれているものの、かなりきつい。

「ルリ様を責めないでください。私もルリ様と同じ気持ちですから」

「…え?もしかしてクロミル、お前もか!?」

 まさかルリだけでなくクロミルまで俺のサポートをしてくれているのか!?自分で言った手前、自分ひとりでこなそうとする使命感と、それと反し、助けて嬉しいという感情が勝ってしまう。

「はい。やはりご主人様一人に任せるのではなく、みな様で一緒に乗り越えなくては、です」

「うん!」

「…まったく。本当にまったく」

 本当、人生って思うとおりにいかないよな。作戦は事前に立てたけど、作戦なんてあってないようなものじゃないか。でも、こういう時になんだけど、

(すごく、嬉しいな)

 それに、いつも以上にやる気も出てくる。…あれ?なんだか前より体が軽い?もしかして、魔力制御がいつも以上に上手くいっている、のか?いや、そんなことはどうでもいい。今は、

「いくぞ!」

「「はい!!」」

 俺達3人で、あいつの【土石流】を、止める!

「「「はあああぁぁぁ!!!」」」

 そして、

「…ほぉ?どうやら、そこいらの屑な人類よりはましみたいパラね」

 【土石流】の脅威は完全に消え去り、目の前に、無防備に体を晒している世界樹の姿が見えた。

「今、だ!!」

「「はい!!」」

 ルリとクロミルは俺の後方から移動を開始する。当の俺はというと、

(く、くそったれ!)

 体がまだ、言うことを聞いてくれなかった。体を動かし、あの世界樹をぶっ飛ばさなきゃいけないっていうのに!やっぱ、無理して【二色気】なんて使ったから、そのつけが回ってきたのかもしれないな。

「・・・」

 世界樹はまた何かしようとしているのか、世界樹周辺に魔力が集中し始めている。

(やばい!)

 具体的なやばさは不明だが、何か仕掛けようとしていることは自明。そしてルリとクロミルは世界樹の攻撃に集中しているから、俺が何とかしないと!俺がこの二人を、

「護る!」

 その思いは熱くなり、

「氷りやがれ!」

 厚い氷となって、世界樹の体を蝕み始める。

「・・・」

 世界樹は俺の生成した氷を溶かそうと、自ら発する炎を氷に近づけて溶かそうとする。まぁ当然そういうことをするだろう。某ゲームでは、氷の弱点の一つに火があるからな。でも、

「もっとだ!もっと氷りやがれ!!」

 今の俺は、そんな概念がどうでもいいくらい、この二人を護りたい!そして、

「ルリも手伝う!」

 ルリも手伝ってくれた。俺の熱い意志に共感してくれたのかどうかは分からないが、

「・・・」

 さすがの世界樹様も、俺とルリ二人で生成する氷の速さに負けているらしく、少しずつではあるが、世界樹が氷っていく。

「クロミル!止めは、任せたぞ!」

「お姉ちゃん、お願い!」

「…かしこまりました。ではご主人様にいただいたこの剣、ありがたく使わせていただきます」

 そういって、クロミルは自身が手にしているアイテムブレスレットに手を触れ、俺が渡した魔銀製の剣を取り出す。

「…やはり、これほどの素材であれば、あれを再現するのに最適でしょう」

 クロミルが剣を取り出した後、何か言っているようだが、今はそんなことに耳を集中出来るほど、俺は器用な人間ではない。

「・・・」

 今も氷を溶かそうと、世界樹の抵抗が激しいのだ。表情を読めないところに一種の恐怖を覚えるが。

「ルリ、まだいけるか?」

 俺も苦しいのだから、俺と一緒に交戦しているルリもきついものだろう。だから俺はルリに声をかける。

「だい、じょうぶ!」

 大丈夫ではないことは確定だが、声に力強さを感じることができた。なら大丈夫かと俺は安堵し、さらに世界樹の氷漬けに集中する。

 そして、いよいよ燃えている部分の大半が凍り始め、

(後、もう少しだ!)

 気を緩めないよう引き締めつつ、勝利のカウントダウンを数え始めていた。

「・・・これで、いいの?」

 さらにほんの少し時は流れ、ついに、ついに!あの世界樹の氷漬けが完成した。完全に氷る直前まで、あの世界樹は激しい抵抗を続けていたが、完全に氷り切ると、氷と化した世界樹は不思議と抵抗しなくなった。

「多分、な」

 俺はより強固な氷にしようとしていたのだが、途中から馬鹿らしくなってしまったのでやめてしまった。…本当にこいつは攻撃してこないのか?それとも、そう思わせるための罠、なのか?

「ふぅ」

 どうやらルリは疲れたのか、腰を地面に接触させ、休憩を図っているみたいだ。俺も休憩…、

「ご主人様、準備が完了いたしました」

「!?お、おう」

 な、なんだよも~。急に声をかけるなんて行為、しないでくれよ。びっくり仰天してしまうじゃないか。

「それじゃあクロミル。この氷の処分、任せてもいいか?」

「かしこまりました」

 そう言うと、クロミルは魔銀製の剣に触れ、

「擬似牛刀作成。…完了。その名は、牛若丸」

 俺が作った魔銀製の剣はその色をなくし、輝き眩しくなる。

「では、あの氷となったあの木を、切り刻みましょう」

 そしてクロミルは、

「それではいかせていただきます」

 レイピアを構えるかのように美しい構えを取り、

「牛術が一つ、【牛閃(ゴセン)】!」

 クロミルは剣を構え、氷った世界樹へ向かう。


 クロミルが世界樹に攻撃を仕掛けた一方、俺とルリはというと、

「クロミルお姉ちゃん、すごいねー」

「だな」

 クロミルの…ゴセン?だったか?その後に繰り出された斬撃が、氷った世界樹を横に真っ二つにした。氷が横にスライドしそうになると、クロミルは続けて腕を動かし、氷った世界樹に向けて斬撃を繰り出していく。

 斬撃が終わった頃には、世界樹入りの氷なんて、形が無かった。え、そこに何かあったの?と、聞きたくなるレベルである。それにしても、クロミルって剣、使えたんだな。いつも拳しか使っていないように見えたから、それ以外の武器はないと思っていたのだが。クロミルって結構器用?

 そういえば、あの氷になった時のあの世界樹を見た時、何か違和感を覚えたんだよな。何か足りないような、忘れているような…?

 俺がそんなことを考えていると、

「ご主人様、ルリ様。気を引き締め直した方がよろしいかと」

 クロミルの一撃で終わったにも関わらず、クロミルは未だ、何かに警戒していた。何でだ?

「どうし…!?なるほど、そう言う事なんだね、クロミルお姉ちゃん」

 どうやらルリは、クロミルの言いたいことが伝わったらしく、さっきとはうって変わって警戒心を強める。本当に二人ともどうしたんだ?

「…あんな奴に勝った程度で気を抜くなんて、やっぱりお前らはごみ屑パラね」

「!?」

 まさか、その声は!?だが、あいつはあの世界樹と共に氷り、クロミルによって粒子レベルで切られたはず。それなのに、何故!?

「まさか、あいつと共に死んだと思っていたパラか?随分、パラも舐められたものパラ。なんかむかつくパラ」

 とにかく、あいつはどこだ!?左右前後を振り向いても、さっき見たパラサイダー・ヌルの姿が見えない。となると、地中か!?

「…ご主人様、上です」

「・・・え?」

 俺はクロミルの助言に従い、上を向いてみる。すると、

「ようやくこっちを向いたパラね、人間」

 まるで吊るされているかのように佇んでいた。

 おかしい。何故あいつは何もない空中で浮いていられる?地球の蜘蛛だって、糸を垂らし、糸が不可視な状態になれば、蜘蛛が浮いている状態に見えなくもない。だが、今の俺はそんな光の加減程度で見えなくなるような糸を見逃すほど間抜けじゃないし、何より、パラサイダー・ヌルの上方には、糸をかけられるようなものが一切ない。まるで、空中に浮かんでいるような、その言葉を再現したかのような、そんな光景があった。

「まぁ、寄生先がなくなったパラし、そこの人…おや?もしかして…?」

 なんだ?急にパラサイダー・ヌルが俺のことを凝視し始めたな。

「…もしかして、お前が主の…となると…、」

 なんか、独り言をブツブツと言い始めたな。まるで俺みたいだ。…こんな時ぐらい自虐しないでおこう。

「なら、そこの2体は邪魔パラね」

「「!!??」」

 何の話をしているのかは不明だが、その発言はルリとクロミルに目を向けて言っていた。

「ルリ!クロミル!」

 俺が言葉を発した頃には、

「!?てめぇ!あの二人に何をした!?」

 俺の視界から、二人は消えていた。

「あー気にしないでいいパラ。あそこに転がっているパラよ」

 と、パラサイダー・ヌルの足?手?が指し示す方向に二人は横になっていた。

「【二色気・赤緑】!」

 俺はすぐに二人の元へ駆け寄り、

「大丈夫か、ルリ、クロミル!?」

 生死を確認する。息は…よかった。息はある。つまり、生きている、ということだ。

 さて、

「それで、二人にこんなことをしてくれたんだ?俺と二人で話でもするつもりか?」

 ユーモアを混ぜて話をする。こんなやつ、俺がこの手で問答無用にぶっ飛ばしたいところだ。二人によくも…!

「察しがいいパラね」

 まさかのビンゴだった事に驚きつつ、

「それで、一体俺に何の用だ?」

 俺はパラサイダー・ヌルに要件を聞く。

「・・・なるほど。あいつに会った時からこの期間で【色気】を習得、そして使いこなしている」

 何かブツブツ言っているようだが、俺には詳細が聞き取れず、

「おい!一体何を言っている!?」

 俺は声を荒げ、パラサイダー。ヌルに言葉をぶつける。

「…それに、あの人間なら…、よし」

 何か決めたらしく、最後のよし、は聞き取れた。

「喜べパラ。今からお前を審査してやるパラ」

「審査?」

 話があるといい、審査といい、こいつは一体何をしようとしているんだ?

「特別に、話なら審査の最中にでも聞いてやるパラ」

「それで、その審査というのは具体的に何をするんだ?」

「何ってもちろん、」

 瞬間、

(!!??な、なんだ!?あいつから痺れる様な魔力が!)

 パラサイダー・ヌルから魔力による威圧が俺を襲う。

「殺し合いパラ」

 何故この状況で平然と話すことができるのだろうか。気を緩んだら卒倒すること間違いなしだな。

「【無色装】。さ、お前も早く【色気】を使えパラ」

「わ、分かった」

 俺は素直にパラサイダー・ヌルの言う事に従い、

「【赤色気】」

 【赤色気】を発動する。違和感は…ないみたいだ。

「ふ~ん。さすがは我が主が気にするだけのことはあるパラ」

 と、感心された。

「ありがとよ。それじゃあ、始めようか?」

 俺は最大限警戒しつつ、敵に赤く光り輝いている神色剣を向ける。

「その剣、やっぱりパラか…、」

「おい、何をブツブツ言っていやがる!」

「…お前は随分と怒りっぽいパラね」

「ルリとクロミルを吹っ飛ばしてくれたんだ。お前を十回以上ぶっ飛ばさないと気が住まねんだよ!」

 俺だけならともかく、ルリやクロミルまでぶっ飛ばしやがって!剣でぶった切った後、この拳でぶん殴らないと俺の気が治まらねぇんだよ!

「それじゃあ行くパラ」

 抑揚のない宣言の後、

「せめて、すぐに死ぬ、なんてつまらないことにだけはならないでくれパラよ」

「当然!」

 瞬間、俺の神色剣と、パラサイダー・ヌルの足がぶつかり合い、衝撃波が発生する。

 これから、彩人とパラサイダー・ヌルとの闘いが始まる。

『3-3-25(第249話) 森災の襲来戦~その4~』

 世界樹を倒したのもつかの間、パラサイダー・ヌルはルリとクロミルを吹っ飛ばす。そのことに怒りを覚えた彩人は、パラサイダー・ヌルに剣先を向ける。


 こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。

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