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色を司りし者  作者: 彩 豊
第三章 赤茶色くなり始める世界樹
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3-3-23(第247話) 森災の襲来戦~その2~

 ついにあいつら、森災と化した世界樹とフォレロイが視界に入る。【色気】を使えば詳細に見ることができそうだが、無駄な魔力消費は避けるべきだと思い、今は使っていない。なので、他の人の目が頼りだ。

「偵察してもらったエルフ達によると、事前に話していた通り、木の一部が燃えているみたいです。おそらく、火による攻撃が効かないと思われます」

「そうか」

 ようやく見える影は今も揺れている。蜃気楼とか陽炎とか、そういった類の現象かと思っていたのだが、本体が揺れていたからか。

「リーフ様達の方は…すごい量の魔力が御三方に集約していますね」

「ああ。前見た時よりも段違いの魔力量だ」

 この凄い魔力量を全部あの魔法に使うのか。これだけの量ならフォレロイどころか、あの森災も倒せるんじゃないか?いや、そう簡単に甘く考えてはいけない。世の中そううまくいかない。いかないけど、うまくいってほしいなぁ。

「お姉ちゃん達凄い!これならいけるんじゃない?」

「・・・」

 ルリの問いかけに、クロミルは答えなかった。きっと、答えられなかったんだろうな。

 はい、と答えれば、リーフ達にプレッシャーがかかる。

 いいえ、と答えれば、ルリを不安にさせる。

 どう答えるにしろ、誰かを不安にさせてしまうってことか。

「ルリ。一応言っておくが、準備だけは怠るなよ?」

「うん、分かっているよ、お兄ちゃん」

 さて、ルリにそう言った手前、俺も最終チェックをしておこう。

 神色剣のお手入れは・・・問題ないな。この神色剣、いつも手入れが不要なくらい綺麗なんだよな。綺麗だからと言って手入れが不要とは限らないのだが、前にリーフ達に見せたところ、

「うん。ばっちり手入れできているみたいですね。アヤトもやれば出来るじゃないですか」

 と、言われてしまった。俺自身、武器の手入れなんてしたことないのにな。

 後はアイテムブレスレットにしまっている魔力池は一応3個入っている。ルリ、クロミルにも2個ずつ、リーフ、イブ、クリムには1こずつ、モミジには2つずつ渡している。俺が一番多いのは仕方がない。俺、この魔力池の製作者だもの。それを言ったら原料を融通してくれたルリも、なんていうかもしれないが、そんなことは知らない。俺は都合のいい事しか言わないからな!…こんな戦いの前に自己嫌悪に陥りそう。

 そして、あの土壌汚染スイッチ。このスイッチは、俺が一つで、モミジが一つ所有している。リーフ達には、あの沼出現スイッチを持っているので、いざという時は大丈夫だろう。そういえば、あの沼出現スイッチは青の国にいた時に渡したんだったな。使い切ってはないと思うが、大丈夫だろうか。心配するくらいなら聞いておけばよかった。

 最後に、何かあった時用に、魔銀製の剣を複数アイテムブレスレットに収納している。これで万が一、神色剣が折れても大丈夫だ。神色剣が折れたところ、一度も見たことないけどな。もしかしたら、俺が二刀流になる時が近いかもしれない。今の俺は二刀を両手に扱えるほどの余裕はないのだが。

 最終チェックの合間に余計な思考が交錯してしまったが、これで最終チェックは済んだな。

「「・・・」」

 どうやら、ルリやクロミルも無事に最終チェックを済ませていたらしい。忘れ物があってもどうしようも、

「ご主人様。一つお願いがあります」

「お、なんだ?」

 このタイミングでクロミルからのお願いか。何か王城に忘れ物でもしたのだろうか。クロミルに限ってそんなことないと思うのだが…?

「以前作られていた魔銀製の剣を一つ、私にいただけないでしょうか?」

「剣?いいぞ」

 クロミルが剣、か。クロミルって剣を使って戦うっけ?まぁクロミルが必要と言っているんだし、渡しておこう。

「はい」

「ありがとうございます。いざという時は使わせていただきます」

 そう言って、クロミルはアイテムブレスレットに、俺が今さっき渡した魔銀製の剣を収納した。あ、今は不要なのか。いざという時に、か。出来ればそのいざという時は来ないでほしいものだ。

「お兄ちゃん」

「?なんだ?」

「クロミルお姉ちゃん」

「?何でしょうか?」

「絶対、生き残ろうね。ルリ、誰一人死んでほしくないから」

 いつものルリとは思えないほど弱々しく、辛そうだった。俺は呼吸を整え、

「安心しろ。全員、誰一人とも死なせはしない。そうだよな、クロミル?」

「はい。私はこれからもご主人様にお仕えするつもりですから」

 クロミルは相変わらずだな。

「ありがとう。お兄ちゃん、クロミルお姉ちゃん。ルリ、弱気になっていたよ。けど、もう大丈夫!」

 言葉を重ねるたびに、ルリの言葉に力が込められていくことが分かる。

「ルリ、頑張るよ!」

 ルリの意志に、

「ああ。こちらこそ、よろしく頼む」

 俺は笑顔を向けてお願いする。

「…そろそろ、いきます」

「「「!!!???」」」

 突然、リーフが言葉を発する。いくというのは間違いなく、あの魔法を撃つ準備が出来たのだろう。

「みなさん、強力な魔法をこれから放ちます。各自、気をつけて下さい!」

「「「はい!!!」」」

 カーナの発言に、女エルフ達全員が返事をし、衝撃に備える。

「イブ、クリム。そろそろいけそうです。息をしっかり合わせて下さいね」

「…とう、ぜん」

「分かっていますが、ちょっときついです…」

 リーフ、イブ、クリムの3人の周囲には、大量の魔力が集約している。そのためか、3人の周囲が魔力による圧力がかかっている。そのためなのか、3人は魔力を集約し始めた時からずっと大粒の汗をかき続けている。俺も汗を拭おうと近づいたのだが、事前に断られている。理由は、人が来ることによって集中力が乱れてしまうため、だそうだ。

「いきます、よ」

「…ん、ん」

「は、い」

 3人は息を整えながらも揃え、そして、

「「「はあああぁぁぁーーー!!!」」」

 地鳴りが3人の周囲に起き、俺達は何も出来ないまま、3人の経過を見守る。

「「「いっけえええぇぇぇーーー!!!」」」

 その3人の掛け声の後、千年杉よりも太そうな極太の黒光した光線が遠くに位置するフォレロイ達に放たれた。

「「「はあああぁぁぁーーー!!!」」」

 3人はゆっくり光線の向きを変えながら、フォレロイ全員に当たるよう放ち続ける。

(((頑張れ!!!)))

 ここで、ここにいる全員の決意が一つになる。

 今頑張っている3人を、心でも応援し、

「「「頑張れ!!!」」」

 声として耳に届かせている者達もいた。その言葉が引き金となったかどうかは分からないが、さらに光線が太くなり、勢いを強めていく。

「…もう、げんか…、」

「諦めないで、イブ!まだ、まだいけるわ!」

 そう言いつつも、クリムの足が悲鳴を上げ始めているのか、足が笑い、体が小刻みに震え始める。

「だい、じょうぶです」

「!?リーフ!?」

 今にも崩れそうなクリムを支えたのは、リーフと、

「…わたし、も」

「い、イブまで!?」

 イブであった。二人はクリムを支えつつ、魔法の行使に集中する。

「二人とも、ありがとう」

「それよりラストスパートですよ」

「…ん。さいごのさいごまで、だしぬく!」

「はい!」

 そして、

「「「はあああぁぁぁーーー!!!」」」

 3人はさらに力を強め、光線を太くし、威力を底上げさせる。さしずめ、消えゆく直前の炎のように。

「「「!!!???」」」

 もう力を使い切ったのか、あの魔法、【殲滅熱光線嵐(デストロイヒートレーザーストーム)】が消え、3人が倒れそうになる。それを、

「クリムお姉ちゃん、大丈夫!?」

「イブ様!お怪我はありませんか!?」

「リーフ!」

 ルリ、クロミル、俺がそれぞれクリム、イブ、リーフを支える。

「わ、わたし、けっこうがんばりましたよ…」

「…も、もうたてない。むり」

「そ、それでふぉ、ふぉれろいたちは…?」

 3人とも酷く疲弊しているらしく、言葉言葉に疲れの色が濃く見える。俺は丁寧に寝かせ、

「大丈夫。後は俺達に任せてくれ。な?」

「うん!後はルリ達が頑張るから!」

「御三方はゆっくり体をお休めください」

 その言葉を聞いていたのかどうかは不明だが、ややぎこちない笑顔を送り、ゆっくりと目を閉じた。

「…リーフ達を頼む」

「はい」

 この短いやりとりで、リーフ達が丁寧に運ばれていった。それと同時に、

「さぁ!これで戦いの幕が上がりました!みなさん、行きますよ!」

「「「おおおぉぉぉーーー!!!」」」

 このカーナの掛け声により、女エルフ達、確か、第一兵団と冒険者達、だったな。みんな武器を持って突撃する。3人の多大なる魔法のおかげで、

「リーフ達のおかげで、フォレロイが半分いなくなっているな」

「ええ。それに、残っているフォレロイ達も疲弊している様子が見られます。これでこちらにも勝機が見られます。ですが、」

「分かっている」

 カーナの心配事は、

「あの中央の世界樹、じゃなかった。森災はピンピンしているな」

「ええ。あの御三方の魔法でもびくともしなかったのですか。それで、申し訳ありませんが…、」

「ああ。準備は万全だ。だよな、ルリ、クロミル?」

 俺は近くにいるルリとクロミルに話を振る。

「うん!お姉ちゃん達が頑張ったんだもん!ルリも頑張らなくちゃ!」

「微力ですが、私もご尽力させていただきます」

 どうやら二人はやる気満々のようだ。

「それでは、アヤト様達方には多大な負担を強いてしまいましたが、よろしくお願いいたします」

「ああ。そっちも、フォレロイの残党を頼んだぞ」

「はい!全てはこの国のため、精いっぱい努めさせていただきます!」

 この声の掛け合いの元、

「さぁ行くぞ!ルリ!クロミル!」

「「はい!!」」

 こうして俺達は、女エルフ達の後に続くかのように走り出す。

 目で捉えている森災を目指して。

『3-3-24(第248話) 森災の襲来戦~その3~』

 リーフ、クリム、イブの3人から強力な魔法が放たれる。そして彩人、ルリ、クロミルの3人は、森災と化した世界樹との戦いを始める。


 こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。

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