3-3-19(第243話) 【色気】習得に向けて
あの一夜での話の後、モミジは見る見るうちに元気になっていった。どうやら、モミジの悩みはあの会議で合っていたらしい。これでモミジの悩みが解決したようでよかった。
そして、一夜が明け、
「おはよう」
「「「おはよう」」」
客間にいくと、全員既に座っていて、朝食をいただいていた。
「それじゃあ私はもう行くわ」
エーガンに至っては既に食べ終えたらしく、俺と入れ替わりに客間を後にした。そういえば、俺達がこうして王城で飯を食えるのも、カーナ達の助力のおかげなんだよな。邪魔だと言うならいますぐにでも出ていくけど、今回ばかりは迷惑にならないのであればお邪魔になろう。
「いただきます」
俺が飯を食い始めようとした時点で、
「「「ご馳走様でした」」」
みんな食事を終え、俺一人でボッチ飯をいただくこととなっていた。みんな、部屋を退室する際、
「それじゃあアヤト、私はギルドに寄ってから鍛えますね」
と、リーフは言い、
「私は第一兵団のみなさんと模擬戦を繰り返ししていきますね」
クリムはウキウキ口調で言い、
「…カーナ。作戦の詳細を話そう」
「ですね。今日は昨日より細かいところを決めていきましょう」
イブ、カーナは詳細な物事を決めると言い、
「じゃあね、お兄ちゃん!時間が空いたらいつでも特訓に付き合うからね!」
「私もルリ様と同意見です。それではルリ様についていくので、これで失礼します」
ルリとクロミルは特訓のためと言い、
「私は、この都市のこと、もっと知りたいので、都市を見て回りますね」
モミジは都市防衛のためと言い、それぞれ部屋を出て行った。
「俺も、少しは鍛えないとな」
俺は森災、そしてパラサイダーと戦うにはどうすればいいのか考えながら、朝食を食していった。
朝食を食べ終え、部屋を出た後、俺はというと、
(あの森災に立ち向かうためにはどうすれば…?)
対策を練っていった。策は複数個用意しておくといいかもしれないが、そこまで用意周到に準備できるほど、俺は要領がいいわけではない。だからといって諦めるわけにもいかないし。どうすれば・・・?
「とにかく、今の俺の課題を洗い出していこう」
まず、俺の課題として、【色気】を充分に扱えるよう鍛えなくてはならないな。【六色装】は短時間なら発動可能となったが、【六色装】程度では、あの森災には到底太刀打ちできないだろう。青の国で戦ったあのメイキンジャー・ヌルも確か、【色装】が通用しなかったな。相手の戦い方を察知し、分析し、相手の意表を突き、ようやく退けたくらいだ。倒すにはそれ以上の力が必要になる。従って、【色装】より強力な【色気】の習得が俺の課題の内の一つに当てはまるな。
もう一つは魔道具の作成だ。といっても、相手に効果的な魔道具のアイデアが未だに思いついていないのだが。【色気】を使いこなすための練習ついでに魔道具の構想を練るとしよう。
今のところはこの二つかね。本当は基礎的なところ、体力とか筋力とか、色々な力を底上げしておきたいところだが、一週間という短期間でどこまで上げられるか見当がつかない。だから、少しでも可能性がある方に賭けたいと思う。
「さて、これからすべきことを見つけたことだし、外に出るとしよう」
さすがに室内で魔力を暴走させ、室内を爆破させるわけにはいかないからな。ところで、魔力制御が上手くいかないと本当に爆発するのか?見たことないからいまいち信じられないんだよな。そんなこと言ったら、肉眼で素粒子なんて見たことないので、粒子の存在を信じないことと同じことなんだろうな。ま、目に見えるものだけが全てではないと割り切っておこう。
外に来て、俺は魔力をより高精度で操作できるよう鍛錬していた。
「・・・」
もちろん、独りで。ま、独りでいることに慣れているからいいんだけどさ。それに、こういった修業は俺にとって独りの方がいいんだよ。何せ、独りでいることに慣れているからな!・・・なんか、哀しくなってしまったな。ルリ達と手合わせでも、
「いや、駄目だ」
ここはやはり、【色気】を習得するためにも、ここは独りでやろう。まずは【色気】のおさらいからするか。
【色気】は、【色装】より強力な魔法で、【色装】と【色気】ではイメージが決定的に異なる。【色装】のイメージは透明な鎧に対し、【色気】のイメージは体内を循環する血液である、と俺は考えている。あくまで俺のイメージだ。【色気】を使った人が次々と死んでいくのは、【色気】を使う際、制御しきれないほどの魔力を体内に循環させてしまい、魔力が体内で破裂してしまったのではと、俺は考えている。あくまで俺の考え、だけどな。だから、最初は極わずかな魔力だけを循環させ、【色気】を発動させればいいはず。それでも戦闘中は【色気】にばかり気をとられているわけにはいかない。理由は言わなくてもある程度察知できるだろう。でも、練習中は相手の事を気にしなくていいので、こうして【色気】に集中できるというものだ。これで少しでも【色気】に慣れておけば、無意識でも【色気】を使いこなせるようになるだろう。そうすれば、あのメイキンジャー・ヌルにも真っ向から立ち向かえることとなる。あいつ、今は何をしているのだろうか?て、今はどうでもいいや。今は【色気】について鍛錬するとしよう。
俺は自分の体内全体に血液を流すイメージで魔力を循環させる。
「…よし」
何とか成功した。だが、今の俺は極わずかの魔力しか体内を循環させていないし、この【色気】に集中しているからこそできる芸当だ。次は少しずつ増やして、
「!!!?」
うげ!?なんか急に全身に痛みが!?ど、どうなっているんだ!?手のひらを見てみると、手だけでなく、腕も血が滲み始めていた。足に至っては少量とはいえ、血が出ていた。魔力を極わずかしか流していないのに、もう失敗したのか!?一瞬だけだったとはいえ、それなりに痛かったな。それを世界樹との戦いでは何十秒、何分も使っていたと思うと、俺ってつくづく無謀な行いをしてきたんだなと自覚した。さっきはごくわずかだったが、次はもっと少なくしてみよう。
「・・・よし」
発動は出来るみたいだな。後はこの魔力を一定の量で循環させて、と。
・・・。
・・・・・・。
・・・・・・・・・。
今のところ、これといった痛みは無いな。一応、体、を!?
「ぎえぇ!?」
し、しまった!?体を動かしたことで、循環させていた魔力量に乱れが生じてしまったのか!?それによって体から痛みが生じるとは!くそ!これは要検討だな。
しかし、
「これは困ったぞ」
何度か検証してみて、【色気】についての課題が明瞭に見えてきたな。【色気】は問題なく発動出来るみたいだが、発動より維持する方が、圧倒的に難易度が高くなっているな。何かいいアイデアは無いものか。
・・・。
地道にやって、俺が完全習得するしかないか。体を動かしても循環させる魔力量を一定に出来るよう習得しないとな。となると、次の段階は・・・あれ?まさか?
「体を動かしながら【色気】を維持する事、じゃないか?」
課題としてはかなり詳細になったと思う。けど、この課題をクリアするには、
「さっきみたいな痛みに襲われる可能性大、だよな~」
正直、痛いのは嫌なのだが、こればかりはしょうがない、のか?何か他にいい鍛錬メニューは無いものか。
・・・。
うん、思いつかん。こればっかりは諦めてしっかり鍛錬に励むしかなさそうだな。
よし!
「【赤色気】!」
それじゃあ鍛錬再開だ!俺は【赤色気】を発動させたまま、
「1,2、1、2、1、2、1、2、・・・、」
ゆっくり歩き始める。
【赤色気】を発動させたまま歩き始めて1時間。
「な、なんとかここまできたぁ」
ようやく、血を出さずに歩けるようになった。最初は一歩歩く度に血が出ていたが、回数を重ねるにつれ、出血量が少なくなり、ようやく出血量が0となった。
「ここまできたとなると、次はもう少し激しい運動でもしてみるか」
次はもっと戦闘に近いことをしながら、この【赤色気】に慣れるとしよう。
さらに時間は経ち、
「・・・よし、よし!よっしゃー!」
ついに、ついにおれはやったぞ!ようやく俺は、血を体外に放出することなく、【色気】を使う事が可能になったぞ!!!ここまで、ここまで本当に長かった。
常に魔力を一定量循環させながら汗水血を垂れ流し、汗しぶき水しぶき血しぶきが飛び交い、必死になりながらようやく、ようやく手に入れた力!これは大いなる進歩だ!
「まさか1日でここまで進むとは思わなかったぞ」
正直、この【色気】の鍛錬だけで森災との戦いを迎えてしまうんじゃないかと覆っていたのだが、まさかここまで無事に上手くいくとは!自分でも驚愕だぜ!
さて、明日はギルドに向かい、依頼をある程度こなしつつ、この【色気】に慣れておこう。その依頼が終わったら、次は魔道具の作成に時間を割くとしよう。
『3-3-20(第244話) 魔道具製作に向けて』
彩人は次に、魔道具製作に向けて動く。彩人は何かいい魔道具の案は無いか聞いてみたところ、ある3つの魔道具について聞くことが出来た。
こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。
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