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色を司りし者  作者: 彩 豊
第三章 赤茶色くなり始める世界樹
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3-3-17(第241話) 森災対策会議~その2~

「まずは、相手の戦力について簡単にまとめますね」

 カーナは軽く咳払いした後、

「まず、森災と化した世界樹とパラサイダー、そしてフォレロイと化したフォレード20体。計22体です。いずれもかなり厄介な者達ばかりです」

 確かに。世界樹とパラサイダーはもちろん厄介だが、あのフォレロイとなったフォレード達もかなり厄介だ。

「まず相手には本来効果的だった火を用いた攻撃がほとんど通用しません」

 カーナの発言に、

「私の活躍できる場が…、」

 クリムが項垂れていた。ま、クリムは赤魔法しか使えないからな。一種類の色魔法しか使えないなんて言っても、それが普通なんだけどな。

「それでしたら、私も同じです。ですからお気を確かにしてください」

「うぅ。慰めてくれてありがとうね、モミジちゃん」

 モミジも赤魔法は使えるもんな。ただし、モミジは赤魔法だけでなく緑魔法も使えるから嫌味にしか聞こえ無い気もするが、モミジが言っても全く嫌味に聞こえないんだよな。モミジの性格が成せる業、なんだろうな。

「それでですね。何かいい案がある人はいませんか?」

 このカーナの発言に、

「「「・・・」」」

 全員、黙ってしまった。俺も正直、いい案が思いつかん。世界樹とパラサイダーの件なら俺に任せてほしいと言うのだが、さすがに俺一人で22体もの強敵を相手に奮闘出来るほど自己評価は高くない。ま、赤の国で4桁を超える奴らと戦ってきた人間が言えるセリフではないだろうけど。

「・・・」

「「・・・」」

 何やら、リーフとイブ、クリムが話しているな。何の話をしているのかは不明だが、

「「「・・・」」」

 そのひそひそ話が全員の視線を集中させていることに気付いているのだろうか。

「少し、話し合いましたが」

 ここでひそひそ話が終わったのか、リーフは全員に話を始める。

「ここで一つ、私達から提案があります」

 私、達?それにリーフから何か案があるのか。リーフの言葉を合図に、イブ、クリムは目を合わせ、リーフと同様に席を立つ。

「私達が初撃であのフォレロイ達を倒します」

「「「しょ、初撃で!!!???」」」

 カーナ達は驚いていた。俺も驚きなのだが?一体どういう意味なんだ?

「「・・・」」

 それに対し、ルリ、クロミルは落ち着いていた。

「え?ええ??えええ!!??」

 相変わらずモミジは情緒不安定だ。精神安定剤があれば飲ませてあげたいくらいだ。

「初撃で倒すってどうやって倒すつもりなんだ?」

 俺がみんなの意見を代表して聞いた。カーナ達も驚いた顔を隠さず、ずっとリーフ達を見ている。

「【殲滅熱光線嵐(デストロイヒートレーザーストーム)】です」

 …ああ。リーフ、クリム、イブ、クリムの3人で放つ強力な魔法、だったな。確かに、あの魔法なら強力なけん制にはなるだろうな。

「「「・・・え???」」」

 そういえば、カーナ達は【殲滅熱光線嵐(デストロイヒートレーザーストーム)】という魔法、知らないんだったな。この魔法について説明しろと言われても困るな。一つ言えることが、強力な魔法であること、しか言えないな。

「えっとですね…、」

 リーフはカーナ達に自身の魔法について説明をし始めた。説明を聞いたわけではないが、説明を聞いていたカーナ達の顔が青くなったり怖がったりした。説明を聞き終えたカーナ達の第一声が、

「その魔法、私達の国に向けて撃たないでくださいね?一度でも撃たれてしまったら破滅してしまいます」

 と、悲しげな笑みをリーフ達に向けて言っていた。あの笑みはきっと作り笑いだろうな。そんなことを考えながら、リーフ達があの魔法を使ったことによるメリットを考えていた。

 確かに、あの魔法を使えば、あいつらフォレロイを一網打尽に出来る可能性が高い。溜めの時間もそれなりに必要だと思うが、それはある程度時間を計算しておけばクリア出来るだろう。もしかしたらあの森災も撃破出来るかも?…いや、そう楽観視してはいけない。確かにあの魔法は強力だが、

「聞いた感じですと、リーフ様方が放つ魔法はとても強力だと思いますが、それで倒しきれなかった場合はどうするのですか?」

 そう、カーナの言う通りだ。倒しきれなかった場合のことをまったく考慮していない。

「ええ。ですから初撃なんです」

「…なるほど。要するに初っ端にその魔法を打つ。その後のことは別で考えよう、そう言っているんじゃない?確かにその場合も考えた方がいいと思うけど」

 そうか。だからリーフ、初撃はって言ったのか!?エーガンの説明でようやく理解出来たよ。

「…なるほど。それで初撃、ですか」

「だと思うわ。でしょう?」

「はい。私達だって、あの魔法一発だけで倒せる、なんて高望みはしません。ですが、強力な一撃を相手に食らわせることは出来ると思います」

 そのリーフの力強い言葉に、イブやクリムは頷いていた。

「そうですか。では初撃はリーフ様方にお願い出来ますか?」

「はい!お任せください!」

 このリーフの頼もしい返しに、

「いっそ派手にぶちかましてやりますよ!」

「…ん。情けは一切かけない」

 これまた頼もしい発言をしてくれた。

「ではよろしくお願いします。」

 カーナはリーフ達に軽く会釈をする。

「さて、次に、リーフ様方が魔法を放った後について考えましょう」

 カーナの案については激しく同意だ。

「そのことについてだが、俺から提案してもいいか?」

 俺は手を挙げ、発言の許可をカーナに問う。

「どうぞ」

 カーナから発言の許可をもらったので、俺は発言をする。

「本人の了承を取っていないが、ひとまず話だけは最後まで聞いてほしい」

 こう前置きしてから話し出す

「まず、リーフ達が魔法を打ってから、残党の方をクロミル、ルリに任せたい」

「「「・・・」」」

 全員、何か言いたそうにしているが、口を挟まなかった。

「モミジはリーフ、イブ、クリム達を守護しておいてくれ。それで俺は森災を直接叩く。カーナ達はこの都市の守護の方に回ってほしい」

 俺はそれぞれの方向に向き直し、人の顔を見ながら話をした。

「これが俺の考えだ。クロミル、ルリには負担を強いるかもしれないが、これが俺の考える最善のプランだ」

 俺はしゃべり終えたので席に着く。

「…確かにクロミル、ルリの負担は大きいけど、アヤトも人のこと言えない」

 イブのこの言葉を皮切りに、

「そ、そうですよ!?アヤト一人で森災に立ち向かうなんて何言っているのですか!?」

 なんか、先輩から添削をされながら叱責される後輩の気分だ。

「あの、もしかしたら、うちの兵団も参加させることは出来ませんか!?」

 ここでタンカが発言する。

「兵団ってあの?」

「はい。クリム様に散々、それはもう散々揉まれた第一兵団です。第一だけで、しかも3人一組で行けば問題ないかと」

 第一兵団?てことは第二、第三もあるのか。

「で、どうなんだ、クリム?」

 俺はその第一兵団の実力を一切知らない。だから俺が口を挟むのは間違っているだろう。ここは揉んだ本人に聞くべきだ。というかクリム、誰かと戦っているなと思ったらこの国の兵士と戦っていたのかよ。どんだけじゃじゃ馬娘なんだか。脳筋なんて表現が優しく思えるな。

「そうですね・・・一人ではなく、三人一組での陣形であれば問題ないと思います」

「問題ない?問題ないってどれくらいなんだ?」

「そうですね…冒険者ギルドの黄ランクくらいはあると思います」

「それってつまり、かなり強いってことか」

「はい。ですから問題ないと思います。どうでしょう?」

 確かに、それくらい強いなら問題ないか。

「それじゃあ、第一兵団にもフォレロイの相手を頼む。もちろん、全員じゃないから安心してほしい。だよな?」

 俺はクロミル、ルリに話を振る。今更だが、この作戦でいいのだろうか。さっき散々ケチつけられたからな。

「うん…」

「・・・」

 ルリ、クロミルは微妙な返しだった。俺、何かおかしなことを言ったのか。妥当な安打と思ったのだが。

「ちょっと待ってください」

 ここで、さっき添削してきたリーフが言葉を発する。

「どうした?」

「まだ聞いていないので分かりませんが、ギルドの方からも人員を出せるかもしれません」

「そのギルド所属の奴らは戦力になるのか?」

 俺はリーフに聞く。

「…全員が、というわけではありません。ですが、ここ最近の成果を見る限り、何人かは戦力になると思います。相談してみないと分かりませんが、ちょっとお願いしてみます」

「よろしく頼む」

 戦力は多い方がいいしな。

「私もリーフ様に付き添い、お願いしてみましょう。少なくとも話くらいは聞いてくれるはずです」

「お願いします」

 これで戦力も増えてきたな。

「残党の件ですが、リーフ様方に初撃をお願いするとして、兵団、冒険者達を含めた我々エルフに任せてもらえませんか?」

 と、カーナは訳の分からないことを言う。

「まさか、フォレロイ全員をカーナ達女エルフだけで相手するのか!?そんなの無茶だ!」

 誰か死ぬに決まっている!

「もちろん、ここにいるウッドピクシー達にも協力してもらいます。ですから、森災とパラサイダーはアヤト様、ルリ様、クロミル様の3人に任せたいのです」

「だけど…!?」

「私達だって、アヤトだけじゃあ心配なんです」

「え?」

 何故ここでリーフが話に割り込んでくるんだ?それに心配、だと?私達って誰が?

「今回の敵の強さは、私達の予想を遥かに上回る事でしょう。そんな相手にアヤト一人だけで挑ませるなんて事、出来るわけないじゃないですか!」

「そうです!フォレロイの方は私達も魔法を使った後一緒に戦います」

「…ん。だからアヤト達は思う存分、森災とパラサイダーの相手をお願いしたい」

「でも…、」

 それだとルリとクロミルにかかる負担が!命の危険が!

「お兄ちゃん。ルリなら大丈夫だよ」

 ルリは俺の左手を手に取り、

「私の全てはご主人様とともにあります。なので、ご主人様が気にしていることは無駄だと思います」

 クロミルは俺の右手を手に取る。

 ・・・。

「…絶対に死ぬなよ?」

 俺は説得を諦めた。二人の手から闘志を感じられた。何が何でも譲らない、そんな気持ちが込められていることが分かった。だから、死ぬなよ、としか言えなかった。

「うん!」

「もちろんです」

 死ぬ前提で戦場に行ってほしくなかったけど、この二人は死ぬ気がないみたいだ。よかった。

「・・・じゃあ頼んでも、いいか?」

 俺は本当にこれでいいのか何度も何度も考え直しながらリーフ達に問う。

「「「はい!!!」」」

 女エルフ達、リーフ達は元気に返事をしてくれた。

 ・・・これなら、大丈夫かな。別にリーフ達の実力を疑っているわけじゃないが、心配だな。さて、

「それじゃあルリ、クロミル。よろしく頼む」

「うん!」

「かしこまりました」

 これで作戦が決まった。

 フォレロイはリーフ、クリム、イブを含めた女エルフ達に一任。パラサイダーと森災は俺、ルリ、クロミルの3人で迎え撃つ。

 こんなところか。

「あ、あの」

「ん?」

 ここで黙っていたモミジが声を発する。

「私って、この都市の防衛?でいいんですか?」

「俺はそうしてもらいたいんだが、リーフ達はそれでいいと思うか?」

 本人の意思を聞かないのもどうかと思うが、聞くぐらいならいいよな?

「私はモミジちゃんにこの都市を守ってほしい」

「私もリーフと同じ意見です」

「…クリムに同じ」

「だそうだ。俺もモミジにお願いしたいのだが、聞いてくれるか?」

「…分かり、ました」

「ありがとう」

 モミジは何か言いたそうにしていたが、後で聞くとしよう。とりあえず感謝の言葉を述べ、

「それでは、今後の方針が決まったことですし、これで会議を終了致します。次の会話は…、」

 こうして、森災対策会議はこれにて幕を閉じる。

『3-3-18(第242話) 有力だからこその都市防衛』

 森災対策会議を終えた深夜、モミジはある木の下に待機していた。誰を待っている訳でもなく、ただひたすらに空や木を眺め続ける。そんな中、モミジの元に彩人が現れ、先ほどした会議の内容について話す。


 こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。

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