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色を司りし者  作者: 彩 豊
第三章 赤茶色くなり始める世界樹
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3-3-15(第239話) ウッドピクシー達の処遇

 俺の中では既に答えは出ていた。だが、こいつらの事もどうするかと考え始めた時、

「アヤト様方は今すぐこの国から離れてください」

 カーナから逃亡を促された。

「…どういう意味だ?」

「おそらく、森災となった世界樹は遠からずこの国を襲撃します。ですが、これ以上アヤト様の迷惑をおかけするわけにはいきません。ですから、出来るだけ早く出国してください」

 カーナもそうだが、エーガン、タンカも頷いていた。

「勝てる保証はあるのか?」

 俺が世界樹と闘った時、【緑色気】を使ってやっとのことで勝てた相手だったと思う。そんな相手にカーナ達が勝てるとは思えない。もしかしたら、俺みたいに個人で挑むのではなく集団で挑むかもしれないが、無傷とはいかないだろう。それを踏まえて言っているのか?

「保証はありません。ですが、アヤト様方に助けていただいたこの国を、この地を捨てて逃げるなんて真似、出来ません」

 その眼には強い闘志を感じた。何を言っても頑なに意見を変えるつもりはないだろうな。そう悟った。

「そうか」

「「「!!!???」」」

 イブ、クリム、リーフが何か言いたそうにしていた。でも、まだだ。まだ、言わない。

「さて、お前らはどうする?」

 俺は次にウッドピクシー達に話を振る。振った瞬間、大き過ぎる身震いをし、

「死ぬ覚悟は、出来ています」

 そう言いつつ、ウッドピクシーは震えていた。小ささも相まって、携帯が震えている光景を容易に想像出来た。死ぬ覚悟は出来た、か。それじゃあ試してみるか。

「カーナ。こいつらの処分は俺に任せてもらえないか?」

 俺はカーナを見ずに返答を待つ。…別にボッチだから人の目を見て話す事が出来ない、なんてことはない。ない、と信じたい。

「…分かりました。お願いします」

 カーナは何かを察したのか、何も言わずに了承してくれた。カーナが結婚したら、良妻賢母になること間違いなしだろうな。ま、そんなこと、今はどうでもいい。さて、こいつの生命剥奪権は俺が握っているわけだな。俺はある魔法を使う。

「「「!!!???」」」

 イブ、クリム、リーフは俺が何の魔法を用いようとしているのか分かったようだ。ま、いつも使っている紫色の魔法だからな。当然と言えば当然か。

「さて、これは俺の紫魔法の一つ、【毒玉】だ。食えば死に至ることがある魔法だ」

「「「!!!???」」」

 ウッドピクシー達は、俺が発した死という単語に、敏感に反応し、【毒玉】を恐怖の眼差しで見ていた。俺はウッドピクシー達の目の前に【毒玉】を一つずつ置き、

「さ、食え」

 こう宣告した。

「「「・・・え?」」」

 ウッドピクシー達は俺の発言に驚愕していた。無理もない。触っただけで死にそうなおぞましい物を食えと言っているのだ。こんな拷問をされると思っていないだろう。地球でしたら確実に脅迫、殺人教唆、そういった罪が課せられるだろう。俺、結構な罪人だな。

「どうした?死ぬ覚悟はあるんだろう?なら食えるはずだ」

 と、俺はこの【毒玉】を食すように促す。もちろん、丁寧に皿の上に乗っけている。衛生面では安全のはずだ。毒を食わそうとしている時点で安全も何も言えたものではないが。

「「「・・・」」」

「どうした?ナイフとフォークがないと食えんか?それくらいなら用意するぞ?」

 と言って、俺はアイテムブレスレットからナイフとフォークを取り出し、それぞれの皿の横に置く。

「「「・・・」」」

 イブ達の視線がちょっと辛いが、それでもこれはやらなきゃ駄目だと思う。絶対に引かれること間違いなしの外道な行為をしているが、今は気にしない。

「さ、どうぞ」

 俺が促すと、

「「「・・・」」」

 空気も動かない数分の刻の後、

「い、いただきます」

 あるウッドピクシーが震えながら言うと、

「「いただきます」」

 他のウッドピクシー達も言った。ご丁寧に手を合わせて。【毒玉】を食べようとする際、ウッドピクシー達が泣いていた。おそらく、最後の晩餐だと悟っているのだろうな。なんか、人が自殺する時を見ているのって、こんな感じなのかね。

「「「「「「・・・」」」」」」

 イブ達カーナ達が俺を見ているが、気にしないでおこう。もしかしなくとも、俺をピクシー殺しの外道だと思われているのだろう。普通の人であればそう思っていてもおかしくないし、思われていても仕方がないと割り切っている。今は、今は気にしない。だって、

「「「!!!???」」」

 ウッドピクシー達が二口目を食そうとした段階で全員手に痺れが来たのか、ナイフとフォークを落とし、座っている椅子から崩れ落ちた。

「な、なんで?」

 こう言った後、ウッドピクシー達は目を閉じた。

「ここまでやって悪かったな。これでお前らの気持ちは分かったよ。お前達の覚悟もな」

 俺は独り言のように言った。

 少し時間が経った後、

「こ、殺す必要はなかったんじゃないの?」

 エーガンは口を開く。

「殺す?何を言っているんだ?」

「は?だって、そこにいるウッドピクシー達にその【毒玉】?を食わせたじゃない!?それでもう…!?」

「死んだってか?」

「ええ」

 ま、そう思われていても仕方がないな。そう思うように発言や言動をしたのだから。

「こいつらは生きているぞ」

 だから俺は言う。

「「「「「「・・・は??????」」」」」」

 今回俺が考えた、カーナ達をも騙し、イブ達を巻き込んだこの作戦を。

「今回、俺はこいつらが信頼出来るか試してみたんだ」

 この一言で、イブは何かを察したらしく、俺が作った【毒玉】が置かれた皿を持ち、

「…この【毒玉】の毒ってもしかして…?」

「ああ。致死性の毒は含まれていない。ま、全身に強い痺れが発生する毒は入っているけどな。だから食うなよ?」

 所謂麻痺毒だ。麻痺の強さは大体、長時間同じ体勢でいたことにより発生した痺れが全身に回ったような毒をイメージした。少しの間動けなくなるが、すぐに動けるはずだ。

 その話を聞いたイブは、静かに皿を置いた。…まさかイブ、その【毒玉】を食べるつもりじゃなかっただろうな?

「じゃああのウッドピクシー達は死んだわけじゃないの?」

「ああ。全身に毒が回り、体を動かせなくなって倒れただけだ」

 多分だけど。一応そういう風に毒を設定してみたが、もしかしたらそれ以外の毒も万が一含まれているかもしれない。万が一、万が一な。この事は誰にも言わないようにしよう。

「…本当に死んでいないの?」

「死んでいないが?」

 何故クリムはそんなに心配そうに疑うのだろうか。そんなに俺の言っている事が信じられないのか?…信じられないか。ついさっきまで騙していたからな。なら、

「これで分かるか」

 俺はウッドピクシー達に白魔法を使い、そいつらの麻痺を治療する。

「「「・・・は!!!???」」」

 ウッドピクシー達は俺の白魔法に回復したのか、体を動かし、宙に浮かび始める。

「「「「「「!!!!!!??????」」」」」」

 俺以外の全員が驚いていた。正直、俺も内心驚いています。麻痺毒以外の毒が含まれていなくよかった。ひとしきり、体の点検っぽい何かを一通りした後、

「・・・何故、私達を殺さなかったのですか?」

 さっきも話してきたウッドピクシーが再び話しかけてきた。

「俺はお前らの覚悟がみたかったからだよ。性格がどうしようもない屑だったら殺すことも本気で考えていたけどな」

「「「!!!???」」」

 これで俺の中では、ウッドピクシー達が本気で、世界樹のことを知らせようとしていることが分かった。であれば、少なくとも世界樹達、あのフォレード達とも戦うことを想定しなくてはならない。であれば、戦力は出来るだけ欲しい。だから、ここで私情を挟みに挟みまくって貴重な戦力を失うのは惜しい。俺はそう考えた。こいつらの気持ち、覚悟も分かった事だし、出来れば協力関係を築いていければ、なんて都合よ過ぎか。

「さて、カーナの頼みの方だが、」

「?…もしかして、緑の国を離れてください、と言ったことですか?」

「ああ。その件だ。その件だが、」

 俺はイブ、クリム、リーフの方を向いてから、

「…」

 笑顔を向けた。

「「「???」」」

 三人とも、俺がいきなり笑顔を見せたから、戸惑っていた。ま、意味なんて分かるわけもないか。俺はカーナの方に向き直し、

「断らせてもらう」

「「「え???」」」

 カーナ達は驚いていた。もしかして、俺は外道でこの地を見捨てるような男だと思っているのか?…思われていそうだ。何せ俺には、前科があるからな!威張って言うセリフではないな。

「俺はこの国を、リーフが生まれたこの国を簡単には見捨てない。それに、」

 俺はウッドピクシーの肩に手を置き、

「お前らも当然!協力してくれるよな?」

 俺は優しく、優しく声をかける。ちょっと当然、という言葉を強めて言ってしまったが、まぁ気のせいだろう。ウッドピクシー達は気にしていないだろう。

「は、はい!アヤト様に一生の、一生の忠誠を誓わせていただきます!ですからもう、【毒玉】を食べさせないでください!!」

 ・・・なんか、声だけでもかなり怯えているな。そりゃそうか。死ぬと思ったら次は協力して、だもんな。死への絶望を一度味わったら、自身に対するプライドとか誇りとか消え失せるかも。死ぬ思いをするくらいなら喜んで忠誠を誓う。そんな考えに至ってしまったのか。もしかしたら、俺がそういう考えに導いていたのかもしれない。俺ってもしかしなくとも外道だよな。地球では裏社会で生きていた、なんて過去は存在していないのにな。

「大丈夫。今回、俺達に協力してくれれば、お前らの命は保証するよ。な?」

 俺は確認のため、カーナ達に話を振る。

「え、ええ・・・」

 …なんか、カーナだけでなく、ここにいる全員が俺に引いていた。・・・今後はもっと自信を見つめようかな。

「だから、森災の襲来を食い止めるために協力しようじゃないか」

 俺は出来るだけ爽やかに言った。今の今までで俺の評価は外道で鬼畜だからな。これで俺の評価も上がることだろう。

「は、はい!協力します!協力させていただきます!!」

「ですから、もう毒を食べさせないでください!」

「死なせないでください!!!」

「「「「「「・・・」」」」」」

 俺以外の6人、イブ、クリム、リーフ、エーガン、タンカは俺に対し、絶対零度に近い温度の視線を俺に送っていた。

 ・・・。

 や、やった!貴重な戦力ゲットだぜ!

 俺はとりあえず、全力で6人の視線から逃れることにした。あ~あ。俺の評価、爆下がりだなー。嫌われていないといいけど。・・・嫌われていない、よな?

 そんな俺の心配をよそに、

「・・・もちろん、私達も残って、この国を守る。リーフの生まれた国だもの」

「そ、そうです!リーフが生まれた国を簡単に捨てるほど、人情に欠けているわけではありません!」

「「「人情…」」」

 何故ここでカーナ達は俺を見るのだろうか。そんなに俺は人情に欠けた人間に見えるのだろうか。…見えていたんだろうな。

「と、とにかく!作戦とか、詳細な時間を話し合おう!な?」

「「「「「「・・・はい」」」」」」

 おっとー。これは明らかに俺に対して引いていますね。俺は気まずい中、俺とウッドピクシー達を含めて話し合う。

 さて、これで今回の目標は決まったな。

 迫りくる森災からこの国を守る。そのために、使えるものは使わないとな。

『3-3-16(第240話) 森災対策会議~その1~』

 ウッドピクシー達と強制的に協力関係を結んだ彩人は、ウッドピクシーに何が出来るか聞き、いづれ来る森災の対策を話し始める。この際、彩人はある3人のことを忘れていた。


 こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。

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