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色を司りし者  作者: 彩 豊
第三章 赤茶色くなり始める世界樹
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3-3-14(第238話) 世界樹、森災として復活

 門前から王城内まで移動し、カーナ、エーガンを含め、改めて話を聞くことにした。もちろん、この場にはルリ、クロミル、モミジはいない。話だけなら、あいつらはいなくてもいいからな。こんな醜い話を聞かせたくないからな。

「それで、さっきのふざけた宣告はどういう意味だ?」

「はい。それは・・・、」

 そして俺達は、ウッドピクシー達からの話を静黙と聞いた。話の要点をまとめてみると、



・あの戦いの後、何者かが世界樹を何らかの方法で蘇らせた

・だが、蘇らせられた世界樹は何者かの命令しか聞かない

・しかも、葉の部分が火に変わっていて、次々とフォレードが火に染まっていった



 こんな感じ、か?正直、俺も何を言っているのか分からない。あの憎き世界樹が蘇ったことも驚きだが、燃えているってどういう意味だ?葉の部分が火に変わるって、そういう…進化?変化?が存在するのか?地球では単なる災害の一種にしか聞こえないな。木が燃えるだけでなく、燃え広がるなんて。

 それに、世界樹を蘇らせた奴も気になるな。確か、あの憎き世界樹はみじん切りのように細かく切り刻んだ後、燃やしたはずだ。その灰は風に舞って飛んでいったはずだが、その灰を使って蘇らせたとでもいうのか?どうやって?灰から植物って生まれるとは思えないのだが。現代科学では証明できていないと思うのだが。そこまで現代科学の事について完全把握しているわけではないので不明なのだが。いずれにしても、世界樹と世界樹を蘇らせた奴双方気になるな。

「「「「「・・・」」」」」

 あれ?ウッドピクシーの話を聞いてから、イブ、クリム、リーフ、カーナ、エーガンの様子がおかしい。無理もないか。あいつにやられた傷は一生消えないからな。上書きできたとしても、過去の傷が消えたわけではないからな。

「…まさか、森災が来たというの?それに…でも…まさか?」

 エーガンが何か言いたそうにしていた。森災はリーフから聞いていたからある程度把握しているが、それ以外に何かありそうだな。

「エーガン、何かあるのか?」

「!?な、何もない、わ、よ?」

「何もないならこっち向いて言えよ」

 エーガンだけでなく、

「まさか!?いえ、ですが…」

「そんなことは…」

「…むむ」

 みんな、口を濁らせていた。

「?どうした?何か言いたいことでもあるのか?」

 正直、何か心当たりがあるのなら言ってほしいのだが。

「きっと、森災の再来よ。それに、フォレードの様子を聞く限り、もしかすると…、」

 そこでエーガンが言いよどむ。森災の件もそうだが、本当にみんなどうしたんだ?

「フォレロイ、ですね」

 そこでカーナが口を開く。

「フォレ、ロイ?」

 何それ?フォレードの亜種か何かか?

「…多分。この国の文献を読み漁った限り、その可能性が高い」

 イブさん。あなたいつの間にこの国の本を読んでいたのですか。俺なんか四六時中寝ていたり、依頼をこなしていたりしていたのに。

「ギルド関連にはそういった情報はありませんでした。となると…、」

 リーフも当然のように話していた。

「エルフのみなさんから少し聞いたのですが、それって本当に実在するのですか?本だけの存在だと聞いていたのに…、」

 な!?クリムまで知っていた、だと!!??クリムだけは俺の仲間だと思っていたのに!?

「ちょっといいか?」

「どうしましたか?」

 俺の言葉にカーナが言葉を投げかける。

「その、フォレロイ?というのはなんだ?」

「そうですね。私より、そこの者の方が御存知かと」

 と言い、カーナはウッドピクシーの方を向いた。カーナの視線移動をきっかけに、ウッドピクシーに視線が集中する。

「フォレロイ、ですか。一言で言いますと、森災の僕、とでも言えば伝わるでしょうか」

「・・・は?フォレロイが森災の僕?ちょっとまて。ということは…?」

 瞬間、最悪な考えが浮かぶ。フォレロイが森災の僕、ということは…?でも、そんなことがあり得るのか?

「ええ。森災は世界樹様が暴走した姿。つまり、森災と世界樹様は同一の存在、になり得る存在です」

 う、嘘だろ?だって、

「昔、世界樹と森災は戦ったって聞いたぞ?」

「それもまた真実です。世界樹様は自身の暴走を恐れ、半身を自身から切り離し、自身が暴走した時に解除するように封印を施されたのです」

「・・・つまり、森災は世界樹自身が生み出していた、ということか?」

「・・・はい」

 ・・・。

「あれ?お前はさっきこう言ったな?森災と世界樹は同一の存在になり得る存在、と」

「ええ」

「森災と世界樹は同じ、じゃないのか?」

「正確に言えば、そういう時もある、ということです」

「は?」

 どういう意味だ?

「森災は様々な形を成して現れてきました。火の形をしていたり、異形な存在として現れたり、色々です。そして森災は、我らが主、世界樹様に目をつけ、意図的に暴走させるようにもしました。なので、森災が世界樹様と同一の存在になり得る、という表現をさせていただきました」

「・・・じゃあ今回はたまたま、世界樹が森災として襲ってきた。そういうことなんだな?」

「ええ。今回は意図的に仕掛けられたので、今まで以上に厄介かと思われます」

「・・・なるほど」

 要するに、森災はこの国を襲う者の総称、という扱いでいいんだよな。このウッドピクシーの話を聞いていると、極端な話、そこいらにいる魔獣でも森災になり得る可能性がある、ということか。こういうまとめ方でいいのか不明だが、だいぶ分かってきた気がする。そういえば、

「前に戦った時、世界樹は自身の半身を封印して~とか言っただろ?今回もその半身とやらを封印して、森災に備えているんじゃないのか?」

「いえ。今回はその、例年より激しく消耗していたので、その~、」

「???」

 ・・・あ~。もしかしなくても俺のせいだな。俺が世界樹を灰にして風に舞わせたほど切り刻んだ挙句に燃やし尽くしたからか。・・・気まずいから話を変えよう。

 次は、世界樹を蘇らせた奴についてだな。

「森災もそうだが、世界樹を蘇らせた奴は何者なんだ?」

 俺がそう質問すると、ウッドピクシーは渋い顔をし、

「私にも分かりません。あの魔獣がどのような技を使い、どのように世界樹様を操っているのか、見当もつきません」

「そうか」

 むしろ、世界樹よりそいつの方が厄介だと思う。世界樹みたいな奴を蘇らせる力を持つ存在。その存在が俺達の味方になるか、敵になるか。味方ならともかく、敵ならこれ以上に厄介な存在になるだろう。

「そいつは魔獣、なのか?」

「だと、思います」

「なら、その魔獣の特徴を教えてくれないか?」

「特徴、ですか?」

「ああ。ある程度言ってくれれば、もしかしたら相手の正体が分かるかもしれない」

 まぁ、擬態している可能性もあるので一概には言えないと思うが、気休め程度にはなるかもな。

「えっと・・・確か、蜘蛛、みたいな形をしていたと思います」

「くも?くもって空に浮かんでいるのではなく、虫の方、だよな?」

「はい。それ以外の見た目の特徴は分かりませんが、寄生がどうとか言っていたと思います」

「蜘蛛、寄生・・・」

 最初、モミジみたいな植物系の魔獣かと考えていたのだが、魔獣は蜘蛛みたいな形をしていたと言う。となると、蜘蛛の形を模っている植物系の魔獣か?

「少し待っていてください」

 リーフは王城、玉座の間を退室した。

 少し経って、

「ただいま戻りました」

 リーフが戻ってきた。分厚い本をもって。

「・・・そのあっつい本は何だ?」

「はい。これは今まで遭遇してきた魔獣が載っている図鑑です。ギルドから借りてきました」

 へぇ。そんな物があるんだ。欲しいな。

「先ほどの説明を聞いて、思い当たる魔獣がいくつかあるので、それらを見て判断してほしいです」

 リーフがテーブル中央にあっつい本を置き、ページを開いていく。

「・・・これですか?」

「…違います」

「それじゃあ…これですか?」

「…違います」

 こんな会話を数回繰り返していると、

「これですか?」

「!?こ、これです!この魔獣です!!」

 どうやら、このウッドピクシーが見た魔獣が分かったそうだ。さて、どの魔獣だ?

「この魔獣は…【パラサイダー】ですね」

「【パラサイダー】?何それ?」

 俺が戦ってきたどの魔獣とも異なるな。

「パラサイダー。蜘蛛型の魔獣で、生物に寄生する厄介な魔獣です。寄生された生物の身体能力を底上げし、寄生した生物の体を自由に動かすことが出来ます。ですが、」

「ん?どうした?」

「パラサイダーには本来、世界樹を蘇らせるほどの力は無い筈なんです。それが唯一の気がかりなんです」

「そうなのか…」

 もしリーフの言う事が本当なら、ウッドピクシーが見た魔獣はこのパラサイダーで間違いないだろう。それにしても、リーフが言っていた事が気になるな。本来、か。

「なぁ?」

「?なんでしょう?」

「もしかしたら、カラー種の可能性は考えられないか?」

 今まで数多くのカラー種と戦ってきた。カラー種は普通の魔獣と比べると明らかに能力が違っていた。もしかしたらリーフが感じていた違和感もカラー種の事もあるのかもしれない。

「そうですね。確かそのパラサイダーは全体的に黒かったかと」

「そうなるとカラー種の可能性は高そうですね」

「あ」

 ここでウッドピクシーは声を漏らした。

「…ん?どうかした?」

 すかさずイブが聞き返す。

「…いえ。ある事を思い出したのですが、大したことではないと思ったので、」

「…なんでもいいから話して」

「はい。そのパラサイダー、確か目の上辺りに模様があったような気がして、」

「!?」

 瞬間、俺の最悪な考えが、予想が、推測がよぎってしまう。まさか、まさかあの一族が!?

「そのマークってもしかして、こんな感じだったか?」

 俺はドーナツ状のマークを記す。

「あ、はい。これです。これが確かあったかと」

「「「!!!???」」」

 どうやら、イブ達も気づいたみたいだ。俺の質問の意図に。そして、今回の出来事に誰が深く関わっているのか。俺も正直、こんなことを考えたくなかったけどな。

「もしかして…!?」

「多分、だけどな」

 ウッドピクシーの証言が正しければ、間違いないだろう。

「?この模様がどうかしたのですか?」

「いや、何でもない。ちょっと気になることがあったから聞いてみただけだ」

「そう、ですか」

 カーナは何か聞きたそうにしていたが、俺は気づかないふりをして、ウッドピクシーに話を振る。

「それで、他に何か気づいた事はあるか?」

「・・・いえ。もうこれ以上はないかと」

「そうか」

 世界樹の屑さについては後で考えるとして、これでこのウッドピクシーから聞きたいことは聞きだしたのか。ん?なんか急にウッドピクシーの態度がおかしくなってきたな。何故急に?…そういえば話す前にこんなことを言っていたな。

“話を聞いた後でしたら、私を殺しても構いません。”

 と。つまり今、このウッドピクシー達は今から殺されるんだと思い、怯えているのか。

 ・・・。

 さて、こいつらはどうするかな。

『3-3-15(第239話) ウッドピクシー達の処遇』

 ウッドピクシー達は話すべきことを終え、自分達がいつ死ぬのか恐怖し始める。そんな中、彩人は外道で鬼畜な行いを強制させる。


 こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。

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